【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第8章》 オビ・ワンの弟子たち


 再び話は戻って、こちらはランドスピーダーでケノビ家へ向かうルークたち。車の中で、彼らがベンの家を尋ねるに至った行きさつを説明していると、ケノービがパッと一方を指差した。
「見なさい、ルーク。あれがわしの家じゃ!」
 見ると、崖の上に巨大な宮殿が立っている。
「へえー、ベンって、あんな大きな家に住んでたの〜〜!知らなかったなあ〜〜!?」
 オビ・ワンは慌ててルークに言う。
「どこを見とるんだ、どこを!?あっちじゃなくて、こっちじゃ!……あれは、このタトゥーインの陰の支配者暗闇のジャッバの宮殿じゃよ」
 オビ・ワンの指し示す方向をよくよく見ると、岩山の間に、石造りの家と家畜がたむろする牧場があった。「なーんだ。あれがベンの家か……」
 ルークは横目で軽蔑する様にベンを見る。オビ・ワンは咎めるが如く、ちっちっちっと指を振った。
「何を言っとる。わしはあの家に誇りを持っとるんだ!大勢の可愛い弟子たちはおるし、食い物は、耕地と河から幾らでも美味いものが取れる。隣接した牧場では、肥えた馬や牛・羊を飼っておるから、新鮮な乳製品や肉が食べ放題!添加物が混じった人工食品を食うより、よっぽど健康的じゃ!それに、ここは税金も電気水道代も払わんでいいんじゃ!」
「へえっ!まるっきり、ただなんですか?」
「ああ。家はジャッバの所有地に勝手に立てたし、水道も電気もガスも、ジャッバのものからバイパスして使っておる」
「それで、誰も気づかないんですか!?」
「そうじゃ……。それに、万一気がついて集金に来ても、フォースでうまく追っぱらっえるからのう……。わしらはここを、わしの頭文字のO.B.から取って、OB牧場と呼んでおる」
 嬉しそうに、ほっほっほっと笑うオビ・ワン。ルークが首を捻っている内に、ランドスピーダーは、オビ・ワンの家の前にキキキーッと止まった。

「あら、先生。お帰りなさい!」
 そう言って、彼らの前に現れたのは、誰あろうポウル・アトレイデの実妹にして類い希なる美女。かつての帝国摂政エイリア・アトレイデが、両手に洗濯物を一杯抱えて出て来た。
「いや、済まんのう。朝から散歩に出たきり、戻ってこんで……実は、これこれ、こう言った訳で、この子らを連れて来たんじゃよ」
「まあ、そう言う事でしたら、大歓迎ですわ。アムロ君、アムロ君〜。お客様よ〜!」
「は〜い、エイリアさん。今行きま〜す!」
 家の向うから、同じように洗濯物を抱えてやって来たのは、かつての連邦軍エース・パイロットのアムロ・レイだ!
「ルーク、紹介しよう。こちらの女性が、石森章太郎イラスト版『デューン/砂丘の子供たち』のエイリア124C41+……つまり、『未来を予見する』エイリア・アトレイデじゃ。今は、わしの家で家政婦をやって貰っておる。この子は、わしのかつての弟子のダース……いや、むにゃむにゃ。その、わしの友人のルーク・スカイウォーカー君と、ドロイドのR2-D2、C-3POだ」
「よろしくね、ルーク君」「は、はいっ!」
 ルークは、目の前の美しい女性の姿に、カーッとのぼせ上がって、ぎこちなく答えた。
「それから、こちらの少年が『小説版・機動戦士ガンダム』のエース・パイロット、アムロ・レイ君だ」
「アムロ・レイです、よろしく。君も、今日から僕達の仲間になるんですか?」
「二人とも、わしの可愛い弟子たちじゃ。おうおう、あそこに古代がおるわい。ちょうど良かった、あいつにC-3POの修理を頼むとするか。あいつはメカに強いからのう……おーい、わしじゃー、古代ー!」
 オビ・ワンは、修理中の掘削機会を肩に担ぎ上げ、こちらにやって来る古代進に目を止めて呼び掛けた。
「はい、先生!今、行きます!」
 古代は、機械を軽々と下ろすと、オビ・ワンに向かってピタッと敬礼した。
「古代進。命令により、ただ今出頭致しました!」と、真面目くさって言った古代の目がパチッとウインクし、あははと笑い出した。
「紹介しよう……。彼は、映画『さらば宇宙戦艦ヤマト』の元ヤマト艦長・古代進じゃ」
「よろしく!古代進です!」
 きびきびとした口調の古代は、ルークと握手をした。
「やれやれ、いつまで経っても、その口調は抜けんのう……それとも、もしかすると知っててわざとやっとるのかも知れんぞ……?」
 オビ・ワンのとぼけた表情に笑い返す古代。だがルークは、その笑みの中に何故か暗い陰を認めた……。
「いや、こんな所で立ち話もなんじゃ。皆に伝えたい大事な事もあるから、そろそろ中へ入ろうか」

