【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第13章》 失われた《聖櫃》強奪作戦


「……では、30分後に」「ああ、待ってるぜ!」
 航海の無事を祈った一時の宴も終わり、オビ・ワンは仲間と合流する為に、カンティーナの酒場を出て行った。〈ミレニアム・ファルコン〉の整備の為、チューバッカも一足先に第7スペース・ポートへと向かう。
「さあ〜〜て、と!俺もそろそろ行くか……」
 大きく伸びをして、ソロが立ち上がろうとした時 、向い側の席にバルタン星人が腰を下ろした。
『チョット待ッタ、ハン・ソロ』
 ハン・ソロは嫌な奴が来たと言う風に、舌打ちをして眉をひそめた。
「何だよ?俺はこれから仕事なんだ……用なら、また今度の機会にしてくれ!」
『仕事トハ結構ナ事ダ……ナラ話ハ早イ。オ前ハ、ジャッバ様ニ多額ノ借金ヲシテイル筈ダ。ソノ 返済計画ハドウナッタ?』
「それは、そのう……今度の仕事で幾らか金が入るから、それで少しは返せる筈だ。だから、もう暫く待ってくれって言っといてくれないか?」
 懇願するハン・ソロに対し、無表情(?)に続けて言うバルタン星人。
『ソレダケデハナイゾ、ソロ!オ前モ海賊デアル以上、海賊ギルドノ一員ダ。ギルドニ対シ組合費ヲ払ワネバナラン。モウ一年モ滞納シテイルゾ。ジャッバ様モオ怒リダ!』
「へっ!ギルドの組合費だと?俺は一匹狼の海賊だ。海賊ギルドなんて入った覚えはねえぜ!それを勝手に、銀行振り込み請求書なんか送って来やがって……払う義務もないモンに、ビタ一文だって払えるかよ!ジャッバへの借金とそれとは、まるっきり別問題じゃねえか!」
『イヤ!ドチラモ、ジャッバ様ガ係ワッテオラレル以上、同ジ事ダ!ソレニ……オ前ニ払ウ気ガアロウガ、ナカロウガ、海賊ギルドノ評議会デ決定シタ以上、ソレニ従ッテ貰ワネバナラン。我ガ海賊ギルドハ、全銀河ノ海賊ノ生活ト権利ヲ護ルト言ウ、崇高ナ義務ガアルノダ。オ前ノ意志ナド関係ナイ』
「けっ!権利だの義務だのぬかしても、結局は俺達の仕事の上がりを掠め取ろうってのが本音じゃねえか!大体、俺は暗闇のジャッバみたいな、腐肉に群がるハイエナの様な連中は、以前から大っ嫌いだったんだよ!」
『……何ダト!』
 怒ったバルタン星人の片方のハサミが、自分に向けられたのを目にした瞬間、ハン・ソロは0.5秒の早業でレーザーガンを引き抜き、テーブルの下からバルタン星人目がけて、トリガーを引いた!が……。
『フォッ!フォッ!フォッ!……。コレハ何カナ?ハン・ソロ』
 バルタン星人のもう片方のハサミに挟み込まれている物を見て、ハン・ソロは毒づいた。
「畜生!俺のレーザーガンのエネルギーパックじゃねえか!……どうりで発射しねえ筈だ」
『フォッ!フォッ!フォッ!先程オ前ト擦レ違ッタ時、スリ取ッテオイタノダ。気ガ付カナカッタトハ、馬鹿ナ奴ダ!』
 ハン・ソロは、役に立たない銃をテーブルの上に置くと、バルタン星人をじっと凝視した。
「貴様……最初から俺を殺すつもりだったな?」
『ソノ通リ。借金ヤ組合費ウンヌンハ、詰マル所ハ口実。最初カラ、気ニ食ワナイオ前ヲ殺セトノ、ジャッバ様ノゴ命令ダ……デハ、コレデコノ世 トオサラバダナ!』
 バルタン星人の両のハサミが、ゆっくりとハン・ソロに向けられ、次第に光り始めた……。ハン・ソロは死神を目の前にして、凍り着いたような表情になった。
『死ネ……ハン・ソロ!』
 青白い閃光が迸った瞬間、ハン・ソロは死を予感して、思わず目をつぶった!が、次の瞬間、悲鳴を上げて燃え上がったのは……バルタン星人の方だった!酒場の中は一瞬静まり返ったが、見馴れた光景なのか、直ぐに元の喧騒に戻った。

