【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第2章》 凸凹ロボット珍道中

第2章・イラスト(1)


 帝国超弩級戦艦《トランター》に牽引されている《ブレード・ランナー号》から、R2-D2と共に間一髪逃げ出したC-3POは、緊急脱出ポッドの操縦を自動から手動に切り換えようとしていた。
「これが緊急脱出ポッドの操縦マニュアルですね。なになに……第1ページ。第1章−緊急脱出ポッドの意義について。第2章−使用許可書の申請……こんな所は後回しです!……第5章−操縦者の資格について。第6章−操縦時の正式な服装について……これは、肝腎な所は、まるで載ってないじゃないですか!こんな所は全部省略です!……第9章−操縦前の準備運動について。第10章−操縦の際の心構えについて……何です、このマニュアルは!……何、第11章以降は第2巻?R2-D2!操縦マニュアルの第2巻を、早く!」
 R2-D2がすばやく差し出した第2巻を手に取ったC-3POは、パラパラとページを捲った。
「第14章−操縦パネル各機構名称……これです、これこれ!ふむふむ……」
 食い入るようにマニュアルに目を通していたC-3POの体を、R2-D2がコンコンと突いた。
「何です、R2-D2?」「ピポーピュポ!」
「何?この紙がポッドの扉に張ってあった?」

 C-3POは、R2-D2が差し出した一枚の紙に目を通した。
「この緊急脱出ポッドは修理中につき……何、使用禁止?爆発炎上の恐れあり!」
 慌てたC-3POが操縦装置に手を触れようとした……途端!ありとあらゆる機械類が、片っ端から火を吹き始めた!忽ち、炎が船内を包み、もはやポッドは操縦不能となった!
「ええい!もう、こうなれば非常緊急脱出装置しかありません!」
 C-3POは、最後の頼みの綱−非常緊急脱出装置のボタンを押す。と、壁の一部がスライドし、どさどさっとコウモリ傘が、何本も倒れて来た!
「何!これで飛び降りろって言うんですか!?」
『そうで〜〜す!』
 緊急脱出ポッドの中枢コンピューターが、かん高いソプラノで答える。
『メリー・ポピンズも、フレッシュ・ゴードンも傘一本で飛び降りたので〜〜す。あなたに、出来ない訳が出来ない訳が出来ない訳が……♪デ〜イジ〜、オーマイ・スウィ〜ト・デ〜イジ〜〜……』
「ええい!このコンピューターもとうとう狂ったようです!仕方ありません……行きますよ、R2-D2!」
 外部ハッチがバーン!と剥がれ飛び、C-3POとR2-D2の二人(?)は、傘を開いて外へ飛び出した!
「根性〜〜っ!
may the force be wite 『me』〜〜!

 絶叫するC-3POとR2-D2の横を、炎上する緊急脱出ポッドが轟音を上げながら落下!ズボーッと惑星タトゥーインの地表……大砂漠の中へ潜り込んだ!そして、その直後に二人がフワリと着地する。
「やったぞ、R2-D2!」「番号なんかで呼ぶな!私は自由なロボットだ!」
 そう言うと、R2-D2はC-3POと離れて、勝手な方向へ進み始めた。
「R2-D2!人間語を喋るとは、また音声回路が狂ったんですか?それに進む方向はそっちじゃありません……こっちですよ!台本を良く見てご覧なさい!」
 ♪知〜らない国を〜、歩いて行〜こ〜う〜……。
 R2-D2は、そのまま砂丘の彼方へ姿を消す。
「もう……勝手にしなさい!私は台本通り行きますから!」
 そして、R2-D2と別れたC-3POは、一人ずんずんと進んで行ったが、やがてどこまでも延々と続く砂丘を眺め、今まで来た方向を振り返って呟いた。
「どうやら、私の方の台本にミスプリントがあったようです……」
 C-3POは、胸のハッチをパカッと開けると、地図と磁石を取り出した。
「では、オリエンテーリングと行きましょうか……。この地図によると、モス・アイズリー宇宙港は……何!京都観光案内マップ!?」
 C-3POは、役に立たない地図を、思いっ切り地面に叩き付けた!
「R2-D2の奴!この間の喧嘩の仕返しに、全銀河汎用地図を摺り変えたんですね、あん畜生〜〜!」

 再び、砂漠の中を当てどもなくさ迷い始めるC-3PO……。やがて立ち止まるや、汗(勿論、油汗!)を拭きながら、体内のエネルギー残量を読み取った。
「原子力エネルギー、オイル、冷却水とも、後僅か。どこかにガソリン・スタンドは……?」
 当たりを見回したC-3POの目に、地平線の彼方から、陽炎に揺らめきながら歩んで来る、逞しい一人の男の姿が映った。