 オビ・ワンを先頭にルーク、R2-D2。古代とアムロに左右から支えられたC-3PO。そして、エイリアがぞろぞろと家の中へ入って行った。
「お〜い、帰ったぞ〜〜!」「あら、お帰りなさい。ケノビ先生!」
 オビ・ワンの声に、家の中の掃除・選択に精を出していた4人の美女が現れた。いずれも、手に手にほうきやはたき・雑巾。水桶や洗濯物を持っている。
「お前たち。掃除や洗濯は自分の手でやっとったか?まさか、ほうきや洗濯板に魔法をかけて、代りにさせたんじゃあるまいな?」
「まさか!魔法使いの弟子じゃありませんわ!」
「いや、分からんぞ?お前たちは皆、名うての超能力者じゃからな……だが、いつもわしが言っておる通り、超能力と言うのは、余り日頃から使い過ぎてはいかん。いざと言う時の為にこそ、役立てるべきものじゃからな……それはともかく。紹介しよう、ルーク」
 オビ・ワンは4人の美女を前にして、嬉しそうに言った。
「この三人は、右から……『超少女明日香』の砂姫明日香。『赤い牙/ブルー・ソネット』の小松崎蘭。『七瀬ふたたび』の火田七瀬じゃ」
「よろしく!」「よろしくね!」「はじめまして、ルークさん!」
 3人の美女がルークに微笑みかけた。
「それに……えーっと、お前は誰じゃった?」
 オビ・ワンは、最後の一人……金髪の美少女に首を捻った。
「まあ、先生。また、お忘れになって……リーザじゃありませんか、リーザ!」
 エイリアがオビ・ワンに注意した。
「リーザです。どうかよろしく」
 彼女もニッコリと微笑みかける。
「それに後二人……えーと、ジョミーとソルジャーはどこへ行った?」
「やだわ、先生ったら!二人は朝早くから、先生の言い付けで、モス・アイズリーまで日用品の買い出しに行ったんじゃありませんか?」
 火田七瀬がころころと笑って言った。
「おお、そうじゃった。いかんなあ!わしも最近、ちと呆け始めたか?……いや、そんな事より、今ここにはおらんが、ジョミー・マーキス・シンとソルジャー・ブルーと言う少年がおる。いずれ帰ってくるじゃろうから、まあ、その時に紹介しようじゃないか」
 オビ・ワンは皆を居間に導くと、先ずメカに強い古代とアムロにC-3POの修理を任せた。そして、どっかと腰を下ろすと、彼の回りを取り囲んでいる全員を見渡した。その表情は、これまでになく真剣だった……。

