【パロディー・スターウォーズ/ジェダイの復習】

《第18章》 集結!デス・スター!!

♪ 汽車は〜〜闇を抜〜けて〜〜光の海へ〜〜

 漆黒の宇宙空間を進む、一筋の輝線……。空間シールドに守られ、真空のただ中を煙を吐いて驀進する列車−銀河鉄道999だ。ルークとの久々の再会を果たせず、銀河大学星の寮に帰る為、惑星タトゥーインの駅から999に乗ったタダとフロルは食堂車へ向かっていた。
「ちぇっ、タダ。何であんな砂ばっかりの星へ行ったんだよ?おかげで、ほら!」
 フロルが金髪の巻き毛を両手でかき回すと、その中から砂がパラパラとこぼれ落ちる。
「頭が砂だらけじゃん!これじゃ、寮へ帰ったら真っ先にシャンプーしなくっちゃ」
「僕は確か、君に別について来なくてもいいって言ったんじゃなかったっけ?」
 タダがすました顔でそう言うと、フロルはぐっと詰まった。
「でもさあ、折角の休みだったんだもん。それに前にも言ったけど、タダの故郷の星と昔の恋人の顔も見たかったしさ」
「……フロル!」
 そう怒鳴ったタダも、フロルの照れ恥ずかしそうな顔を見ている内に、思わずプッと吹き出した。
「分かった。分かったよ、フロル。それじゃ、その事はもう忘れて、食事に行こう」
 タダのその言葉に、フロルの表情がいっぺんに晴れやかになり、さっとタダの腕を取った。
「早く行こうよ〜〜!もう、お腹がペコペコなんだからさあ〜〜!」
 フロルに引っ張られるようにして食堂車に赴いたタダだったが、中にはほとんど人が居らず、先客は彼らの他には二人だけだった。

「先客みたいだ。フロル、先に座っててくれないか?僕はちょっと挨拶してくるから」
 タダは、差し向かいで食事を取っている少年と、妙齢の女性に近付いて挨拶をした。
「お食事中すいません。僕は、この前の惑星タトゥーインからこの999に乗った者で、タダトス・レーンと言います。宜しく……」
 タダの丁寧な言葉に、二人は目の前の料理から目を離して、タダの方を向いた。ロシア風の黒のファッションに身を包んだ美女が、ニッコリ微笑んで答える。
「まあ、わざわざご丁寧に。私の名はメーテル。彼は星野鉄郎です」
「よボしク……ボクは、星野鉄郎…ゲフッ!ゲホッ、ゲホッ!」
「大丈夫、鉄郎?慌てて喋ろうとするからよ!」
 食べ物を口にほおばったまま挨拶しようとした鉄郎は、喉を詰まらせてむせ込んだ。彼の背中をトントンと叩くメーテル。タダも彼の姿を見て、思わずクスクスと笑いを洩らす。
「貴方がたはどちらへ?」
 メーテルは、座席で手持ち無沙汰にしているフロルを、ちらと見て言った。
「僕たちは、これから銀河大学星へ帰る所なんです。貴女がたは……?」
 タダが何げなく発した質問に、メーテルの表情が微妙に変化したが、鉄郎の陽気な声がそれを被い隠してしまった。
「僕たちは、ただで機械の体にしてくれる星へ行くんだよ!ねえ、メーテル?」
「へえー、機械の体ねえ?ガンガみたいな、サイボーグになりたいのかなあ?」
 目を丸くしてつぶやいたタダの袖を、いつの間にか側に近付いていたフロルが引っ張った。
「ねえ、タダ〜〜!いつまでもお話なんかしてないで、早く食事にしようよう〜〜!お〜い、ボーイさん、メニューは〜〜?」
 フロルのその大声に、メーテルがくすりと笑った時、食堂車の一方の入口から、顔の見えない車掌がタッタッタッと小走りに現れた。

