【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第14章》 アイル・ビー・バック!


 自分たちが出た後、酒場が上を下への大騒ぎになった事も知らず、ルークとオビ・ワンは外で待っていた古代やアムロたちと合流した。
「話は着いた。後は、エイリアたちが売りに行ったランド・スピーダーの代金を、ハン・ソロに支払うだけじゃ」
「でも、エイリアさん、大丈夫かな?タトゥーインの中古車屋はがめついって噂だから……口先に誤魔化されてなきゃいいんだけど……」と、心配げな表情のアムロ。
「まあ、あれこれ考えていても仕様がない。思ったより少なかったら、ハン・ソロ船長に訳を言って謝ればいいんじゃ。金が少ないからと言って、今更断わりはせんじゃろう」
 そう言うと、オビ・ワンは先に立ってさっさと歩き出した。慌てて後を追うルーク・古代・アムロに、ジョミーとソルジャー。そして、C-3POとR2-D2。が、ルークがその時思い出したように、突然叫んだ!
「しまったー!」
「どうしたんじゃ、ルーク?」と、振り返って尋ねるオビ・ワン。
「ランボーさんのサインを貰ってくるの、すっかり忘れてた〜!」
 オビ・ワンは、呆れ返ったかのようにぶつぶつ言うと、再び小走りで先を急いだ。慌ててその後を追う少年たち。しきりに『ちぇっ!ちぇっ!』と残念がるルーク……。だが、その後を更に誰かがひそかにつけていた事は、フォースを備えたオビ・ワンでさえ知り得なかった。なぜなら、その人影は「人間」ではなかったからだ……。と、言うのも、彼らを尾行していたのは、酒場でルークをからかったのがき っかけで、ジョン・ランボーに手玉に取られ、みっともない恰好で放り出されてしまったユル・ブリンナー型ガンマン・ロボットだった!プライドを傷つけられた彼は、そもそもの原因となっ たルークを逆恨み。あの時の屈辱を晴らさんと、帝国軍兵士を率いて、復讐の機会を伺っていたのだ!ロボットでは、いかにフォースの持ち主でも、その気配を感じ取るのは困難だった。だが、その尾行者でさえ、自分たちが更に「別の影」によって見張られている事には、全く気づいていなかった……。

 やがて、オビ・ワンたちは、エイリアが価格交渉をしている「ゼネ・プロ中古車センター」に辿り着いた。大阪弁の営業マンと延々渡りあっているエイリアの後で、七瀬・明日香・蘭・リーザの4人は退屈して、欠伸を噛み殺している。
「どうじゃ、話はついたのか?」
「あっ、先生!……それがまだなんです。エイリアさんが30分も交渉してるんですけど、なかなかこちらの思ったような値段で買ってくれなくて……」と、小松崎蘭。
「……こうなったら、もう奥の手を使うしかなさそうね!」
 ほとほと疲れたと言った感じのエイリアの表情が次第に変化し、睨みつけるような鋭い目つきになったかと思うと、いきなり野太い声が美女の喉元から飛び出した!
「どうじゃ……!この値で、買うのか買わんのか!?」
 ドスの聞いたエイリアのセリフに、営業マンは椅子から転げ落ち、大阪弁も忘れ果てて言った。
「買……買います!そちらの言う通りの値段で買わして頂きますから、どうかご容赦下さい!」
「うむ……。ならば、お前の顔を立てて、この値段で売ってやろう!」
 エイリアが頷くと、汗まみれの営業マンはあっと言う間に姿を消し、砂まみれで皺くちゃの札束を抱えて現われる、恐る恐る差し出した。
「こ、これで良ろしおまっか……?」「ご苦労、世話になった!」
 巻き上げたランド・スピーダーの代金をそっと懐に入れると、エイリアはオビ・ワン一行が待って いた場所へと戻って来た。
「……大成功!」
 にこっと笑って言ったエイリアの声は、既に澄み切った女性の声に戻っていた。
「エイリアよ、ベネ・ゲセリットの"ヴォイス"を使ったな?」と、オビ・ワン。
「ええ……それに、頭の中にいる『ハルコンネン男爵』の恫喝力もね!」
「全く、売買交渉がうまく進まなかったから、私がテレパシーで、あの営業マンを操ってやろうかって思ってたのに……」と、これは砂姫明日香。
「エイリアに怒鳴られて、可哀想にあの大阪商人の心臓、縮み上がってたわよ」と、哀れな営業マンの心を読んだ火田七瀬が言う。
「エイリアよ、いくら便利じゃからと言って、余り頭の中の他の精神に頼るのではないぞ。お前は それに頼り過ぎたが為に、ハルコンネン男爵に精神を乗っ取られて、死に至ったのじゃからな……。 精神力を乱用すると、暗黒フォースに引きずり込まれる恐れがあるのじゃ!ダースベイダーが、良い例……いや、これは内緒の話じゃ」
 オビ・ワンは、ルークを横目で見て、慌てて口を閉ざした。
「すいません、先生……」
 叱られて意気消沈してしまったエイリアを、オビ・ワンは慰める。
「まあ、そうしょげる事はないぞよ、エイリア。これくらいの力の使用はしれとる……。それより 、お前が大枚ふんだくってくれたので、大いに助かったわい……それでは、ハン・ソロ船長が、痺れを切らして待っとるじゃろう。そろそろ行くとするか!」
「はい、先生!」「分かりました、先生!」
 あたかも修学旅行生を率いる教師のように、オビ・ワンは少年少女9人(+ロボット2体)を引き連れて、第7スペース・ポートへと歩み向かった。その後に、ユル・ブリンナー型ガンマンアンドロイド率いる帝国兵士の一団と、更に謎の尾行者を引き連れたまま……。


