【パロディー・スターウォーズ/ジェダイの復習】

《第16章》 未知との遭遇?


 ハイパースペース航行装置の暴走で、いずことも知れぬ空間へと放り出された〈ミレニアム・ファルコン〉……。そこは、星も光もない虚無が果てしなく続く、異様な空間だった。
「……で、どうなんじゃ?」
 コンピューターの星図マップを、微に入り細に入り調べているハン・ソロに、オビ・ワンが声を掛ける。ジロッと見返したソロが、遂に唸り声を上げた!
「畜生……幾ら調べても分らねえ。一体、ここはどこなんだ〜〜!?」(と、響良牙の声で)
「ウッ、ウッ、ウッ、ウォ〜〜!」
 イラついたチューバッカも、頭の長い毛を掻きむしる。そこからパラパラと舞い落ちる白いフケ。
「いやん、もう!金田一耕助じゃないんだから……もっと、身仕度に気をつけてよ!」
 女性陣に白い目で見られたチューバッカは、ムッとした表情でコントロール・パネルに向き合う。
「そんなのは、今はどうでも良い事でしょ!……で、どうなの?結局、何も分んないって事?」と、一人心配げな口調で問い掛けるエイリア。
「ああ……。あの時、航行装置に無尽蔵のエネルギーが流れこんじまったからな。エネルギータンクも、ほとんどカラっけつ!折角修理したハイパースペース航行装置も、またオシャカだ!ここに至るまでの航行記録も残ってねえし、俺たちが、一体どこにいるのかもさえ分からねえ……たぶん、宇宙の果てにでも来たんだろうさ!この、ポンコツ宇宙船め!」
 ムカッ腹を立てたハン・ソロは、思いっ切り航行装置を蹴飛ばした。
「ソロの言う通り、どうやらここは宇宙の果てみたいだよ」と、外を見ていたルークが、ポツリと言った。
「何じゃとて?」と、オビ・ワンが言った。
「だって、ほら……。あそこに」と、窓から船外を指差すルーク。
 つられて、皆が窓を覗き込む。
「『宇宙の果て』って、立て看板が出てる」
 『これより先、宇宙の果て』と記されて、暗黒の宇宙空間の中に突っ立っている(?)、一本の木の立札。
「……ハラホロヒレハレ!」
 思わずコケる一同!……が、次の瞬間、彼ら全員の頭の中に、強烈なテレパシー波動が伝わって来た。
『勇者たちよ。我を求めて、よくぞこの宇宙の果てまでやって来たな……!』
 一瞬にして、シリアスモードに戻ったオビ・ワン・ケノービが思念を凝らす。
「これは……。何と言う強力なパワーを持った存在だ!もしかすると、わしら全員の超能力を合わせたのよりも、勝っておるかも知れんぞ?」
 厳しい表情のオビ・ワンに、エイリアが言った。
「先生、あちらです……。あの方角から、テレパシーが伝わって来ます」
「よし、ソロ船長……済まんが、彼女の言う方角へこの船を向けてやってくれんか?」
 オビ・ワンの頼みに、今やヤケっぱちになったソロが応える。
「分かったよ!このままここでじっとしてても、どうにもなりゃしねえ。毒食わば皿まで……こうなったら、地獄の底まで付き合ってやるぜ!」
 残った僅かのエネルギーを注ぎ込んで、謎のテレパシー源へと向かう〈ミレニアム・ファルコン〉。やがて、彼らの眼前に途方もない物体が現れた!