「ボーイさん、早くメニュー見せてよ〜〜!」
「お客さん、私はボーイではありません。この999号の車掌です!」
「うーっ。じゃ、早くボーイでも、ウェイトレスでも良いから、早く呼んでよ〜〜!俺、お腹ペコペコなんだからさあ!」
「うーん。まあ、良いでしょう!今日のお客様は、貴方がた四人だけですから……。どうぞメニューを」
 フロルは、車掌がさっと差し出した列車の食事メニューに目を通しながら言った。
「今日のお推め料理は何なの?」
「メーテル様と鉄郎様が、只今お召し上がりになられている、キノコ料理のフル・コースです」
「美味しいよ……このキノコのソテー。何だか、よ〜く食べ慣れたような味がしてるんだ!」
 鉄郎が、皿の上のキノコをフォークで突き刺しながら言った。
「そう……かしら?私には、ちょっと変な味に感じられるんだけど」と、メーテルは首を捻る。
「それはその筈です。あのキノコは、鉄郎様のご先祖縁りのキノコ……サルマタケですから!」
「サ…サ…サ…サルマタケ!?」と絶句するフロル。
「あの…湿気の多い押し入れに生えるって言うやつ?」
 タダの問いに頷く車掌。その途端鉄郎は、腹の中から何かがこみ上げ、トイレへと走った!
『……オ、オエエ〜〜!』
 鉄郎の嘔吐する声が、隣の車両から断続的に聞こえて来る。
「車掌さん……私、胃薬貰えないかしら?」
 メーテルもお腹を押さえて、憂鬱な表情を見せる。
「オレ、もう食欲無くなっちゃったよう〜〜!」
 フロルとタダがげっそりとなって、顔を見合わせる。皆の態度に困惑する車掌……。と、列車内にピーと惑星到着信号音が鳴り響き、車掌はさっと姿勢を正して、直立不動のポーズを取った!

「次の停車駅は、惑星アルデラーン。惑星アルデラーン。停車時間は、25時間と……」
 車掌がそこまで言った時、突如として999は横ざまに大きく波打ち、車掌を含めた5人は列車の床に叩きつけられた!
「ど、どうしたってんだよ、一体!?」
 やっとの事で、トイレから戻って来た鉄郎が叫ぶ。床から起き上がった彼らは、尚も上下左右に激しく揺れる999の窓から外を見た。
「星の……星のかけらが!999にぶつかって来る!」
 フロルが叫んだ通り、銀河鉄道の空間シールドをブチ破り、宇宙空間の一角から999目掛けて、雨霰と巨大な星のかけらが降り注いで来た!自由を失った999は、あたかも瀕死の龍の如くのたうち回る!やっとの事で彼らが列車制御室に辿り着いた時、そこは鳴り響く警報の渦の中だった!
「一体、何が起こったの?……コンピューター、返事をしなさい!」
 メーテルの問い掛けに、999の中枢コンピューターは、あたかも人間のように絶叫した!
『惑星アルデラーン消滅!空間シールド大破!列車制御不能!……惑星アルデラーン消滅!空間シールド大破!列車制御不能!……』
 制御不能になった999は、粉々に砕け散った惑星アルデラーンの破片を、必死にかわしつつルートを変えようとしていたが……。突如、何者かが999を外部から強制停車させた!急ブレーキがキキーッと掛かり、鉄郎たちは列車の床に大きく叩きつけられた!
『999停止せよ!こちらは帝国機動要塞デス・スター!……999停止せよ!こちらは帝国機動要塞デス・スター!この空間は、現在帝国の進入禁止区域である!直ちに停止せよ!』
 消滅した惑星アルデラーンの向うにそびえるデス・スターが999に迫る!空間軌道を破壊され、外部からすべての電源を強制停止させられた999は、なすすべもなく、そのままデス・スターの中へ強制収容されて行った。その横っ腹に、音もなくピタリと張り付いた一隻の宇宙船−オンボロ宇宙船に偽装したコブラのタートル号の存在を、些かなりともデス・スターに気取られる事もなく……。


