【パロディー・スターウォーズ/ジェダイの復習】

《第21章》 《極秘作戦》進行中!

 ややこしい道順を辿り、ようやく秘儀の間へ通じる専用エレベーターの前まで辿り着いたエロイカ扮するベイダー一行。
「いませんね、あいつら……」
 レイクが周囲をゆっくり見渡して呟く。
「ああ……どうやら、顔を合わせずに済んだようだな。それでは、そろそろ行くとするか……」
 エロイカの口調が不気味な重低音となり、シスの暗黒卿ダースベイダーの、見る者全てを恐怖させる邪悪な雰囲気が、体中から漂う。4人のストーム・トルーパーズを引き連れたダースベイダーの姿を目にするや、禁断の秘儀の間へ通じる専用エレベーターを警護している4人の番兵は、直立不動の姿勢を取った。
「うむ……ごくろう」
 ベイダー=エロイカが、如何にもそれらしく声を掛けると、警備兵はさっと敬礼を返す。そして、宿直当番だった金属人間メタリノームが、ダースベイダーの姿に気づくや、両手の大きなハサミを振り上げながら、慌てて警備兵控え室から飛び出して来た。
『これは、これはベイダー卿……ようこそ、いらっしゃいました。お出迎えが遅くなり、申し訳ございません!いや、実は……宿直の時間つぶしに、5000ピースのジクソー・パズルをやっておったのですが、つい熱中してしまいまして……ところで、こちらに何かご用でございますか?』
「あんな大きなハサミ持ってちゃ、5000ピースのジクソー・パズルなんて、とてもじゃないが出来やしないぜ……」
 ルパン扮するストーム・トルーパーは、小声でそう呟くや、エロイカ=ベイダーの前に出て、メタリノームに恭しく返事を返した。
「ええ……ウォッホン!ベイダー閣下は、反乱軍との決戦を間近に控え、帝国にとって大変重要な《聖櫃》に、異常がないかどうか、視察に見えられたのです!」
 ルパンの発する口から出任せに、首を捻るメタリノーム。
『分かりました……が、私も単にここの警備担当にしか過ぎませんので、秘儀の間への専用エレベーターを使用される場合には、作戦司令室にその旨連絡せねばなりません……。一応念の為に、問い合わせても宜しいでしょうか?……いえ!決して、ベイダー様のお言葉を疑っている訳ではございません!ただ警備上、念の為にと……』
 ひたすら低姿勢のメタリノームに、エロイカ=ベイダーはルパンと顔を見合わせてニヤリと笑うと、メタリノームを、逆に誉め上げた。
「いや、その態度感服したぞ!実に職務熱心だ。私だからとて、何も遠慮する事はない!堂々と作戦司令室に問い合わせるが良い」
『ありがとうございます……では、失礼して』
 メタリノームが背を向けるや否や、次元が携帯用無線機で、ひそかにコブラに連絡を入れる。
「コブラ……作戦司令室に連絡が行くぜ!」


               ※

「了解した、次元!」
 コブラとボビイは、デス・スターの通信・警備網の回線が、すべて経由している集中予備制御室に、まんまと忍び込み、ルパンたちからの連絡を待ち受けていたのだ。メタリノームから作戦司令室へと通信回線が繋がった瞬間、コブラはそれを横取りした。
「はい、こちら作戦司令室!」
『こちらは、秘儀の間専用エレベーター警備室・宿直当番のメタリノームだ。只今、ベイダー様が視察の為こちらへお出でになられて、秘儀の間へ下りたいと申し出をされていられるのだが……それに間違いがないかどうか確認したい』
「そのまま、暫くお待ち下さい……」
 コブラは、あらかじめ用意した音声変調装置で声を変えると、いかめしげな口調で喋り出した。
「こちらは、作戦司令室・当直司令のオヨヨ大統領だ。貴公の言われる通り、只今ベイダー卿が視察の為、そちらに向かわれておられる。卿のご命令にはすべて従うように!」
『了解致しました。ビバ!オヨヨ!』
「ビバ!オヨヨ!」
 メタリノームが通信を切るや、コブラはボビイに向かって親指を立てた。
「やったね、コブラさん!」
「おう、バッチリよ!……ハーロックたち海賊同盟の奴らも、攻撃態勢を整えているし、後は銀河サーカス団の陽動作戦が始まって、エロイカたちから再度連絡が入れば、万事OKだ!」
「じゃ、僕もそろそろ、電子機器へのジャック・インの準備に掛かるよ」
 ボビイは、携帯用のサイバースペース潜入装置を取り出し、メイン・コンソールにセットすると、コードで自分の頭部に繋いで、目を閉じた。
「さあ……もうじき、デス・スター中に、僕の華麗なる電脳交響曲を聞かせてやるぞ!」