 やがて、皆がミレニアム・ファルコン号に行き着いた時、あの大騒動からやっとの思いで逃げ出して来たハン・ソロは、先に戻っていたチューバッカと共に、汗だくになって愛機の修理に取り掛かっていた。
「な〜に?このオンボロ機」
「〈ミレニアム・ファルコン〉なんて言うから、2001年宇宙の旅のスペースクラフトみたいな 、スマートな宇宙船を期待してたのに……」
「これじゃ、期待外れもイイトコだわ!」
 言いたい放題の女性陣に、コブラとの話で幾分気の立っていたハン・ソロが、船底からヌッと顔を出して言った。
「おうおう、オンボロ機で悪かったな!言っとくが、2001年に登場した『スベスベツルツルの宇宙船』なんてのは、もう時代後れなんだ。今じゃ、このリアリズム溢れる表面処理が最新流行なんだぜ!乗りたくねえんだったら、遠慮せずにそう言ってくれ!」
「まあまあ、ソロ船長……。この子らも悪気があって言っとる訳じゃないんだ……。契約した運賃に少し割増しするから、何とか勘弁してやってくれんか?」
 何とかハン・ソロを宥めようとするオビ・ワン。ソロも、オビ・ワンが差し出した札束を目にするや、元々八つ当たりだったので、コロッと態度が変わって、愛想良くなった。
「いやあ……別に俺は怒ってる訳じゃねえんだ!ただ、この〈ミレニアム・ファルコン〉は俺の自慢の愛機だからさ。それなりにプライドを持ってるんだが……まあ、いいさ!女子供にゃあ、分らねえ事だ。さあ、どうぞどうぞ、お嬢様方……中へお入り下さい!」
 仰々しく会釈するハン・ソロを尻目に、一行はゾロゾロと宇宙船の中へ入って行き、残るはルーク一人となった時……。ふと彼は後を振り返って、眉をひそめた。
「……どうした、坊主!?」と、ハン・ソロが修理の手を休めて問い掛ける。
「うるさいな!僕には、ルーク・スカイウォーカーって立派な名前があるんだ!」と、尚も目を凝らす。
「ほう……で、そのルーク・スカイウォーカー様は、一体どうなされたんだ?」
 からかうような口調のハン・ソロ。が、ルークはそれにも気づかずに、不安げな表情を浮かべて言う。
「はっきりとは言えないんだけど……さっきからずっと、尾行されてるような気がするんだ」
「尾行?……って言うと、あそこにいるカウボーイハットの奴か?」
 ハン・ソロの指差す方向を見たルークは、そこにユル・ブリンナー型ガンマン・ロボットの姿を見 て飛び上がった!しかも、その後から帝国兵士の一団が続いて出現するや、今度はハン・ソロが飛び上がった!
「やばい!あいつら……帝国軍だ!」

