【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第12章》 カンティーナの酒場にて


 麻宮サキに神恭一郎、007、〈美少年キラー〉バンコラン、鉄のクラウス……トップクラスのエージェントたちとの激闘に、かろうじて勝利を納めたオビ・ワンたちは、ぎゅうぎゅう詰めのランド・スピーダーにぶつぶつ文句を言いながらも、惑星タトゥーイン唯一の都会−宇宙港のあるモス・アイズリーまで、やっとの事で辿り着いた。
 そのメイン・ストリート周辺には、酒場や飯屋・宿屋からゲームセンター、ネットカフェ。ロボットの洗車場に、エアカーの中古販売店……と種々雑多、様々な店が立ち並んでいた。やがて、ルークたちの乗ったランド・スピーダーは、『おいでませ……モス・アイズリーへ』の、古びた案内看板の前で、キキーッと音を立てて急停止!山のように車に乗り込んでいたオビ・ワンの弟子たちは、ポキ!ドテ!クシャ!……とばかりに、ランド・スピーダーから転がり落ちた!その後から、一人オビ・ワンだけが、悠然と地面に降り立つ……。

 狭いランド・スピーダーの中で窮屈だったのか……オビ・ワンは大きく伸びをするや、左右の肩をぐるぐると回し、オイッチニ!オイッチニ!と、ラジオ体操をし始めた。
「やれやれ……これで少しは体が慣れたわい!む……?お前たち、何で地面で寝とるのだ?」
『あ痛たたた……』と、体をさすりながら起き上がって来る弟子たちの姿に、オビ・ワンが苦言を呈する。
「全く……若いくせに体を鍛えとらんから、そんなちょっとした事でも、痛い痛いと言うのじゃ!……見よ!我が肉体美を!」
 オビ・ワンは、かなりのお年(?)にも関わらず、ボディービルの様々なポーズを披露する。
「それで、先生……これからどうするんです?」
 ジョミーがそう尋ねるや、オビ・ワンは慌てて真顔に立ち戻った。
「そ、そうじゃ!こんな事をしとる暇はない!……よいか、お前たち。わしは、これから宇宙船の船長がたむろしておる『カンティーナの酒場』で、わしら全員をアルデラーンまで運んでくれる船長を探して来る。な〜〜に、今は不景気じゃ!運ぶ貨物もなくって、酒場でゴロゴロしとる連中は大勢おるからな」
「それで、このランド・スピーダーを売って、私達の運賃にするんでしょう?」
 オビ・ワンの考えを素早く察知したエイリアが、先回りして言った。
「そうじゃ、エイリア。さすがは、わしの弟子の中でも、一番の優等生のお前じゃ。わしが言いたい事……言おうとしている事をよく知っとるわい!お前が察知した通り、わしの今までの貯えだけでは、これだけの人数をアルデラーンまで乗せて行って貰うには、ちと金額が不足しておる……。じゃから、こいつを売ってその足しにすると言う訳じゃ。ますますフォースに磨きが掛かったようじゃな、エイリア!」
 エイリアに、満足そうな笑みを浮かべるオビ・ワン。と、ルークは慌ててそれを遮って言う。

「ベン!そのランド・スピーダーは、僕……じゃない。ラース伯父さんの所有物だよ!なのに、勝手に売っ払ってしまうなんて!」
「ルーク、今更何を言っとる?オウエン・ラースは既にこの世の者ではない……。おまけに、わしたちはもうこの惑星タトゥーインには居られんのじゃぞ。わしらは、帝国を打倒するまでは、ここに帰って来る事もできんのじゃ……」
「ベン……」
 遥か遠くを見つめるようなオビ・ワンの表情に、心打たれたルークは、シュンとなってしまった。
「そうだね。忘れてたよ、ベン……。もう、僕がここで……故郷の惑星タトゥーインで、伯父さんのランド・スピーダーを乗り回す事はないんだ。僕が、この惑星に戻ってこられるのは、帝国軍に殺された僕のお父さんや伯父さん・伯母さんの仇を討った時……ううん、そうじゃない!復讐なんかじゃない!一人前のジェダイの騎士として、銀河に正義と平和を取り戻した時に、始めて堂々と胸を張って戻れるんだ!」(BGM:埴生のわが家)
「そうじゃ、ルーク!ジェダイの騎士たる者、復讐の念ばかりに凝り固まっておっては、いずれダークサイドに引きずり込まれてしまう……。じゃから、第3作の『ジェダイの復讐』も、DVD−BOX発売時に、題名が『ジェダイの帰還』に戻ったのじゃ。それに……帰ってきたくとも、そう簡単には帰ってこれん。何しろ奴らから見れば、わしたちはお尋ね者。賞金首じゃからのう……」
 オビ・ワンが皮肉たっぷりに言った、丁度その時……。

