【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第6章》 スパイだョ、全員集合!


 さて所変わって、こちらは砂嵐吹きすさぶ、惑星タトゥーインの帝国情報部臨時基地。今しも一迅の風と共に、砂塵の中から真っ赤なエアー・バイクを駆る少女が現れた……。鷹のように鋭い目つきに、スリムな引き締まった体。手にした鋼鉄製のヨーヨーは、誰あろうスケバン刑事・麻宮サキ!そして、基地の入口で彼女を待ち受けていた男こそ、長髪にサングラス、ダンディーな身のこなしには一点の隙もない、私立探偵・神恭一郎だった。
「サキ、遅かったな」
 神がタバコを弾き飛ばして言う。
「わりい、わりい、遅れちまって……それにしても、黒メガネは一体何考えて、あたい達をこんな辺境の惑星に呼び出したんだ?一日数本しかない、銀河鉄道のローカル線を乗り継いで来るのに、4時間も掛かっちまった。お蔭で、体がくたくただぜ……あーあ!」
 バイクから飛び降りて、大きく伸びをしたサキの肩を、神がポンと叩く。
「まあ、そうぼやくな!暗闇警視も、今度の捜査には相当力を入れてると見えて、俺達の他にも、各国の情報部からトップクラスのエージェントを何人も呼び寄せてる程だ。皆、もう待ちくたびれてる頃だからな……そろそろ行くか」
「OK、神さん、分かったよ……!じゃ、そこのお兄さんたち。済まないけど、このバイク、後を頼んだぜ」

 サキは入口を固める警備係のストーム・トルーパーズにそう告げると、神の後に続いて入って行こうとした。と、その前をストーム・トルーパーズが遮った。
『お待ち下さい。通行許可証を提示して下さい!』
「通行許可証?おめえら、馬鹿じゃねえのか?見ての通り、あたいは黒メガ……暗闇警視に呼ばれて、たった今ここに着いた所だ。そんなもん、持ってる訳ねえだろ!」
『ならば、通行を許可する訳には参りません!』
 サキがかっとなって言う。
「何でえ!そっちから呼び付けといて、入らせねえつもりかよ!そんな勝手な事ってあるかい!?」
『如何なる理由があろうと、許可証のない方は入れません!』
「あたいは入るぜ……その権利があるんだからな!」
 すっかり頭にきて、強引に入ろうとするサキ。それを、何としてでも押し止めようとするストーム・トルーパーズ。そして、何も言わずに、笑ってそれを眺めている神。サキは、立ち塞がるストーム・トルーパーズの威嚇をさっとかわすや、飛鳥の如く宙に舞い、そのすらりとした長い脚で、彼らの体に強烈な蹴りを入れた!あっと言う間に、2〜3人のストーム・トルーパーズは地面に延されてしまい、その光景を見た警備係が殺気をみなぎらせて、ドドドッとサキの元に駆け寄るや、レーザー・ブラストの砲口を突き付けた!
『投降せよ、さもなくば射殺する!君のお父さん、お母さんは泣いているぞ!』
 きりっとした表情を浮べたサキは、居並ぶストーム・トルーパーズに対して仁王立ちになり、片手で鋼鉄製のヨーヨーを突き付けた!そのフタがパカッと開くや、中から警視庁の紋章が現われた!
「この葵の御紋……いや、桜の代紋が目に入らねえか!スケバン刑事麻宮サキにゃ、許可証なんて要らねえ!これで十分だ!」
 その紋章を見たストーム・トルーパーズは、一斉にへへーっと地面に平伏した。
 ♪人〜生、勇気が必要だ〜〜。くじけりゃ誰かが先〜に行く〜〜
『分……分かりました!どうぞ、お通り下さい……』
「分かったんなら、通るぜ!」
 サキはヨーヨーをさっと懐に仕舞うや、悠々とストーム・トルーパーズの前を通過して行った。
「相変わらずだな、サキ!」
 神は、一緒に臨時基地へと入って行きながら、サキに向かって言う。
「へん!あたいは、ああ言う、お役所的な尺子定規のおまわりが、大っ嫌いなんだ!分かってるだろ 、神。それでつい、あんな……大見えを切っちまったのさ!」
 思わず苦笑したサキが、肩をすくめて言う。二人が案内係のストーム・トルーパーズに連れられて、とある部屋に足を踏み込んだ。その時、部屋の奥でデスクに向かって腰を下ろしていた黒メガネ……暗闇警視が低い声を発した。

「遅かったな、サキ」
「いや、悪い、悪い!色々事情があって、遅くなっちまったんだ……。まあ、勘弁しろって!!」
 精一杯愛想笑いを浮べるサキに苦笑した暗闇警視は、ゆっくりと立ち上がった。
「まあいいだろう……。大事の前の小事だ。大目に見る事とするか!……それより、サキ。先程から君の来るのをお待ちかねの諸君が、そこにいる。いずれも、各国を代表するトップクラスのエージェントだ。 紹介しよう」
 サキは、暗闇警視のその言葉に、ソファーに座っている3人の男達を見た。凡人には、リラックスしているとしか見えないが……。一点の隙もなく 、全身から目に見えない緊張感が、ピリピリとサキの肌に伝わって来た!
