【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第4章》 ヒーロー登場!


第4章・イラスト


 ……未だ明けやらぬ無人の砂漠に、一人の少年がじっと立ち尽くしていた。その視線は厳しく、唇はきりりと真一文字に結ばれ、険しい表情を浮かべたまま、静かに身構えていた。大いなる静寂が世界を支配していた……。

製作・監督:ジョージ・ルーカス

 惑星タトゥーインにそびえ立つグラン山脈の頂きが、キラリと輝きを見せる。そして、「ツァラトラストラ かく語りき」の荘厳なるテーマと共に、太陽が華麗に姿を現わした!グラン山脈の巨大な影が、さーっと引き潮の如く後退し、巨大な砂漠が……そして、この物語の主人公−ルーク・スカイウォーカーが、朝日に照らし出された!

主演:マーク・ハミル

 ルーク・スカイウォーカーは、じっと目を閉じるや、両手を大きく左右に広げ、輝く太陽の光を全身に受ける。次の瞬間、大地を揺り動かすような烈帛の気合いが、彼の口から発せられた!

「 The Adventure of Luke Skywalker」

(BGM:「ジーザス・クライスト・スーパースター」……はっはっはっ!冗談、冗談!!)

 ルーク・スカイウォーカーは、真剣な面向きで空手の猛訓練を繰り返した!目にも止まらぬ速さと、体全体から迸らんばかりの凄まじい鋭気!眼光は鉄をも居抜き、その気合いに至っては、山をも崩さんばかりだった!
「ルーク、朝ご飯よ〜〜。もう練習はそれくらいにして、帰ってらっしゃい〜〜!」
 ベル伯母さんが、家の中からルークに呼び掛ける。いつもの朝の鍛錬を済ませたルークの顔と体から緊張感が消え失せる。既に、そこに立っていたのは、どの惑星にでもいそうな、純朴な少年の姿だった。
「分かりました、伯母さん。じゃあ、いつものやつを、最後にビシッと決めてから帰るから〜〜」
「はい、はい。分かったわ、ルーク!」
 ルークは、側らに置いた防塵タイプの小型マイクロ・カセット・レコーダーのスイッチを入れるや、再びビシッと身構えた!
『……ラジオ体操第一、用ー意ーー。先ず、腕を前に上げて、背伸びの運動ーー……』
 音楽に合わせて、締めの柔軟体操を終えたルークは、練習の汗を拭いながら、オウエン伯父とベル伯母の待っている食堂へと急いだ。

