【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第7章》 恐怖の尋問官ジェイソン&フレディ


 舞台は戻って、デス・スター……。悪役幹部大会議を、怒って途中退席したダースベイダーは、第一秘書のソルダム四世ドリカスを引き連れ、レイア姫を監禁してある第十七捕虜収容所へと赴いた。捕虜監視室のドアがシュッと開き、ダースベイダーが中に入って行くと、そこにはマッドマックス風の派手な格好をしたパンクロック野郎どもが、酒と女と煙草の快楽の中に埋もれていた。
「おい……おっさん!てめえ、どこのどいつだ?ここは、一般人は、立ち入り禁止区域だぜ!」
 悪酔いして、ダースベイダーを押し返す無頼漢たち。些か気が立っていたダースベイダーが、指をパチンと鳴らした瞬間、無頼漢は見えない巨大な手に掴み上げられたかのように宙に舞い上がり、床に叩き付けられて、血まみれになった!半裸の女たちが悲鳴を上げ、猛り立ったパンクロッカーが酒瓶を叩き割るや、大きく振りかざす!
「てめえ、ダチに何しやがるんだあ〜!?返答次第じゃ、生かしちゃおかねえぜえ〜〜!」
 凶暴な人相で以って、じりじりと迫るマッドマックスたち……。が、ダースベイダーはドスの利いた声を響かせ、彼らを圧倒した!
「貴様ら……わしをシスの暗黒卿ダースベイダーと知っての所存か!死ぬ気があれば、わしに向かって来るが良い!」

 目には見えないが、ひしひしと伝わって来る、怖るべき〈ダークフォース〉の凄じさに、さすがの無法者たちも縮み上がり、たじたじとなった瞬間、捕虜監禁室につながる通路から、先に来ていた尋問官のシスター・ジルが慌てて飛び出して来た!
「これは、これは……ベイダー様。お待ち致しておりました!……お前たち、主たるベイダー様のお顔も存じておらんのか!」
 パンサーゾラの女幹部シスター・ジルの振るう鋭いムチが、ビシッバシッ!と唸りを上げて、無頼漢の監視員たちを叩きのめす!悲鳴を上げ、血にまみれて床を転げ回るマッドマックスたち!
「これこれ……もう良い、シスター・ジル!……それにしても、いつもながら鋭いムチの冴えだな。感心するぞ!」
「はっ!光栄に存じます、ダースベイダー様!」
 ダースベイダーの言葉に、膝を折り頭を下げて、感謝の意を表わすシスター・ジル。
「しかし、それにしても何だな……帝国軍兵士の質も落ちたもんだ。こんなゴロツキどもまで雇わねばならんとは……一度、人事部に話をせねばならん」
 ♪じ、じ、人事部ー!ヘ〜コラ、ハ〜コラ、ホ〜コラ、ヨシャコラ……じ、じ、人事部ー!(by ジンギスカン)
 ハーッと溜め息をつきながら、先に立って進むダースベイダー。シスター・ジルは、その後に続くベイダーの秘書の四世を、艶っぽい目つきで眺めて、彼のお尻をそっと撫でた。
「可愛い坊やね。どう……今夜、私と遊ばない?」
 突然の事に、きゃっ!と驚いて飛び上がる四世。
「こらこら!私の秘書に手を出すんじゃない!……そんな事より、反乱軍のスパイどもは全員捕らえたのか?」
「ええ……あいにく仕事人たちは、捕らえられる前に、爆薬で跡形もなく吹っ飛んでしまいましたので、死体は残っていませんが、ジェームズ・ボンドとその一味は、全員捕縛に成功。特殊監房に放り込んでありますわ!」
 監房の小窓を覗き込むダースベイダー。為す術もなく閉じ込められているのは、ジェームズ・ボンド、イーサン・ハント、ジム・フェルプス、イリヤ・クリヤキン……いずれも一騎当千のスパイたちだ!
「特にジェミー・ソマーズは、普通の部屋では拘束できないので、特殊超音波を発生して、バイオニック機構を麻痺させる特別監房に、閉じ込めてありますの!」
 シスター・ジルの言葉に、特別監房の監視ガラスを覗き込むダースベイダー……。湯気で曇ったガラスをキュッキュッと拭うと、監房の中では、全裸にバスタオルを一枚巻いただけの悩ましい姿(?)のバイオニック・ジェミーが、けだるい表情のまま、疲れ切ったようにぐったりと体を伸ばしていた……。が、ダースベイダーの視線に気づいた瞬間!
「誰?……嫌っ、エッチ!スケベ!」
 ダースベイダーの目の前で、バタン!と監視ガラスに内側から蓋がされた!
「ご覧の通り。特殊超音波の作用によって、如何なる行動も起こそうとはしません」
「そうかなあ……?わしには、超音波サウナ風呂で寛いどるようにしか見えんのだが……」
 誇らしげなシスター・ジルの言葉に、首を捻るダースベイダー……。シスター・ジルが更に続けて言う。
「加えて、ベイダー様がお越しになられるまでの間、私のこの鋭いムチで、思う存分ゲルサドラをいたぶってやりました。結局、これと言って得られた情報はなかったけど、レイア姫の尋問の前に、丁度良い準備運動でしたわ!」
 シスター・ジルが鞭で指し示した監房を覗き込んだダースベイダーは、血まみれで逆さ吊りにされているゲルサドラーの無残な姿を見て、不気味に笑った……。
「フフフ……きゃつは、我が誇りある悪役仲間の裏切り者だ!欲しい情報が得られれば、後はお前の好きなようにするが良い!」
「ありがとうございます……ベイダー様!」
 妖しい目つきで、じっとダースベイダーを見つめるシスター・ジル……。黒い革のムチを、舌先でゆっくりと舐め上げながら、官能的に迫って来るシスター・ジルの姿に、思わずゾクッとなったダースベイダーだったが、気を取り直してビシッと言った!
「こ、こらっ!馴れ馴れしくするでない!とにかく……あいつらは後回し。先ず順番としては、レイア・オーガナ姫の尋問からだ!」
 秘書の四世を引き連れたダースベイダーは、シスター・ジルに案内され、ようやく目的のレイア姫の監獄へと辿り着いた。