『何てこったい!こいつら、全員『殺しのプロフェッショナル』そのものって、奴らじゃねえか!?』
 サキは心の中でそう思った。
「一番奥から、アメリカはOSI所属−スティーブ・オースチン少佐だ」
 よく日焼けした顔に、がっしりした体つき。サファリ・ジャケットをラフに着こなしたスポーツマンタイプの男だ。サキを見るや、プレイボーイ風の笑みを浮かべて手を差し出した。
「よろしく、麻宮サキ君だったな!OSIのスティーブ・オースチンだ……。信楽老を倒したそうだな?」
 サキはお追従笑いを浮べて、彼が差し出した右手につられ、同じ様に手を差し出した。が、オースチン少佐は、しまったと言った表情を浮かべて、右手を引っ込めた。
「おっと失礼!僕の右手は鋼鉄製でね。うっかり握手すると、君のすべすべした可愛い手を握り潰しちまうからな!」
 オースチン少佐はにやにや笑いながら、左手で以って、サキの左手を握りしめた。
「承知しているかも知れんが、一応付け加えると、彼は『600万ドルの男』と呼ばれるバイオニックマンだ」
「どうだい?仕事が終わったら、今夜モス・アイズリーのクラブで一杯?」
 オースチン少佐の意味ありげなウインクに、心の中で『この女ったらしが!』と思いながらも、顔には出さずに、精一杯笑顔を浮かべるサキ!
「こちらこそ。麻宮サキです、よろしく」
「隣が、イギリスはMI6所属のジャック・バンコラン少佐」
 トレンチコートにすらりとした長身。腰まで届くかと思われるほどの長い黒髪。そして見る者をぞくりとさせる妖しい目つきが、サキに対して無遠慮に注がれた。
「MI6のバンコランだ」「麻宮サキだ、よろしく」
 サキの差し出した右手を無視して、〈美少年殺し〉ジャック・バンコラン少佐はぶっきらぼうが答える。
「その隣が、ドイツはNATO所属、鉄のクラウスことクラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐だ」
「よろしく、エーベルバッハ少佐」
 鉄のクラウスは、サキの挨拶に対し返事をする事もなく、全くその存在を無視したまま、微かにお義理で頷いた。
『こいつぁ、バンコラン少佐より、もっと気取り屋の冷血漢だぜ!』
『任務だから仕方がないとは言え、何故この私が、こんな小娘と一緒に仕事をせねばならんのだ!何もかも、あの無能で愚鈍な部長のせいだ!』
 互いに相手の思惑を知る術もなく、二人はお互いの顔を見つめ合った。
「最後は別にわざわざ紹介するまでもないが、日本の私立探偵・神恭一郎だ」
 サキと神は、顔を見合わせて頷き合った。

「さて、全員の顔合わせが済んだ所で、銀河系秘密情報局長官ブンドル大佐からの極秘任務を伝える。すまないが、サキ。そこの入口のドアを閉めてくれ。この指令は、ここにいる者以外、誰一人と して知られてはならんからな」
「OK!黒メガネ」
 サキが扉に手をかけた時、神恭一郎が暗闇警視に呼び掛けた。
「待ってくれ、暗闇警視!あなたはこれで全員だと言われたが……確か私は、事前にこの任務に携わる者は、全部で6名だと聞いていた。一人足りないんじゃないか?」
「じゃ、まだ全員揃ってないのかい?」
 サキも、扉から振り返りざま言う。
「うーん、それは……」
 暗闇警視はまずい事を聞かれた……と言う風に汗を流した。
「よろしい……私が、代わりに言おう」
 そう言ってソファから立ち上がったのは、バンコラン少佐だった。
「MI6の私の同僚、殺しのライセンスを持つ男−ジェームズ・ボンド中佐が……始めは、このメンバーの一員だった」
「始めは?」 神が、その言葉を聞き咎める。
「そう、始めの予定ではそうだった。しかし……ボンド中佐は裏切った!」
 暗闇警視は、意を決して立ち上がると、苦々しげに言った。
「彼はOSIのバイオニック・ジェミーこと、ジェミー・ソマーズ少佐と共に、反乱軍に寝返ったのだ!」
 その瞬間、バリッと言う音が響き、神とサキはさっと振り返った。ジェミーのかつての恋人だったオースチン少佐が怒りの余りに、右手に握ったワイングラスを粉々に砕いたのだ!
