【パロディー・スターウォーズ/ジェダイの復習】

《第17章》 皇帝暗殺計画

 ここで話を、再びデス・スターに戻す事としよう。デス・スターのF−19区画。ここは、ターキン総督のプライベート・ルームだ。アルデラーンの劇的な消滅後、側近と共に祝杯を上げていたターキン総督に向かって、ダースベイダーが進言した。
「……さて、閣下。めでたくも、アルデラーンを始末致しました上は、皇帝陛下にもそろそろ中央星庁へとお戻り頂く頃合いかと……」
「そうだな……帝国幹部への顔見せの行事も終わった事だし、そろそろご帰還して頂くとするか……。では、皆の者……参るぞ!」
「かしこまりました、総督」
 ダースベイダーが、総督と共に立ち上がる。先に歩き出したターキン総督が、ふと周囲を見回すや、ダースベイダーに尋ねた。
「ところで、ベイダー……。いつもお前に引っ付いておる筈の秘書はどうした?」
 総督の言葉に、頭を掻くダースベイダー。
「いえ……実は、レイア姫の尋問の後、何処かに姿を消してしまいまして……。今探させてはおる所なのですが……」
「そう言えば……私、尋問官のシスター・ジルが、彼を探してる所を見ましたけど……?」
 側に控えていたダースベイダー配下の親衛隊長オスカル・フランソワ・ド・ジャルジュがそう言った途端、ダースベイダーが思いっ切り毒づいた!
「くそっ!あれほど、私の秘書には手を出すなと言っておいたのに……自分の尋問を打ち切られた仕返しをしおったな!あ奴めぇ〜〜!」

 不機嫌なダースベイダーを見て、含み笑いをするターキン総督。隣室に控えていたデス・スター情報局長のキース・アニアンを加えた四人は、デス・スターの最重要警備区画−通称「皇帝の間」へと赴いた。「皇帝の間」。それは、銀河帝国の神聖にして侵さざる存在−皇帝陛下ロクセイア12世が、デス・スターにおいて鎮座している場所……ではない。既にボケ老人と化し、ターキン総督とダースベイダーにとっては、単なる「操り人形」でしかない皇帝陛下を、帝国の他の一般上級幹部から切り離し、「隔離」する為の場所なのだ。そして今、「皇帝の間」の唯一の扉の両脇には、2mを越す恐るべき巨人……カーリム・アブドゥール・ジャバールと、アンドレ・ザ・ジャイアントが護衛官(実は監視役)として控え、黒騎士メフィストがロイヤル・エンペラー・ガードとして厳重に警備していた。
「これは、これは……総督閣下!」
 ターキン総督を目にした黒騎士は、腰を屈めて臣下の礼を取る。二人の護衛官もそれに従い、膝を折った。
「うむ……皇帝陛下の警護、ご苦労であった。ところで、もう一人のロイヤル・エンペラー・ガード−《青騎士ブルー・ポン》の姿が見えぬが……奴はどこにいる?」
「はっ!青騎士は、只今部屋の中で皇帝陛下のお相手を致しております」
 黒騎士は、総督一行を部屋の中へと案内した。良く見ると、少年ロボットのブルー・ポンが、半分ボケた皇帝の遊び相手を勤めている。
「だから、さあ……そこはこうするんだって!分かんないかなあ?」
「わしに意見をする気か!ここは、これで良いのぢゃ!わしのやり方が正しいのぢゃ!」
 壁面全体がスクリーンとなっているハイパー・ファミコンで、対戦型宇宙船撃墜ゲームに熱中しているブルー・ポンと皇帝。
『元・共和国大統領。元老院議長にして、大いなるダーク・フォースの使い手……パルパティン大統領こと皇帝ロクセイア12世も、一旦ボケてしまえば、そこらの爺さんとかわらんか……』と、ベイダーの内心の声。
『だが……本家の映画版とは違って、皇帝がこのような状態だからこそ、我々が帝国の真の実権を握っていられるのだからな……』と、モフ・ターキンも思いを巡らす。
 お互いの内なる声が聞こえたかのように、ターキン総督とダースベイダーは顔を見合わせて、ニタリと笑った。二人のロイヤル・エンペラー・ガード−《黒騎士メフィスト》と《青騎士ブルー・ポン》の役割も、皇帝をひそかに"拘束"する為に存在しているのだ。モフ・ターキン総督は、いかにも恭々しげにファミコンに夢中になっている皇帝陛下に声を掛けた。