「ルーク……」
 ルークが席に着くや否や、大きな半熟卵の殻を剥きながら、オウエン伯父が呼び掛ける。
「何ですか、伯父さん?」
 右手にパン、左手にスーパー・ミルクのカップを持ったルークが答える。「♪お前が食事を済ます前に〜、言っておきたい事がある〜〜」
 ルークが、T−1000の様に、チッチッチッと指を振りながら言う。
「伯父さん、分かってますよ!また、何か用事をさせようって言うんでしょ?……駄目駄目、駄目ですよ!今日は祝日。何も手伝う気はありません!今日は、昼前にモス・アイズリー空港へ行って、久し振りに会う高校時代の友人と映画館に行くんだから……。僕は、折角の休日を棒に振ろうなんて気は、一切ありませんからね!」
「ルーク!」
 オウエン伯父が、テーブルをバシッと叩いて立ち上がった!
「お前は、わしの言う事が聞けんと言うのか!わしは、お前をそんな風に育てた覚えはないぞ!立て、ルーク!これからわしが、お前のその腐った性根を叩き直してやる!」(ここの所、星一徹の声で)
「お父様!そんなに言っては、この子が可愛そうです……」と、ベル伯母が彼を宥める(ここの所、星明子の声で)
「ええい、お前は黙っておれ!」(と、再び星一徹の声で)
 ……と、ルークが横目で見ながら、冷ややかに言う。
「伯父さん。食事の時くらい、静かにして貰えませんか?それにしても……伯父さんも伯母さんも、良く乗りますねえ?」
 オウエンはどきまぎしながら腰を降ろすや、再び卵の殻を剥き始めた。
「いや…あの…その…うん!この卵は美味い!」
「誤魔化さないで下さい、伯父さん!」
 ルークの刺すような視線を避けながら、オウエンはゆで卵を貪り食う!
「いやな……モグモグ。今日の昼頃、ジャワズのスクラップ屋が、年に一度の決算大売り出しをこの近くですると、新聞のチラシに書いてあったんだ。前から、スクラップになったロボットの代りの奴を買わにゃならんと思っとったんだが……。丁度、良い機会だ!それで、ルークよ。お前に新しいロボットの購入の手伝いと、その後の掃除とメンテナンスを頼もうと思ってな……モグモグモグ……」
「伯父さん!さっきも言ったでしょ?今日は、僕も都合が悪いって!」
「ルーク!パイロットだった両親が事故で死んだ後、孤児だったお前を、今まで大事に育ててやったのは、誰だと思っとるんだ!?」
 オウエンの声と形相が、突如凄みを帯びる。
「そ、それは……そのう……」
 ぐっと詰まったルークに、更に追い打ちを掛けるオウエン伯父!
「分かるだろう、ルーク?わしは、何よりもお前を頼りにしとるんだ。な?な?今日はどこへも行かずに、わしの手伝いをしてくれ。な〜に、お前の友達にゃあ、テレビ電話で連絡を入れて『都合が悪くなったので、行けなくなった』と一言言 っときゃ良い!……そうか!わしの言う通りにしてくれるか!それでこそ、わしのルークだ!ワハ、ワハハハハ……」
 一人で喋って、一人で勝手に物事を決めてしまったオウエンが、豪快に誤魔化し笑いする!それを横目で見ながら、ルークはブチブチと愚痴った。
「分かった、分かりましたよ。やりゃあ良いんでしょ、やりゃあ!ちぇっ、ブツブツブツ……」
「ワハハハ……アウッ!」
 ……と、突如オウエンが腹を押さえて、テーブルにつっ伏した!
「どうしたの、あなた!」
 とっさに駆け寄ったベルを制しながら、オウエンが苦しそうに言う。
「ベル、注意したのに……また、やったな。エイリアンをゆで卵に……する時…には、半熟ではいかんと……あれ程言っただろうに!……アウッ!…見ろ!半熟だから、死に切らんで……わしの腹の中で……あ、痛っ!暴れまくっとる!」
 ルークが伯父の腹に耳を当てるや、中からかすかにエイリアンの「雨に歌えば」のメロディーが聞こえてきた。どうやら、それに合わせて、内側から胃袋を蹴りまくっているようだ!
「ルーク!下剤だ……下剤を持ってこい!くそっ!……エイリアンが怖くて、ゆで卵が食えるかっ!……あ、痛っ!」
 腹を押さえながら、のたうち回るオウエン!どんちゃん騒ぎの中、惑星タトゥーインの新しい一日が始まった……。


 同日、同時刻。こちらは惑星タトゥーインの総督庁。と言っても、タトゥーインの実質上の権力は、暗闇のジャッバにガッチリと握られており、所詮は帝国政府から任官された名ばかりの総督。地位とプライドばかりを気にかける貧乏貴族に過ぎない。見栄えだけは立派なタトゥーイン総督が、リッチな(?)朝食を取っている時、大英帝国の伝統あるファッションをバッチリ決めた執事が、馬鹿丁寧な口調で声を掛けて来た。
「ご主人様、お電話が入っております」
「馬鹿者!前から何度も言ってあるだろう!私の食事時には、一切邪魔をしてはならんと!まだ分からんのか、お前は!」
 食事を中断された総督が、怒って執事を罵る!
「ですが、先方様は、帝国の……」
 召使いがそこまで口にするや、途端に総督の態度がコロッと変わった。
「なぜ、それを先に言わんのだ!?前から言ってあっただろう!帝国のお偉方からお電話があった時には、直ぐに私に取り継げと……ええい、もうよい!私が出る!」
 ナプキンを投げ捨てて、電話口へ走る総督!受話器を手にするや、途端に卑屈な態度を取り、ひたすら愛想を振り巻き始めた。
「はっ!……デスラー総統閣下におかれましては、日々のご健勝、並びに帝国の繁栄大変麗しく……は、はい!……えっ、何ですって?……何と言う悪辣な!……分かりました!ただちに捜索隊を派遣致しますです……はい、はい!では、早速にも。誠にありがとうございます……」