               ※

「では、ベイダー様……。どうぞ、こちらへ」
 コブラの欺瞞にまんまと引っ掛かったメタリノームは、秘儀の間へ連絡を入れるや、エロイカ=ベイダーの一行を専用エレベーターへ招き入れようとした……その瞬間!五右ヱ門の斬鉄剣が、電光石火唸りを上げるや、メタリノームと4人の番兵、それに控え室にいた十人の警備兵たちを、抵抗する間も与えず、一瞬にしてなぎ倒した!
「安心するが良い……峰討ちだ」
「さ〜〜すがは、五右ヱ門!……じゃ、こいつらは充分に縛り上げて、目を覚ましても邪魔ができないよう、キッチリ閉じ込めとこうぜ!」
 目を回しているメタリノームの重たい体を、控え室へ引きずって行くルパン。次元やレイクも、他の警備兵を同じように縛り上げ、戸棚の奥に閉じ込めた。そして、エロイカたちはいよいよ秘儀の間への専用エレベーターに乗り込んだ。
「ここまでは簡単だったが……難しいのはこれからだ!皆、充分に注意してくれ!ちょっとしたミスが、命取りになるからな!」
 エロイカの言葉にうなづくルパン・次元・五右ヱ門・レイク。エレベーターは彼らを乗せたまま、帝国の最高機密−《失われた聖櫃》を安置してある秘儀の間へと下りて行った……。だが、エロイカたちもコブラも知らなかった事だが、専用エレベーターの秘儀の間への降下は、自動的に作戦司令室へ伝わったのだった。


               ※

「メフィラス司令、秘儀の間への専用エレベーターが動いております」
 夜間当直士官を命じられ、銀河サーカス団の興行も見に行けずに、大いに不満を抱いているクリンゴン人のデュラスが、本物の当直司令のメフィラス星人に告げる。だが、手元のモニターを個人使用して、銀河サーカス団の中継映像を熱心に見やっていたメフィラス星人は、心ここにあらずと言った風情で答えた。
「ん?……何だと、秘儀の間?……畜生!今、良い所だったのに!……たぶんランプの誤作動だろう。あそこは、メンテナンスをしばらくやってないからな!警備担当士官のメタリノームから、何か異常を知らせる連絡はあったのか?」
「いえ、そのようなものは何も」
「ならば、私の邪魔をするでない、馬鹿者!まあ、何だな……念の為に誰か派遣して……そうだな、クリスタル・ボーイにでも、様子を見に行かせておけ!」
 デュラスにそう命じると、メフィラス星人は、再び目の前のモニターに映っている、リン・ミンメイのコンサート中継へと視線を戻した。
「了解致しました、メフィラス司令!クリスタル・ボーイ、クリスタル・ボーイ……直ちに、秘儀の間に繋がる専用エレベーターへ赴き、異常の有無を確認するように」
『こちら、クリスタル・ボーイ……了解した』
 デュラスは、クリスタル・ボーイとの連絡を済ませるや、横目でメフィラス星人を睨み付け、心の中で思いっ切り毒づいた。
『くそっ!皆は楽しんでる最中だって言うのに……俺だけ、こんな時に仕事をさせやがって!こうなったら、何が起ころうと俺は知らねえぞ!』
 メフィラス星人に怒鳴られた事で、むかっ腹を立てたデュラスは、『これからどんな異常が司令室に入って来ても、一切無視してやる!』と決め込んだ!その事が災いして、デス・スター内部では、帝国軍の誰もが知らぬ内に、次々と《極秘作戦》が進行する事となる……。


               ※

 ここで一旦(?)、話を本筋へと戻そう……。第17捕虜収容所……そこは、反乱軍のスパイだけを収監する特殊監房である。レイア姫尋問の際、ここの警備に当たっていたマッドマックス野郎が、ダースベイダーの手で見事にKOされてしまった為に全員交替。新たに配置されたクリンゴン兵は、床や壁に飛び散った前任者たちの血の跡を雑巾で拭き取りながら、厳重なる警備体勢を敷いていた。そして、それを物陰からひそかに見つめている人影があった……。ルークとハン・ソロ、それにチューバッカだ!
「ソロ……。レイア姫が捕われてる場所って、ここで間違いなさそうだよ。ほら!上に『第17捕虜収容所』って、看板が上がってる」
 ネオンギラギラの電飾看板を見て頷くソロ。だが、その表情はかなり不機嫌そうだ。
「ああ、そうらしいな。それにしても……あの黒兜野郎め!俺達にでたらめの道順を教えやがって!幸い、親切な兵隊がキチンと教え直してくれたから良かったもんの。お蔭で余計な時間を食っちまった!」
 ダースベイダーに化けたエロイカ一行に嘘の道筋を教えられ、散々迷った末にやっと辿り着いたハン・ソロは、既に怒り心頭に達していた。
「もう待ち切れねえ。行くぜ、坊主!」
「ちょっ、ちょっと、待ってよ!」
 捕虜に見せ掛けたチューバッカを追い立てて、警備兵たちの前へ進み出ようとするハン・ソロ。ルークは、慌ててその後について行った。