「陛下……ご出立のお時間でございます」
「おお、そうか!分かった、総督」
 皇帝ロクセイア12世は、ファミコンの事をころっと忘れたかのように立ち上がる。
「では、私も元の姿に戻らせて頂きます……」
 ブルー・ポンも体の変身機能を作動させ、少年の体型から青年ロボットの姿に戻るや、青騎士の鎧を装着した。「皇帝の間」を出立する総督一行は、二人の棒振りが先導を勤め、護衛役のカーリム・アブドゥール・ジャバールと、アンドレ・ザ・ジャイアントの二人が、露払いと太刀持ちを担当。更に、黒騎士メフィストと青騎士ブルー・ポンが、皇帝ロクセイア12世をピッタリと警護し、その後に、ターキン総督とダースベイダーの一行が続く。そして、その前後を固めるストーム・トルーパーズの精鋭部隊。
「下に〜〜い、下に!」「へへえ〜〜!」
 やがて、数百人もの帝国兵士がズラリと並んでいる第1宇宙船発着場に辿り着くや、待機していたインペリアル・タイ・ファイターに、皇帝が乗り込んだ。専任パイロットは、ビッグ・ファイア団のオロシャのイワン。パプテマス・シロッコ司令官の護衛艦のスター・デストロイヤーが、デス・スター近傍において、発進準備を調えていた。皇帝と二人の護衛官が搭乗し、それに続いて青騎士が乗り込み、黒騎士がタラップに足をかけるや、ふと立ち止まった。
「青騎士……すまないが、陛下の護衛はお前一人で勤めて貰えないか?私は、もう少しここに残りたいんだ」
「どうした、黒騎士?」と青騎士が尋ねる。
「何か胸騒ぎがするのだ。ここで何かが起こる。私がよく知っている『ある』人物に再会するのだと言う第六感が……。いや……自分でも、はっきりとは説明出来ないんだが……」

 黒騎士の言葉に、ダースベイダーが何か言おうとした時、いきなりロクセイア12世が、宇宙船から顔を出した。
「どうした? わしは早く帰りたいんじゃが…?」
 そこまで皇帝が言った瞬間、冷気を切り裂くような発射音と共に、必殺の弾丸が皇帝の胸元に炸裂!……したかと思われたが、間一髪黒騎士の太い腕が吸い寄せられるように動き、その射線を遮った!黒騎士の鎧にできた裂け目から、血が滴る!瞬時にして、第1宇宙船発着場は大騒ぎとなり、ウ〜〜!…と、けたたましい非常警報が鳴り響いた!
「暗殺者だ!」「陛下を早く中へ!!」
 親衛隊長のオスカルが、素早くサーベルを抜き放つや、周囲を警戒しながら、腰が抜けた状態のロクセイア12世の盾となる!そして、インペリアル・タイ・ファイターから、慌てて飛び出して来た護衛官のアンドレ・ザ・ジャイアントが、皇帝を肩の上に担ぎ上げるや、一目散に船内へと駆け込んだ!
「ギャー!痛い、痛い、痛い……私をバックブリーカーに掛けるなあ〜〜!」
 もう一人の護衛官カリーム・アブドゥール・ジャバールは、慌てふためいたアンドレに突き飛ばされて、常時掛けているサングラスを床に取り落とした。明るい光に弱い為に、目をしょぼしょぼさせ、長い手足を折り曲げながら、横山やすしのように当たりを探し回るジャバール。
「メガネ、メガネ、メガネ……!」
 一方、ダースベイダーは不敬罪とも言うべき、皇帝暗殺未遂犯の姿を追い求めて叫んだ。
「どこだ!……どこから射った!?」「あそこよ!……犯人を捕まえて!」
 彗星帝国ガトランティスの監視士官、目の大きいミルが、常人には到底目の届かない天井近くの通風口を指差して叫ぶ。次の瞬間、不死身の忍者・阿魔野邪鬼が忍びの技を駆使し、遥か彼方の天井目指して、壁面を風の如く飛び移って行った。
「阿魔野邪鬼に遅れを取ってはならん……行くのだ、伊賀の衆よ!」
「きゃつを仕留めるのは根来だ……行けい!」
「ええい!……魔風の者どもよ、何をしとるのじゃ!?」
 帝国の闇の世界に生きる忍びの者に向かって、服部半蔵が……暗闇鬼堂が……そして、魔風雷丸が命令を発した。その途端、帝国兵士の間に姿を隠していた影たちが宙に舞う。天井の通風口付近で、姿なき死闘が繰り広げられたが、伊賀の四貫目が謎のスナイパーを背後から抱きかかえるや、そのまま天井から落下して来た!
「カムイ忍法……飯綱落とし!」
 高速度で落下し、頭から床に激突した謎の人物は、そのまま動かなくなった……。むっくりと立ち上がる四貫目。