               ※

『デス・スター、デス・スター……停車時間は無期限です……』
 広々とした第10宇宙船発着場に、構内アナウンスが響き渡る。牽引ビームで、デス・スターへ強制着陸させられた999への、帝国軍による臨検が始まった……と言っても、銀河サーカス団の大興行を数時間後に控えている為、出て来たのは当直兵がたった4人だ。
『こちらアルコンのトーザ。ただ今、ガミラスのジオスと共に、先頭車両より999を臨検中……人影は見当たりません』
 発着場の監視所に無線連絡を入れながら、床の上のゴミを拾い、網棚の雑誌を集める2人のストーム・トルーパーズ。
『こちらはクリンゴンのノヴァ。サイロンのロボット兵ECCと共に、最後尾より臨検中……。依然、人影はありません』
 車内の動く者は、すべて射殺する!……とばかりに、全身から殺気をみなぎらせながら、銃を構えた2人のストーム・トルーパーズが、丁寧に列車の窓を閉めて行く。列車の前後から、次第次第に迫って来る4人のストーム・トルーパーズに、列車内の唯一の乗客……メーテルと鉄郎、タダとフロルの4人、そして999の車掌は、徐々に追い詰められつつあった。
「タダ!オレ、まだ死にたくないよう〜〜!」
 みっともなく、タダにすがり着いてガタガタと震えるフロル!逆に鉄郎は戦士の銃を構えて、メーテルを庇おうとする。
「メ……メーテル!いざと言う時は、ぼ…僕が君を守る!」
「わ、私は一体どうすればいいんでしょう?」
 慌てふためいて、列車内をドタバタと駆け回る999の車掌。タダはそんな車掌をひっ捕まえて言った。
「車掌さん、お願いがあります。もうじき帝国兵がやって来るから……その時は、この999は回送中で乗客は乗ってないって言って下さい」
「で、で、でも……一目、あなたたちを見れば、そんな嘘は直ぐに分かってしまいますよ!」
 帽子の奥の闇に隠れた、車掌の目が弱々しくまたたき、冷汗が次から次へと流れ落ちる。
「大丈夫……僕に任せて下さい!」
 自信たっぷりにウインクしてみせるタダに、メーテルが近寄って言った。
「あなた……もしかして、超能力者?」
「ええ。銀河大学星では、僕はパイロットコースを修得してるんですが……超能力の素質があるって言われたんで、そっちのコースも勉強してるんです」
 そして、タダの指とメーテルの指が触れ合った瞬間、二人の心に鮮やかな心象風景が広がった……。