「な、何だ……ありゃ!」「私……幻でも見てるのかしら?」と、口々に驚倒する一同!
 彼らの目の前にそびえるもの……それは大宇宙の、遥か上方から遥か下方まで、果てしなく延々と伸びる数本の巨大な柱状物体であり、それに絡み付いている巨大な龍の如き生命体だったのだ!
『勇者たちよ、良く来た!ドラゴンボールは揃ったか?お前たちの望みは、一体何だ?』
 強烈なテレパシーで呼び掛けてくる神龍。ルークたちはお互いに顔を見合わせていたが、やがておずおずとジョミーが申し出た。
「あのう〜〜。お心使いは非常にありがたいんですが……。僕たちは『ドラゴンボール』の世界の人間じゃないんです」
『何?そうすると……お前たちは何故、ここに来たのだ!?』と、厳しく問い正す神龍。
「あ、あの……実は僕たち、ちょっとした事故で、たまたまここに来てしまったんですが……」
 慌てて言うルークに、神龍はガックリと肩を落として(?)うなだれるや、ルークたちの事を放ったらかしにしたまま、一人独白を始めた。
『次元の狭間に迷い込み、記憶喪失に陥っていた私は、偉大なる神の命により、この宇宙の果てにおけるドラゴンボールの守護者に定められた。地球やナメック星における同輩−神龍の活躍に、私も非常に興奮させられたものだ。大いなる勇者たちが我が元を訪れ、私がその役目を果たし終えた時、私は再び過去の記憶を取り戻して貰える筈だった……。だが、長期連載も終了するや、永劫の時を待ちに待ち続けたあげく、遂に念願の勇者たちが我が元を訪れた…と、思ったのに……。それも、事故で偶然やって来た、全く無関係な人間たちだったとは……何たる事だ!私の今までの長い年月は、何の為にあったのだ?私の……私の青春の日々を返してくれえ〜〜!』
 天を仰いで、嘆き悲しむ神龍……。神からも忘れ去られて、その「存在意義」を失ってしまった記憶喪失の神龍は、おいおいと泣き出してしまった。それを、呆気に取られながら見つめるオビ・ワンたち。
「何だか、深い事情があるみたいだなあ……」
 ルークがその光景を見ながら、ポツリと言う。
「うっ、うっ……何て可哀想なの!」
 そして、思わず貰い泣きをしてしまう蘭!レースのハンカチが、次から次へと女性陣の手に渡り、大量の涙を絞り取って行く。
「あんな、何でも出来そうな神龍も、俺たちと同じように悩みがあるって訳か?記憶喪失?自分の存在意義?……へへっ、高尚な悩みだぜ!それに比べりゃ、俺たちの〈ミレニアム・ファルコン〉がどこにも行けなくなっちまった事なんざ、ちっぽけな悩みさ!神龍がその力を発揮すりゃ、チョチョイのチョイで解決する様な簡単な悩みなんだからな!」
 ヤケクソになって、自虐的に言い捨てるソロ。だが、オビ・ワンは、ソロのその言葉を聞いた途端、頭にピンと閃く事があった。