「誰だ!怖れ多くも、皇帝陛下を弑し奉ろうとした不程の輩は?」
 加速装置で真っ先に駆け着けた、ミュートス・サイボーグのアキレスが、謎の暗殺者の顔を見ようとする。伊賀と根来と魔風の忍者たちは、野次馬根性で押し寄せて来る帝国の一般兵士たちを、ロープを張って制止した。そして、ダースベイダーとターキン総督は、やっとの思いで駆け着けるや、その中に入って行った。
「うむ……ご苦労」と、ターキン総督。
 謎の暗殺者はうつ伏せに倒れており、その周囲には白いチョークで線が引かれている。
「え〜〜。ガイシャは、推定年齢40代後半。精悍な体つきの男性で、職業はプロの暗殺者と思われますが……」
 手帳を片手に報告するジーパン刑事。
「誰だ?……ジャッカルか?」
 ダースベイダーが、黒づくめの男の体を仰向けにした途端、最前列で覗き込んでいたダダが、一人三役の輪唱で叫んだ。
「ゴルゴ……」「13」「ダ…ダ!」
「ゴルゴ13か……。史上最強、並ぶ者のないと言われた不死身のスナイパーも、遂にデス・スターが墓場となったか……」
 四貫目の必殺技・飯綱落としに、全身打撲の重傷を負い、頻死の状態のゴルゴ13を見つめて、ダースベイダーが呟いた。
「そんな事はどうでも良い、ベイダー!吐け……吐くのだ!皇帝陛下の暗殺を命じた黒幕は、一体何者だ!……星海王ブラスか?それとも、偽帝・骸羅か?」
 ターキン総督は、帝国内部で対立している反主流派の首魁の名を挙げながら、ゴルゴ13の衿元を掴んで大きく揺さぶり、暗殺を依頼した人物の名を聞き出そうとした。
「俺‥は……依頼‥者の……名は……決‥して……明かさ……」
 ゴフッと咳込み、大量に吐血したゴルゴ13は、フッと笑みを浮かべるや、そのまま息絶えた……。ダースベイダーは、彼の残留思念を読み取ろうと彼の額に手を当てたが……。
「駄目だ……こいつは、死の瞬間に無我の境地に陥っている……」
「つまり……どう言う事だ、ベイダー?」
 ターキン総督の詰問に、ベイダーは頭をポリポリ掻いて言った。
「だから、悟りを開いて往生したのだ。すべての思いを消し去って死んだ者の思考は、さすがの私にも読み取る事は不可能なのだ」
「くそっ。何と言う事だ!するとこいつは、極楽往生したとでも言うのか?」と、ベイダーの言を確認するターキン総督。
「……往生しまっせ〜〜!」
 横から茶々を入れた関西人の帝国兵士を、ダースベイダーは思いっ切りハリ扇で張り倒した。
「馬ッ鹿も〜〜ん!そんな事を言っとる暇があったら、さっさとこ奴を始末せんかあ〜〜!」
 不機嫌なベイダーに怒鳴りつけられた兵士たちが、一斉に現状の回復に走り回る!一時は騒然となった第1宇宙船発着場も、ようやく静けさを取り戻し始めた……。