「よいか!これから、ここにいるR2-D2が、あるメッセージをわしに伝える。その詳しい内容はわしも知らんが……まあ、最近の星際情勢を考えれば、ある程度は見当がつくじゃろう。じゃが、それがどのような内容であるにせよ、わしたちはこれまでの牧歌的な生活を捨て、激しい戦いの中へと、自ら踏み込んで行かねばならんだろう。これは運命ぢゃ!(と、錯乱坊の声で)」
 オビ・ワンを囲む皆の顔も、真剣になって行く。
「今の内に皆の気持ちを聞いておく。どうじゃ!如何なる道であろうとも、わしについて来るか?」
「それが運命ならば行きますよ!運命って言うのは自ら立ち向かい、切り開いて行く物じゃないですか?」と、古代がC-3POを修理しながら言う。
「過酷な戦いじゃぞ!」
「承知の上です!今まで先生の元で、フォースの修業に努めて来たのは、こんな時の為です!」
 アムロ・レイもきっぱりと答えた。
「死ぬかも知れんぞ!?」
「私達は、一度失った命をあなたに助けられたんです。所詮、人の一生とは戦いですわ」と、エイリア。
 明日香も七瀬も蘭もリーザも頷いた。彼女たちも全員、いつかはこの日が来る事を予知していたのだ……。事情がまだ良く呑み込めず、一人カヤの外に置かれているルークは訳が分からなかったが、何か今までとは違う時が訪れた事を、ひしひしと感じ取っていた……。
「よろしい!では、R2-D2。わし当ての極秘メッセージを出してくれ。皆も一緒に聞く事としよう」
 ようやく修理の終わったC-3POを含めて、全員がR2-D2を囲んだ。ルークがR2-D2の体のスイッチに触れ……た途端に、ボリュームを入れ間違って、R2-D2のボディーが火を吹き、物凄い構造震動音が周囲に響き渡った!鼓膜が敗れたかと思える程の大ボリュームに、オビ・ワンを除く全員が、一瞬にして昏倒した!
「洩れたか?……分からん!帝国軍が嗅ぎ付けねばよいが!?」
 オビ・ワンは蒼い顔をして、どさっと尻もちを着いた。メッセージが響き渡った瞬間、フォースの限りを尽くし、家中にバリヤーを張って、電波を遮ったオビ・ワン!だが、R2-D2から発せられたシグナルが、超空間帯域を通って、オビ・ワンのバリヤーを突き抜け、外部に洩れていったかどうかは、彼にも判別がつかなかった。とりあえず、昏倒した全員を介抱すべく立ち上がったオビ・ワンだったが……。


 だが、彼の懸念した通り、R2-D2のメッセージ・シグナルは、超空間帯域の透き間をすり抜けて、遥か彼方の惑星に伝わっていたのだ……それは惑星地球!かつて、白色彗星帝国の襲来によって、壊滅寸前にまで追い込まれた地球も、宇宙戦艦ヤマトに乗って特攻した古代進と森雪によって、辛うじて全滅を免れていた……。次々と敵が来襲したTVシリーズ後の世界と違い、劇場映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」後の世界。そこでは……デスラー総統の死と共に、ガミラス民族は全滅。地球には、暗黒星団帝国も、ボラー連邦も、ディンギル帝国も、水惑星アクエリアスも来襲する事なく、今や平和と復興の時代を迎えていた。
 そして今、惑星イスカンダルの女王スターシャと古代守、二人の間の子のサーシャの三人が、里帰りに地球を訪問。地球総指令部の一角で、亡き古代に替わって、地球連合艦隊旗艦ヤマトII世号の新艦長−島大介と、久し振りに旧交を暖めあっていた。

「よう、島君……いや、今は島艦長だったな?おめでとう!念願の艦長に就任できて!」
「いえ、これも全て、古代がいないお蔭……いや〜その〜。そ、そう!皆さんのおかげです!お元気そうですね、スターシャさん!確か、二人目のお子さんが、間もなくお生れだとか?……」
「ええ、後4ヶ月ですわ……今からどんな名前にしようかって、二人で考えてますの……あら、サーシャ、そんな所に隠れてないで、こっちへいらっしゃい!島おじさまに挨拶しなきゃ、駄目でしょ?全く、あの子ったら、人間がいないイスカンダルで育ったものだから、人みしりばっかりして……」
 めったに見た事のない、大勢の人間にすっかり驚いてしまった3才のサーシャ……と言っても、地球人と成長のスピードが違うので、体と精神は地球人の17才の少女と何ら変わらないが……彼女は、大型コンピューターの影に隠れて、当たりの様子を伺っている。スターシャがサーシャを引っ張って来ようとした時、ピーッ!ピーッ!と言うシグナルが鳴り響き、通信担当士官の相原が島に呼び掛けた。
「島艦長!はっきりはしませんが……超空間帯域で、銀河の彼方から、何か救援を求める信号が、断続的に入って来ています!」
「何だって!?すぐに解析して、地球語の音声に翻訳するんだ!」
 島はそれまでの和やかな顔つきから、一瞬にしてきっとした表情に返った。
「はい!暫くお待ち下さい。只今翻訳してみます……」
 僅かの時間の後、激しい雑音が入り混じって、非常に聞き取りにくかったが、確かに若い女性の救いを求める声が、司令部のスピーカーから地球語に翻訳されて流れ出た。