「ん……?何だ、お前たちは!?」
 クリンゴン兵の訝しげな視線に、ハン・ソロはすっとぼけた顔で答える。
「いや〜、お勤めご苦労さん、ご苦労さん!実は……この毛ムクジャラ野郎は、反乱軍のスパイなんだ!それで、ここにブチ込んでおけとのご命令でね」
 調子を合わせたチューバッカが、いかにもそれらしく唸り声を上げて、ソロを睨みつける!
「そんな連絡は受けておらんぞ!」
 当直士官のクリンゴンのコロス大佐が、ソロたちを疑わしげに睨みつけて言った。
「おかしいなあ……。たぶん、何かの連絡ミスだろ?とにかく、早いとこ中へ通してくれないか。さっさとこいつを監房にブチ込んで、部屋でゆっくり休みたいんだ!」
 そう言って、チューバッカを蹴るハン・ソロ!だが、彼らを見つめる警備兵の目は、尚も疑わしげだ!『どうしよう!』と言った態度のルークに向かって、ハン・ソロは目で合図した。
「ええい、焦れったい!勝手知ったる他人の家だ!入らせて貰うぜ!」
 ソロの意図を知り、頷くルーク!警備係のクリンゴン兵を狭撃する為、ソロが何げない風を装って、チューバッカと共に彼らの側面に回り込む……。そして、チューバッカがひそかに手錠を外し、ルークとソロがレーザーガンをホルスターから抜き掛けた……その時!ソロの計画は些細な偶然から崩壊した!先に進んでいたチューバッカが、清掃用のバケツからこぼれた水のせいで、物の見事に足を滑らせたのだ!

「ウォーーーーッ!」
 スローモーション映像で、足先から床にスライディングし、バケツを蹴倒すチューバッカ!そして、それにつまづいて横転するハン・ソロ!結果としてルークは、クリンゴン兵たちに対し、たった一人でレーザーガンを構える恰好となり、素早く対応した彼らに、一斉に銃を突き付けられてしまった!
「銃を捨てろ!捨てるんだ!」
 クリンゴン兵に取り囲まれて、渋々レーザーガンを捨てるルーク……。床にへたり込んだままのソロも、諦めて降参のポーズを取る。
「チューバッカの馬鹿野郎!幾らお前の目が、モジャモジャの毛の奥に隠れて、前が見えにくいからって……」
 バケツの水を頭から被り、ずぶ濡れになっていたチューバッカを派手に罵っていたソロの表情が、突如ぎょっとなった!
「済まねえが……今、何時だ?」
 ソロの当突な質問に、思わずクリンゴン兵が腕時計を見る。
「デス・スターには、特に昼夜の区別と言うのは無いんだが……。帝国標準時間で言うと、今は午前0時5分過ぎだ」
「0時5分過ぎだってえ!……いけねえ!」
 いきなり焦り始めたハン・ソロに途惑うクリンゴン兵たち。と、彼らの目の前でチューバッカの体毛がムクムクッと動き始め、毛玉の塊のような物体が、いきなり周囲に向かってポンポンポーンと飛び出し始めた!
「何だ、こりゃ?」
 好奇心に駆られた一人のクリンゴン兵が、その毛玉の塊を手に取ってみる。と、突然彼の手の中で、それは騒がしい鳴き声を上げた!
「う、うわあ〜〜!ト、トリブルだあ〜〜!」
 その言葉に、監視所は一瞬にして阿鼻叫喚の場となった!毛玉の塊のように見える物体……実はそれは、クリンゴン人が大嫌なペット生物・トリブルだったのだ!半狂乱になったクリンゴン兵が、むやみやたらに銃をぶっ放す!その内の一発が天井のスプリンクラーを直撃するや、更に大量の水が噴出!ずぶ濡れになったチューバッカの体は、あたかもビンゴゲームのように、次から次へとトリブルを発射した!もはやクリンゴン兵は、ルークたちの事など完全に忘れ去り、天敵・トリブルを駆除するのに血眼になっていた!
「あ〜あ……だから言っただろう、チューバッカ!午前0時を過ぎたら、水浴びをするなって!こいつは、真夜中過ぎに水に触れると、体からトリブルを生むグレムリン体質ってのを持ってるんだ!全く、やってられね〜ぜ!」
 そう言いながらも、思いがけぬ陽動作戦が成功したソロは上機嫌だ!タオルで全身を拭き取ったチャーバッカの体からは、ようやくトリブルの噴出も止まった。錯乱状態にあるクリンゴン兵を武装解除するのは、ルークたちにとってもはや簡単な事だった。
「これでお・し・ま・い……っと!ソロ、全員縛り上げたよ!」
「よ〜〜し、案外簡単だったな!これで姫様を助け出しゃあ作戦完了!たんまりお宝を貰って万々歳ってとこだ!」
 手を叩きながら、嬉しそうにルークに答えるソロ!彼の目には、既にレイア姫救出の莫大なる褒章金が映っていた。と、その時、彼の前の通信コンソールがピーッと音を立てた!