 哀しみを風に乗せて、吹雪が舞うアリトスカ・レの荒野……そして、生命を奪われた人間たちの悲哀が、虚しく渦巻く、美しくも冷たい機械化母星……。二人の悲しい想い出が、タダとメーテルの心を静かに結んで行く……。
『タダ……タダ……!』『君は……四世…なのか?』
 いずこから聞こえてくるのか……?自分の名を呼ぶかつての友の想いを心で聞くタダ……。と、突如として、その声が断ち切られた!
「……タダ!僕以外の女の人と、そんなに熱っぽく見つめ合っちゃ、ヤダ!」
「メーテルは僕んだ!誰にも渡さないぞ!ガルルル……」
 タダの腕を引っ張って、メーテルから引き離すフロル!歯を剥き出し、目を狂暴に輝かせて、メーテルを男(?)の手から守ろうとする鉄郎!フロルと鉄郎の視線がぶつかり、激しく火花を散らす!と、その間に車掌が割って入った。
「鉄郎さんもフロルさんも、何をしてるんです。今は、そんなライバル意識を剥き出しにしてる時ではないでしょう!」
 はっと我に帰ったタダは、慌てて列車の前後を見渡した。
「そ、そうだ!こんな事してる暇はないんだ……メーテルさん。僕が先にここへ来た兵士たちに、催眠暗示を掛けますから……。もしその間に、反対側から兵士がやって来たら、何とかして彼らの注意をそらして下さい。僕も、一度に4人は無理ですから……」
「分かったわ、タダ」
「来ました、タダさん!」
 メーテルが頷くのと同時に、車掌が叫んだ。一両前の列車との連結扉が開き、ストーム・トルーパーズが入って来る。車掌は、おっかなびっくりのまま、彼らの前に進み出た。
「貴様……何者だ?」
 車掌に向かって、瞬時に銃を突き付けるストーム・トルーパーズ。
「わ、わ、わ……私は、この999の車掌……です。この列車は、只今回送中で……乗客はおりません。……本当です!」
 そこまで、必死の思いで喋る車掌。だが、ストーム・トルーパーズは、タダたちの姿を目にするや、車掌を突き飛ばして言った。
「誰もいないだと?嘘をつけ!現に、あそこ……に……いる……」
 ストーム・トルーパーズの仮面の奥の視線が、タダとぶつかった時、強烈な催眠暗示波が、タダから彼らの脳髄の奥へと飛び込んで来た。
『ここには、車掌以外誰もいない……ここには誰もいない……この列車は回送中だ……回送中だ……』
「この列車……には、車掌……以外、誰……もいな……い……」
 意志の力を失い、銃を構えていた手を力なく投げ出して、タダの暗示の通りに喋り始めるストーム・トルーパーズ。
『ようし……後少しだ!後少しで、暗示が完璧になる……』
 タダが大きくうなずいた時、列車の反対側の扉が開く音がした。
「クソッ!あと少しなのに!」「任せて、タダ!」
 タダとメーテルの視線が合うや、メーテルは身を翻して、後から入って来たストーム・トルーパーズの目の前に立ち塞がった。
「女か?……こんな所で何をしとる!?」
「あなたたちを待ってたのよ……さあ、私の目を見て……」
「……何だ、一体?」
 メーテルの目を覗き込む二人のストーム・トルーパーズ。と、メーテルの青い瞳が妖しく輝くや、二人はメーテルの魅力に心臓を射抜かれ、情けない顔付きのまま、フニャフニャと床に崩折れてしまった……。
「凄いや、メーテル! 一体、どうやったの?」
 メーテルの特殊能力(?)に感嘆する鉄郎!
「ロボット兵も悩殺しちゃうなんて……オレも見習わなきゃ!」
 と、変な所で意欲を燃やすフロル。メーテルは、タダが倒れたストームトルーパーズに暗示を掛け始めると、鉄郎に向かって言った。
「私はね……鉄郎。あなたがまだ知らない能力をいろいろと持ってるの。まだ若いから、余り縁がないでしょうけど……『女の魅力』って言うのも、立派な能力の一つなのよ」と、ミステリアスな笑みを浮かべるメーテル。
『メーテルって……僕には分からない秘密を、まだまだ持ってるみたいだ……』
 鉄郎は、メーテルの持っている不思議さを、改めて確認した。
「よし、これで片づいた!」
 はっと鉄郎が我に返ると、タダの暗示能力に支配されたストームトルーパーズが、監視所に『異常なし』の連絡を入れた所だった。2組のストームトルーパーズは、今や何事もなかったかのように999の車両から出て行った。
「これで、この列車は回送中で無人……と言う事になったから。暫くは、邪魔は入らないよ」
 一仕事終えたタダは、ぐったり床に座り込んだ。
「で、でも。ここから脱出するには、ど…ど…ど…どうしたら良いのでしょう?」
 頭を抱え込んで、弱々しく呟く999の車掌。フロルは心配げにタダにすがりつき、鉄郎はメーテルと顔を見合わせた。
「とにかく……事態が何らかの進展を見せるまでは、むやみに動き回らない方がいいわね」と、メーテル。
「賛成です……。ここでじっとしてれば、これ異常厄介な事にはならないだろうし。僕の直感も告げてるんです……。ここで待ってると、僕が良く知ってる誰かと出会う……」
 と、そう言い掛けたタダは、グッタリとなって、フロルに倒れ込んで来た。
「ねえ……ねえ!どうしたの、タダ!?」
 急に自分に寄り掛かって来たタダを揺り動かすフロル。その手をメーテルが優しく押さえる。
「超能力の使い過ぎで、急激に体力を消耗して、眠ってるだけだから。心配しなくても大丈夫よ」
 フロルの肩に、心地好さそうに頭を預けたタダは、静かな寝息をかきながら、そのままグッスリと眠り込んでしまっていた。タダの体を、そっと優しく抱きしめるフロル。それを見ていた鉄郎が振り返るや、目を輝かせながら、メーテルに飛びついて行った!
「メ〜デル〜〜!ぼぐも抱いでぼじい〜〜!」
 そう鉄郎が言った瞬間、車掌とメーテルの二人が、同時にその頭をハリ扇で張り倒した!隣の車両までスッ飛んで行く鉄郎!
「アホかっ!おのれは〜〜!!」「出直して来なさ〜〜い!」
 999の食堂車でのどつき漫才は尚も続く……。