「黒騎士、よくぞ身をもって、陛下のお命を守ってくれたな」
 ドクター・キリコに応急手当を受けていた黒騎士メフィストに、ターキン総督が声をかけた。
「黒騎士よ……お前が感じた胸騒ぎと言うのは、この皇帝陛下暗殺の陰謀だったのだな?」
 青騎士が、黒騎士の見事な直感に感嘆して叫ぶ。
「いや……私が予知したのは、この事ではなかったのだが……」
 自らの周囲で起こった出来事に、逆に途惑っているかのように首を振る黒騎士。それを謙遜と見たターキン総督は、大らかに笑って言った。
「黒騎士よ、お前が皇帝陛下のお命を救った働きに対しては、後で十分な褒美を与えよう!暫くは、デス・スターの医療区画で休むと良い……バーン・バニングス!」
「はっ。バーン・バニングス、参りました……」
 ターキン総督は、もう一人の黒騎士バーン・バニングスに命令を下した。
「お前は、メフィストに代り、皇帝陛下の護衛官を務めよ」
「光栄にございます、総督閣下」
 黒騎士《バーン・バニングス》が乗り込むや、インペリアル・タイ・ファイターはすぐに発進。待機中のスター・デストロイヤーに収容されると、そのままハイパー・スペースへと消えた。
「では、ドクター・キリコ。黒騎士メフィストの事を頼むぞ」
 キース・アニアンの言葉に、黒騎士メフィストが雄々しく立ち上がって言った。
「いや、アニアン大佐……私はもう大丈夫だ!これくらいの傷、少し休んでいるだけで直ってしまう。それよりも……」と、ドクター・キリコを見つめて……。
「こいつに掛かると、直るどころか……逆に安楽死させられるかも知れんからな」
 ドクター・キリコの不気味に微笑みに、睨み返す黒騎士メフィスト……と、そこへダースベイダーの第二秘書、華麗なる衣裳に身を包んだ沢田研二……もとい、天草四郎が現れた。

「総督閣下。皇帝陛下ご出立のお見送りに間に合わず、誠に申し訳ござりませぬ。受け入れの準備に忙殺されておりまして……」
「ウム……まあ、良い。もうそろそろ、彼らも到着する頃だ。私も今から楽しみだよ」
 ターキン総督と、秘書の天草四郎の会話に、ダースベイダーが口を挟んだ。
「ちょっと待て、天草四郎!今の話は何だ?」
「おや?ダースベイダー……お前は知らなかったのか?今日は、ずっと以前にネメシスの悪役会議で決まっておった、銀河大サーカス団の巡行公演の日だぞ?」
「総督。あの時、私はバーサーカーの機械兵団への遠征に出ておりましたので、欠席しておりましたぞ!」
「おお、そうか。ならば何も知らぬともおかしくはないな……。ここにこうして大勢の帝国兵士が整列しておるのも、皇帝陛下ご出立の見送りの為だけでなく、銀河サーカス団を歓迎する為でもあるのだ。 何しろ、長期間に渡ってデス・スターの閉鎖空間の中で暮らし、戦いに継ぐ戦いに明けくれて、何一人楽しみのない日々を送っとる我らだからな……。たまには息抜きでもせんと、やっとられんよ。アルデラーン戦勝祝賀会も兼ねて盛大に出来る、ちょうど良い機会だ」
 舌も滑らかな上機嫌のターキン総督に、呆れ返るダースベイダー!
「サーカス……ですと?こんな時に?総督、あなたは一体何を考えておられるのです!確かに、何らかの娯楽が必要な事は、私も認めますが……どう言う事だ、天草四郎!」
 怒鳴りつけるダースベイダーに、しれっとして答える天草四郎。
「これは、申し訳ござりませぬ。詳細は、第一秘書のソルダム四世から、既にお伝えしてある事と存じておりましたが?」
「その、ソルダム四世がおらんのだ!」
「分かりました……これすべて、この天草四郎の不徳の致す所。誠にもって、申し訳ございませぬ……ベイダー様!」
 深々と平伏して、頭を下げる天草四郎。しばらく、ダースベイダーは黙っていたが、やがてぽつりと呟いた。
「もう準備万端、調っておると言うのだな?」
「はっ……その通りでございます」
「そうか……ならば、私が今ここでどうのこうの言っても仕方がない。面を上げよ、天草四郎」
「ははーっ!」と、天草四郎が顔を上げる。
「今回は私も認めるが……今後は、このように私の頭越しに事を運ぶような事など、決して許さぬぞ!全て私の耳に入れる事だ!さもなくば……死がお前を見舞うと思え!」
 ダースベイダーが指をパチンと慣らすや、天草四郎の体が宙に舞い、激しく床に叩き付けられた!
「行け!出迎えの準備を整えよ!」
「承知致しました」