「只今尋問には、『エルム街の悪夢』−鉄の爪の怪人フレディと、『十三日の金曜日』−アイスホッケーマスクの怪人ジェイソンの二人が当たっております!あの小娘が白状するのも、もはや時間の問題かと……」
「ほほう!現代のホラー映画界が誇る、二大恐怖怪人の共闘か……頼もしいぞ!」
 監房の扉の向こうからは、絹を引き裂くような、レイア姫の悲鳴が聞こえて来る。
「惑星タトゥーインの周回軌道上で、ベルクカッツェやドメル将軍に尋問を任せたのは、やはり間違いだった……やはり、尋問は尋問の専門家……お前たちのようなプロに任せるのが一番だ!」
「恐悦至極に存じます、ベイダー様!」
 再び、ダースベイダーに向かって、感謝の礼を取るシスター・ジル……。
「うむ!その成果をとくと見せて貰うぞ!」
 そう言って中に入ったダースベイダーが目にしたもの……それは、顔の火傷の跡も恐ろしいフレディが、拘束椅子に縛り付けられたレイア姫を前にして……アイスホッケーマスクのジェイソンが支えている黒板を、指先の鋭い爪でひっかいている光景だった!
「さあ、レイア姫……吐くのだ!反乱軍の基地はどこにある?」
 黒板から発する、キーッキーッ!と言うかん高い音に、レイア姫は顔を左右に振って、悲鳴を上げる!
「やめてえ!お願い、その音を止めてえ〜〜!」
 ガクッとなったダースベイダーが、思わずシスター・ジルに向かって叫んだ!
「これが……プロの尋問だと言うのか!?」
「は?……何か、ご不満な点でも?」
 キョトンとするシスター・ジル。ダースベイダーは、フレディとジェイソンの二人を監獄から叩き出すや、シスター・ジルに怒鳴りつけた!
「もっと、効果的な尋問法はないのか!」
「……でしたら、ここに精神波コントロール装置と言う、お誂え向きの洗脳装置がございます。これは、被験者の精神波を捕らえて、一度耳にするとつきまとって離れない特殊なフレーズによる洗脳テープを、繰り返し繰り返し聞かせる事により、その精神を次第にコントロールしてしまいます……。そして、そいつが心の中に隠している秘密を、意識せぬままにペラペラ喋らせてしまうと言う、画期的な尋問マシーンなのです!」
 シスター・ジルは、監獄の片隅に置かれた、複雑なメカを指し示した。
「そんなに結構な代物があるなら、なぜ最初から使おうとせんのだ!?」と、怒るベイダー。
「ですが……しかし、これにはまだ欠陥が……」
「構わん!たとえ、こやつが廃人と化そうとも、必要な情報が、こちらの手に入れられれば、それで良いのだ!……やれ!」
「承知致しました」
 シスター・ジルの合図で、白衣に身を包んだ黒人の科学者マイルス・ダイソンが、尋問機械をレイア姫の側までガラガラと押して来て、彼女の頭にケーブルの着いたヘルメットをすっぽりと被せた!
「やれ!」
 ダースベイダーが指図するや、ダイソン博士がメカのスイッチを入れる。途端に、レイアは苦悶に顔をしかめて、激しく体を振り絞った!ヘルメットからは、微かに洗脳テープの音声が流れて来る……。
「一体、レイア姫にはどのようなフレーズを聞かせておるのだ?」
 好奇心に駆られたダースベイダーに、シスター・ジルが小型のヘッドホンを手渡した。
「これは、洗脳テープの内容を確認する為のヘッドホンで、音量は最小限まで絞ってありますが……。余り長く聞いていると、悪い影響が現れますので、十分お気をつけ下さい!」
 ヘッドホンを耳に当てたダースベイダーに、聞こえて来たフレーズは……。
『8だよ、7だよ、6だよ、5!……4だよ、3だよ、2だよ、1!もっと引っぱる……いわくテンソル。もっと引っぱる……いわくテンソル。緊張、懸念、不和が来た!誰が殺した……クック・ロ〜ビン!誰が殺した……クック・ロ〜ビン!』
「いかん!……こいつには、さすがのわしでも、とり憑かれてしまいそうだ!」
 ダースベイダーは、慌ててヘッドホンを耳から引き離した!
「この洗脳テープは、アルフレッド・ベスターの『分解された男』と、魔夜峰央による『クック・ロビン音頭』を一つに編集しており、これに抵抗できる人間はおりません」
 だが、レイア姫は苦痛に喘ぎながらも、ダースベイダーをキッと睨みつけた!