『すみません……。ちょっと、失礼します』
 オビ・ワンの前に現れたのは、何と帝国軍のストーム・トルーパーズ!驚愕したオビ・ワンが脇に退くや、その背後の建物の前に設置してあった掲示板に、紙を張り着けた。
『どうも、お邪魔しました……』
 ストーム・トルーパーズは、オビ・ワンにペコペコと頭を下げて礼を言うと、何も気づかずにそのまま行ってしまった。掲示板を皆が覗き込むや……そこには、一体どこで撮ったのか!オビ・ワンがニッコリ笑って、ピース・マークを出している、帝国軍の指名手配状が張ってあったのだ!慌ててひっぺがすオビ・ワン!
「余り良く写ってるとは言えんが……。それにしても、一体どこで撮りおったのじゃ!?」
 滴り落ちる冷や汗を、そっと袖で拭うオビ・ワン……。と、先程のストーム・トルーパーズは、街中の掲示板に、次から次へとオビ・ワンの指名手配状を張って行っているではないか!
「選挙でもあるまいに……あんなに張って、どうしようと言うのじゃ!とにかく、あれは放ってはおけんようじゃな……。よし、お前たち!」
 オビ・ワンが再び弟子たちに向かって、声をかける。
「先程も言ったように……わしは、わしたちを乗せてくれる宇宙船を探しに酒場へ行く。ルーク、アムロ、C-3POとR2-D2は、わしと一緒に来るのじゃ。エイリア……お前は、いつもわしの家の家計を預かっとったから、商取引には強いじゃろう。七瀬と明日香と蘭とリーザを連れて、中古車センターでこのランド・スピーダーを売って来てくれ」
 オビ・ワンが指差した中古車センター街の方からは、『♪あなた、車売る〜〜?』だの『♪お〜前〜は〜誰〜や〜〜?』だの、『♪勉強しまっせ〜〜!』だの、あちこちのCMソングが、次々とマイクから流れている。
「古代。お前は、ソルジャーと一緒に……あの指名手配状を張り巻くっとる奴の後をそっとつけて行って、片っ端からひっぺがして来てくれ。言っとくが、くれぐれも気づかれるんじゃないぞ!」
「分かりました、ケノービ先生。決して、気づかれるような事はしません!」と、敬礼をする古代。

「それで、ジョミーはと……。エイリアよ!もし、女ばっかしで取り引きに行くのが、不用心に感じるようじゃったら……ジョミーをボディーガードに連れて行くか?」
 女性陣の視線が、一斉にジョミーに注がれる。
「ええ……でも、いっそジョミーが猛々しい大男なら、ボディーガードとしても見栄えがすると思うんですけど……」
 言葉をにごすエイリアに、オビ・ワンは意気軒昂な女性陣と、先程の戦いで自信喪失に陥ったジョミーを、代わる代わる見比べて、ハーッと溜め息をついた。
「そうじゃな……ジョミー、お前は古代たちと一緒に行ってくれ」
「分かりました……」と、答えを返すジョミー。だが、その表情は憂鬱だった……。
「それでは、皆!時計の針を合わせるぞ!集結時間は、今から30分後じゃ!」
「……ラジャー!」
 腕時計の針を合わせ、それぞれの方向に散って行く、意気盛んな弟子たちの姿に、満足の笑みを浮かべるオビ・ワン。そして、ランド・スピーダーに再び乗車した女性陣は、エイリアの運転で中古車センター街を目指した。それを見ていたアムロが、ぽつりと呟いた。
「エイリアさん……運転免許、持ってたのかな?」
 その途端、ガリガリガリ!と言う派手な音と共に、エイリアの運転するランド・スピーダーが、対向車と横っ腹をこすり合わせた!
「バッキャロー!どこ見て走ってやがんでい!」
 運転席から身を乗り出して、八つの頭を振り乱し、コーラスで怒鳴りつける異星人のペンチ……いや、ドライバーを尻目に、更にドカン!バタン!キュー(?)!……と、次々に車や建物、電柱にぶつかり続けながら、走り去って行くランド・スピーダー!カンティーナの酒場へと向かっていたオビ・ワンは、その光景に思わず頭を押さえた。
「中古車センターに辿り着く頃に、車がまともな状態で残っとるか、些か心配じゃ……」