 受話器を握ったまま、しきりにペコペコとお辞儀を繰り返す総督……。通話が切れたのを確認するや、受話器を電話台に叩きつけた総督の姿を目にして、同じように食事をしに出てきたドラ息子が声を掛けた。
「どうしたの……父さん?」
「おお……お前か。息子よ!全く、帝国の奴らどもと来たら、成り上がりのくせしおって!何百年の伝統を誇る、由緒ある一族のこのわしに向かい、タトゥーインに逃げ込んだ、たった2台のロボットを捜し出せだと?……何と言う、傲慢不遜な輩だ!それも、わしが楽しみにしておる食事の時間までも邪魔しおって!」
 吐き捨てるような口振りで罵りながら、食事の席に着く総督。そして、総督のドラ息子も席に着くや、早速朝食を食べ始めた。
「由緒あるったって、ほとんど名前ばっかりじゃん。だから、こんな辺境の星に左遷されたのに……」
「何か言ったか?」と、息子を睨む総督。
「いいえ、何にも……」と、とぼけるドラ息子。
「一体、この星に流れ込んでくる人間・異星人・ロボットが、どれほどおると思っておるのだ!ましてや、砂漠地帯を捜索せよだと……タトゥーインは国土の80%が砂漠なのだぞ!帝国から何を盗んだかは知らんが……わしのタトゥーイン砂漠駐留軍は、そんなポンコツロボットどもを捜し出す為に存在するのではない!もっと崇高な目的に携わっておるのだ!」
 罵りながら食事を取り、更に激しく喋る父親を見て呆れ返るドラ息子。
「世が世なら、あのような無礼な奴ばらは、不敬罪の名の下に全員素っ首落としてやる所だが……如何せん。今では、我が一族も没落の憂目に合い、きゃつらのような不遜なる輩にも、膝を屈せねばならん。だが、よいか、息子よ!それも、もう暫くの辛抱だ!」
「人間、辛抱ね」と、茶々を入れるドラ息子。
「何か言ったか?」と、総督が息子を睨む。
「いいえ、別に」と、再びとぼけるドラ息子。
 タトゥーインの総督は、上衣の内ポケットからボロボロになった本を、バイブルの如く丁重に取り出すと、目の前に掲げて満面に笑みを浮べた。
「この聖書の存在が、わしに啓示を与えてくれたのだ!田舎の古本屋で誰の目にも止まらぬまま眠っていた、前世紀の古い書物だったが……わしに取っては神聖なる預言の書だった!わしが、前に総督に任ぜられていた星から、この辺境の砂漠の惑星タトゥーインに転地を希望したのも、すべてこの預言の書に書かれてある真実を実現させる為なのだ!」
 激昂して、泡を吹きながら喋り続ける総督!それを横目で冷ややかに見つめながら、黙々と食事を続けるドラ息子……。
「この預言の書に記された一族は、きっと我が一門のご先祖様に違いない。いや……全ては、この預言の書の通りになるのだ!今にきっと、この惑星から伝説のスパイス−秘薬メランジを発見してみせるぞ!きっとだ!さすれば、我がアトレイデ一族はかつての栄光を取り戻して、全宇宙の支配者となる事ができる!その時こそ、わしらを軽んじて来た帝国政府など、この手で捻り潰してくれるわ!あの成り上がり者のダースベイダーも、わしの前に這いつくばって、頭を床にこすり付ける羽目になるのだ!」
 惑星タトゥーイン総督であるアトレイデ男爵の息子ポウルは、天下を取った気分で巻くし立てる父親の姿を見て、思わず呟いた。
「むちゃくちゃな理屈だよ。論理がまるで一貫してない……」
「何か言ったか、息子よ?」と、総督が鋭い視線を向ける。
「いいえ、父さん」と、三度とぼけるドラ息子。
「聞け、息子よ!その崇高なる目的を持って、日夜メランジの採掘に勤めておる、我が神聖なるタトゥーイン駐留軍を、訳の分からぬロボット2体の捜索に差し出せと言うのだ!ああ、何と言う時間の無駄……」と、天を仰いで嘆くアトレイデ男爵!
「メランジなんて、出る訳ないのに……」
 だが息子の呟きも、今や興奮し切っている総督の耳にはまるで入って来ず、猛烈な勢いで食事を取りながら喋り続けた!
「が、しかし……残念な事だが、今は耐えねばならん。やがて訪れる栄光の日々の為に、下げたくもない頭を下げ、使いたくもないお世事を使わねばならんのだ……息子よ!ポウルよ!その栄光の日々の為にも、我ら親子は、常日頃からタップリと香辛料−スパイスの効いた食事を取っておいて、準備をしておかねばならんのだ!ほれ、パスタにもっとタバスコソースを掛けんか!こっちに七味唐辛子もあるぞ!」
 アトレイデ総督はそう息子に勧めながら、自分のスープにも、ドバドバと香辛料をブチ込んで口にした!
「うーっ!これは利くーっ!」
 涙を流しながら、スパイスがタップリと利いたスープをむりやり喉に流し込んで行く父親の姿を、呆れ返って見つめるドラ息子のポウル・アトレイデ!そして、二人の前には、総督が取り出したボロボロの書物−カバーも既になくなっている、遥か古代の本が4冊重ねられていた……。フランク・ハーバート原作、早川書房刊「デューン 砂の惑星」全4巻が!