『第17捕虜収容所、こちらは中央司令室だ。スプリンクラーが突然作動したようだが……どうした?何か異常事態でも起こったのか?』
 やべっ!……と言った表情のソロが、何事もなかったかのように落ち着き払って返答する。
「いえ!別にその……ただ、ちょっと……そう!パーティーをやっておりまして!」
『パーティーだと?』
「そ、そうなんです!「スター・ウォーズ特別編」公開記念のお祝いを、皆でやろうと言う事に突然なりましてえ……。それでお調子もんが銃をぶっ放して、スプリンクラーが誤作動しちまったんです。大丈夫!何も心配はありません!」
 もはや、ハン・ソロも自分で何を言っているのか分からない状態だ。
『おかしいぞ?……貴様の姓名と所属部隊、それに認識番号を言え!』
「ええ……その、あの……」
『返事はどうした!』
 遂にブチ切れたハン・ソロは、通信コンソールに向かってレーザーガンを発射した!
「これが俺の返事だよ!クソッタレ野郎!」
 そして、第17捕虜収容所の全ての監房のロックを一度に解除したハン・ソロは、ルークに向かって怒鳴った!
「おい、小僧!早くお姫様を助け出さないと、いずれここにも兵隊どもが来るぜ!レイア・オーガナ姫の独房は、221号のBだ!」
「……了解!」

 ルークがレイア姫の監房へ走る間、ソロとチューバッカは、帝国兵が入って来れぬ様、内側から扉を溶接し始めた。
『今、助けにいくからね!僕の愛しいレイア!』
 =ありがとう、ルーク!あなたは素晴らしい勇者だわ!=
 ルークの勝手な想像の中で、微笑むレイアが嬉しそうに彼を迎える……。ニヤケ顔のルークは、独房の扉を一気に開け放った!
「姫、助けに来ました!……あれ?」
 威勢良く飛び込んだルーク!だが、そこは無人の監房だった……。と、彼の背後から突如飛び降りてきた黒い影がルークを捕らえ、ヘッドロックで彼の頭をギリギリと絞め上げる!ドアの上がり框に身を潜め、飛び込んで来たルークを一瞬にして絞め上げた男こそ、誰あろう007ジェーム・ボンドだった!
「誰だ、貴様は?返答次第では、このまま首の骨を折るぞ!」
「ぼ……僕、違う……敵じゃ……」
 ボンドの屈強な力に失神寸前のルーク。
「おい、ルーク!早合点するな!そっちは221号のAだ……姫は反対側の監房〈B〉だぜ!」
 ルークがボンドに絞め上げられている事を知らないハン・ソロが、レイア姫の監房の扉に手を掛けた……途端!ドアは内側から大きく蹴飛ばされ、ソロは反対側の壁へと吹っ飛ばされた!床に転がったレーザーガンを拾い上げたレイア姫が、銃口をソロに突き付ける!
「フリーズ、動かないで!動くと撃つわよ!さあ……あなたが誰で、一体どんな目的を持ってここへ来たのか、さっさと言いなさい!さもなくば、このまま永遠に沈黙する羽目になるから!そこの毛ムクジャラも、動いちゃダメ!」
 駆け寄ろうとするチューバッカをも押し止めたレイア姫は、冷徹な表情でハン・ソロを見下ろした。呆れ顔でレイアを見返すソロ。
「俺……?俺の名前はソロってんだが……」
 ソロがそう口にした時、ロックが解除されたレイア姫の隣の監房から、一人の銀髪のやさ男が飛び出して来た!
「来てくれたんだね、ナポレオン!……あれ、違うや。全然知らない顔だ!」
 アンクルの秘密情報部員イリヤ・クリヤキンは、パートナーのナポレオン・ソロ……ならぬ、ハン・ソロの顔を見て、失望したように呟いた。
「おいおい!誰の事を言ってんだか、俺にはさっぱり分からねえんだが……そんな事より、俺たちゃ、頼まれてあんたを助けに来たんだぜ!その救いの神に向かって、何て言い草だ!」
「そんな嘘っぱち。誰が信じるもんですか!」
 そう言い切ったレイア姫は、ソロの眉間にレーザーガンをぐいと押し当てる!