 ルークとハン・ソロの姿が、彼らの目に留まるや否や、今度は雨霰の如くレーザーガンの射線が、 彼らに向かって浴びせ掛けられて来る!すぐに応戦するルークとハン・ソロ!だが、ユル・ブリンナー型ガンマン・ロボットが、コンピューター制御による正確な射撃をしてくる為に、二人は着陸脚の陰に釘付けにされて、そこから一歩も動けなくなってしまった!
「もう少しで、無事にここを出られたって言うのに……あのガンマンめ!腹いせに、帝国軍を引き付けて来るなんて!でも、あいつの姿が見えてたんなら、どうして一言注意してくれないんだ!」と、ぼやくルーク。
「あのガンマンが何者かなんて、俺は知らねえよ!でも、俺の目の視力はそんなに良くはないんだぜ。あいつの姿は、ルーク……お前にも、当然見えてた筈だぞ?」
「僕はコンタクト・レンズをしてるんだ!」
 ルークの答えに呆れ返ったハン・ソロは、チューバッカに携帯通信機で連絡を取った。
「チューバッカ!ハイパー推進システムの修理の方はどうだ……何、まだだって?う〜ん、仕方ねえ。俺たちがここで帝国軍を近付けないよう応戦してるから、その間に修理を進めて、一刻でも早くハイパースペースに逃げ込めるようにしてくれ!それから、お客さん方には、危険だから顔を出さないよう、客室でシートベルトを締めておいてくれって言っといてくれ !」
 ハン・ソロは、ルークの方を振り返って言った。
「奴ら、俺たちの顔を見るや、問答無用で撃ってきやがった。おい……ルークだったな?お前たち、帝国軍に一体どんな恨みを持たれてるんだ?ひょっとして、お尋ね者の賞金首だったりするんじゃねえか?」
「そうだったら、どうする?」
 ルークの問い掛けに、ハン・ソロはニヤッと笑い、レーザーを連射しながら答えた。
「そうだな……どうもしねえさ!俺は、帝国軍ってのが大嫌いだからな!どっちかって言うと、そのお尋ね者の方を助けてやるかな?」
 顔を見合わせて、クスッと笑う二人。この時、ルークとハン・ソロの間に、生涯絶える事のない友情が生れたのだ!
「……それにしても、こう激しくドンパチやってちゃ、〈ミレニアム・ファルコン〉に駆け込む事も出来やしねえ。おーい、チューバッカ!早くしてくれよ〜!」
 思わずぼやくハン・ソロ。〈ミレニアム・ファルコン〉本体に取り付けられている砲座は、地上の敵に対しては全く役に立たない上、メイン・ハッチが敵の方を向いているので、船の中からの応援も出せない。必死で応戦するルークとハン・ソロだったが、帝国軍が繰り出してくる兵力を前に、二人はじわじわと押されきみになって行った。帝国軍の指揮を取っているユル・ブリンナー型ガンマン・ロボットは、ゆとりの微笑みを浮べると、またルークたちに一歩近付いて行った……。と、その時、誰もいない筈の二人の背後に、ヌッと巨大な影が立ちはだかった!