「な、何だ!こりゃ一体……?」
 何が起こったのか、訳が分からずに焼け焦げたバルタン星人の死体を見つめるハン・ソロ……。と 、その死体からもう一体のバルタン星人が分離し、立ち上がった!その瞬間、ハン・ソロは電光石火の如く、抜き取られていたエネルギーパックを取り上げると、レーザーガンに再装着してバルタン星人を撃ち倒した!そして、バルタン星人が二度と甦らない事を確かめると、ハン・ソロはほっと安堵の溜め息をついた。と、その肩がポンと叩かれた……。
「やあ、兄弟!危ない所だったなあ」
 その声に反射的に振り返りざま、矢のような左ストレートを放ったハン・ソロ!が、その強烈な拳を、バシッと右手で受け止めたのは、誰あろう宇宙の一匹狼−海賊コブラ!

♪街を包む〜〜、ミッドナイト・フォッグ〜〜。孤独な〜〜シールエーット〜動き出〜せば〜〜、それは〜紛れもなく〜〜奴さ〜〜……。

「……コブラ!おい、久し振りじゃないか!?」
「ハン・ソロ、お前みたいに抜け目ない男が、レーザーガンのエネルギーパックを摺り取られてたのに気づかなかっとはなあ……いやはや!」
「おい、それは言うなよ!ちょっと油断してただけなんだから……」
 皮肉たっぷりに感心して見せるコブラに対し、ハン・ソロは妙に言い訳がましく答えた。
「ま、ちょっと余計なお世話だったかな?」
 コブラは、最初にバルタン星人を撃ち倒したサイコガンに、再び腕をはめ込んだ。
「いや〜、あの時は、これで俺も終わりかと思ったよ……。実際助かったぜ、兄弟!どうだい、あっちで一 杯?」
「いいねえ……。久し振りの再会を祝って、二人で乾盃と行くか!」
 テーブルを離れ、カウンター席に移った二人は、ドライマティーニとバーボンで乾盃を上げた。
「……それより、コブラ。お前、こんな辺境の星に何の用だ?ま、俺も余り人の事は言えねえがよ!」
 ハン・ソロはくっくっくっと笑った。
「そうそうその事だ……俺は、ハン・ソロ、お前に用があってここに来たんだ!仕事だぜ……それも、つまらねえ運送屋なんかじゃねえ。久し振りの大仕事だ!」
「大仕事?」
 好奇心をそそられたハン・ソロの目が、キラリと輝く。
「ちょっと、俺の肩越しに右手の方を見てみろ……」

 コブラに言われて、じっと目を凝らしたハン・ ソロは、奥の方のテーブル席に、数人の人影が集まって、目立たぬようにヒソヒソ喋っているのに気づいた。
「あいつは……キャプテン・ハーロックじゃねえか!それにクイーン・エメラルダスにアンタレス!こりゃあ、一体何だい?松本零士アニメの海賊が集まって、同窓会でもやらかそうってのかい?」
「その隣はどうだい?」
「隣?……ありゃあ、スターウルフのモーガン・ケインに、宇宙海賊のブラック・ジャック!氷の牙のドブスン船長もいるぜ」
「ハン・ソロ……。お前、つい先日、元老院議員のレイア・オーガナ姫が乗った宇宙船ブレードランナー号が破壊されたって話、聞いてるか?」
「ああ……そう言やあ、昨日の帝国の臨時ニュースで、そんな事を言ってたなあ。確か……キャプテン・ハーロックのアルカディア号に破壊されたとか……」
 そこまで言って、ハン・ソロはギョッとなった。
「勿論……それは濡れ衣だ」
 コブラはすまして言った。
「何しろ、ブレードランナー号が破壊されたって頃には、アルカディア号は数年に一度の車検の真っ最中で、数日前からドック入り……。そんな所に出て行ける筈がねえ」
「じゃ、一体……?」
「帝国の策略だよ。情報屋のミス・マドウの話によると、ブレードランナー号を破壊したのは、他ならぬシスの暗黒卿ダース・ベイダー自身だそうだ。それを、日頃から何かと目障りな俺たちに、責任をおっ被せて、叩こうってハラだ。おまけに、どうやらこれには、あの海賊ギルドの連中も一枚噛んでいるらしい」
「あの糞ったれのギルドの野郎もか!」
 ハン・ソロは、先程のバルタン星人の事を思い出して、吐き捨てるように言った。
「それで、皆こんな所に集まって、一体どうしようってんだ!?」
 眉を潜めるハン・ソロに対し、コブラは皮肉たっぷりに応えた。
「そこでだ……!誇りある、我が宇宙海賊同盟の盟主たるキャプテン・ハーロック殿は、このような帝国の言われなき非難に対し、皆で抗議行動を行なおうって訳だ」
「へっ、馬鹿馬鹿しい!俺は、そんな茶番に付き合ってる暇はねえぜ!」
「まあ、待て。ハン・ソロ……」
「俺あ、今まで誰の世話にもなった事はねえ。正真正銘、宇宙の一匹狼だ!帝国だろうと共和国 だろうと、海賊キルドだろうが海賊同盟だろうが、そんな事あ、俺の知ったこっちゃねえ!」
「だろうな……俺もそう思う」
 コブラがニヤリと笑ったのを見て、ハン・ソロは訝しげに問い掛けた。
「じゃあ、一体。お前は何のつもりで……」
「俺にとって、この抗議行動は隠れミノ−陽動作戦なんだよ。大仕事のな……」
「隠れミノ?」
「ハン・ソロ。今度は、左肩越しの奥の方の席を見てみろ」