「その方の言っておられる事は、本当です……」
 レイア姫とハン・ソロが突然の言葉に振り向くや、そこにはゆったりとした白いトーガに身を包んだ、インド系美少女が立っていた。
「ララァさん……でしたわね?」
 ゆっくりと頷いたその美少女こそ、『小説版・機動戦士ガンダム』で、愛する人アムロと戦わざるを得ない運命を背負っていたニュー・タイプの美少女、ララァ・スンだった。
「私はニュー・タイプです。だから、その人の言っておられる事が嘘ではないと分かるんです」
「ララァがそう言うなら、間違いはない筈よ」
 そう言って、ララァの後から姿を現わしたドレス姿の美女は、誰あろう「さらば宇宙戦艦ヤマト」で非業の死を遂げた森雪だ。
「だって、ダースベイダーは、この人の類い希なニュー・タイプ能力を利用する為に甦らせたんだもの!」
 ララァも、森雪に微笑みかけて言う。
「ええ。でも……こう言うと恩知らずだと言われるかも知れませんが、私はダースベイダーに感謝するつもりはありません。いくらシャアの頼みでも、帝国の味方をするつもりはありませんから。それは、あなたも同じでしょ、雪?」
「そうよ!私だって、デスラー総統の愛人なんか、死んでもなってやるもんですか!イ〜〜だ!!」
 雪は、デス・スターのいずこかにいる筈のデスラー総統に向かって、思い切り悪態を付いた!
「ちょっと……漫才はもういいから!とにかく、あなたが言うには、このどことも知れぬ馬の骨は本当の事を言ってるって事ね?」
「おいおい!幾ら何でも、馬の骨はないだろう!仮にも、俺は……」
「あなたは黙ってるの!」
 口を挟んだソロの頭を、再びレイア姫がレーザーガンで小突いた時、向かいの監房から気絶したルークを肩に担いだボンドが姿を現わした。

「姫、それはやはり事実らしいです。私が絞め落としたこいつが、共和国のジェダイ騎士団長だった、オビ・ワン・ケノービの認識票を持っておりました」
 オビ・ワンが、万一の時の事を考えて、ルークに渡しておいた認識票を目にしたレイアが、はっと目を身開く!時を同じくして、帝国軍に捕虜にされていた残りの面々……超音波風呂ですっかりリフレッシュした(?)ジェミー・ソマーズや、IMFのイーサン・ハント、ジム・フェルプスらも、次々と姿を現わした。そして、最後にゲルサドラが、ボンドたちに拷問室から救い出された。尋問官であるシスター・ジルの、面白半分の拷問によって、鉄鎖で倒さ吊りにされたまま、鋭い鉄の鞭で血まみれになるまで嬲りものにされたゲルサドラは、既に虫の息だった……!
「レイ…ア姫……。一刻も……早く、ここ……から脱…出して……下さ……」
 そう言い残して、ゲルサドラは息絶えた……。
「何て、酷い事するんでしょう!あいつらは人間じゃないわ!ケダモノよ!」と、叫ぶ森雪!そう……実際、シスター・ジルは「人間」ではない。人間と獣が合体したキメラ、合成生物なのだ!そして、ゲルサドラの冥福を祈ったレイア姫は、ハン・ソロにレーザーガンを返して謝った。
「どうやら、あなたは本当の事を言ってたようですね……。申し訳ありません」

「分かりゃあ、良いんだ!分かりゃあよ!」
 途端に横柄な態度になったソロは、パンパンと服に付いた塵を払うようにして立ち上がる。そして、今までの状況を皆に向かって説明した。
「……と、言う訳だ!だから、第9宇宙船発着場まで辿り着きゃあ、ケノビのおっさんが牽引ビームを切ってる筈だから、後は俺様の〈ミレニアム・ファルコン〉でここを脱出するだけ!どっかにある共和国軍の基地に逃げこみゃあ、それで万事OKさ!」
「いい加減な計画ね!それで、良くデス・スターに潜り込めたもんだわ!」
 ハン・ソロの言葉に、眉を潜めて呟くレイア。
「……それで、どうやってここから逃げ出すのつもりなの?入口の扉は、あなたたちが内側から溶接しちゃったんでしょ?」
 鋭く詰め寄るレイア姫に、ソロがぐっと詰まる!
「え〜〜、その〜〜、実を言うと、そこまでは考えてなかったんだ……」
「何ですってえ〜〜!」
 柳眉を逆立てて睨みつけるレイアに、イーサン・ハントが進言した。
「姫!このような、いい加減な者たちの言う事を聞いていては、助かる者も助かりません。こいつらは放っておいて、私達が隠し持っていた装備で、何とか脱出しましょう!」
「イーサンの言う通りです。見て下さい、姫!私のスーツの内側に隠しポケットがあるんですが、ここに……」