「しまった、油断した!」
 唇を噛み締め、振り返ったルークの目に入ったもの……それは、巨大なコブラ砲を構えたターミネーターの恐るべき姿だった!凍り付くルークとハン・ソロ!ユル・ブリンナー型ガンマン・ロボットと帝国軍の後をつけていた、謎の尾行者とは彼だったのだ!
「お前も、あの時のウサ晴らしに来たのか!」
 絶望の縁で叫ぶルークに、ターミネーターが無表情のまま答えた。
「……トラスト・ミー!(俺を信じろ!)」
 ターミネーターは二人を押し退けると、帝国軍に向かって、コブラ砲をぶっ放した!轟音と共に火柱が上がり、帝国兵士が吹っ飛ぶ!更に、次々と帝国軍に向かって発射されるコブラ砲!あっと言う間に形勢は逆転し、帝国軍は壊滅!ブリンナー型ガンマン・ロボットも、映画『ウエストワールド』の結末と同じように、火だるまとなって爆発した!
「お前は……お前は、一体!?」
 驚愕して物も言えないルーク!
「私は、ジョン・コナーを守る為に、未来から送り込まれたターミネーター=サイバーダインT−800だ。君が先程酒場で見たのは、以前に君を抹殺する為に送り込まれた、私と同タイプのターミネーターだ」
 角刈にサングラス。黒の革ジャンを着こなして、ファッションもバッチリ決ったターミネーターが無表情に、ルークに告げる。
「おいおい、彼はジョン・コナーじゃなくて、ルーク・スカイウォーカーだぜ!」
 帝国軍の応援部隊を気にしつつ、疑わしげな目つきでターミネーターを見つめるハン・ソロ。ルークもどう答えて良いか分からずに、アタフタしている。
「ターミネーターは、如何なる時間、如何なる場所にも存在する」
 「ターミネーター2」にも登場する、有名なセリフで全てを説明したとばかりに、ターミネーターは言い切った。と、その時チューバッカがハッチから顔を覗かせて、ハン・ソロに合図した。
「よしっ、修理完了だ!ウロウロしてると、また帝国軍の奴らがやって来る。さっさとずらかろうぜ!」
 ルークにウインクするハン・ソロ。だが、彼の後に、ターミネーターがピッタリと連いて来る……。
「あのう……僕を守ってくれるって言うのは嬉しいんだけど……人違いなんだよ!」
 迷惑げに言うルーク。と、ターミネーターはクルリと向きを変えた。
「やれやれ……やっと分かって…く……れ……」
 そう呟いたハン・ソロの言葉がピタリと止まっ た。ターミネーターが見つめている方向……コブラ砲が命中した建物の炎の中から、銀色に光る物体が出現したのだ!それは次第に歩みを早め、いつしか警官の姿に変貌するや、ルークたちへ向かって突進して来た!更に、その後から続々と現れて来る帝国軍兵士!
「T−1000だ!」「おまけに帝国軍もだ!」
 慌てて、ハッチへと駆け込むルークとハン・ソロ!ターミネーターはあたかも守護神の如く、襲い来るT−1000をガチッと受け止めた!T−1000の腕が瞬時に形を変え、閉まりつつある〈ミ レニアム・ファルコン〉のメイン・ハッチに差し込まれるや、万力へと変化する……。ルークとハン・ソロが操縦室に駆け込んだ時、そこは、何事が起こったのかと、好奇心満々な「お客様」たちで溢れ返っていた!操縦席に座るや、チューバッカに命令を下し、次々とスイッチを入れながら、ハン・ソロが怒鳴る!
「おい!きちんと客室に座って、シートベルトを締めておけって、チューバッカが言っただろうが!?俺は、交通違反で減点はご免だぜ!」
「この猿人の事なら、何言ってるのかさっぱり分からないわよ!」と、砂姫明日香。
「一体、どうなっているのですか?」と、アタフタと駆け込んで来たのはC-3POだ。
「うるさい!死にたくなかったら、黙ってろ!今は、一時でも早くここから飛び立つんだ!」
 ハン・ソロとチューバッカの必死の操作で、〈ミレニアム・ファルコン〉は、帝国軍の砲撃を浴びながらも、遂にフワリと浮き上がり、そのまま大気圏外へと突進して行った!……が。