 ハン・ソロがじっと目を凝らした席に座っていたのは……。
「あいつは……ルパン三世じゃないか!それに次元大介と石川五右ヱ門……高飛びレイクまでいやがる!今度は何だい、銀河中の泥棒や盗賊・怪盗の大集会でもやろうってのか?」
「いいか、ハン・ソロ。ハーロックやエメラルダス、それにスターウルフやドブスン船長の一団が抗議行動として、一定時間帝国の機動要塞デス・スターを攻撃する。その隙に紛れて、俺のタートル号とお前の〈ミレニアム・ファルコン〉で侵入しようってハラだ。丁度その頃、銀河巡業サーカス団を率いて入り込んでいる俺たちの仲間−変装の達人・七色いんこや、怪盗エロイカことドリアン・レッド・グローリア伯爵、ステンレス・スチール・ラットらが、内部で大騒ぎを起こす手筈になってる」
「な、な、な、何だって、デス・スター!」
 思わず大声を上げかけたハン・ソロの口を、慌ててコブラが塞いだ。
「しっ!静かにしてくれよ……この話は、ハーロックに知られると拙いんだから……」
「分かったよ。デス・スターなんて言うもんだから、ちょっと驚いちまっただけさ……で、そのデ ス・スターから何を頂こうってんだ?帝国の隠し金庫か?」
「ハン・ソロ……お前は知ってるだろう?遥か古代に、預言者モーゼが十戒を刻み込んだ石板を収めた聖櫃ってやつを?」
 コブラの顔が、今までと違って真面目になった。
「聖櫃ねえ?そう言えば……俺んちの昔の伝承で、何かそんな話を聞いた事があるぜ。確か、インディとかインディアンとか言う、俺の遠い遠いご先祖様が一度だけ目にした事があるらしいんだ。何でも、それを手に入れる事ができた者は世界を支配する事ができるとか……」
 その時、ハン・ソロはコブラがじっと自分を見つめているのに気づき、いきなり笑い飛ばした!
「でも、そんなこたあ、結局ただの伝説だぜ!」
「いや、そうじゃないんだ!これは確かな情報なんだが、何でもデス・スターの中枢部の奥深くに神殿が作られていて、そこに聖櫃が祭ってあると言う事だ……もっとも、この秘密を知っているのは、帝国の重要人物の中でも、更にその一部に過ぎないんだが……。今の帝国の隆盛も、案外その聖櫃のお蔭なんじゃないかな?まあしかし、そんな言い伝えはどうだっていい。大事なのは、その聖櫃が黄金製だって言う事だ」
「純金製の聖櫃か!」
「その道の好事家や収集家なら、『失われた聖櫃』とくりゃあ、大枚幾らでも出してくれるだろうよ。何なら、共和国軍に売ってやってもいいさ。何しろ、勝利を呼ぶ伝説の聖櫃なんだからな、アッハッハ……」
 コブラはカウンターを叩きながら笑った。
「どうだい、ハン・ソロ?俺の仕事に一つ噛んでみる気はねえか?」
「しかし、コブラ。そいつがあるのは、あのデス・スターだぜ!本当にそんな所から盗み出せるのか?」
 コブラの顔が再び真剣になった。
「そう言うなら、ハン・ソロ。お前は密輸をやったり、帝国のケチな運搬船を襲ったりしてみて、スリルを感じるのか?」
「……スリル?」「そうさ、スリルだよ」
「スリルねえ……そう言やあ、最近余りパッとした仕事してねえからなあ」

