【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第9章》 灼熱のハイウェイ


 ここで、少し時間を巻き戻して……。帝国の情報部基地を大混乱に陥れた「謎の破壊工作員」を追い、砂塵を巻き上げて、まっしぐらに突き進む600万ドルの男!もうもうと舞い上がる土煙を、偶然にも目撃したのは、誰あろうジョミー・マーキス・シンとソルジャー・ブルーの二人だった。二人は、師匠−オビ・ワンの言い付けで、モス・アイズリー宇宙港まで、日用品の買い出しに行っていたのだ。荷物を積んだ中古のランド・スピーダーを運転していたジョミーが、ふと目を脇にやるや、地平線上の土煙を指して言った。
「ソルジャー……あれ何だろ?」
「う〜ん、僕にも良く分からないよ。弾よりも早く走ってる所を見ると、スーパーマンじゃないかな ?何しろこの砂漠は、いろんな物が出没するから……」
 その途端、彼らの横を……ピーター・フォンダを先頭にしたイージー・ライダーの一団が走り抜け 、『ビッ!ビッー!』と鳴くロードランナーとコヨーテが砂煙と共に駆け抜け、ブラック魔王のゼロゼロマシーンを筆頭に、十二台のチキチキマシーンが、轟音を響かせて彼らを追い抜いて行った!「本当に、にぎやかな道路だね!」
 二人の注意が一瞬それた時、クラクションがけたたましく鳴り響いた!ジョミーがはっとバックミラーに目をやった時には、既に一台の乗用車が猛スピードでで背後に迫っていた!
「危ない!」「ぶつかる〜〜!」
 正に追突寸前……!奇蹟的なドライブ・テクニックでハンドルを切ったジョミーは、間一髪の所で衝突を回避!が……そのまま、道路脇の電柱に「激突」!ランドスピーダーは、ラジエーターが破裂して水蒸気を吹き出し、そのままオシャカとなってしまった……。
「バカヤロー!なんて運転するんだー!」
 自分たちの不注意を棚に上げ、怒鳴り付けるジョミー。だが、追突寸前だった乗用車は、彼らを見向きもせずに、そのまま猛速で走り去って行く!更にその後を、巨大なタンクローリーが、轟音と共に乗用車を猛追して行った!ジョミーとソルジャーは、ランドスピーダーから下り立つと、遥か彼方に消えて行く二台の車を呆然と見つめた。
「な……何なんだ!今の?」
「前の車のドライバーは普通のビジネスマンみたいだったけど……何だか、後から来たタンクローリーに追い回されてたんじゃない?」
「スピルバーグの『激突!』か……」

 ジョミーは、今やポンコツと化したランドスピーダーに目をやり、ぽつりと呟いて蹴飛ばした。
「……それにしても、あいつらのせいで、この車もおシャカだ!帰ったら、ケノビ先生に何て言われるだろ……?」
「ジョミー……フォースで直せないだろか?」
「う〜ん、直せない事はないと思うんだけどなあ……」
 ジョミーは、ランドスピーダーの前に回ると、フェンダーを開けてあちこち見回した。が……。
「ダメだよ、ソルジャー。僕らにはメカの知識が余りないから、どこをどうすれば良いのか、全然分からないんだ!こんな事なら、もっと普段から勉強しときゃ良かった !」
 天を仰ぐジョミー。彼の額から、汗が一筋流れ落ちる。惑星タトゥーインの空に浮かぶ灼熱の太陽は、砂漠の道筋に立ち尽くす二人を、ゆっくりと焼き焦がして行く……。
「ねえ……JAFにでも来て貰おうか?」
「この車は通信器も付いてないし、電話ボックスだって、どこまで歩けば見付かるか分かったもんじゃない!連絡の取りようがないよ……」
「ケノビ先生に、精神感応で話しかけて見るってのはどう?」
「う〜〜ん。それは、今やってみたんだけど……『うるさい!わしは、今忙しいんぢゃっ!』っ て、ろくにこっちの話も聞かないで、先生が一方的にテレパシーラインを切っちゃったんだ!こうなったら、二人して荷物を担いで、家まで歩くしかないよ……」
 ソルジャーの諦めたような答に、ジョミーが照りつける太陽を見て言った。
「そんなあ!こんな炎天下を歩いてくなんて!」
「泣き言を言うんじゃない!全く……ジョミーは、いつまで立っても、ミュウの長としての自覚が足りないんだから!」
 ジョミーを厳しく叱りつけるソルジャー!
「そんな事言ったって……僕は構わないけど、ソルジャーは虚弱体質なんだから、途中で倒れたらど うするのさ!」
 ジョミーの反撃に、ぐっと詰まったソルジャーだったが……。
「大丈夫だよ。僕らには超能力もあるし、フォースだって少しは使えるんだから……何とかなるさ!さあ……行くよ、ジョミー!」
「ま、待ってよ、ソルジャー!」
 二人は荷物を背負うと、エンコしたランドスピーダーに、『アンタッチャブル!(触るな)』と書いた魔除けの御札を貼り付けると、広大な砂漠の中に伸びて行くフリーウェイを、ゆっくりと歩き始めた……。特殊能力で強烈な陽射しを屈曲させ、荷物の重量を軽減させるジョミーとソルジャ ー。だが、十代の少年にとって、陽炎揺らめく灼熱のハイウェイは、非常に過酷なものだった……。 精も根も尽き果てかけた時、二人の耳に近付いてくる車の音が聞こえた。
「ソ、ソルジャー……やった、車だ!……乗せて貰おう……よ……」
「僕も……もう……限界だ……」