 ♪ジャンジャカジャカジャカ……ジャンジャカジャカジャカ……アルディ〜〜ン!アルディ〜〜ン!……
「……イクート、エイ!水は要らんかね〜〜!?」(声の出演:青島幸男)
 助けの神と、飛び上がるC-3PO!
「お〜〜い、水売り屋〜〜!水だ水〜〜!」
「へい!毎度、旦那!」
 水売りアルディンが手渡した壺の中の水を、C-3POは一気に冷却水タンクの中へ流し込んだ。
「ふーっ、これで一息ついた……で、お幾らです?」
「へへ……100クレジットで」
「100クレジット!水一杯で、100クレジットとは高いじゃないですか!?」
「しかし、人間とロボットじゃ飲む量が違いますからねえ〜〜」
「仕方ない……じゃあ、100クレジット。ところで聞きたいんですが、あなたはこの辺の地図を持ってませんか?」
「ああ、地図ならあるよ」と、言って、アルディンが大きな地図を地面に広げる。
「こっちに行くとバクダット。こっちがバラージ。こっちがアラキーン。こっちがモス・アイズリー……」
「これこれ、これです!済みませんが、この地図を売って頂けませんかねえ?」
「これは売りモンじゃねえ!これを売っちまったら、俺は砂漠の迷い子になっちまうじゃねえか!」
 ♪一つ曲り角〜〜、一つ間違えて〜〜、迷い道く〜ねくね〜〜……
「じゃ、案内して下さい!モス・アイズリーまで……いや、贅沢は言いません。ガソリン・スタンドのある所までで結構です!もうすぐエネルギーが無くなるんです!」
「じゃ、俺について来るんだな!」

 C-3POは、先に立って歩き出すアルディンの後をトボトボとついて行った。だが、モス・アイズリーまでの道程は遠い……。二人を焼き焦がさんばかりに、ギラギラと照りつける太陽!砂漠……また砂漠の果てしない繰り返しで、どこまで行っても全く変化の見られないタトゥーインの地表は、じっと黙っていると、気が狂ってしまいそうなくらい単調な風景だ!元々、通訳用ロボットとして、黙っていられない性質(?)のC-3POは、アルディンと一緒に絶え間なく喋り続けていた。
「ほほう……。では、あなたはあちこちの惑星で、いろんな経験を積んでこられたんですね?」
「ああ!俺は王様にもなったし、大金持ちもやったし……直木賞作家だって、いや!東京都知事までやったさ!俺様ほど、星と言う星を渡り歩いて来た男は、他にはいねえぜ!……それに比べて、この星は」
 アルディンが、周囲をグルッと見回して呟いた。
「な〜〜んにもねえ、退屈な星だ」
 「本当ですねえ」と、C-3POも同意する。

 突如、アントラーが唸りを上げて出現し、空飛ぶ絨緞に乗ったアリババと40人の盗賊が隊商を襲撃し、ジョン・ウェインとジュリアーノ・ジェンマとクリント・イーストウッドの乗った駅馬車を、ケビン・コスナー率いる数百人のインディアンたちが追い、もうもうたる砂煙と共に「ムアドディブー!」と叫ぶ聖職者戦士団が、彼らの横を通り抜けて行った!
「カタツムリ枝に這い、神 空にしろしめす。すべて、世は事もなし……か」
 そう言って、空を見上げるアルディン。同じように空を見たC-3POが呟く。
「空にあるのは太陽ばかり……」
 突如大空を、鷹が飛び、鷲が飛び、火の鳥が飛び、プテラノドンが飛び、モスラが飛び、ガメラが飛び、キングギドラが飛び、ゴジラが飛び、モンティ・パイソンが飛び、家光の首が飛んだ!
 0戦が飛び、メッサーシュミットが飛び、リンドバーク号が飛び、シュピーゲル号が飛び、ウルトラホーク1号が飛び、サンダーバード1号が飛んだ!
「国際救助隊だ!」
 C-3POは飛び上がった!
 ♪サンダーバード〜〜、青く光る広〜い宇宙〜に、行け風を巻いて〜〜……
「お〜い、お〜い、待ってくれ〜〜!」
 C-3POはアルディンを放り出して、どんどんサンダーバード1号の後を追った!やがて遠く引き離され、はっと気づいた時には、C-3POは再び砂漠の真っ只中に取り残されていた。「お〜〜い!」と、C-3POが怒鳴る。
『お〜〜い。お〜〜い。お〜〜い……』
 砂漠ビコが帰って来た。
「誰もいないのか〜〜!」
『誰もいないぞ〜、誰もいないぞ〜、誰もいないぞ〜……』
「本当か〜〜!?」
『嘘だ〜、嘘だ〜、嘘だ〜、嘘だ〜……』
「何い〜〜〜!」
『こっちを見ろ〜〜、こっちを見ろ〜〜、こっちを見ろ〜〜……』
 C-3POはじっと地平線を見つめた。砂漠の彼方に何か巨大な物体が動いている。そしてそれは、次第にC-3POに近付いて来た……。