 しわくちゃになった英国製のスーツの内側を見せながら、レイア姫に近付いて行くフェルプス。彼女が、何げなくそこを覗き込んだ……その時!電光石火の動きを見せたジムが、レイア姫を捕らえるや、懐から抜いた鋭利なサバイバル・ナイフを、彼女の喉元にピタリと押し当てた!
「何をする、貴様!?」
 ボンドが瞬時にレーザーガンを構えたが……。
「動くんじゃない!動けば姫の首筋に、真っ赤な血の花が咲く事になるぜ!」
 不敵に笑うフェルプス!レイア姫を人質に取られ、一歩も動けないソロたちが歯噛みする!
「なぜだ!どうしてなんだ、ジム!いくら、劇場用映画『ミッション・インポッシブル』に、自分が出演出来なかったからと言って……。裏切者だった〈ジョン・ボイト〉とは違い、私はあなたを心から信頼してたのに!」
 イーサンの叫びに、銀髪のピーター・グレーブス……TV版「スパイ大作戦」のジム・フェルプスがニヤッと笑って、顎の下に手を回した。
「残念だったな、イーサン!私は、実はジム・フェルプスじゃないんだ……」
 ベリベリベリと、変装用のバイオ・マスクを剥ぎ取る謎の男!その下から現れた顔は……。

「お前は……ダン・ブリッグス!」
 端正だが冷酷な雰囲気を漂わせた、黒髪の男の顔を目にしたボンドが叫んだ!
「ブリッグス?……誰、それ?」
 森雪の言葉に、思わずガクッとなるブリッグス!が、すぐに立ち直るや、吐き捨てるように叫んだ。
「これだ……皆、これだ!『スパイ大作戦』のリーダーと言えば、誰もがジム・フェルプスを思い出すんだ!第1シーズンだけのリーダーだった私……ダン・ブリッグスを知ってる奴なんかいやしない!ジム・フェルプスなんぞ、くそくらえだ!」
 ボンドが譴るようにして、イーサンに言った。
「どうして分からなかったんだ、ハント?君と同じ組織のメンバーじゃないか!?」
「だって……ジム・フェルプスも、ダン・ブリッグスも、日本語吹替えは、どちらも同じ『若山弦蔵』なんだもの。聞き分ける事なんか出来ないよ!」
 ポツリと呟くイーサン・ハントを見つめて、クックックッと笑うダン・ブリッグス!
「生憎だったな……。本物のジム・フェルプスは、逮捕されて後、直ぐに帝国の監獄惑星アルカトラズへ送られたのさ!私がジムに為り済ましていたのは、お前たちを監視する為なんだが、危惧してた通り、こんな事態になるとはな……おっと、イーサン!変な動きを見せるんじゃない!」
 手首に仕込んだ麻酔ダーツ発射装置を、ひそかに作動させようとしたイーサン・ハントを見譴めるや、ブリッグスは、レイア姫をジリジリと監房の入口に向けて引っ張って行った。
「さあ……レイア姫!このまま、私にご同行願おうか!」

 ……と、人質(?)のレイア姫が冷静に言った。
「それで、私を人質に取ったつもりなの?」
「何だと?」と、レイア姫を見つめるブリッグス。
「あなたみたいに、無遠慮に私の体に触る輩には……こうよ!」
 レイア姫がブリッグスの足を思い切り踏んずけた!彼が思わずひるんだ所へ、強烈な肘撃ち!そして、くるりと回転しての金的蹴りと大回転回し蹴り!レイア姫のドレスのスカートが大きく巻くれ上がり、一同おおっ!……と歓声を上げる!
「か弱い女だと思って、馬鹿にしないで!」