 時と場所は移って、ここはジャワズのサンドクローラー。真っ暗なロボットのスクラップ置き場の一角に、R2-D2とC-3POが腰を降ろしていた。
「なあ、R2-D2……。これからどうする?」
 ショボンとなったC-3POが、R2-D2に呼び掛ける。
「明日は明日の風が吹く!
gone with the wind!
「R2-D2、また音声回路が狂ったな!」
「♪音声不調〜〜クイントリックス!」
 ……と、その時ロボット置き場の一部の壁がガーッと開くや、薄明かりが室内に溢れた。たちまち十数人のジャワズが銃を構えて、C-3POやR2-D2、その他のロボットを外へと追い立てる!
『外ヘ出ロ!商売ノ時間ダ!』
「おい、R2-D2にC-3PO!頑張れよ!」
 牢名主(?)のグラッグが、二人に向かって大きく手を振る!
「もう一度、あの輝かしくも懐かしいスペース・オペラの時代を、お前たちの力で甦らせるんだ……。俺は期待してるからな!頑張って来いよ!」
『オ前モダ』「へ?」
 その言葉に、グラッグが下を向いた。小柄なジャワズが、彼に銃を突き付けている。
『言ッタロウ。オ前モ出ルンダ。外ニ引キ取リ手ガ来テル』
「ま、まさか……」
 グラッグは半信半疑のまま、C-3POたちの後について行った。そして、太陽光にくっきりと浮かび上がったシルエットは……。

《OPナレーション》「宇宙最大の科学者であり、冒険家カーティス・ニュートン……。だが、人は彼をキャプテン・フューチャーと呼ぶ!」
「……キャプテン!」
 グラッグが全速力で駆け寄る!
「やあ、グラッグ!長いとこ待たせて済まなかったな……。やっと君を迎えに来れたよ!」
 惑星タトゥーインの大地には、グラッグの何よりも大切な仲間−キャプテン・フューチャーが、いつもと変わらぬ笑顔で立っていた!
「変わらねえな、おめえも!」
 キャプテンの後から現れた人影、それは……。
「その声は……オットー!お前は、まあ……何てヘンチクリンに……」
「へん!何を言ってやがる!このゼンマイ仕掛けめ!」「何を!このゴム人形が!」
「やめるんだ、二人共!」
 相変わらずの喧嘩をおっ始めたグラッグとオットーの間に、キャプテンが割って入った。
「とにかく、グラッグ!今度10月から、NHKで僕達の新シリーズが始まるんだ。それで、君とオットーをそれぞれ迎えに来たって訳さ!」
 グラッグの光電管の瞳が、ピカリと輝いた!
「じゃ……じゃあ、キャプテン!俺たちも、もう一度大宇宙で活躍出来るんで?」
「そうさ!だから、そんなハヤカワ文庫版の水野良太郎タイプのボディは脱ぎ捨てて、テレビ用の設定に着替えるんだな!見ろよ、この俺を!ニューバージョンだぜ!……それに、新しいコメット号の雄姿を!」
 オットーは、タトゥーインの大地に立つコメット号をさっと指差した!
「おおっ〜〜〜!!」
 グラッグは、眼前にそびえ立つコメット号を目にして奮い立った!遥かな大宇宙への憬れに、その瞳は燃え、胸の鼓動は高まり、彼は思わず雄叫びを発した!
「ああっ、大宇宙が俺を呼んでいる!正義は滅びず!ヒーローは、今甦った!行きましょうぜ、キャプテン!もう一度、あの果てしない大空を思いのままに駆け巡るんだ!」
 グラッグは、何が何だか分からずに、呆気に取られていたC-3POとR2-D2の方を振り返って言った。
「……と言う訳で、俺ももう一度宇宙へ飛び立つ事になったからな。お互い、これから頑張ろうぜ!スペース・オペラの嵐を、再び世界に巻き起こすんだ……じゃあな!」
 グラッグは手を振ると、コメット号に向かって、意気揚々と進んで行った。
「オットー、それじゃ行こうか!」
 そう言って、キャプテンとオットーが歩み始めた時、ロボット購入の為に、オウエン伯父に連れられて来ていたルークが、キャプテン・フューチャーに向かって声を掛けた。
「あのーーー」
 ルークの声に、キャプテン・フューチャーが振り返る。
「何だい、坊や?」
「あなたは、もしかして……本物のキャプテン・フューチャー……なんですか?」
「ああ、そうだよ」と、笑顔でルークに応えるキャプテン。ルークの瞳が、パッと輝いた!
「僕、あなたのファンなんです!どうか、サインして下さい!」
「ああ、いいとも」
 キャプテン・フューチャーは、ルークがどこからか差し出した色紙に、スラスラとサインした。
「君の名前は……?ケン・スコットかい?」
「ル、ルーク・スカイウォーカー……です!僕の夢は、いつか大宇宙に飛び出して、あなたのような素晴らしいパイロットに……ヒーローになる事なんです!キャプテン!」
「よし!キャプテン・フューチャーより、ルーク・スカイウォーカーへ。友情と信頼を込めて、少年よ、大志を抱け。NEVER GIVE UP!……と。それじゃ、ルーク!君のその志に対して、僕からこれを上げよう!」
 キャプテン・フューチャーは、腰に巻いた万能ベルトから、小さな物を取り出すや、ルークに手渡した。
「何ですか、キャプテン?」
「これは超音波振動笛だ。君が危機に陥った時には、これを三回吹きたまえ!そうすれば、たとえ君が宇宙の果てに居ろうと、必ず僕達フューチャーメンが駆け付けるからね!」
「ど、どうして僕なんかに?」
「なあに、簡単な理由……作者の都合さ!もう一度、僕達の出番を作る為だよ」
「キャプテン!早く行きましょう!グラッグとサイモンが、コメット号の中でジリジリしながら待ってますぜ!」
「それじゃ、ルーク!元気でな!また、いつか宇宙のどこかで会おう!……オットー、行くぞ!」
「OK!キャプテン!」
 やがて、キャプテン・フューチャーとオットーの姿がコメット号の中に消えるや、轟音と共にコメット号は振動し始め、タトゥーインの大地から蒼空に向かって、一直線に飛び立った!
 ♪子供の頃はー、空をー飛べたよーー。草に寝転び、心の翼広げーー……
 ルーク・スカイウォーカーは、コメット号が大空の中の点となり、もはや目に見えなくなった今も、じっと見続けていた。彼の瞳は炎と輝き、真一文字に結ばれた唇は、何かの決意を語っていた。
『きっと!きっと、いつか僕も……』