 道路にへたりこんで、手を振るジョミーとソルジャー。彼らに気づいたのか、大型のスペース・トラックが、キキーッと音を立てて停車した。
「ヘイ、お嬢さんたち!ヒッチハイクかい?良かったら、俺たちが乗せて行ってやろうか?」
 トラックの運転席から身を乗り出して、二人に声を掛けたのは、銀河のトラック野郎ローン・スター!助手席には、毛むくじゃらで太っちょの相棒の類犬人バーフが腰を下ろしている。
「すいません……車が事故に遭って動かなくなったんで、困ってるんです。クラーケン台地まで乗せ てって貰えますか?」
 ソルジャーの言葉に、ローン・スターは二人を上から下まで眺めると、ニヤリと笑って答えた。
「う〜〜ん、飛び切りの美女二人に見えたんだがなあ……俺様の眼力も些か鈍ったか!?そうだな、丁度そっちの方に行くから、遠慮せずに乗ってくれ」
「ローンは、女と見れば乗せたがるんだから……奥さんが後に乗ってるって事、忘れるんじゃないぜ !」
 相棒のバーフがそう言った途端、運転席とトラック本体を繋ぐ扉が開いて、中からオシャレな作業服を着こなした美女が姿を現わした。
「なあに、バーフ。私の事呼んだ?……あらっ、ローン!また、女の子にチョッカイ出して!」
 ドルイデア星の元・王女ベスパ姫は、浮気性な夫のローン・スターの頬をつねり上げた。
「イテテテテ……ち、違うんだ、ベスパ!良く見ろよ……女じゃない、男の子だぜ!こいつらは、乗ってた車が事故に合って、仕方なく道を歩いてたって言うから、俺は親切心から乗せてやろうと思ってだな… …」
 一生懸命弁解するローン・スターを、冷やかな目つきで見据えたベスパ姫は、ジョミーたちには打って変わって、愛想良く迎い入れた。
「まあ……それは大変でしたわね!どうぞ、遠慮なく乗ってらして!」
 女の子に間違えられたジョミーは、些かムッとなりながらも、乗せて貰えた事に感謝の意を表すると、トラックに荷物を運び込んだ。ジョミーの気持ちを敏感に感じ取ったソルジャーは、彼を慰めるようにして、その後に続いた。
「ジョミー……怒ってもしょうがないよ。だって、竹宮景子の描く『美少年キャラ』は、女の子に間違えられるのが常だもん。これも美しさ故の宿命なのさ!」
 ソルジャーはナルシスティックに言うと、スター・トラックの広いバックシートに腰を下ろした。
「全く、ローンたら……私達、つい先日結婚したばかりなのよ!それなのに、可愛い女の子を見かけると、てんで目がないんだから!本当に、貴方たちが男の子で良かったわ……」
 ベスパ姫のきつい口調に、何食わぬ顔をしている運転席のローン・スター。バーフが、ジョミーとソルジャーに向かって話しかける。
「俺たちゃ、しがない宇宙のトラック野郎だけどよ……こう見えても、この二人は実は王子様とお姫様なんだぜ!相棒のローンは、どこかの星の支配者の末裔だし、ベスパさんはドルイデア星のプリンセスだ!つい先日、盛大な結婚式を上げたんだぞ!」