 ♪馬鹿にしないでよ〜〜!そっちのせいよ……。チョット待って!プレイバック、プレイバック!!(BGM:プレイバックPARTII)
 見事にファイティング・ポーズを決めたレイア姫を見て、ハン・ソロが「今の言葉を」プレイバックした。
「ど〜〜こが、か弱い女なんだよ?……全く!」
 が、レイア姫に通路の端まで吹っ飛ばされたブリッグスは、唇から泌み出た血を手の甲で拭い取りながら、ヒステリックに叫んだ。
「女だと思ってたら、なめやがって!お前ら全員殺してやる!」
 サバイバル・ナイフを構え直すブリッグス!と、イリヤ・クリヤキンが目を細めるや、レイア姫に向かって小声で囁いた……。
「姫、ブリッグスが立っている後の壁……あそこにある通風口を見て下さい!」
「……格子が、内側から焼き切られてる!」

 小声で叫ぶレイア姫!と、次の瞬間ブリッグスは、背後にあった通風口の格子もろとも、その奥に潜んでいた謎の人物の強烈なキックで、背中からまともに蹴飛ばされた!大きく吹っ飛んだブリッグスが、たちまち袋叩きに合い、がんじがらめに縛り上げられる。そして、通風ダクトの奥から、銀髪長身の痩せた男が悠々と姿を現わした。ボンドが懐からタバコを取り出すや、その男はたった今、格子を焼き切った万能ライターで火を付けた。
「……スピーク・ラーク?」「スピーク・ラーク!」
 ラークの芳香を十分に満喫したボンドが言う。
「君が、私達を助けに来てくれるとはな」
 彼こそ、誰あろう……。ジェームズ・ボンドの最大のライバルにして、最強のプライベート・スパイ……電撃フリントだ!
「ボンド!私と君は、60年代のスパイ映画で、共に霸を競った仲じゃないか!それに、二人とも『ラーク』のCMに出演したと言う縁もあるし……。もう一つ加えて、最近私が出演したスパイ映画『ハドソン・ホーク』と『イレイザー』では、いずれも私の役回りは、哀愁の老スパイと言った雰囲気だったのでね。ここらで一つ、恰好良い所を見せておこうと思った訳さ!……姫。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。デレク・フリントです。あなたをお救いに参りました」
「あなたのお名前は存じておりますわ!私の格闘術の師ブルース・リー先生の、確か一番弟子でいらっしゃったのでは?」
「ええ。あの方のご葬儀には、私も棺を担がせて頂きました……そんな事より、姫!私は、今デス・スターで巡行公演をしてる銀河サーカス団に紛れ込んで侵入して来たんです!今の間に、ここから脱出するんです!」
 ぽっかりと口を開けた通風ダクトを指し示すフリント!そこは、人一人が何とか通れそうなくらいの広さだ!
「ちょ、ちょっと待ってくれ!突然現れて、横から俺の獲物……いや、その。レイア姫を晒ってくてえのは、一体どう言うつもりだ!?」
 ハン・ソロが、フリントに向かって怒鳴った。
「よくもまあ、こうゾロゾロと関係ない奴ばかり、次々と現われやがって……。本来なら、俺様があいつを助けだすのが筋なんだぜ!横から、余計な口を挟むんじゃねえ!!」
「だが、そう言う君は、何か確かな脱出計画でも持っていたのかね?私が洩れ聞いた話では、単なる行き当たりばったりでここに乗り込んで来たようだが……」
 フリントの指摘に、ぐっと詰まるハン・ソロ。
「……では、決まりだな!あのダクトを通れば、誰にも見譴られずに、第1宇宙船発着場へ抜けられます。姫、一刻も早く脱出を!」
「分かりました、フリント!」
 レイア姫が頷いた……ちょうどその時!ソロたちが溶接した入口の扉が、見る見る内に赤熱し始めた!監房の様子が変だと思った帝国軍が、遂にやって来たのだ!
次の瞬間、入口の扉は大音響と共に吹っ飛ぶや、レーザーの光条が、雨あられの如く注がれて来た!

「早く……行って下さい!」
 フリントが、万能ライターの超小型マシンガンで、押し寄せる帝国兵を撃ち倒しつつ叫んだ!ボンドたちも、クリンゴン兵から奪ったレーザー・ガンで応戦する!監房区画の入口は、狭く奥まっている為、一度に帝国軍が押し寄せてくる心配はないものの、所詮は袋の中のネズミだ。
「フリント、帝国軍は私が引き受けるから、君は先に立って、皆を先導してくれ!」
 ボンドの言葉に、フリントが頷く。
「分かった。先に逃げ出すようで、何だか気が譴るんだが……。姫!私が先に立って案内しますから、その後について来て下さい!それから、ソロ……とか言ったな?一応、我々の目的は同じ……姫の救出にあるんだから、ここは一つどちらが本家だの元祖だの言わず、協力して行こうじゃないか」
「ああ、分かったぜ!取り合えず、この場はあんたたちに任せるよ」
 フリントとソロが握手する。そして、ボンドが靴の踵から取り出した、超小型の時限爆弾を仕掛けている間に、案内役のフリントが通風ダクトに入り込んだ!その後に続く、警護役のイーサン、イリヤ、チューバッカ。更に、女性陣−ララァ・森雪・ジェミーの三人が続く。
「これで、スイッチを入れて、約1分で爆弾は爆発します!早く行って下さい!」