「……ルーク!」
 ルークは、げっそりと憔れたオウエン伯父に肩を叩かれて、はっと我に戻った。
「いつまで何を見とるんだ……!?今日は、朝食の時に出たエイリアンのゆで卵で、どうも体の具合がおかしい。早く済ませて帰ろう」
 ルークを促きたてて、サンドクローラーの前のロボットを見て回るオウエン。そこには、種々様々なロボットが並んでいた。古い奴では、勲章を付けたロボタンやロボット三等兵。ずんぐりむっくりのロボコンに、グラッグまがいの万能ロボット・ハック。いずれも、ファンから忘れ去られた往えのヒーローたちだ。……と、オウエンの歩みが、一体のロボットの前でピタリと止まった。その目が、C-3POの全身を汲まなく舐め回すように見つめる。
「ふむ……。そのボディの派手な金色からすれば、お前はさしずめ儀式用のロボットだな?」
「はい、さようでございます!」
 ここぞとばかりに、勢い込んで言うC-3PO!
「ならば、雨乞いの祈りは出来るか?」
「勿論ですとも。お易いご用です!私が一度祈れば、雨なんぞは当り前。雪に霧、霰に雹、ポルターガイストから黄金のコウモリまで呼び出してご覧にいれます!」
 ♪黄金バ〜ット。どこ!?どこ!?ど〜こから来〜るのか、黄金バ〜ット!?コ〜ウモリだけ〜が知っている〜〜……
 ワハハハハ!…と笑うオウエン伯父!
「誠に結構!ならば、ボッチ語は喋れるか?」
 C-3POが、横目でロボタンを見て言う。
「ボッチ語!あんな、ロボタンに出てくるガキが喋るような言葉など、物の数ではございません!『私の辞書に、翻訳不可能と言う言葉はない』……これが、私のモットーでございます!」
「うむ……おい、君!これを買う事に決めたから包装してくれ。保証書も付けるんだぞ!……ルーク。農業用ロボットに、良いのはあったか?」
「ええ、伯父さん」
「それじゃ、代金は私がまとめて払っとくから、お前は二体のロボットを連れて、先に家に帰っておいてくれ」
「分かりました、伯父さん。さあ、お前たち!僕について来るんだ!」
 C-3POと農業用ロボット−R2-K7は、ルークの後について行ったが、突然R2-K7が火を吹いて爆発した!
「伯父さん!このロボットいかれちゃったよ!」「何い?」
 炎を上げて燃え続けるR2-K7を目にしたオウエンは、鬼の如くジャワズに詰め寄った!
「お前さんたちゃ、何かい?あっしに欠陥品を売り付けようってのかい?……ははは。馬鹿な真似をするんじゃあないよ……」(座頭市の声で)
 オウエンの持った仕込み杖が一閃した瞬間、ジャワズの服はバラバラになって落ちた!慌ててサンドクローラーへ逃げ戻る素っ裸のジャワズ!怒るオウエンを前にして、ジャワズたちは何とか言い逃れをしようとするが……。
 ♪お止し〜〜なさいよ〜〜、無〜駄〜〜な事〜〜……
「さあ、この落とし前をつけて貰おうかい!」