 ……ここで話を、R2-D2に戻してみよう。C-3POと別れたR2-D2は、台本通りに道を辿り、砂漠を抜け、オビ・ワン・ケノービの家を目指して、着々と進んでいた。と、彼は、岩の向うで何かがちらちらと動いているのに気づいた。実体を見せずに忍び寄る黒い影!
 ♪誰だ〜、誰だ〜、誰だ〜〜!闇の向うに潜む影〜〜……
 逃げられない事を知ったR2-D2は、いきなり体の中央部のローラーを引っ込め、最後の秘密兵器−エピソード2で披露した「ジェット噴射」で火を吹いて、ズガーーッ!と宙に舞い上がった!
「逃がすな!」
 かん高い声と共に、7人のジャワズがいきなりクイムするや、パッとR2-D2の体の上に出現した!
『ギョエ〜〜〜!』
 重みに耐えかねたR2-D2が、マコトちゃんのような悲鳴を上げて、真っ逆様に墜落する!
「さあさあ!こいつを、早くサンド・クローラーに積み込むんだよ!このスカポンタン!」
 ジャワズの厳しい監督官−女ボスの白雪姫の鞭が唸り、ジャワズの40人の小人を急き立てた!
 ♪ハイホー、ハイホー、足取〜り軽く〜〜!
 あっと言う間にジャワズに捕まったR2-D2は、行動規制ボルトを嵌られて、シュッ……ガタン!と言う音と共に、砂と油と埃で汚れ切ったロボット置き場へと放り込まれた!

「おっ、新入りだな!」
 そして、そのロボット置き場の中央に、錆びた鉄板を高く積み重ねて、どっかと腰を下ろしているの牢名主は、誰あろうフューチャーメンのグラッグだ!
「よく来たな!ここは、時代に取り残され、読者に見捨てられ、作者にも忘れ去られた、古き良き時代の《スペース・オペラ》に登場したロボットが、最後に辿り着く場所……通称『スペ・オペの墓場』だ。そして、俺がここの牢名主のグラッグだ……ところで、てめえの名前は?」
『ピープー、ピュープー』と、R2-D2が答える。
「R2-D2……お前なのか!?」


第2章・イラスト(2)
 いきなり物陰から飛び出して来て、R2-D2に抱きついたのは、先にジャワズに捕われていたC-3PO!そして二人の間で、あっと言う間に喧嘩が始まった!
「貴様……この!お前のせいで!」『ピポピュポ、ピュポポーッ!』
 R2-D2とC-3POの愛情溢れる(?)喧嘩を目にし、鉄板の上にふんぞり返ったグラッグが、ウムウムと頷く。
「そうそう……!やっぱり、喧嘩友達ってのは、こうでなきゃ嘘だ!俺とオットーとの間も、そうだったしなあ……。上辺だけ、見せ掛けだけの友達じゃ、こうは行けねえ!これこそ、本物の友情ってもんよ!」
 一人納得しながら、薀蓄を垂れるグラッグ……。が、その途端、C-3POに投げ飛ばされたR2-D2が、グラッグの頭部にまともに命中した!ガラガラガッシャ〜〜〜ン!けたたましい音を立てて、鉄板から転がり落ちるグラッグ!


「てめえ〜〜!俺は怒ったぞ!!」
 鉄拳を振り上げて、C-3POに飛び掛かろうとするグラッグを、背後からフライデイが、がっしりと押し留める!
『グラッグサン!ロボットハ、本来科学的、理性的、客観的ナ存在ノ筈デス!ロボット三原則ハ、一体ドウナッタンデスカ?』
「うるせえー!スペース・オペラのロボットに『ロボット三原則』があって、悪党共を殴れるかあ!ええい、ロボットの情けじゃ……離せ!離してくれえ〜〜!」
 C-3POとR2-D2は派手に殴り合い、喧嘩に飛び込んで行こうとするグラッグを、フライデイが背後から必死に押し留める。かくして、惑星タトゥーインに陽は沈んで行った……。




《第3章:銀河悪役大会議…へ続く》


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