「言うな!その事は言わない約束だったろうが!!」
 オースチン少佐は、心の中の複雑な思いが顔に現われるのを隠す為、掌からグラスの欠片とワインを拭うと、皆にくるりと背を向けた。
「……と言う訳だ、神君。これで承知してくれるな?」
 暗闇警視の言葉に、納得した神は頷いた。
「しかし何故、あの007ともあろう男が……分からん!」
「所詮、奴も女の色香に迷ったって訳だ」
 鉄のクラウスがシニカルな笑いを浮かべて、ドイツビールを傾けた。
「ジョミーの事は言うな!」
 エーベルバッハ少佐の嘲りに怒ったオースチン少佐の右腕が振り下ろされ、大理石の頑丈なテーブルが、バキッ!…と音を立てて、真っ二つに砕ける!オースチン少佐と鉄のクラウスの間に、目に見えぬ火花が散った。
「やめるんだ、二人とも!やめないか!」
 暗闇警視の巌然とした声に遮られ、二人は互いに睨み合いながらも腰を下ろした。
「いいか……!ボンド中佐とソマーズ少佐が我々を裏切ったのは、作者の都合……ストーリー上の都合だ、分かったか!分かったなら、大人しく座りたまえ!これ以上、ここで騒ぎを起こす事は、私が許さん!」
 激昂した暗闇警視の気迫に、部屋がしんと静まり返った。サキは無言の命令を感じて、扉を閉めよ うとした……。

「ちょっと待った……。私は裏切っちゃいないぜ!」
 閉め掛けた扉を明けて入って来たのは、誰あろう、殺しのライセンスを持つ男−007ことジェームズ・ボンドだ!
「貴様!」
 ボンドの姿を目にしたスティーブ・オースチンは、部屋の一番奥から凄じいジャンプ力で、ボンドめがけて飛びかかった!
「慌てるな!」
 飛鳥の如く宙を飛んでくるオースチン少佐の攻撃を、間一髪かわしたボンドは、その首筋に手刀一 閃!スティーブは壁に激突し、そのままぐったりと伸びてしまった……。
「結局は年期の差だな!いかにバイオニックマンと言えども、生体部分を攻撃されれば、所詮普通人と変わりはない!」
 落ち着き払ったボンドに対し、サキは目つきも鋭く、とっさにヨーヨーを構える!
「てめえ、裏切りモンが……!何しに、ここへ現われやがったんだ!?」
「やめろ、サキ!やめるんだ!それにボンド中佐、これは一体どう言う事だ……!お前は反乱軍のスパイとして、デス・スターに収監されていたんじゃなかったのか?理由を説明して貰おう!」
 暗闇警視の言葉に対し、鉄のクラウスが冷ややかに言う。
「簡単な事だ……。つまり、ここにいるボンド中佐は、デス・スターに虜われているボンドとは別人だと言う事だ」
「その通り」と、バンコラン少佐が続ける。
「もし、彼がデス・スターを脱走して来た反乱軍のスパイなら、こんなに堂々と、我々の目の前に姿を現わす筈がない。とっくの昔に、我々はこの基地もろとも、吹っ飛ばされていただろう」
「そう言う事だ」と、これは神恭一郎。
「つまり、彼は正真正銘、我々の仲間だって事だ。早合点したオースチン少佐には気の毒だが、彼は飛びかかる相手を間違えたようだな……。始めまして、ボンド中佐!」
 神は右手を出し、ボンドはそれに応じて握手を返した。
「ありがとう。分かってくれたようだな、諸君!」
 サキは訳が分からずに、周りを見回した。
「おいおい、皆、分かり切ったような顔して……一体、何がどうなってんのか、あたいに説明してくれよ!?」
 ジェームズ・ボンドは教え諭すようにして、ゆっくりと言った。
「つまりだな、お嬢さん。反乱軍側に寝返って、デス・スターに壊滅的打撃を与えんとしたジェームズ・ボンドは、3代目のロジャー・ムーア版ボンドだって言う事だ」
「と、言う事は‥あんたは……」
 サキは、目の前の渋味がかったロマンス・グレーのボンドを見つめた。