               ※

 一方、デス・スターへの侵入を図って、透明偽装装置で姿を隠し、これ幸いと999の横っ腹にくっついていた〈タートル号〉は、デス・スターの保護バリアー内部に入った瞬間に転針。隣の第9宇宙船発着場に向かい、音もなく着陸したかと思うと、そのまま外観を半壊したオンボロ宇宙船に偽装して姿を現わした。
「おや……?あそこに、あんなオンボロ宇宙船あったっけな?」
 第9宇宙船発着場の監視所では、隣の第10宇宙船発着場から、回送中の銀河鉄道999を強制収容した事を聞かされていた、片腕が義手の当直士官ハン博士がスクリーンを見つめて呟く。
「アルデラーン攻防戦が終わったら、銀河大サーカス団の巡行公演。銀河鉄道999……と来て、今度は見馴れぬオンボロ宇宙船か。よくこう次から次へとやって来るモンだ。これでは、わしら宇宙船発着場の管制担当士官は忙しくてたまらん!おまけに、楽しみにしとったサーカス団の公演も見る事が出来ん!」
 ブツクサ不満を洩らすハン博士を、もう一人の当直士官トゥー・フェイスが、厳しく叱責する。
「ハン博士よ、何たる言い草だ?それでも、栄光ある銀河帝国の幹部のつもりか。そのように不遜な事を口にするようでは、次の軍法会議で告訴せねばならん!」
 かつて、ゴッサム・シティーにおいて、正義の側に立っていた法の番人。謹厳実直なハーヴィー・デント鬼検事の面影を残した片面が、厳しくハン博士を責め立てるや、裁判所でギャングに硫酸を浴びせ掛けられて、醜く歪んだ悪役としての片面が、それに反駁した。
「な〜〜に、固い事言っちゃってんだよう。まだ昔の自分が忘れられんのかねえ?世の中は、楽しく、愉快に……そして悪どく生きていかなくちゃ。アハハハハハハ!……ねえ、ノオ博士?」
 眉間に皺を寄せた深刻な顔つきから、一変して狂気に満ちた笑い声を振り捲くトゥー・フェイス!それに対し、ハン博士はプライドを傷付けられたかのように、ムッとなって言い返した。
「トゥー・フェイス!私は『007は殺しの番号』のドクター・ノオではない。私は『燃えよドラゴン』のドクター・ハンだ!ドクター・ノオ?……ノオ!」
「何それ?シャレのつもり?」
 嘲るように笑うトゥー・フェイスのサイケデリック・フェイス!
「確かに……私は片手が鋼鉄の義手で、『007は殺しの番号』のドクター・ノオが、モデルになってはいるが……。それでも、あやつと間違えられるのには、我慢がならん!」
 怒り狂って、義手を振り回すハン博士。一人でボケとツッコミをこなす、一人漫才のトゥー・フェイス。監視所のストーム・トルーパーズが呆れて、彼らを見つめる中……オンポロ宇宙船に偽装したタートル号からは、コブラやルパン三世、次元・五右ヱ門・高飛びレイク・ボビイの6人がひそかに抜け出し、先にデス・スターに到着していた銀河サーカス団団長ジャレス(実は、七色いんこ)の控え室へと向かっていた……。


               ※

「やれやれ……後少しで、やっと惑星アルデラーンに到着だ。早いとこ、あいつら放り出して、とっととおさらばしたいもんだぜ……」
 惑星タトゥーイン離陸時の帝国軍との撃ち合い、(神龍に助けてもらい、辛うじて脱出には成功したが……)宇宙の果てでの放浪。そして、船内でのホログラム・モンスターとのドタバタ……と、立て続けに次から次へと起こった騒動に、精も根も尽き果ててしまったハン・ソロは、操縦席に突っ伏しながら呟いた。一方、そんなソロの想いなどはどこ吹く風。帝国における野党勢力の中心的人物たる、惑星アルデラーンのオーガナ大統領に直々に会えるとあって、女性陣は身だしなみに余念がない。ヘアーとメイクを調え、衣装のチリを払い、鏡に映った自分を惚れ惚れと眺める……。古代やルークたち男性陣も、負けてはいられない!勇気ある戦士に相応しく、キリッとした男らしいメイクを施して格好をつける。更には、オビ・ワンまでもがヒゲを調え、銀髪にムースを塗って、カメラ映りを考えている!
『アルデラーンのオーガナ大統領に会うのは、密かにレイアを預けに行って以来じゃから、もうかれこれ15年以上になるか……。あいつの無責任振りには、わしも大いに悩まされたもんじゃ!』

 昔日の日々……。オビ・ワンがまだジェダイ候補生だった頃から、アルデラーンの大統領のボンクラ……いや、いや。一人息子だったヒトーシ・ウエキ−当時、銀河大学星を卒業したばかりだった−は、オビ・ワンの悪友だった。極端に気が短く、喧嘩っ早いオビ・ワンと、気長で口がうまいヒトーシの二人は、「オビに短し、ヒトーシに長し」と言われ、銀河でも名高いコンビだった。ただし……悪い意味でのだ。東に悪辣な侵略者ありと聞けば、二人で行って叩きのめし、西に悪政に悩む星があると聞けば、その独裁者の秘密を掘り起こす!正義感にあふれた二人の行状には、何ら悪意はなかった。ただ毎回、成果を大幅に上回る被害が必ず生まれ、その後始末をしようと言う気が二人には全く無かったと言う事以外は……。その意味で、二人は「銀河一の無責任コンビ」だった。


 ♪ ちょいと一発のつもりで殴り〜〜、いつの間にやら大惨事〜〜。気が付きゃ、ヨーダの住まいで小言〜〜。これじゃ修業も進む訳ゃ無いよ……。分かっちゃいるけどやめられねえ〜〜〜!