「何度やっても……同じ事……よ!私は……決して……喋ら……ないわ!」
「痩せ我慢をしおって……強情な娘だ!」
「お生憎様!……私の強情は、お母様譲りなの!私が16才の時に、今の両親から知らされたんだけど……私の実の父は、私が生れてすぐに、母と私とお兄さんを捨てて、愛人の元へ走ったの!」
 過去の記憶がグサッと胸を貫き、思わず喘ぐダースベイダー!レイア姫は、今の今まで苦痛に身を振り絞っていた事など、すっかり忘れ果てたかのように、ペラペラと喋り続けていた……。
「……でも、それからすぐに母は死んじゃって、お兄さんも生きてるか死んでるか分からないし……。それで、今の優しいお義父さまとお義母さまに、引き取られて育てられたんだけど……何故か、詳しい事はあまり言ってくれようとはしない……。でも私は、そんなろくでなしの酷い父に、じっと耐えて来た母の血を受け継いたんだから、辛抱強いのよ!」
 更に、大きく胸を押さえて喘ぐダースベイダー!
「きっと、父は……ダースベイダー!あなたのような人でなしだったんだんだわ!」
 そして、最後の刃がズバッ!と、ダースベイダーの胸を貫き、遂にとどめを刺した……。
「あかん……死んだ……!」
 床に倒れ込み、そのまま両足を天に向けて、ピクピクと痙攣させるダースベイダー!レイア姫も、ふと我に返って、不思議そうに首を捻った……。
「おかしいわ……今まで、誰にも言った事のなかった秘密なのに……どうしてこんなに、何でもかんでも喋りたくなったのかしら?」
「これが、この装置の性能です!本人にその気がなくとも、いつの間にか何でも喋りたくなってしまう……おや?どうされました、ベイダー様!」
 勝ち誇るシスター・ジルは、床に伸びているダースベイダーを、慌てて助け起こした!
「心にグッサリ、トラウマが……。いや……大丈夫だ!トラだのウマだの、気にしている暇はない!それよりも、こんなプライベートな事はどうでも良い!聞きたいのは、反乱軍の基地のありかだ!」
「それは……できません!」と、途端にシスター・ジルがうつむいた!
「何だと……?」
「最初に申し上げました通り……このマシーンは、まだ未完成です。従って、被験者に何でも喋らせる事はできる代わりに、その内容をこちらで指定したりする事はできません!こやつが、自然に喋り出すのを待つしかないのです……」
「で……それは、いつまで待てば良いのだ!?」
 拳を握り絞めて、歯ぎしりするダースベイダー!
「さあ……1時間か、2時間か……最悪の場合、1週間かかるかも知れません……」
「バカモノォ〜〜!」
 遂に、ダースベイダーの怒りが爆発した!
「そんなに長く待っておれるか!……もう、良い!他人に任せたのが、わしの失敗だった……こやつの尋問は、わし自身の手で行なう。下がっておれ!」