「大変よ!メイン・ハッチに何か挟まってる!」
 そう叫んで、操縦室に駆け込んで来るエイリア!チューバッカがスイッチを入れるや否や、サイドスクリーンに外部カメラの映像がパッと映った! 「何じゃ、こりゃ?」と、首を捻るオビ・ワン。
「……ヤバい!ありゃあ、さっきのターミネーター2体が、メイン・ハッチからぶら下がったままになってるんだ!このままじゃあ、大気圏外に出られねえぞ!」
 スクリーンには、〈ミレニアム・ファルコン〉のメイン・ハッチに金属アームでぶら下がったまま 、自在に姿を変え続けているT−1000と、それを引きずり落とそうとするT−800の巨体が、激しく絡み合っていた!
「ウォッ!ウォウォウォーッ!」「何!後3分で大気圏外だって!」
 チューバッカの言葉を耳にするや、ハン・ソロは振り返って怒鳴った!
「誰でもいいから、あいつらをハッチから蹴落としてきてくれ!でなきゃ、船内の空気が吸い出されて、一連托生……俺たちもお陀仏だ!」
「OK!」「分かったわ!」
 砂姫明日香と小松崎蘭が、飛ぶようにハッチの方へ走って行く!後を追おうとするルークを押し留めるオビ・ワン。
「あの二人に任せておけば、大丈夫じゃ!」
「でも、後2分しかないわよ!」と、高度計を見つめながら叫ぶリーザ!
「お嬢さんたちよ……頼むぜ!」
 ハン・ソロは祈るように呟くと、大気圏を突破した後、直ちにハイパースペースに突入できるよう、急いで準備を始めた……。そして、激しく揺れる〈ミレニアム・ファルコン〉の狭い通路を通り抜け、やっとの思いでメイン・ハッチ格納スペースにたどり着いた明日香と蘭の二人は……。

「時間がないわ!二人して、テレキネシスの衝撃波を、T−1000の腕にぶつけるわよ!」
「いいわ、明日香!」
 そう応えた蘭の目が輝き、彼女の髪が燃え立つように、ざわざわと紅く変化する!
「さすがに、『紅い牙』の異名はだてじゃないわね!」
 ニコッと微笑み、目を閉じた明日香の周囲の大気が、次第に渦巻き始め、激しく唸りを上げて震動する!「大気よ……私に力を貸して!」
『おい……何してるんだ!?後30秒しかないんだぞ!』
 焦るハン・ソロの声が艦内スピーカーから響く。だが、精神を集中し続けている二人の耳には、全く届いていない……。そして、大気圏外まで後10秒と迫った時、明日香が蘭に向かって叫んだ!
「いいわね、X攻撃よ!」「アターック!」
 二人の体から発せられた超強力な衝撃波が、メイン・ハッチにぶら下がるT−1000の金属アームに激突!アームをぶち切られたT−1000は、その体をがっしりと組み止めたターミネーターもろとも、宙に弾き飛ばされた!挟まっていた障害物が無くなったメイン・ハッチが、ガシーンと音を立てて閉まった瞬間、〈ミレニアム・ファルコン〉は真空の宇宙空間へ飛び出した!
「アイル・ビー・バック!(戻って来るぜ!)」
 大気圏内に舞ったターミネーターはそう言うと、 あたかもベビー・エイリアンを胸に抱いたまま溶鉱炉へ身を投じたリプリーのように、暴れ回るT−1000をガッシリと抱き止めた!やがて、2体のターミネーターは、大気との摩擦熱で大きく燃え上がるや、そのまま惑星〈タトゥーイン〉の地表めがけて、高速で落下して行った……。