 二人が行くところ敵はなく、その後にはペンペン草も生えないとまで噂された。正に、かつて銀河を恐怖に陥れた(?)ダーティーペアの再来だった!
『わしもあいつも、もう孫がいてもおかしくない年齢になってしまったが……。まだまだ、これからじゃ!帝国をぶっ潰して、再びこの世に正義と平和を取り戻すまでは、くたばるにくたばれんからな!さあ〜〜て、久し振りに顔を会わした時にゃ、何て言ってやろうかい……?』
 ニヤニヤしながら、オビ・ワンが回想にふけっていると、ハン・ソロの声が船内スピーカーから聞こえて来た。
『え〜〜。乗客の皆様、これよりハイパー・スペースを脱し、惑星アルデラーン空域に到着致します。長らくのご搭乗ありがとうございました……』
 そこまで言ってから、ハン・ソロがマイクのスイッチを切り、ニヤッと笑う。
「……なんて、俺が感謝する訳ねえだろ!さあ、さっさと俺の船から出てくんだな。疫病神さんよ!」
 これであいつらから解放される。ほっと一安心したハン・ソロの目の前に、通常空間が姿を現した……その途端!

「……危ねえ!」
 そう叫んだソロが舵を切るや、真正面から飛来して来た巨大な岩塊を、〈ミレニアム・ファルコン〉は間一髪で避けた!ソロの曲芸なみの素晴らしい操縦テクニックで宙返りと反転を繰り返し、次から次へ襲ってくる、大小様々な岩塊を避け続けたが……。それでも激突する破片で、船内に轟音と震動が響き渡る!
「畜生!神龍め……やっぱり場所を間違えやがった! こりゃ『帝国の逆襲』に登場するアステロイド・ベルトじゃねえか!」
 吐き捨てるように言うハン・ソロ。その背後に、大勢の足音が聞こえて来る。突然の事態に、何事か?…と駆け付けてきたオビ・ワンたちだ。
「どうしたの?一体ここはどこよ!」
 目的地の惑星アルデラーンではなく、小惑星帯に突入したが如き光景に、思わず叫ぶ蘭!
「アルデラーンはどこへ行ったのよ?まさか……あなた、また座標を間違えたんじゃないでしょうね?」
 柳眉を坂立てて睨み付ける明日香に、無責任に返答するソロ。
「そんな事あ、俺は知らねえよ!聞くんだったら、ここまで俺たちを送り届けてくれた神龍に聞くんだな……大方、奴が今度も場所を間違えたんだろうぜ!」
「じゃあ、ここはアルデラーンじゃないって言うの?」
と、ソルジャーが言った途端、不意に七瀬がガクリと膝を着いた!
「どうしたの……七瀬?顔色が真っ青よ!?」
 リーザの差し伸べる手を振り切って、両手で耳を被う七瀬。その表情は、耐え切れないほどの苦痛に責め立てられているかのようだ。やがて、彼女は何かに憑かれたようにして、途切れ途切れに呟き始めた……。
「痛い……恐い……苦しい……。死…絶望……悲しみ……!いや、いや!…いや!……いやあ〜〜!!」
 絶叫する七瀬を、がっと抱きかかえたオビ・ワンが何事か呟くや、七瀬はくたっと彼の腕の中に崩折れ、意識を失ってしまった!彼女の体を寝椅子に横たえるオビ・ワン。だが、それでも七瀬は、目に見えぬ苦痛に喘いでいた……。
「ど、どうしたんです、先生?」
 心配そうに七瀬を覗き込んで来る弟子たちに向かって、オビ・ワンは悲痛な声で告げた。
「ここは惑星アルデラーンじゃ……他のどこでもない……。だが、ここには生きる者は誰一人としておらぬ。お前たちも、目の前の光景だけに目をやるのではなく、精神を集中して、心を磨ぎ澄ましてみよ!周囲から……この船を取り囲んでいる宇宙空間から、限りない苦しみと悲しみを訴えて来る『心の声』が聞こえて来る筈じゃ。むりやり死に至らされた、何億という人々の無念の想いがな……」
 オビ・ワンの言葉に、全員が一斉にその意味を悟った。
「帝国軍だわ!こんな……一つの星に住む何億もの人間を、すべて殺してしまうなんて……。こんな非道な事出来るの、帝国軍しかいないわ!」
 思わず顔を被って泣き出してしまうエイリア!それを見つめるルークたちも憂い顔だ。『……そいつは誤解だ!惑星アルデラーンが吹っ飛んだのは、わしらのせいじゃないぞ!』と言う、ターキン総督の呟きが、画面外から聞こえて来る……。
「七瀬は人一倍テレパシー能力が強いからのう……。死者の無念の想いが止めどなく入り込んで来て、自分で制御する事が出来ん様になったのじゃ……」
『ヒトーシよ。お主と顔を会わす事は、もう出来んようじゃな……。言いたい事が山ほどあったのじゃが……』