 精神波コントロール装置を片付けて、不承不承引き下がるシスター・ジル。ダースベイダーは、バルカン式精神感応術を行なうべく、両手の指を大きく広げるや、レイア姫の頭部へゆっくりと押し当てた……。
「どんな事をしたって、何も喋らないわよ!」
 ダースベイダーを睨みつけるレイア姫。だが、ダースベイダーはニヤリと笑って言った。
「そうかな?……お前が喋らぬ時には、その報いとして、お前の故郷の惑星アルデラーンが、デス・スターの標的となるのだ!それでも良いと言うのか?」
 レイア姫は、ギリギリと歯を喰い縛って、ダースベイダーを睨みつけた!
「それに、私のバルカン式精神感応術は、ミスター・スポック直伝だ。どこまで隠し通せるかな?」
 レイア姫の額から、一筋の汗が流れ落ちる。冷ややかに見つめ合う二人……。今や、実の親子の間における、過酷な精神の戦いが始まろうとしていた!
「……ああっ!」
 不意にレイアが呻いた!彼女の意識の中に、ダースベイダーの精神が侵入して来たのだ!現在の銀河宇宙における、最強のダーク・ジェダイマスターのパワーに対抗すべく、わずかに芽生えつつあるフォースを振り絞って、必死に精神を集中するレイア姫!
「無駄だ、無駄だ……お前の思考が、ノートに書かれた文字のように、明瞭に読み取れるぞ!」
『何とか……何とかしなくっちゃ!』
 ダースベイダーの精神侵入を、何とか阻止せんとするレイア姫は、無意識の内に「ある」
歌を思い浮かべていた……。
『♪逃〜げた〜女〜房にゃ〜、未練はない〜が〜……』
「やめい!その歌は……気に触る!」
 浪曲子守唄に精神集中を破られたダースベイダーは、椅子に腰を下ろして、ハーッと溜め息をついた。
「ベイダー様、成果の程は……?」
 恐る恐る尋ねて来るシスター・ジルに、ダースベイダーは頭を振って答えた。
「全く、こいつと来たら……母親と同じで、頑固な女だ!一旦こうと決め込んだら、絶対に明かそうとはせんのだからな……」
 そこまで愚痴をこぼして、ダースベイダーはシスター・ジルがじっと見つめているのに気づき、ウォッホン……と咳払いした。
「それはともかく……こ奴はダントウィンと言う星の名前を持ち出して、私を欺こうと謀らんだが、そうは問屋が下ろさん!惑星ダントウィンが、既に何年も前に破棄された反乱軍の基地である事ぐらい、わしもとうに知っておるわ!お前がそこまで隠し通すつもりなれば、もはや容赦はせんぞ!貴様との約束通り、アルデラーンは宇宙の藻屑と化して、この宇宙から消え去るのだ!」
 レイア姫は真っ青になって叫んだ!
「この……卑怯者!卑劣漢!」
「おうおう……私は所詮、悪役だ。悪漢だ!何と言われようとも、さほども応えはせんわ!レイアよ、惑星アルデラーンの最期を、その目でとくと見るが良い!」
 ダースベイダーは冷酷な高笑いを上げながら、秘書の四世を引き連れて、第十七捕虜収容所を後にした。レイア姫の悲痛な叫びを背に受けながら……。


《第8章:オビ・ワンの弟子たち…へ続く》


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