『神龍よ。先程、あなたは自分の真の姿を忘れてしまった……と、言われたが』
 オビ・ワンの強力なテレパシーに、神龍は自らの閉じこもっていた殻から、ハッと我に返った。
『お前は……私の記憶喪失を、何とか出来るとでも言うのか!?』
 オビ・ワンに向かって、期待と疑いに満ちた強大な精神波を送って来る神龍!だが、ジェダイ・マスターたるオビ・ワン・ケノービは、その迫力に臆する事なく、神龍とテレパシーでがっぷり四つに組み合った。
『いや、私自身にそのような力はない。だが……私は、あなたのその姿を、確かにどこかで見た覚えがあるのだ。少し待って貰えないか?』
 神龍を必死で説得しようとするオビ・ワン。彼には、秘められた計画があった……。
『よし、分かった……。これまで私は、永遠の時を待ち続けたのだ。もう暫く待つ事など、何程の事があろう。私の素性を知る事が出来るならば、お主たちの願いを何なりと叶えてやろうぞ!』
 大乗り気になって、巨体を激しく蠢かす神龍に、オビ・ワンはニヤリと笑った。
『オビ・ワンのおっさん、上手い事考えたな!』
 ソロは、オビ・ワンの意図を感じ取り、パチリと指を慣らして感嘆した。
『さあ、望みを言うが良い!不死の肉体か?……それとも、莫大なる財宝か?』
「いやいや……。そのような大それた望みは持ってはおりません。私たちの願いは、ただ……このいずことも知れぬ宇宙の果てから、本来私たちが向かっていた目標−惑星アルデラーンへと、この船を送り届けてほしい……ただ、それだけです」
『何だ!そんな簡単な事なら、私にとっては朝飯前だ。幸い、私はつい先程起きたばかりで、これから朝飯を食べようとしていた所だからな……。では、お互いが合意に達した所で、私の真の姿−その名と種族・生まれを教えてくれ!』
 神龍の強烈なテレパシーに頷くや、振り返ったオビ・ワンは、古代に呼び掛けた。
「古代。私のトランクを持って来てくれんか」
「分かりました、先生」
 そう答えを返すと、〈ミレニアム・ファルコン〉の客室……と言っても、本当はただの空の荷物室に過ぎないのだが……から、古代 進はオビ・ワン・ケノービの唯一の荷物−黒いガタガタの大きなトランクを抱えて来た。
「どっこいしょっ……と。先生、一体この中に何が詰め込んであるんです?」
 トランクの余りの重さに、さすがの古代も音を上げて、オビ・ワンに尋ねた。
「なに……わしの、ジェダイの騎士時代の新聞記事や勲章・賞状。タトゥーインに隠遁しておった間に集めた帝国の秘密情報……と、それにタトゥーインを離れるに至って詰め込んだ、僅かばかりの身支度ぐらいじゃが……おうおう、これじゃ!これじゃ!」
 トランクの奥の奥に詰め込まれていた、ボロボロの古本をそっと取り出したオビ・ワンは、まるで宝物を扱うように優しくページをめくった。
「……ここじゃ、ここ。ここに載っておる」
 既に絶版となって久しい「スターログ別冊/異星生物240」の一ページを指し示したオビ・ワンは、高らかにそれを読み上げた。
「ウォーゼル。E・E・スミス作『レンズマン・シリーズ』に登場する爬虫類型生命体。ヴェランシア系・第三惑星出身のヴェランシア人。同種族は、アリシア人に導かれた銀河文明を支えるメンバーの一員であり、形態は巨大な龍に酷似している。第二段階レンズマン・ウォーゼルの思考能力は、銀河系においても最高度に優れており、銀河調整官のキムボール・キニスンと共に、ボスコニア文明の駆逐に対し大いに活躍した。エッドール人の消滅後、その消息は不明となっている……」
 オビ・ワンが文章を読み進む内に、巨大なる龍……いや、自分自身の名を到々思い出した、ヴァランシア人のウォーゼルは、その巨体を激しく揺すぶり動かして絶叫した!
「思い出した、思い出した……思い出したぞ!我が名はウォーゼル!ヴァランシア人のウォーゼル!ヴァランシア系・第三惑星出身のウォーゼルだ!……お〜い、おいおいおい……」
 歓喜の余り、遂に声を挙げて泣き始めた神龍こと、第二段階レンズマンのウォーゼル。そして、再び貰い泣きをする〈ミレニアム・ファルコン〉の女性陣。やがて、晴々とした表情になった神龍……いや、ウォーゼルは〈ミレニアム・ファルコン〉に向かって、厳かなテレパシーで呼び掛けた。

『……ありがとう!これで私は、自分の属するレンズマン・ワールドへ戻る事が出来る。そのお礼として、お前たちの乗っている宇宙船のエネルギーを満タンにし、向かう筈だった目的地へと送り届けてやろう!』
「おお。そりゃ、ありがてえ!で……物は相談なんだが、事のついでにこの船の故障してる所も全部直して貰えねえかな?」
 ずうずうしくウォーゼルに頼み込むハン・ソロ。
「ソロ……。それはちょっと、虫が良過ぎるんじゃない?」と、ルークが言う。
「てやんでえ!折角の機会じゃねえか……。この際、修理が必要な個所は、全部ただでやって貰っておく方が、損はねえってもんだ!」
「ウ、ウ、ウ、ウォーッ!ウオッ、ウオッ!」
 チューバッカも雄叫びを上げて、ハン・ソロに賛成する。だが、ウォーゼルはきっぱりとハン・ソロの願いを断わった。
『私は、お前に対しては何の借りもない!記憶を取り戻して始めて分かったのだが……私が恩を感じているのは、現在はオビ・ワン・ケノービと名乗って、その船に乗っている人物に対してだけだ。なぜなら、その人の真の姿は……』
「スト〜ップ!ウォーゼルよ、それ以上は、言っては駄目だ!その事は、この物語のクライマックスにおける伏線に繋がっているんだから……」
 オビ・ワンに言葉を遮られたウォーゼルは、ふむふむと頷いて言った。
『……分かった。その秘密はここでは口にしないでおこう。では、先程の約束通り、お前たちの船にエネルギーを注入するぞ』
「やったぜ、おい!」
 ハン・ソロの目の前で、〈ミレニアム・ファルコン〉のエネルギー・ゲージを示す針が、ぐんぐんと上がって行く。やがてそれは、MAXを指して止まった。
『これで、エネルギーは満タンだ。では、いよいよお前たちの船を目的地へと送り届けるぞ!』
 ウォーゼルの言葉と共に、〈ミレニアム・ファルコン〉の周囲の空間が変化し始めた!「いよいよだわ!」と叫ぶ火田七瀬!そして次の瞬間、空間が反転するかの如く歪んだかと思うと、〈ミレニアム・ファルコン〉は一気に超空間へと突入した!腹の底から揺さぶられるような激しい震動!渦巻き、歪むハイパー・スペース!ハン・ソロは変に上機嫌になって、皆に呼び掛けた。
「さあ〜〜!皆、シートベルトを締めて、どこかにしっかりと掴まってろよ!こいつぁ、いつものワープ航法とは、まるで違う代物だ!吹っ飛ばされて怪我でもしたって、俺ぁ知らねえからな!チューバッカ、まるでこりゃあ、ロデオにでも乗ってるような気分だぜ……イヤッホウ〜〜〜!」