 オビ・ワンが〈ミレニアム・ファルコン〉の窓の外に目をやる……。もはや、顔を会わすことの出来ぬ友の姿を、彼が思い浮かべていると、何か大きな看板のような浮遊物が目に入って来た。
「なになに?……えーっと…『徹底討論!迫る帝国軍!!/消滅するのは、デス・スターか? アルデラーンか?』じゃと……?そうか、消滅したのは、アルデラーンの方じゃったな……何、デス・スター!?」
 流れて来た「朝まで生会議」のパネルの残骸に目をやっていたオビ・ワンがギクッとなる!と、その時ハン・ソロが呑気に声を掛けた。
「お〜い!ちょっとばかし聞きたいんだが……。到着地がこうなっちまったら、俺はあんたたちをどこに降ろしたら良いんだあ〜〜?」
「う〜ん、それはじゃなあ……」と、返答に詰まるオビ・ワン。
「……なんだったら、あの大きな月にでも降ろしてやろうか?」
「何じゃとて?」
 そう言って、オビ・ワンはソロが指さした「月」を見つめたが……。〈ミレニアム・ファルコン〉が急加速した為、思わず転倒。ソロの座席に捕まって、やっと起き上がった。
「ソロ船長。何も、そんなに慌てて行く必要はないぞ!それに、アルデラーンにあった月は、あんなに大きかったかったかな?」
 自分の記憶に照らし合わせて、首を捻るオビ・ワン。だが、ハン・ソロは操作パネルのあちこちのボタンを押しながら叫んだ!
「俺がやってるんじゃねえ!勝手に船が、あの月目掛けて突進してくんだ!……クソッ!!」
「ウォーーーッ!」
 チューバッカも、その馬鹿力で何とか船の支配権を取り戻そうとする。だが、どんなに力を振り絞って操縦桿を握り締めても、船はますます「月」に向かって進んで行くばかりだ!
「畜生!まるで、あの月に吸い寄せられてるみたいだぜ!」
「ソロ船長!あれは『月』ではない!アルデラーンは、確かに六つの月を持っておるが……。あのように巨大なものではない!あれは……あれは……!」
「もしかして……デス・スター?」
 ルークが、オビ・ワンの言葉を先取りして言った!「そうじゃ、ルーク!おそらく、アルデラーンはデス・スターによって破壊されたのじゃ!それに違いない!」
 先程の流れて来た看板を思い出したオビ・ワンが断言した。「デ、デ、デ、デス・スター……だってえ!たかだか女・子供を11人ばかり運ぶだけってえ仕事だって聞いてたのに……何でこんな事になっちまったんだあ〜〜!」と、頭を掻きむしるハン・ソロ!
「どうにか出来ないんですか?」と、問いかける古代を、苛立たしげに睨み返すチューバッカ!
「畜生〜〜!やっぱり、こんな仕事引き受けるんじゃなかったあ〜〜!!」
 天に向かって絶叫するソロ!その間にも、〈ミレニアム・ファルコン〉は見る見る内に牽引ビームによって、デス・スターへと引き寄せられて行った……。999、タートル号……そして〈ミレニアム・ファルコン〉。舞台をデス・スターに移し、遂に役者が勢揃いした!



《第18章:MISSION IMPOSSIBLE!…へ続く》


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