「ハン・ソロ……。確かに楽な仕事をしてりゃあ、生命を危険に晒す事なく、そこそこの金は入ってく るさ。だがな、俺たち海賊の本分ってのは、そんな事じゃない筈だ。俺たちは何の為に海賊をやってるんだ?金を稼ぐ為か?それが商売だからか?……違うな。俺たちは、生と死が一瞬にして入れ換わる命ギリギリの瀬戸際、そしてあの心の奥底から沸き上がって来る、ゾクゾクするような瞬間が好きなのさ!帝国の機 動要塞……?デス・スター……?確かに、生半可な気持ちじゃ返り撃ちに合って、オダブツになるのがオチさ 。だがな、その不可能とも言える危険に挑戦してこそ、俺たちの生き甲斐があるんじゃないのか?人生ってのは、命懸けのゲームなんだ。運がよけりゃゲームに勝てる。ゲームに勝てりゃあ、その結果としてお宝が入って来るんだ」
「……運が悪けりゃ?」「死ぬだけさ……!」

♪運が悪けりゃー、死ぬだけさー、死ぬだーけーさー……。

 コブラの言葉に、暫くの間安穏とした日々の暮らしに追われ、毎日を惰性で過ごして来たハン・ソロの心が、大きく揺り動かされた。そしてその目から皮肉っぽさが消え、真剣になった。
「そうだな……いや、コブラ。済まないが、今回は遠慮するよ」
「貴様!俺がこれ程言ってるのに……さてはブルったな?」
「いや、そうじゃないんだ。俺も本当はお前と一緒に行きたいさ。喜んで仲間に加わりたい……でもな、俺はついさっき、別の客と契約を結んできた所だ。先約があるんだよ」
「断わればいい!」
「そうはいかねえ。たとえお前の仕事と比べて、どんなにつまらない仕事でも、一旦結んだ以上、それは契約なんだよ。それをこっちの都合で勝手に破っちまえばよお……」
 ハン・ソロはニヤリと笑った。
「俺の仁義が廃らあな!」「ソロ……」
「いや、それより俺の気持ちが済まねえんだ。たとえ爺さんと女子供を十人ばかり乗せるだけの簡単な仕事にしてもだ……。済まねえ、せっかく声を掛けてくれたってえのに……」
 コブラは暫く、じっとハン・ソロを見つめていたが、やがて大声で笑って立ち上がった。
「分かったよ、ハン・ソロ!一本気な性格も昔と変わっちゃいねえな。ま、いいだろ……俺は俺で 、自分の仕事に専念するから、お前もお前で頑張れよ!」
「悪いな、コブラ!この酒は、俺のおごりにさせてくれ」
 ハン・ソロが指先でピーンと弾き飛ばした金貨を宙で受け止めたコブラは、そのまま自分の分を添えて返した。
「おいおい!自分の飲み代くらい自分で払うさ……じゃあな、またどっかで合うだろう」
「ああ、今度俺に話を持って来る時は、先約のない時にしてくれよ!だが……」

 ハン・ソロに別れの挨拶をして、席を離れようとしたコブラが、こそっと言う。
「ちょっと気になったんだが、お前の声、俺にソックリなんじゃねえか?」
「日テレ初放映版の事だな?すまねえ……そいつぁ、俺も忘れたい過去なんだ。勘弁してくれ!」
「分かった。俺も、これからは『劇場版』じゃなく、『TV版』って事にさせて貰うぜ」
 「中の人ネタ」で気まずい思い(?)をしたハンソロとコブラ。だが、この後運命の導きにより、二人がデス・スターで再び顔を合わせようとは、二人も知る筈はなかったのだ……。