 『私……アルデラ……のレイア・オーガナ……帝国の圧…苦しんで……助けて……あなただけが頼……お願いで……』

 そこまでで声は途絶え、後は雑音ばかりだった……。それを聞いて、スターシャは、かつての自分の地球に対する呼び掛けを思い出した。島大介と古代守の目が合い、更に藤堂司令長官とも視線があった。何も言わなくとも、皆は今、何を為すべきなのかを十分に承知していた!
「……相原!今の信号の発信源の距離と方角は?」
「はい!既に計算済みです!」
 相原はデータを記したプリントを、さっと島艦長に手渡した。島は喰い入るようにそれを見つめると、司令長官に向かって言った。
「……長官!」
「分かっておる。島艦長!宇宙の正義と平和と、そして愛の為、宇宙戦艦ヤマトII世号の出撃を命ずる!」
 島はさっと敬礼した!
「承知いたしました!相原、すぐに全乗組員に召集だ!1時間後に発進する!」
「アイアイサー!」
 相原はサイレンを鳴らし、マイクを掴んだ。
『ヤマトの全乗組員に告ぐ!直ちに乗艦せよ!ヤマトの全乗組員に告ぐ!直ちに乗艦せよ!ヤマトは1時間後に出撃する!』
 何年ぶりかの出撃に、司令部は忽ちクモの子をつついた様に騒然となり、ヤマトの乗組員は闘志に燃え、大いに沸き返った!そして約1時間後、全ての準備が整い、島は念願のヤマトの艦長席に座って、今や満願の思いで発進を待っていた……。
『やっと…やっと…ヤマトの艦長に為る事が出来た……見てろよ、古代!お前の分まで頑張るからな……』
「艦長!藤堂司令長官より、緊急連絡が入っております!」
 相原通信士の声に、島の夢想は破られた。そして、藤堂司令長官の姿が、ヤマトの正面大スクリーンに映し出された。
『島艦長……誠に伝えにくい事なのだが、ヤマトの発進を少し遅らせてくれないか?実は……君よりもヤマトの艦長を任せるにふさわしい……いや、何も君が役不足だと言っているのではないんだ!……ただ、より任務を確実に遂行する人物が現れたのだ……』
 島は、司令長官の言葉に、些かむっとなりながらも、穏やかに答えた。
「司令長官のご命令とあらば……私は従いますが……。新艦長と言うのは……まさか、古代さん、あなたじゃ……?」
「いやいや、僕じゃないよ、島君!」
 藤堂司令長官の隣に立っていた古代守は、島の誤解を慌てて打ち消した。
「僕もまさか、『あの人』が生きていたとは、今まで一度も考えた事はなかったんだが……」
 古代守のその言葉に、島はぎくりとした!脳裏に思い当たる人物があったからだ。しかし、まさか……?
『よう、島!元気でやっとるか!?』
 スクリーンの片隅から、その低いガラガラ声が聞こえて来た時、島は自分の疑念が的中した事を知り、北野航海長に向かって大声で怒鳴った!
「北野!緊急発進だ!」「え?しかし、司令長官からの伝言は……」
 いぶかしげに振り返った北野新航海長に向かって、島は怒鳴りつけた!
「やかましい!艦長命令だ!今すぐ発進せよ!」「は、はいっ!」
 北野は、納得のいかぬまま、ヤマトを急発進させた!一気に加速を加え、凄じいスピードで突き進んでいくヤマト!急加速によって、艦内で座っていた乗組員は、シートにおしつけられて呻き、立っていた乗組員は大勢が転倒負傷した!が、尚もヤマトはスピードを緩める事なく、宇宙空間に向かって上昇して行く!
『待ちたまえ、島艦長!私の話はまだ……』
 島は通信回線をパチッと切った。
=せっかく、古代に代って掴んだヤマトの艦長の椅子だ。今から、昔々の亡霊が甦って来たからって、どうだって言うんだ!あの「完結編」の二の舞いだけは絶対にしないぞ〜〜!=

 再び艦長となるべく復活した「沖田十三」を地球に残したまま、大いに闘志を燃やす島大介新艦長により、遥か銀河の彼方を目指して、宇宙戦艦ヤマトII世号は「愛」と「平和」と「正義」の為に発進したのだった!その行く手に、古代進(!)が……いや、何が待ち構えているかを知る事もなく……。




《第9章:灼熱のハイウェイ…へ続く》


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