「そう、私は初代のショーン・コネリー版だよ。ネバーセイ・ネバーアゲイン……(二度とは言わないからね)」
 ♪ネバー、ネバーセイ・ネバーアゲイン……ネバーセイ、ネバーアゲイン〜〜
「そう言う事だ、サキ。私には、彼が入ってきた瞬間に分かったよ」
 神恭一郎はそう言うと、完全にノックアウトされて伸びている、スティーブ・オースチン少佐の元に寄り、抱き起こして背中にカツを入れた。
「すまない、ボンド中佐……。私の早合点だった!デス・スターから連絡を受けた時、てっきり『君』だと思い込んでしまったんだ……」
 事情を飲み込んだ暗闇警視は、立ち上がるとボンドの肩を叩いて、握手した。
「いや、何、お気遣いには及びません。私はロジャー・ムーアとは違って、あんなロマンチックな甘チャンじゃありません。ボンドの魅力は大人の色気−そう、これですよ!私こそが、ジェームズ・ ボンドにふさわしいんだ」
「そう、スパイは非情だ。そこには甘さは存在しえない」
バンコランが、にやりと笑って呟く。
「使い古された、陳腐な言い回しだな」
 鉄のクラウスの刺刺しい言葉に、バンコランの柳眉がつり上がった!
「何だと!」
 一触即発のその雰囲気に、サキはやれやれと肩をすくめた。
『こいつらは皆、自分一人で仕事をするのに慣れ切ってる一匹狼、プライドの塊りだからな。それが一緒に仕事をやれってんだから、お互いに刺激し合うのも無理ないぜ!』
 しかし、そう考えているサキさえ、自分自身が彼らの同類だと言う事には、全く気づいていなかった……。一方、カツを入れられて目を覚まされ、神の説明にやっと納得したオースチン少佐は、ジェームズ・ボンドに謝罪しようと呼び掛けた。
「ボ、ボンド中佐……」「何かね?オースチン君」
「すまない……その……早合点してしまって……私は、あなたに乱暴を働くつもりはなかったんだが、ついカッとなってしまって……」
「いや、何、構わんよ……。私は別に気にしとらんからな!幾ら、君がサイボーグとは言え、三十年の実績を持つ私に叶う筈がないからねえ。まあ、キャリアの違いだよ!」
 ボンドのその言葉にプライドを傷つけられて、むかっとなったスティーブ・オースチンは、思わず言ってはならない禁句を口にした!
「三十年のキャリア?それは、あんたが年寄りだって事だろ?もう、70もとっくに越えて、その頭もカツラの癖に!」
「お前は……お前は……絶対に口にしてはならん事を!」
 絶句して、わなわなと身を震わせたボンドの顔が、怒りで真っ赤になった。
「やめろ、やめるんだ、皆!これは命令だ!」
 暗闇警視の声が部屋中に響き渡り、皆は渋々ソファに腰を下ろした。
「全く、どこまで脱線するつもりだ!これは、全員が一致協力して当たる任務だ!我を通すのも、 いいかげんにしろ!分かったな!」
 暗闇警視はそう皆に怒鳴り付けると、肩で大きくはあはあと息をした。
「それでは……これから本題に入る」
 暗闇警視が喘ぎながらそう言った時、臨時基地の外から、パトカーのパーポーパーポー!と言うサイレンが聞こえて来た。

「サキ、あれがどこの警察のサイレンだか、分かるか?」
「あの音色からして……埼玉県警!」 サキはニヤリと笑った。
「そう言う事だ」 神も、同じ様にニヤリと笑った。
「と、言う事は……」
 サキがそこまで言った時、部屋の外で物凄い騒音が起こった。押し留める声と怒合の喚き!
「何だ、何だ、何だ!今度は、一体何事だ!?」
 暗闇警視が、ほとほと参ったと言う風に、頭を抱えて叫んだ!その途端、会議室の扉が押し開かれ、押し留めるストーム・トルーパーズ数人を体中にぶら下げながら、安物のよれよれのトレンチコートに身を包んだ、ガニ股の男が息せき切って飛び込んで来た!