               ※

 超空間を一気に通り抜けて行く〈ミレニアム・ファルコン〉が、通常空間に戻って静止した。コンピューターの星図マップで、自らの居場所を確認しようとするソロ。と、ルークが叫んだ!
「見て!ここで間違いないみたいだ……ほら!」
 船外を指差すルーク。窓から外を見たオビ・ワンが頷いた。
「うむ。ルークの言う通り、ここは『スターウォーズ・ワールド』に間違いなさそうじゃ。その証拠に……ほら、画面の向こう側から、オープニングの巨大な文字がこちらにやって来よる!」
「あ、本当だ!」と、アムロが嬉しそうに言った。
 だが、ハン・ソロは未だに懐疑的だ……。
「う〜ん、星図によると、ちょっと違うみたいなんだが……」
「間違いないよ、ソロ……。ほら!ジョン・ウィリアムズが作曲した、あの有名なオープニング・テーマのイントロが聞こえて来るじゃない!」
 ルークの指摘に、渋々認めようとするハン・ソロ。が、その途端、トランペットの響きと共に、画面の向こう側から流れるように現われたオープニングの超巨大文字には……『マーロン・ブランド』と記されていた!
「何い?」と、仰天するハン・ソロ。
 更に続いて現われた文字は……『ジーン・ハックマン』だ。
「これは、もしかして……?」
 オビ・ワンが事態を予測する。その予測通り、次に出現したタイトル文字は……。




「畜生!」と、ハン・ソロが罵った!
「ルーク!こいつぁ、おめえ……同じジョン・ウイリアムズ作曲でも、違う奴じゃねえか!こいつは『スーパーマン』だ!」
 その通り……。三番目に、彼らの前に現われた超巨大文字は『スーパーマン』だった!
「ここは、スーパーマン・ワールドよ。スターウォーズ・ワールドじゃないわ!」
 落胆して、床にへたり込むエイリア。すると、再びウォーゼルの強烈なテレパシーが、皆の頭の中に響いた。
『いや〜〜済まん!済まん!同じようなタイトルで、同じ作曲者によるオープニング・テーマだったので、ちょっとばかし間違えてしまったのだ……今度こそ、本来の場所へお前たちを送り届けるから、勘弁してくれ!』
 平謝りのウォーゼル。やがて、もう一度〈ミレニアム・ファルコン〉は、渦巻く超空間を通り抜けて行った。そして、飛び出た通常空間で彼らを待ち受けていたのは、ど〜〜んと出現した『スターウォーズ』の超巨大タイトル文字!その後に例の〈これまでの荒筋〉が、画面下方から上方へと流れ始めた!