 頬の青痣を撫でさすりながら、天草四郎は素早くその場を立ち去った。怒れるダースベイダーを、何とか宥めようとするターキン総督。
「そう、天草四郎に当たるな、ベイダーよ。奴は、お前が反乱軍との戦いに専念できるよう、知らせなかったのだろうぞ」
「まあ……確かに、最近私は反乱軍追討にかかりっ切りで、昼も夜も働きづめでしたから……」
「そら見い!このままだと、ベイダー。最後に待ってるのは過労死だぞ。帝国は労災補償金は出さんからな」
「分かりました。私も、この機会に少し休む事としましょう。アルデラーンと言う、頭痛の種も無くなった事ですから……」
 ダースベイダーは、いかにも疲れた……と言った風情で呟いた。
「そうするが良い。銀河サーカス団は、宇宙で最大の娯楽集団だ。不可能とも思える曲芸を披露する者たち。世にも珍しい動物や、恐ろしいモンスターを自在に操る素晴らしい調教芸。更に今回は、人気アイドルからロック・グループまで、銀河中の有名歌手を集めた歌公演も同時開催だ。また、出たがりの者たちにとっては、フル・オーケストラのバックによる大カラオケ大会も企画されておる。今までにない、史上最大規模の大サーカスだぞ!まあ……このプランも、元々は『ジェダイの復讐』公開前に流れた誤った情報……。映画の冒頭に登場する、帝国の大規模な戦勝祝賀会−結局それは、暗闇のジャッバの宮殿の模様だったと思われるが−そのシーンから発展したのだがな……」
 ターキン総督が延々と喋り続けていると、突如デス・スター艦内のスピーカーから、『♪ ピポパポプー…… 』と言う、巨大な音量のメロディーが流れて来た!銀河サーカス団専用の、光り輝く巨大なシャンデリア型宇宙船《クロース・エンカウンター号》の挨拶音声だ!
「おっ、そろそろお出ましの様じゃな?」
 ターキン総督がそう言った途端、第一宇宙船発着口の巨大な入口に、電飾ギラギラのネオンサインが着陸した、パチンコ屋のように派手派手な宇宙船が、五音階のメロディーを鳴り響かせながら、その姿を現わした!次の瞬間、帝国音楽局の軍楽隊が、作曲家タガニーゼの指揮で、一斉に歓迎の音楽を演奏した!