 一方ルークは、スクラップになってしまったR2-K7をポカンと見つめていたが、その肩をトントンと叩く者があった。C-3POだ。
「へへへ、ちょっと旦那……。ほら!あそこにいる、サンドクローラーの左から三番目の娘(ロボット)なんか、ええと思いまへんか?」
 揉み手をしながら、関西弁で客引き(?)をするC-3POの言葉に、ルークはR2-D2に近寄って、じっくりとそのボディを検分した。
「……うん、これも良いみたいだ!それに、何だか懐かしいような気がする……」
「R2-D2さん、R2-D2さん。ご指名です。三番テーブルまでどうぞ!」
 ビィッと返事をするR2-D2。
「これでしたら、私を買われた方には、サービスとして無料で着いてくる事になっとります。1年間の品質保証・メンテナンス付き。万一、故障の際には、電話一本で無料出張サービスを致す事になっとりますです。ハイ」
 R2-D2が勝手に持ち場を離れたので、後を追っかけて来たジャワズがC-3POの言葉を聞き譴て、猛烈な早口言葉で抗議する!が、それに対し、悠然と言い返すC-3PO!
「ジャワズ、嘘つき!C-3PO、嘘つかない。これ、ジャングルの掟。ベッカンコーー!」
 猛烈な言い争いをしているC-3POとジャワズの元を離れたルークは、オウエン伯父にそっと言った。
「伯父さん。ダメになっちゃったR2-K7の代わりに、あのロボットにしませんか?」
 オウエンがR2-D2をじっと見つめる。しゃなりしゃなりとポーズを取る(?)R2-D2。R2-D2のどこが気に入ったのか、オウエンはウムと頷いて言った。
「よし、決めた!あいつをぶっ壊れた奴の代わりに貰うぞ!嫌だとは言わせんからな!」
 ジャワズに有無を言わせず、R2-D2を捲き上げたオウエンは、早速ルークに二体のロボットの世話を言い渡す。
「いいか、ルーク!わしはこれから大事な仕事があるから、お前があいつらのチェックとメンテナンスをしてやるんだぞ!よおっく風呂に入れて、ピッカピカに磨いてやるんだ……分かったな!?」
「はいはいはい……分かってますよ!やりゃあ良いんでしょ?やりゃあ!」
 折角の休日をパーにされて、ぶすっとした表情になっているルークが、腹立ち紛れにC-3POに声を掛けた。
「ねえ、君?」「何でございますか?ご主人様」
「C-3PO……とか言ったね?さっきの伯父さんとの話を聞いてると、君は銀河で知らない言葉はないんだって?」
「はい。その通りでございます。特に得意なのがハナモゲラ語でございまして。何しろ、タモリ教授の直伝ですから……。何でしたら、ここで四ヶ国語マージャンでもご披露致しましょうか?」
「いやいや、またにするよ!ところで……」
 ルークは、砂と埃で汚れ切ったC-3POの体を、指で一撫でした。こびり付いた汚れの下から、金色に輝くボディが現れる。
「これは純金かい?」
「いえ……その……実は金メッキで……」
「ふ〜ん。メッキが剥げないようにするんだね」
「あら〜〜〜っ!」 C-3POはズッこけた!