「よ〜し、今度こそ、間違いなさそうだ。それじゃあ……えらく脱線しちまったが、ここまで来りゃあ、惑星アルデラーンへはひとっ飛びだ。後暫くの辛抱だぜ!」
「うむ……任せたぞ、ソロ船長」
 オビ・ワンの言葉に頷くハン・ソロ。そして〈ミレニアム・ファルコン〉は、一路惑星アルデラーンを目指し、銀河の星々の間を突っ走る!やっと本筋への復帰……惑星アルデラーン到着を目の前に控えて、一息ついた船内では、それぞれの時間つぶしが始まっていた……。


               ※

 古代とアムロは、〈ミレニアム・ファルコン〉の艦内をハン・ソロに案内してもらい、様々なメカニックに目を見張っている。ジョミーとソルジャーは、貨物室の片隅で見つけ出して来た将棋に没頭。エイリアを始めとする女性陣は、お互いに相手の思考を読み取ろうとしながらのポーカーゲームに火花を散らす。そして、チューバッカとR2-D2は、横からC-3POが口出しする中、立体モンスターチェスに興じていた……。

               ※

「じゃ、2枚交換」
「はい、銀いただき…と」
「$☆※℃&±!」
「ウ……ウォウォウォッ!」
「……王手飛車取り!」
「あ〜ん、ついてない〜!」
「R2-D2、それじゃダメですよ!」
「あんぎゃあ〜〜!!!」


               ※

「……うるさい!静かにせんか!……こんな具合じゃ、練習もろくにできやせん!」
 ルークに、フォースを駆使したライトセイバーの使い方を指導しているオビ・ワンが、皆の方を振り返って怒鳴る!その剣幕に、場は一瞬シーンとなったが、再びガヤガヤと喧騒が始まった……。諦めたオビ・ワンは、ルークを部屋の片隅に連れて行くと、黒板に向かって講義を再開した。
「よいか、ルークよ。フォースは、決して特別な存在ではないのだ。この世のありとあらゆる物に、フォースは内在されておる。だが、素質のない者……修業を積んでおらぬ者には、それを感じ取る事ができんのだ!万物の中に満ちておるフォースの存在を感じ取り、それを導き出し、自らの必要に応じて使いこなす事のできる者……それが、ジェダイの騎士なのじゃ!フォース自体は悪でも正義でもない……要は、それを使う者の心にあるのじゃ。心正きし者……ジェダイの騎士がフォースを使えば、それは人々を導く灯火となり、悪を滅ぼす正義の矢となる。じゃが、ダースベイダーの如き心の持ち主が、自らの邪悪な欲望をなし遂げんが為にフォースを使えば、それはダークフォースと化して、それを使う者自体を泥沼のようなフォースの暗黒面へと引きずり込んで行く……こら、ルーク!何を寝とる!?」
 オビ・ワンの長い講義に退屈して、椅子に腰掛けたまま、うとうとと居眠っていたルークの肩に、オビ・ワンの竹刀が炸烈した。
「あ、痛たたた……酷いよ、ベン!」
「わしの話を聞きもせんで、居眠りなんかしとるから、その罰じゃ!」
「でも……オビ・ワンの講義って、学校の授業と一緒で、退屈なんだもん」
 肩を押さえて呻きながら言うルークを、ギロリと睨みつけるオビ・ワン。
「仕方ない……では、これより実戦に入るぞ。よいか、ルーク!ジェダイの騎士たる者は、単にフォースを感じ取るだけではいかん!我らは、宇宙の正義と平和を守る為に、フォースを駆使して悪と戦う使命を帯びておる。ライトセイバーは、その手段として存在するのじゃ。フォースとライトセイバーを、自由自在に使いこなせる者こそ、ジェダイの騎士と言えよう……。それには先ず、フォースの導きで相手の思考を読み取って、その行動を予測すると言う修業が必要じゃ……さあ、ルーク!ライトセイバーで、この不規則に動くボールを打ち落としてみるがいい!!」