               ※

「タガニーゼ作曲『ルパン葬送曲』……か。こんな時に縁起でもない!」
 そう言いながら、《クロース・エンカウンター号》の船長室の窓から外を眺めていた金髪巻き毛の長身の男こそ、誰あろう……銀河怪盗軍団のリーダー格で、今回の《失われた聖櫃》強奪作戦のプランナー。ドリアン・レッド・グローリア伯爵こと、怪盗エロイカだ!
「イライラするなよ、伯爵。奴らにして見りゃ、精一杯我々を歓迎してるつもりなんだから」
 声を掛けられたエロイカが振り返った!船長室に扉を開けて入って来たのは、妖しげな雰囲気を漂わせる銀河大サーカス団の団長・魔王ジャレス!……とは、表向きの姿で、実は百万の顔と声色をもつ変装の達人・七色いんこだ!
「別に私はイライラしてるつもりはないんだが……。心配ないさ。大作戦を前に控えての武者震いだよ。それより、七色いんこ。君が化けている魔王ジャレスだが……。まさか、本物がここに顔を現わすって事はないんだろうな?」
「また、心配そうな顔になる……。君らしくないぞ、エロイカ。前にも言ったろう?本物の魔王ジャレスことデビッド・ボウイは、映画『戦場のメリー・クリスマス』の公開プレミアで、世界中を飛び回ってる最中だって!心配しなくたって、大丈夫だよ。もし、そんなにこの作戦の行く末が気になるんなら……ほら!ここに、よく当たるんで有名な『やいとや印』のおみくじがあるから、一度引いてみるんだな」
 そう言った途端ジャレスは、何本ものこよりに編んだおみくじを、さっと空中から取り出し、エロイカにポーズを付けて差し出した。
「イギリス人の私が、日本の神社のおみくじを信じてるとでも言うのかい?」
 口ではそう言いつつ、藁をも掴まんばかりに、おみくじに手を伸ばしてしまうエロイカ。彼の指先のためらいが、心の動揺を如実に現わしている。
『どれを選んでも、大吉が出るように細工してあるんだから、大丈夫だって。今回、君には一番の演技力を発揮して貰う必要があるんだから……。これぐらいでもして、自信を付けてもらわなきゃね!』
 七色いんこの心遣いを知らぬまま、エロイカは遂に一本のおみくじを選び出した。そして、それを開こうとした時……船長室の扉が開き、一陣の風が舞い込んで、そのおみくじを吹き飛ばしてしまったのだ!
「あ…………!」と、思わず叫ぶエロイカ!
 部屋に入って来たのは、サーカス団の副団長ジェフリー・フォーマイルに扮している〈するりのジム〉こと、怪盗ステンレス・スチール・ラットだ。思わず〈するりのジム〉を睨むエロイカ。だが、何の事だかさっぱり分からない〈するりのジム〉は、七色いんこに急かすようにして言った。
「団長。帝国のお偉方が待ちくたびれて、ジリジリしてますぜ。そろそろ顔でも見せてやらなきゃ!」
「分かったよ……じゃあ、私は奴らの前に顔を出して来る。エロイカ。君も、そろそろ着替えておいてくれ」
「ああ……分かったよ」
 先に立って出て行く七色いんこと、後髪を引かれるような思いで、部屋を後にするエロイカ。最後に一人残った〈するりのジム〉は、部屋を出ようとした時に、一枚の紙切れが落ちているのに気づき、何の気なしに拾い上げた。エロイカが、結局目にする事のなかったおみくじだ。
「何だこりゃ?大凶……だって!ブルブルブルブル……縁起でもない!」
 悪いものを見た……と言う風に、大凶のおみくじを打ち捨てて、部屋を出て行く〈するりのジム〉!「大吉」しか出ない筈のおみくじから、事もあろうに「大凶」を引き当てたエロイカ!それは、一体何を暗示していたのだろうか……?


               ※

 第一宇宙船発着場に並んでいるターキン総督を始めとする帝国首脳陣が、しびれを切らし始めた時、派手に鳴り響いていた《クロース・エンカウンター号》の五音階ミュージックがピタリと止んだ。そして、魔王ジャレス……もとい、デビッド・ボウイの華麗な歌声による「ラビリンス/魔王の迷宮」の主題歌『アンダー・ザ・グラウンド』が聞こえて来たかと思うと、宇宙船の頂上から一羽の梟が飛び立ち、ゆっくりと着地した途端にドライアイスの白煙が噴出。次の瞬間、そこには梟…ではなく、華麗なる黒のファッションをバッチリと極めた魔王ジャレスが、スポットライトに照らし出されて立っていた!
「レディ〜ス、ア〜ンド、ジェントルメン!悠久の時を超えて、皆様にひとときの娯楽をお届けする銀河サーカス団がやって参りました!華麗なる歌声とダンスの祭典! スリルと興奮、そして笑いがいっぱいの大サーカス!神秘に満ちたマジックの世界!どうぞ今暫くの間、夢の世界をお楽しみ下さい!」