 得意げにブチ上げるバーフを、疑わしげな目つきで見つめるジョミーとソルジャー。
「で……その王子様とお姫様が、どうしてこんな所でトラック野郎なんかやってるんですか?」
「それは、私が悪の権化のスプルーフ大統領と、その邪悪なる臣下ダーク・ヘルメットに虜われていた所を、命懸けで救い出してくれて、彼らの陰謀を粉砕してくれたからなの……だから、私はローン と結婚して、彼と一緒に宇宙のトラック野郎になったのよ」
 先程の態度とは、打って変わって、ベタベタにノロケるベスパ姫に呆れ返る二人。夫のローン・ス ターも、満更ではなさそうだ!
「ソルジャー……どっかで聞いたような話だと思わない?」
「うん……僕もそう思う」と頷くソルジャー。
「まあ、仕方ないさ!この話……メル・ブルックス製作のSF映画『スペースボール』自体が、『ス ター・ウォーズ』のパロディーなんだから……」
 肩をすくめながら呟くバーフ。ジョミーとソルジャーも、顔を見合わせて頷く。が、それに気づく 様子もなく、ベスパ姫は喋り続けていた。
「……でも彼が、実は王子様だったとか、私がドルイデア星のプリンセスだとか言った事は、私達には関係ないわ!私は、ドルイデア星の王位なんかに未練はないもの!私は、ローン・スターと言う男性を愛したから結婚したの!私は、彼と一緒に、彼の好きな仕事ができればそれで良いの……だから 、私達はこうして宇宙のトラック野郎をやってるのよ……」
 ローン・スターはベスパ姫の顔を見て、ニヤニヤしながら言った。
「まあ……そう言う事だ!男がこれと決めた事は、命懸けでやり抜く気概がなけりゃダメだぜ!それに……俺にはこれがあるからな!」
 ローン・スターは、二人に向かって、填めていた指輪を見せた。
「何ですか……それ?」と、ジョミー。
「こいつぁ、聖者ヨーグルトから授けられた『聖なる力シュワルツ』の指輪さ!……もっとも、この指輪は単なる象徴で、真のシュワルツは己の心の中にあるんだがな……どうだい、一つ持ってかないか? 」
 顔を見合わせるジョミーとソルジャー。オビ・ワンの元で、フォースを修業している二人にとっては、余りにも胡散臭い話だった……。
「でも、大切な物なんでしょ?……それ」
「なあに……ヨーグルトのおっさんから、委託販売を頼まれてるんだが、さっぱり売れやしねえのさ !まだたくさん残ってるから、良かったら好きなデザインの奴を選んでくれ!ただで構わねえからな !」
 ローン・スターの言葉に、カックンとこける二人!バーフが取り出したトランクを開けると、中には大小様々な指輪が並べられていた!指輪の色鮮やかさに、思わず目を奪われるジョミーとソルジャー!
「綺麗だね……」
「うん……はめてみようか?」
 二人があれこれ指輪を選んでいると、不意にトラックが急停車した!見ると、対向車線に一台の大型トラックが止まって、運転席からカウボーイハットの逞しい大男が身を乗り出している。