 オビ・ワンは、懐から金属製のボールを取り出した。スイッチを入れるや、予想もつかない不規則な動きを示して、ルークの周囲を飛び回った。次の瞬間、ルークの掌の中から、光り輝くライトセイバーの刃身が伸びて行き、ルークの精神集中が極限にまで高まった。オビ・ワンが放ったボールは、ルークがちょっとでも気を緩めるや、電気ショックを発して襲いかかって来るのだ。いかにジェダイの騎士の血を受け継ぎ、素質のあるルークでさえ、この訓練はかなり厳しかった……。襲い来るボールのスピードについて行けず、何度も電気ショックを受けて、飛び上がるルーク!
「うわっ!……あいたっ!……ヒャッ!……」
「馬鹿もん、しっかりボールの動きを見とらんから、そんな目に合うのじゃ!」
 鬼コーチよろしく、ルークを睨むオビ・ワン。
「そんな事言ったって……僕は初心者なんだもん。そんな事言うなら、一度ベンがやって見せてよ!」
 ギクリとなるオビ・ワン。古代やアムロ相手にフォースの訓練を行なってきたとは言え、彼にも長いブランクがあった……。人に教えるのと、自分で実際にやって見るのとでは、大きな違いがあるのだ。
「わしは……そのう、もう良いのじゃ。もう何十年もの実践の末に、今は人に教える身じゃからのう……」
 オビ・ワンが及び腰になっているのを、敏感に悟ったルークは、ボールに立ち向かいながら挑発した。
「本当は……出来ないんでしょ?」
「何を言う!」と、オビ・ワンが立ち上がる!
「若い頃は、椿三十郎と並んで、共和国の二大剣豪と噂された、このわしじゃ!痩せても枯れても、ジェダイの騎士……。この腕が錆びついとるなぞとは、断じて言わせんぞ。退くのじゃ、ルーク!わしが手本を見せてやる!」
 まんまと乗せられたオビ・ワンは、ルークの訓練を中止すると、ゆったりとしたローブを脱ぎ捨て、下帯一枚の姿になった。その体は、70を越えた老人にしては筋骨逞しく、目を見張るばかりだった。そしてオビ・ワンは、ライトセイバーを手にして、金属製のボールの攻撃モードを、高次の段階に切り換えた。  「この攻撃モードは、フォースの熟練者……ジェダイの騎士が、主に訓練時に使用する物で、『ファンタズム』と言う奴じゃ。さっきのは、失敗しても単に電気ショックを受けるだけじゃったが……今度は、鋭い金属製の刃を出して突きささって来るからのう……下手すれば命取りじゃぞ!」
 オビ・ワンが手を放すや否や、目にも止まらぬスピードに加速して、旋回・攻撃して来るファンタズム・ボール!それを目にしたオビ・ワンの表情が、久し振りに生き生きと輝いて来た。長年の隠遁生活を脱却し、再び戦場へ赴くジェダイの騎士としての気概が甦って来たのだ!

「おうおう、この感触……この緊張感!すっかり忘れ取ったわい。残念な事じゃが……昔は、毎日が戦場じゃった。平和の為の戦いの中で、わしらはフォースに磨きを掛けておった……」
 凄じい高速度で、オビ・ワンめがけて襲い来る金属製のボールに対し、オビ・ワンは年にも似合わず(?)、電光石火のフットワークを見せながら、ライトセイバーで立ち向かった。さすがは、年寄りの冷水……もとい、腐っても鯛だ。いつしか艦内の全員が、オビ・ワンの見事な動きに見惚れていた。
「爺さんだ、爺さんだと思ってたけど……結構、凄え爺さんじゃねえか?見直したぜ!」と、感心するハン・ソロ。
「当然じゃ!何しろわしは、この世で立った一人残ったジェダイの騎士じゃからのう……まあ、ダースベイダーは勘定に入れんが」
「僕はそうじゃないの?」と、尋ねるルーク。
「お前は雛っ子。まだまだ『卵』じゃ!……いや、『卵』はもう一つあったわい……」
 自分だけが知っている秘密に、ニヤリとほくそ笑むオビ・ワン。更に、ファンタズム・ボールの攻撃を受けながらも、オビ・ワンはルークに講義を続けると言う離れ業をやってみせた。
「ルークよ。わしくらいの熟練者……ジェダイの騎士クラスになると、更に高次の段階のフォースを使いこなす事ができるのだ。相手の僅かな目の動き……筋肉の収縮を読み取って、次にどう言った行動を取ろうとしているかを予測して、その地点に確実にライトセイバーをヒットさせる事ができる。これを大リーグフォース1号と言う……ハッ!」
 高速度ボールの3段ドロップ攻撃を、見事に弾き返すオビ・ワンのライトセイバー!
「そして、精神集中が更に進むと、相手と切り結ぶ際に、己を無の存在と化して、周囲の環境に溶け込み、相手の視界から消滅させる事ができるようになるのじゃ。これを大リーグフォース2号と言う。そして、トップレベルの段階に至ったものを、大リーグフォース3号と言い……」
 大回転魔球の軌跡を描き、襲いかかって来る高速度ボールを打ち返すオビ・ワンを遮って、ルークが言った。
「あ……それ、僕知ってる。こっちの放ったライトセイバーが、必ず空振りするんでしょ?」
「馬鹿もん!戦闘の際に、自分のライトセイバーが空振りしてどうするのだ?そうじゃない……相手の放つ如何なる攻撃も、こちらの体を避けて通るようになる……これを、大リーグフォース3号と言うのじゃ。だが、この技は精神をかなり消耗させる危険性があるので、滅多に使わぬ事じゃ。余りに多用し過ぎると、完全試合が達成できる代わりに、神経がピシッと言って切断され、二度と戦う事ができなくなってしまうからな……分かったか?」
「父ちゃん……俺はやるぜ!」
 瞳にめらめらと燃え立つような炎を輝かせて、叫ぶルーク!(星飛雄馬の声で)
「ルークよ。あの夜空に輝く巨人の星を目指すのだ!」
 星一徹の如く、ルークを叱咤激励するオビ・ワンだったが……。