 やがて、コブラはルパン一行が腰を下ろしている一角を通り過ぎる時、全く知らぬ振りをして、顔を向けずに呟いた。
「……ダメだったよ。どうやら先約があるらしい」
「そうかい?しゃあねえな。じゃ、これで決まりだ。全員タートル号で行くとするか」
 ルパンは鼻毛を抜きながら、コブラの顔も見ずに呟いた。ルパンらの横を通り過ぎたコブラは、やがてハーロック一行が席を占めている一角に腰を下ろした。
「どうだった?ハン・ソロとか言う奴は?」
 キャプテン・ハーロックは、何かぼんやりとした表情でコブラに問い掛けた。
「残念だが、無駄足だったよ……。先約があるって事だ」
 ハーロックに、コブラは肩をすくて言った。
「そう?じゃあ仕方ないわね。元々当てにはしてなかったんだから……後は私達だけでやりましょう」
 クイーン・エメラルダスがそう言って、膝の上に乗せている黒猫の喉を撫でてやると、猫は気持ちよさそうに、グルグルと喉を鳴らした。
「それやったら、わいとケインは先に行って、仲間の船団と集合してくるさかい」
 ドブスン船長とモーガン・ケインは、ハーロックに声を掛けると席を離れた。
「ああ、済まない。先に行っていてくれ。私はちょっと薬を飲んでからにするから……」
 ハーロックは熱の為にぼうっとなった目をこすると、ポケットから粉薬を取り出した。
「ハーロック……あなた、大丈夫?そんなに汗をかいて……夏カゼなんでしょう?」
 心配げにハーロックを見つめるエメラルダス。ブラック・ジャックがハーロックの袖を巻くると、 携帯用の注射を二の腕にした。
「大体、こんな体調で外に出歩くのがおかしいんだ……。そんなだから、さっきルークが絡まれてた時、『銀河鉄道999』の様に早爽と助けに行けなかったんだぞ!それに、私の本業は医者だ。宇宙海賊は、24時間テレビの『バンダーブック』で一度やっただけの番外なんだから……。ドクター・マッコイ曰く『私は医者だ!石屋じゃない!』いや、この場合は石屋じゃなく海賊だな。……とにかく、こんな所にまで、私を引っ張り出してくれるな!」
「君は!君は……私が言われなき非難を受けているのに対し、抗議……すると…言う事……が間違って……」
 そこまで言った時、ブラック・ジャックの注射が利き始め、ハーロックはグッスリと深い眠りに入って行った……。
「そら!今の間にアルカディア号のヤッタラン副長に連絡して、彼を引き取りに来て貰うんだ!効き目の強い注射をしといたから、しばらく安静にして十分睡眠を取れば、夏カゼも直る筈だ!その後だったら、何でもしたい事が出来るさ!」
 出来の悪い患者を叱るような態度でハーロックを見つめるブラック・ジャック!エメラルダスも、はーっと溜め息を着きながら呟く。
「ハーロックがどうしてもやりたいって言うんだもの……仕方ないでしょ?まあ、帝国に、私たち海賊同盟の実力を見せ付けておくのも大事な事だし、これもお付き合いね!」
 むにゃむにゃと寝言を言っているハーロックの体に、そっとマントを掛けるエメラルダス。と、コ ブラの目が、エメラルダスの膝の上で、体を丸くして、すやすやと寝入っている黒猫に止まった。