「ICPOの銭形です……。暗闇警視でありますか?ルパン三世、並びにその一味が、こちらの惑星タトゥーインに現われたとの情報を得ましたので、ルパン逮捕の為、ぜひこちらの警察の協力をお借りしたいと思いましてえ〜〜!」
 敬礼する銭形警部に対し、苛立った暗闇警視の怒号が飛ぶ!
「一体誰が、この部屋に部外者を入れて良いと言った!?」
『いや、しかし、この方は我々に警察手帳を見せ、こちらの責任者の方に合わせてもらいたいと、無理矢理……』
「出てけ!そいつを追い出せ!」
「ですが、ルパン逮捕は……」と、尚も食い下がる銭形警部。
「ルパンなんぞ、私は知らん!もうこれ以上、余計な事で私を悩ませるな!」
 銭形警部を自ら叩き出した暗闇警視は、精も根も使い果たして、扉の前にへたり込んだ。
「大丈夫ですか、暗闇警視?」
 神が、暗闇警視の体を気遣って、声を掛ける。
「いや、私も……もう年だな。済まんが……後の事は、次席のリュウ・ヤマキ君に……頼んでおく から、これで……失礼させて貰うよ……」
 暗闇警視は、よろよろと自室へ戻って行った。その代わりに、今まで暗闇警視の横に控え、一言も発しなかった、黒髪の隆々たる筋肉質の青年−リュウ・ヤマキが立ち上がった。
「それでは、暗闇警視に代わり、私ことリュウ・ヤマキが説明させて貰う。よろしいな?」
 部屋の中の全員が、この場のどうにもやり切れない雰囲気を解消すべく、早くしてくれと言わんばかりに頷いた。

「では、スクリーンを見てくれたまえ」
 壁の一部がスライドして現れたスクリーンに、《ブレード・ランナー号》から射出された救命ポッドの 残骸が映し出される。リュウ・ヤマキは、救命ポッドの半ばぶっ壊れたコンピューター・HAL2001から得たデータ として、レイア姫から渡された極秘情報を持って逃げた2体のロボット−R2-D2とC-3POのロボット相風体、及びその足取りについて皆に示した。
「だが、この情報は完全でもなければ、確定的でもない。何しろ、このコンピューターは発見された時、『HALが来た』を歌い続け、発見者をボーマン船長と間違えて殺そうとした程だ」
 スクリーンからは、HAL2001の歌う、間伸びした『スイート・デイジー』の調べが響いていた。
「従って、我々は惑星タトゥーイン政府が認可状を出している、ありとあらゆるジャワズのスクラ ップ屋に対し、徹底的な捜索を開始した。行方不明のロボット2体の足跡と交差する可能性のあるサンドクローラーを見つけ次第、その行方は判明するものと推定される。現在この任務には、KGBの小熊のミーシャ率いる一隊が当たっている」
「KGBか!」
 小熊のミーシャと聞いて、鉄のクラウスの沈着冷静な表情が、一瞬にして苦虫を噛み潰したようになった。
「それで、俺たちの任務って言うのは?」と、スティーブ・オースチンが問う。
「おそらく、この2体のロボットは当惑星の反乱軍基地へ向かうものと思われる。この2体のロボ ットが携えた極秘情報の奪還、及び反乱軍の秘密基地の発見が、我々に課せられた任務だ」
「つまり、そこから、知られざる反乱軍の本拠地への経路を探りだそうってハラだな?」
 ジェームズ・ボンドが先読みして言った。
「その通りだ。今や、我々帝国の情報網は手詰りになっている。反乱軍の本拠地が何処にあるのか、皆目見当もついていない。従って、ダースベイダー卿の直接指令で動いている、タトゥーイン政府軍が発見する前に、何としてでも我が情報部自らの手で探り出さねば、その存在自体が不必要なものとして否定 されかねない。諸君らの健闘を祈る!」
 部屋の中の全員は、帝国の中核を占めるダースベイダー卿の帝国親衛隊と、ブンドル大佐が統括する情報部との目に見えない角逐を、ひしひしと肌で感じ取っていた。
「で……実際、どうするんだ?」
 サキの質問に、リュウ・ヤマキが答える。
「諸君らは、探索中のストーム・トルーパーズから情報が入り次第、そちらに直行して貰う。それまでは、ここで待機していてくれたまえ」
 今にも、この気まずい雰囲気の中から解放されて、外に出られると思い込んでいた全員の当てが外れ、ええっ!?…と言うどよめきが湧き起こり、ブウブウ不満が沸き上がった!だが、リュウ・ヤマキが、口々に浴びせ掛けられる不平不満を頭から無視し、さっさと部屋を出て行こう とした時、神恭一郎がついと天井を見上げ、部屋のディスプレイとして飾ってあった西洋鎧の鎗を取った。

「すまないが、ヤマキ大佐……この鎗をちょっとお借りする」
「ああ……よろしいが、一体何を……?」
 何をするのかと訝しげにリュウ・ヤマキが尋ねた途端……。
「つまり……こうするのさ、曲者〜〜!」
 神が、いきなり鎗を強化重プラスチックの天井に、バスッと突き立てる!……と、そこからじわじわっと血の跡がにじみ始めたのだ!