「……と言う訳で、タダ。折角ここまで来てくれて申し訳なかったんだけど、出られなくなっちゃったんだ!本当に済まないと思ってる」
 ルークは、テレビ電話の相手……幼い頃から大の親友だったタダトス・レーンに向かって、しきりに謝っていた。
『いいよ、ルーク。そんなに謝ってくれなくても、僕は何とも思ってないから。君の都合が悪いんなら、また今度にしようよ。僕はいつでも構わないかさあ。そんな他人行儀な事は言わなくったって……僕と君の間じゃないか!」
「本当に済まない、勝手な事言って。それで、タダ。今日はどうするつもりなの?」
「♪お湯の中にィ〜もォ〜、こォりゃ。花がァ〜咲くよォ〜〜。チョイナ、チョ〜イナ〜〜!」
「うるさいぞ、C-3PO……!人が電話してる時くらい、静かにしてくれ!」
 ルークは、頭の上に手拭いを乗せたまま、オイル風呂につかって、良い気持ちで唄を歌っているC-3POに向かって怒鳴り付けた!
『どうしたんだ、ルーク?いきなり大きな声を出して?』
「いや、何でもないよ、タダ。こっちの事さ!で……さっきの話に戻るけど、これからどうするんだい?」
『うん。それで、前からフロルが、僕が旅行するんなら、一緒に行きたいって言ってたもんだから……。二人でタトゥーイン見物でもして、今晩にでも銀河鉄道で大学星に帰るよ。ルーク。君と会えなくて、本当に残念だなあ』
「タダ……その、フロルって誰?」
『フロルベリチェリ・フロル……その、あの……まあ、僕の友達だよ』
 不意に汗をかき始めたタダの映像の前に、突然一人の美少女(?)が現れた!
『友達なんかじゃないだろ!?恋人だい!!』
「こ……恋人!」 ポカンとなるルーク。
『フロル!』 タダが柳眉を逆立てる!
『だって……俺だって、タダの幼なじみの顔くらい見たいんだモン!もしかして、昔の恋人だったりして?』
『フ、フロル!冗談もいい加減にしないと……』
『冗談なもんか、イ〜だ!』『……フロル!』
 からかわれて、カッとなったタダは、ニヤニヤ笑っているフロルに飛びかかり、派手な痴話喧嘩(?)が始まった!そのままテレビ電話を切るルーク。

「や〜〜い、お邪魔虫!」
 上機嫌で、オイル風呂に入っていたC-3POがからかうや、かっとなったルークが怒鳴る。
「うるさい!いつまでも風呂に入ってないで出て来い!」
「親友とやらも、ああなりゃ冷たいもんだ……」
 C-3POは、タオルで前を隠しながら(?)風呂から上がり、滴り落ちる油汗をバスタオルで吹き取る。
「ぬけぬけと、恋人同伴でおノロケシーンを演じるんだから……」
「うるさい!僕だって、恋人の一人くらい……」
 ルークの声が、次第に尻すぼみになる……。
「……いないんでしょ?」
 C-3POが、再びルークを冷やかす。
「お前は黙ってろ!それより、R2-D2。内部チェックだ、来い!」
「おー、おー。私に図星を指されたので、何も言えんのでしょう。それで、R2-D2に八つ当たりですか?」
「ふんっ……!」
 ルークはC-3POを無視したまま、R2-D2の内部チェックを始めた。それも腹が立ってるものだから強引だ!無理矢理に、R2-D2のデータバンク・スロットにドライバーを突っ込んだ!
「くそっ!何か詰まってやがる!」
 その途端、R2-D2の体の奥でカチッと言う音がし、ドライバーの引っ掛かりが外れた!思い っ切り後にひっくり返って、床で腰を打つルーク!
「あ、痛〜〜〜っ!」
 大きく打ち付けた腰をさすりながら、よろよろと立ち上がるルーク。と、その時、R2-D2からブーンと言う響きが起こり、映像投射口から、小さな立体映像がパッと映し出された。