 ジャレスが大仰に会釈をした途端、《クロース・エンカウンター号》の下部ハッチが開き、その中から、リオのカーニバルかファンタイリュージョンかとも言うべき大パレードが、華やかなBGMに乗って次々と現れた!先頭を行くは、スマイリー小原の様に、飛び跳ねながら指揮をするキャプテンEOと、「スターウォーズ・特別編」から出張して来たジャバ・ザ・ロックバンドが、光り輝く山車に乗って登場!彼らの演奏するロック・ミュージックに合わせ、肌も露わな美しきダンサーたちが踊りまくる!
 その後に続くは、宇宙一のベムハンター・ジェリー・カーライルが銀河中から捕えて回った、世にもモンスター……サーベルタイガーやユニコーン、シュレックヴルムらが、透明なバリヤーに包まれて、続々と登場! 二本の鞭を自由自在に操る、美しき猛獣使いキューティー・ハニーが投げキッスを連発する!また、吟遊詩人のマリウスがキタラを艶やかに奏でる山車の上では、二代目・引田天光が見事なマジックを披露!銀河の歌姫リン・ミンメイが華麗なる歌声を響かせるや、忽ち帝国兵士の間から「ミンメイちゃ〜〜ん!」の嬌声が飛ぶ!
 更に、華やかなパレードの間を縫って、ストリート・パフォーマンスの一団が登場!ピエたちがコミカルなコントを次々と繰り広げ、リドラーが、帝国兵士に「サイモン・セッズ……」のなぞなぞを出して回る!4本腕で10本の松明を空中に舞わせるタルス・タルカス! 大砲人間と化して、空中を飛び回るロケッティア!
 やがて、パレードが《クロース・エンカウンター号》を取り巻くようにして一周するや、音楽がピタリと止まる!そして、正面に現れた銀河サーカス団の副団長−虎の刺青が顔面を彩るジェフリー・フォーマイル(その正体は、怪盗〈するりのジム〉こと、ステンレス・スチール・ラットだ)が、マイクを手に声を張り上げた。

「みんな〜〜!サーカスが見たいか〜〜〜?」
「おう〜〜〜!」と言う大歓声が返って来る!
「罰ゲームは、恐くないか〜〜〜?」
「おう〜〜〜!!」と言う大歓声が、再び返って来る!
「よ〜し!1時間後に、第1ホロ・ステージに集合だ〜〜!遅れるんじゃねえぞ〜〜〜!」
「おう〜〜〜!!!」と、大拍手が響き渡る!
「ありがとよう〜!シェケナ・ベイビ〜〜!!」

 フォーマイル副団長が、沸き上がる歓声にそう答えるや、再びパレードは動き始め、宇宙船の中へ姿を消して行った……。そして再び、ベイダーとターキン総督の目の前に白煙が沸き上がり、その中から銀河サーカス団の団長−魔王ジャレスが現れた!さっとポーズを極めて、二人に挨拶するジャレス。
「如何でございましょうか、総督閣下?」
「ウム……これならば、日夜戦いに明け暮れておる我が帝国の臣民たちも、安らぎの時を得られるであろう!我々も大いに期待しておるぞ!」
「誠に、ありがたきお言葉……」と、礼を述べるジャレス。
 と、そこへサーカス団の歓待役を一手に引き受けていた、ダースベイダーの第二秘書・天草四郎が戻って来た。
「総督閣下……。サーカス会場を予定しております第一ホロステージ、並びに控え室の準備が調いましてございます」
 天草四郎の言葉に、ウムと頷くターキン総督!
「ジャレスよ……この者が案内する部屋において、開幕まで暫く寛ぐが良い」
「分かりました。では、私も打ち合わせがございますので、これにて失礼させて頂きます」
 そう言うと、ジャレスは、副団長のジェフリー・フォーマイルを始めとする数人(その中には、長身のサイボーグ005に変装しているエロイカも一緒だ!)を引き連れ、天草四郎の案内で控え室へと向かった。
「それでは、ベイダーよ。皆もそろそろ解散させるとするか」
「畏まりてございます」
 ターキン総督にそう答えたダースベイダーがパチン!……と指を鳴らすや、デス・スターの館内スピーカーから軽快な退場行進曲が鳴り響き、第一宇宙船発着場に整列していた数千人の帝国兵士たちは、ザッザッザと駆け足で退場して行った。その後に続いて引き上げて行くターキン総督&ベイダー一行。銀河サーカス団の大公演が始まるまで、後1時間……そして、デス・スターを襲う空前の大騒動も次第に迫りつつあった……!



《第18章:集結!デス・スター!!…へ続く》

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