「エメラルダス、この黒猫どうしたんだ?」
「え?……ああ、この猫ちゃんね。私が最初にこの酒場に来て、皆を待ってたら、いつの間にか私の膝に乗っちゃって……。それから、ず〜っとここを動いてくれないのよ」
 エメラルダスの指先が、黒猫の喉を再び撫でる。ゴロゴロと気持ち良さそうな声を上げる黒猫。それを見ていたコブラが、突如言った。
「おい……お前、ただのネズミじゃないな?」
 コブラの言葉に、黒猫がニタッと笑って、言葉を返した。
「ただのネコでもないニャ!」
 驚いたエメラルダスが、黒猫を膝の上から放り出そうとした時、猫の首輪がギラッと異様な輝きを帯びて光った!
「おっと!動くんじゃないニャ!ちょっとでも動いたら、首輪に仕込んだ全方位レーザーで、お前たち全員血祭りだニャ!」
「貴様……海賊課刑事の黒猫アプロだな?」
 黒猫……実は、猫型異星人にして、海賊課の第一級刑事。通称〈黒猫アプロ〉は、不気味な笑みを浮かべて、居並ぶ海賊たちを見渡した。
「良く分かったニャ!褒めてやりたい……と言いたい所だけど、今まで分からなかったお前たちは、やっぱり馬鹿だニャ!」
「私達は、正当派海賊の海賊同盟よ!残虐非道な海賊ギルドじゃないわ!」
 エメラルダスの抗議を、鼻であしらうアプロ。
「どっちみち、海賊には違いないニャ!」
「その通り……こいつにとっちゃあ、海賊同盟だろうが、海賊ギルドだろうが、そんなものは関係ないんだ。要は、俺たちが海賊だってだけで、引っ括ろうってハラなんだ!」
「やっぱり、お前だけは利口なようだなニャ!どうやら、何か謀らんでたらしいけど、それももう 終わりだニャ!後5分で、この酒場の上に、海賊課のフリゲート艦〈ラジェンドラ〉がやって来るニャ!そうなったら、お前たち全員、監獄行きだニャ!」
 得意満面のアプロ!手が出せずに、ギリギリと歯噛みするコブラたち。と、何の予兆も見せずに、いきなりムクッと体を起こしたハーロックが、アプロの長い尻尾を掴み、ブランとぶら下げた!
「私の…私の……大いなる行動を邪魔しようとする奴は……絶対に許せん!」
「ワ〜〜ッ!何するニャ〜〜〜!?」
 ハーロックは、アプロを思いっ切り振り回すや、そのまま遠くへ投げ捨てた!床で大きく弾んだアプロが全身の毛を逆立てて、怒りを露わにする!アプロの首輪が、殺戮の妖光を放ち始めた! エメラルダスたちも、一斉に腰の銃に手をやった!
「こうなったら、もうどうなっても知らないニャ!全員、皆殺しだニャーッ!」
 ……その途端、アプロが全く予期しなかった事が起こった!カンティーナの酒場の入口のドアが、突然 破られたかと思うと、30人もの屈強な警官が、ドカドカと店内に雪崩込んで来たのだ!アプロは、 彼らの60本もの足の下敷きになり、踏み潰されてしまった!そして、警官隊の先頭に立ち、警察手帳を振りかざしていた人物は……銭形警部だった!

「……ICPOの銭形だ!この酒場に、ルパン一味が潜伏しているとの情報があったので、調べさせて貰う!全員、一歩も動いてはならんぞ〜〜!!」
「銭形の父っつあ〜〜ん!何でこんな所へ!?」
 〈聖櫃強奪作戦〉の打ち合わせをレイクたちとしていたルパンは、宿敵・銭形警部の姿を目にするや、仰天して飛び上がった!
「いたなあ、ルパァ〜ン!御用だあ〜〜!!」
 銭形警部が、十手を振り上げて、大仰にミエを切った途端、30人もの埼玉県警機動隊員が、ルパ ンたちに向かって突撃!その瞬間、次元のマグナムが店内の照明を全てぶち抜き、五右ヱ門の斬鉄剣が、壁際のブレーカーを叩き斬った!一瞬にして、暗黒の闇に閉ざされる「カンティーナの酒場」!
「サツだ!」「手入れだ!」「ヤバい、逃げろ〜〜!」
 何しろ、店内にいたのは宇宙海賊やら密輸屋やら賞金首やら……警察とは犬猿の間柄の後ろめたい連中ばかりだ!真っ暗な店内に響き渡る、怒号と喧騒!そして、凄まじい大騒動が繰り広げられた後、 海賊課のフリゲート艦〈ラジェンドラ〉が降り立った時には、既に鳥は飛び去ってしまい、目当ての者は誰一人としていなくなってしまっていた。ただ、寄ってたかって袋叩きにあった銭形警部と30人の機動警官隊。そして、踏み潰され、体中に靴跡を付けられて、哀れにもペチャンコにされてしまった〈黒猫アプロ〉を除いては……。




《第14章:アイル・ビー・バック!…へ続く》


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