「……だが、ルークよ。この無敵とも言える大リーグフォースにも、実は僅かな弱点が存在するのじゃ」
「ええ、知ってます。大リーグフォースは雨に弱いんでしょ?」
 ルークの言葉に、オビ・ワンは大きくうなづくや、ブルブルッと身震いした。
「そうじゃ。そして、大リーグフォースは……ファ、ファ、ファッショ〜〜イ!風邪に弱いんじゃ……」
 上半身裸で下帯一枚の姿のまま、ファンタズムに立ち向かっていたオビ・ワンは、大きくクシャミをして、鼻水をズルズルとすすり上げた。
「いかん……あんまり涼しい恰好でいたんで、どうやら風邪を引いてしもうたようじゃ……」
 オビ・ワンは、「ハ、ハ、ハックショイ!ハックショイ!」とクシャミをしながら、彼の周囲を飛び回っている高速度ボールを、遠隔スイッチでニュートラルに切り換えた。そして、自分の手荷物用トランクから、半袖シャツとステテコ・ハラマキを取り出して着込んだ。
「ルークよ、わしの指導演技はこれで終了じゃ。後は、わしが見せた通りに訓練を続けるんじゃぞ」
「分かりました、先生」
 ライトセイバーを構え直したルークに対し、ボールの再始動スイッチを入れたオビ・ワンだったが……。その瞬間、ボールは再び『ファンタズム・モード』に復帰し、高速度でルークの周囲を旋回し始めた!
「しまった!ボールの攻撃モードが『ファンタズム』に入ったままじゃ!」
 オビ・ワンが止める間もなく、フォースの初心者のルークに、対応不可能な猛速度で襲いかかって来る金属製ボール!ルークの動きが、まるでスローモーションのように感じられ、ボールから飛び出した鋭い刃が、今にもルークの額に突き刺さるか……と思われた瞬間!間一髪、オビ・ワンの放ったライトセイバーの一撃で、高速度ボールは弾き飛ばされた!

 が……運の悪い事に、そこはチューバッカとR2-D2が対戦していた、立体モンスターチェスと艦内ホロデッキの制御盤だった!ボールが激突した瞬間、制御盤にスパークが走り、モンスンターチェスの駒が巨大化!ホロデッキの作用で実体化して、彼ら全員に襲いかかって来たのだ!たちまち悲鳴と怒号が走り、〈ミレニアム・ファルコン〉の艦内は、一瞬にして阿鼻叫喚の場と化した!ランカーが、ガーゴイルが、ガラモンが……ありとあらゆるモンスターが暴れ回る!何とか、モンスターチェスとホロデッキの制御盤を停止させようとするハン・ソロ。チューバッカは、飛び回るドラゴンを必死に組み伏せようとし、ルークは、剣を携えた骸骨戦士と大チャンバラを繰り広げた!狭い艦内で、オビ・ワンの弟子たちとモンスターの格闘が続く中、〈ミレニアム・ファルコン〉は、一路宇宙を突き進んで行った! 目的地たる惑星アルデラーンが、デス・スターによって破壊され、既に消滅してしまった事も知らないまま……。




《第17章:皇帝暗殺計画…へ続く》


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