「おい!この先は帝国軍が道路封鎖をしてるから……ローン!?ローン・スターじゃないか!」
 ダンディーなコンボイ野郎……筋金入りのキャノンボーラー、J・J・マックルーアは、旧友のローン・スターと再会した喜びに、大きく右手を差し出した。それに応えて、ローン・スターもぐっと握り返す。男同士の力強い友情だ!
「久し振りだな、J・J!……どうだい、キャノンボールの方は?」
「ああ、相変わらずだぜ!……今年は大会がないんで、練習も兼ねて、せっせとトラック野郎で稼いでるんだ」
「で、何だって?帝国軍がどうこうしたって、言ってたが……」
「それだ、それ!ちょうど、ここをもう少し引き返した所で帝国軍が道路封鎖をして、一般車両が近付けないように、通行制限をしてるんだが……何だか、帝国軍の奴ら。タトゥーイン中で、スクラッ プ屋のジャワズの一斉検挙でもやってる見たいだぜ!?ちらっとしか見えなかったんだが、サンドクロ ーラーは炎上してて、ジャワズの死体もゴロゴロ転がってるし……」
 J・Jの言葉に、それまで指輪選びに専念していたジョミーとソルジャーが、不意に耳をそば立て、身を乗り出した!
「ソルジャー……何だか、胸騒ぎがするよ」
「うん……僕もだ。理由は分からないけど、早く先生の所へ帰らなきゃいけないって気がしてるんだ !」
 C-3POとR2-D2の行方を探し求めている、帝国軍情報部の〈小熊のミーシャ〉の一団だとは、知る由もない二人だったが、予知能力の導きによって、漠然とした不安感を抱いたのだった……。
「幾ら何でも、ありゃあやり過ぎってもんだ!酷え有様だったぜ!君子危うきに近寄らずってんで、さっさとずらかろうと思ったんだが……こいつが、また悪い癖を出しやがった!」
 そう言って、J・Jが指さしたのは、猿轡を噛まされて縛り上げたままの、太っちょの相棒ビクターの暴れる姿だ!
「ビクターがどうかしたのか?」
「ああ!帝国軍の横柄極まりない態度を見て、怒ったこいつがあの『キャプテン・ケイオス』に変身しちまったんだ!」
 J・Jの回想の中で、『ダンダンダーン!』の雄叫びと共に、正義の味方(?)のキャプテン・ケイオスに変身し、帝国軍を叩きのめしに行くビクター!
「だから俺は、慌ててこいつをふん縛って、命からがら逃げて来たんだ!お前もあっちの方へ行くな ら、十分気をつけた方が良いぜ!」
 帝国軍が追っかけて来やしねえかと、しきりに後を気にするJ・J!
「俺は大丈夫だよ!行先は、反対側のクラーケン台地だからな。この直ぐ先で別ルートだ」
「早く行きましょう、スターさん!」「お願いします!」
 ジョミーとソルジャーの訴えかけるような表情に、ローン・スターは二人の目をじっと見つめた。
「詳しい事情は聞かなかったが……どうやら訳ありのようだな……よし、分かった!一丁飛ばすとするか!それじゃ、J・J……またいつか、宇宙のどこかで会おうや!次のキャノンボールじゃ、必ず優勝するんだぜ!」
「おう!俺が優勝カップを手にするまで、ローン・スター……お前もくたばるんじゃねえぞ!」
 再び手を握り合って、二人のコンボイ野郎は、お互いの愛車をそれぞれの行き先に向かって走らせた!
「ジョミーと……ソルジャーとか言ったな?これから思いっ切り飛ばすから、しっかり掴まってろよ!聖ヨーグルトのお守りの指輪は決ったか?」
「はい!」「僕も、素敵なのを選びました」
 指輪を眺めてうっとりしている二人を、呆れるように見入るローン・スター。
「何か勘違いしてるようだが……まあ、いいだろ!じゃ、しっかりお守りに頼るんだぜ!」
「はい……出てこい、シャザーン!」
 ジョミーとソルジャーが心を一つにし、二つの指輪を重ね合わせた!
『パパラパー!ハッハッハー、ご主人様!』

 ……フリーウェイを反対方向に向けて走り出していたJ・Jは、突然砂漠に轟音と稲光が響き渡り、ローン・スターのスペース・トラックが急旋回するや、何やら人型の巨大な砂煙が、その側に湧き起こるのをバックミラー越しに目撃して、思わず呟いた!
「あいつら、一体何やってるんだ?……全く」
 呆れ返るJ・Jのトラックを後に残し、ローン・スターのスペース・トラックは、一路オビ・ワンとその弟子たちが待っているクラーケン台地を目指してひた走った……。




《第10章:エイリアンvs600万ドルの男…へ続く》


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