 『助けて、オビ・ワン・ケノービ!あなただけが頼りなの……。助けて、オビ・ワン・ケノービ!あなただけが頼りなの……』

 その立体映像は、壊れたレコード・プレーヤーの様に、何度も同じ映像を繰り返した。どうやら、何かの記録テープの始めの部分だけが、繰り返し再現されているようだ。
「な、な、何だ、こりゃ……?R2-D2!これは、一体何なんだ!」
『ピ……ピポポーピュポ!』
「R2-D2は、これはちょっとした手違いだと言ってます。ルーク様がドライバーを突っ込んで、いじくり回した拍子に、記録された個人映像が再現されてしまったらしいのですが……」
「ふうん……」
 ルークは、立体映像に映し出された女性の姿をじっと見つめた。毅然とした意志を持った、逞しい美女だ!その内、次第にルークの瞳は潤み、胸は高まり、甘酸っぱい想いが込み上げて来た。ぽつりと呟くルーク……。
「何て素敵な女性(ひと)なんだ……」
「一噛み惚れ……いや、一目惚れですな?そうでしょ、ご主人様?」
「ああ……」
 C-3POの言葉も、ろくに耳に入らぬまま、ルークはその女性の姿を見つめていた。と、突然C-3POの方へ振り返って言った。
「C-3PO、この女性は誰?君は知ってる?」
「ええ!誰あろう……彼女こそ、惑星アルデラーンのヒトーシ・オーガナ大統領の愛娘にして、銀河帝国上院議員のレイア・オーガナ姫です!」
「決めたっと!」 ルークがパッと立ち上がる!
「この女性を、僕の恋人にする!そう、彼女こそ、僕の恋人にふさわしい!」
 と、いきなりルークは、R2-D2にむしゃぶりついた!
「おい、R2-D2!他に、もっと彼女を映したビデオはないのか?どうなんだ!えっ、どうなんだよう?R2-D2、何とか言えよ!おい、言えったら!」
『ピポポピュポー!ピポピポピー!』
 R2-D2を捕まえて、前後に激しく揺さぶるルーク!と、R2-D2が投影していた立体映像が不意にぼやけ、それに替わって別の画像が現れた。湯煙りの中、気持ち良さそうにシャワーを浴びている全裸のレイア姫だ!と、彼女の顔がこちらを振り向くや、いきなり悲鳴を上げた!
『誰?……きゃ〜〜〜〜っ!』

「おいっ!」と、C-3POがR2-D2に詰め寄る!
「何と言う不遜な奴だ!姫のシャワー・ルームを一人で覗くとは!なぜ私を誘わんのだ!?お前は、そんなに友達付き合いのない奴だったのか!えっ、R2-D2?」
「いい加減にしろ〜〜っ!」
 激しく口論するR2-D2とC-3POに向かって、ルークが怒鳴った!
「そんな事より、R2-D2!他にビデオがないのかって聞いてるんだ!?」
 ビュイビュイと言っているR2-D2の言葉を翻訳したC-3POがルークに言う。
「ルーク様。R2-D2が言うのには、先程のビデオ映像は、この惑星に住むオビ・ワン・ケノービとか言う人物に対する私信だそうで、余り人には見せられないようです。しかし、あなたがジャワズの行動規制ボルトを解除してくれれば、ルーク様の言う通りにしますと言ってますが……」
「オビ・ワン・ケノービねえ?何か聞いた事があるみたいだけど……まあ、今はそんな事より、R2-D2!」
 ルークがスパナを取り上げ、R2-D2の行動規制ボルトを早速解除した。
「……さあ、R2-D2。彼女の美しい姿を、もっと見せてくれないか?」
 R2-D2は、暫くルークの目をじっと見ていたが、不意にフェッフェッフェッと笑い出し、くるっと向きを変えた。
「どうしたんだ、R2-D2?」『記憶にございません』
「瞞したな、R2-D2!」
 かっとなったルークは、火事場の馬鹿力でR2-D2を持ち上げるや、そのままオイル風呂へ放り込んだ!フタをして、温度を最高レベルにまで上昇させる!誠に、恋と言うのも恐ろしい……。
「人の恋時を邪魔する奴は、釜にいられて死んじまえーーっ!」
『浜の真砂は尽きるとも、世に嘘つきの種は尽きまじーーっ!』
 R2-D2が釜の中から叫ぶ!ルークはC-3POを睨んで言った。
「いいか、C-3PO!すっかりゆだって、音を上げるまで、R2-D2を釜から出すんじゃないぞ!分かったな?」
 ルークはぷりぷり怒りながら、自室へと向かった!やれやれと言った表情のC-3POが、オイル風呂のフタの上にどっかと座り込む。釜の中から、R2-D2の『あけてくれーっ!』と言う声が響いて来た。
「やれやれ、ウルトラQじゃあるまいし……。第一、お前が悪いんだぞ!一人で姫のシャワー・ルームを覗いたりするから、その罰が当たったんだ!暫く、そのままゆだってろ!」
 ……そして、惑星タトゥーインに二日目の夜が来た。




《第5章:オビ・ワン来たりて笛を吹く…へ続く》


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