 ボンドの言葉に、無言で頷いたレイア姫もダクトへ姿を消す。それに続いて、ルークとハン・ソロ。そして、ラストに時限爆弾のタイマーのスイッチを入れたボンドが、脱出口へ潜り込む。が……ソロとルークは、何故かまだその場にいた。
「おい!どうした!なぜ早く進まないんだ!?」
 ボンドが、セッティングしたタイマーの時間を気にして怒鳴った!
「俺のせいじゃねえ!先の奴らがつかえてるんだ!……おい!早くしねえか!」
 ハン・ソロの言葉に、ダクトの先にいるララァと森雪から怒鳴り声が返って来た!
「このでっかいお猿さんが、曲り角でつっかえちゃって、どうにもこうにも動かないのよ!あ〜〜ん、もう……!!」
「ウオ〜〜〜ッ!」
 ララァの情けない声と、チューバッカの唸り声が聞こえて来る……。人間は何とか通れるものの、巨大な猿人であるウーキー族のチューバッは、狭っ苦しいダクトの曲り角で詰まって、身動きが取れなくなってしまったのだ!
「何だってえ!」と、仰天するソロ!
「ヤバイぞ!爆発まで、後30秒しかない!!」
 ボンドも焦り顔になる!ダクトの両側では、チューバッカを何とかしようと、イーサンとララァがその体を押したり引いたりしていた!が、並々ならぬ巨体を持つチューバッカは、ちょっとやそっとでは動きそうにもない!
「だめだ……もう間に合わん!皆、体を伏せるんだ〜〜!!」
 腕時計を目にしたボンドが叫んだ!チューバッカを除き、皆が一斉にダクトに突っ伏した途端、押し寄せる帝国兵のど真ん中で時限爆弾が爆発!轟音と振動が響き渡り、爆風が通風ダクトの中まで吹き込んだ!

「ふう……。どうやら皆、無事だった……」
 埃まみれになったハン・ソロがそう言い掛けた時、通風ダクトが『ミシッ!ミシッ!』と言う不気味な音を立てて揺らぎ始めた!フリント一人ならまだしも、巨体のチューバッカを含めて、11人もの人間が一斉に入り込んだ上、今の凄じい爆発と振動……それに爆風だ!手抜き工事でもあったのか、かなりガタが来ていたダクト・スペースはひとたまりもなかった!
「やべっ!皆、どっかに掴まれ 」
 異常に気づいたソロが叫んだ瞬間、ララァが乗っているダスト・スペースが、ガタン!……と大きな音を立てて、繋ぎ目から外れた!そして、そのまま巨大なバイプ・スペースの真っ暗の闇の中へと傾いて行ったのだ!
「いや〜〜!ダメ〜〜〜ッ!!」
 何とかすがり付こうとする努力も空しく、ララァはその中へ落ち込んで行った!更に、森雪・ジェミー・レイア姫・ルーク・ソロ、そしてボンドの計6人が、ダイビング・クイズの如く、斜面と化した通風ダクトを次々と滑り落ちて行く!最後に、宙ぶらりんの姿勢になっていたチューバッカも、その重みに耐えかねて墜落して行った!
「フリント、この下には何があるんだ!?彼らは大丈夫なのか?」
 虚空に向かって、ぽっかりと口を開けている傾いた通風ダクトに、必死に手足を踏んばって掴まっているイーサンを、イリヤとフリントが救い出す。悲鳴と喚き声と怒鳴り声を上げて、闇の中へ落ちて行ったソロたちの姿を伺い知る事は、もはや彼らには出来ない……。
「私の記憶が確かならば……この下には、廃棄物処理場に繋がっている、ダスター・シュートが口を開けてた筈だ。脱出口としては便利でも、侵入するには不向きなので利用しなかったんだが……まあ。心配しなくても大丈夫だろう」
「……と言う事は、つまり……」と、イリヤ・クリヤキンが言う。
「そう!話がやっと、本筋…ダスター・シュートによる脱出へ戻ったのさ。後は放っといても、彼らが無事に姫を送り届けてくれるだろう。俺たちの出番は終わったんだ」
 出番を終えたフリントたちは、ほっと一安心するや、暗闇の中をじっと見つめていた……。



《第22章:〈秘儀の間〉と魔人・加藤保憲…へ続く》


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