「スパイだ!」
 忽ち怒号と喧騒が湧き起こった!全員が一瞬にして銃を抜き放ち、サキは鋼鉄製のヨーヨーで天井をぶち破って、天井裏に躍り上がった!
「待ちやがれ、てめえ!」
 薄暗い天井裏で、片腕を押さえ血を流している人影めがけ、必殺のヨーヨーを放った!が、ヨーヨ ーは天井裏の入り組んだ桁に邪魔されて、その威力を発揮できない。と、いきなりその人影から、白いガスがサキめがけて発射されると同時に、仕掛けてあったリモコ ンスイッチで、基地全体の電源が立たれ、周囲は一瞬にして暗闇に包まれた!
「ガスだ……畜生〜〜!」
 サキは強力な催眠ガスにくらくらとなり、人影を追おうとしたものの、既に意識朦朧となっていた。
「待ち……や……が…れ……」
 遂にサキは失神して崩折れた……。一方、下の部屋では、真っ暗闇になった瞬間、オースチン少佐が片目を赤外線眼に切り換えた。
「こっちだ!俺について来い!」
 オースチン少佐は、逃走するスパイの後を追って一気に駆け出すと、暗闇の中をすいすいと走り抜けて行った。
「俺について来いったって、大松監督じゃあるまいし……。暗闇でも見える、そんな便利な目は付いてないんだぞ!くそったれ!」
 鉄のクラウスは、思わず毒づきながらも、手探りでドアに向かった。神が天井裏からサキを救いだし、007とバンコラン少佐と鉄のクラウスが、暗闇の中を何とか出口へと向かっている間に、スパイは基地を抜け出し、隠してあったランドスピーダーで一気に逃走に掛かった!
「全く、役に立たん奴らだ!」
 007以下3人が、やっと基地の入口に達した時、警備中のストーム・トルーパーズは全員見事にのされて、長々と伸びていた!ジェームズ・ボンドは、最新鋭のアストンマーチン・エアカータイプに飛び乗って、逃げるスパイの後を追おうとした。……が、イグニッションを回しても、エンジンが掛からない。基地の前に停めてあった車は、サキのエアーバイクも含めて、全て同じように動かなかった。
「この秘密基地の警備担当者は誰だ……アラスカへ行け!」
 激昂した鉄のクラウスが、思わず叫んだ!ボンドも車を蹴っ飛ばして悪罵をつく。
「畜生め!これで折角の手懸かりもパアだ!」
「いや、待て……あれを見ろ!あの砂塵を!」
 神恭一郎が、遥か彼方を指差して言う。
「あれは……」「鳥だ……」「飛行機だ……」「いや、600万ドルの男だ!」
 そう、600万ドルの男ことスティーブ・オースチンは、その高性能の両脚により、何と『走って』ランドスピーダーを追っていたのだった!
「加速装置フルパワー!」
 600万ドルの男は砂煙を上げ、怒濤の追撃により、ピタリとランドスピーダーをマークしていた!望遠レンズに捉えられた標的は、もはやオースチン少佐から逃れられはしなかった。一方、秘密基地に取り残された情報部員たちは、地平線に漂う600万ドルの男の砂煙を眺めていたが、やがて 007が呟いた。
「これで、スパイの行方は突き止められるとして……オースチン少佐に連絡を取れないのか?」
「無理だな。彼から連絡が来るまで、こちらは動けんよ」
「結局、連絡待ちか……やれやれ」
「それまで車の修理でもして、いつでも出動できるようにしておくんだな」
 ヤマキ大佐は、ボンドら一行を残したまま、さっさと基地へ引き返して行くのだった……。




《第7章:恐怖の尋問官ジェイソン&フレディ…へ続く》


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