「見て、コブラ……流れ星よ!」
 第8スペース・ポートで、タートル号の発進の準備をしていたレディーが、傍らのコブラに向かって声を掛けた。あの凄まじいドンチャン騒ぎから、ほうほうの態で逃げ出して来たコブラは、ハーロックらと分かれると、ひそかにルパン一行と合流したのだ。レディーの指す方角を見るコブラ。
「どれどれ?……う〜ん、俺には見えねえなあ」
「こんな薄暮の空に流星を見つけるってえのは、さすがだぜ!」と、感心する次元。
「正に修業の成果でござる!」
 五右ヱ門が斬鉄剣に磨きを掛けながら言う。レディーが顔を伏せて目を閉じ、両手を合わせてじっと祈る姿を見たコブラも、同じ様に目を閉じながら言った。
「な〜に、彼女の目は赤外線が感知できるんだ。別に目を鍛えてる訳じゃないのさ」
「ちぇっ!それを言っちゃあ、実もふたもねえじゃねえか」
 コブラのつれない答えに、次元は帽子を胸に当てて言うと、同じように頭を下げた。
「ま、どっちにせよ……俺たちは、この作戦でお宝がうまく手に入る事を祈るだけさ!」
 ルパンも天に向かって、大きくパンパンと柏手を打つや、頭を下げてムニャムニャと呟く。五右ヱ門も斬鉄剣をそっと置くと、静かに目を閉じた。声のないのはただ一人……イビキをかいて寝ている電脳サイバーキッズの〈伯爵〉こと、ボビイ・ニューマークだけだ。やがて、顔を上げたレディーが振り向いて言った。
「五右ヱ門さんは、何を祈ったの?」
「拙者の願いはただ、更なる修業の場と我が剣の冴えだけでござる」
「我に七難八苦を与えよ……か。ははーっ、立派なもんだ!それに比べりゃ俺の望みは、あのうるせェ銭形の父っつあんが、もうこれ以上、俺たちを悩ます事がありませんように……って言う、実にささやかな願いさ!」と言ったのは次元だ。
「そうそう!あのしつこい父っつあんにゃ、今まで嫌って言うほど酷い目に遭わされてるからなあ…… 。全く、どうしてこう、俺たちが行く先々に現れんのかねえ?今度こそ、何の障害もなくお宝を頂戴したいもんだぜ!」と、閉口したような表情を見せるルパン。そして、祈りを終えたレディーがコブラに問い掛けた。
「コブラ……あなたは何を願ったの?」
「そうさな……俺の願いは、この惑星で分かれた友と、宇宙のどこかで再び会える事さ……」
 親友ハン・ソロの笑顔を脳裏に浮かべたコブラが言う。
「で、レディー……お前は何を祈ったんだ?」
「私?……私はねえ、こんな時の常套句かも知れないけど……この世から、一切の争いがいつかきっ と無くなりますようにって……」
 そんな平和な時代が、本当にやって来るのか?―と、想いをはせながら、レディーは夕闇迫る惑星タトゥーインの空の遥か彼方の宇宙をじっと見つめた……。

 そんなコブラたちの想いも知る事なく、ハン・ソロの〈ミレニアム・ファルコン〉は、惑星タトゥーインを飛び立って追撃してくる、帝国軍のタイ・ファイターを必死になってかわしつつ、ハイパースペースへ逃げ込むカウント・ダウンに入っていた!
「ようし……亜空間航行突入まで、後30秒!ハイパースペースに逃げ込みゃ、もうこっちのもんだ!アルデラーンまでひとっ飛びだぜ!」
 自信たっぷりのハン・ソロを、不安げにじっと見つめるエイリア……。
「本当に大丈夫?確かあなた、出発前にこの毛ムクジャラのお猿さんに、ハイパースペース航行装置の修理をさせてたように思ったんだけど……」
 内心ギクッとなるハン・ソロ。だが、あくまで何げない様子で答えを返した。
「だ、大丈夫だよ……それじゃ行くぜ、チューバッカ!目指すは、惑星アルデラーンだ!」
「ウォーッ!」
 ハン・ソロの空元気に応えて、雄叫びを上げたチューバッカが、亜空間航行のスイッチを入れる!一度失敗した本家の映画版とは違って、今度は一発で物の見事に成功した!
「やったぜ!」「成功だ!」「見直したわ!」「これで一安心ね!」と一斉に上がる歓声!だが……。
「おい……おかしいぞ?ハイパースペース航行装置へのエネルギー流入が多過ぎる。このままじゃ暴走して、亜空間の歪みに巻き込まれちまう!」
「……って言うのは、どうなるって事?」
 蘭がおそるおそるハン・ソロに尋ねる。
「どこに出るか分らねえって事だよ!」
 やけくそになって怒鳴るハン・ソロ!「えーっ!」と言う悲鳴が、多重音声でこだまする!
「やっぱり、私の不吉な予感が当たったんだわ……」
 エイリアはクラクラッと目まいを感じて、床にバタッと崩折れた。
「畜生!やっぱり、コブラの言った通り、こんな仕事引き受けるんじゃなかった〜〜!」
 後悔先に立たず……。嘆くハン・ソロを余所に、〈ミレニアム・ファルコン〉はいずことも知れぬ空間を目指して、ハイパースペースをすっ飛んで行った!この事故が災いし、〈ミレニアム・ファルコン〉よりも後にタトゥーインを出発したタートル号の方が、先にデス・スターに遭遇する事となる……。


《第15章:アルデラーン大攻防戦:PART1…へ続く》


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