 ……閑話休題。やがてルークたちは、異星人や宇宙人、エイリアンにE.T.……あらゆる生命体が、大勢出入りしてにぎやかな酒場『カンティーナ』に辿り着いた。彼らの目の前では、グデングデンに酔っぱらって出て来たケロニアが、店の前で大量の葉緑素を吐き戻し(?)、ロボイド隊長率いる一隊が、ドアボーイ……いや、ドアガール兼用心棒の魔法少女アゼルにチップを渡して、店内へ雪崩込んで行く……。その後に続くように入って行ったルーク、オビ・ワン、アムロだったが……。C-3POとR2-D2が入口に差し掛かるや、突如ピーッ!ピーッ!……と、警報音が鳴り響き、アゼルが彼らの入店に待ったを掛けた。
「待ちな……そこの2体はロボットだろ!あたいはロボットが大っ嫌いなんだ!ここは、生命体専用の酒場だよ。ロボットは入店お断りさ!」
 アゼルは手に持ったドカンボーを、さっとC-3POとR2-D2に突き付ける。と、同時に、彼らの頭上のスピーカーからコンピューター音声が響いた。
『金属製ロボットト確認!店内ヘノ進入ヲ禁ズ!金属製ロボットト確認!店内ヘノ進入ヲ禁ズ!』
 それに対し、C-3POが食ってってかかる。
「ちょっと待って下さい!それはロボットに対する偏見……不当な差別です!」
『ロボットハ平等ダ!差別反対!』のプラカードを掲げて、R2-D2も激しく抗議する!
『当店ハ、生命体専用ノクラブニツキ、金属製ロボットノ入店ハ、法律デ禁止サレテイル!』
「だって……さっき、ロボイドたちが中に入って行ったじゃない!?」
 アムロも、宙を見上げながら店に抗議した。
『ロボイドハ、ロボットニ似て、ロボットニアラズ……半有機的金属生命体ナリ!』
「じゃ、生命体とロボットの境目は何なのさ!」
 ルークの質問に、店のコンピューターが延々と答えを返し始めた。
『ヒューマノイド、宇宙人、異星人、E.T.、ベム、モンスター……ハ、純粋生命体ナリ!アンドロイド、サイボーグ、ゴーレム、サイモン・ライト、ロジャー・フォーチュン、ジェイムスン教授……ハ、半有機的生命体ナリ。ロボイド、ポスビ、R・ダニール・オリヴォー……ハ、半有機的金属生命体ナリ!ロボット、レプリカント、ターミネーター……ハ、金属製ロボットナリ!従ッテ、ソノ2体ハ当店ヘノ進入ヲ禁ズ!』
 実に詳細にわたる、店内コンピューターの反論に、遂に諦めたオビ・ワンは、やれやれと肩をすくめるや、アムロに向かって言った。
「仕方ない!いつまでもここで議論ばかりしとられん。ここのコンピューターに逆らって、むりやり中に入らせても、後でゴタゴタが起こるだけじゃ!……アムロよ、わしらが中で商談をまとめている間、こいつらを近くの洗車場に連れて行って、洗ってやってくれんか?……砂埃でドロドロに汚れとるからのう」
「分かりました……じゃ、行ってきます」
 再び店外へ出たアムロは、中へ入れて貰えなかった事に、未だにブツブツと不満を言っているC-3POとR2-D2を引き連れ、近くの洗車場へと向かって行った。
「OK、入りな!でも、言っとくけど……あたいの目と、入口の監視機構を上手くごまかして入っても、後で酷い目に合うだけだからな!」
「うむ、良く分かり申した。では……失礼」
 オビ・ワンは大仰に頷き返すと、アゼルにチップを渡し、ルークと共に喧騒が洩れ聞こえてくる酒場へと足を踏み入れた……。


 モス・アイズリー宇宙港で一番にぎわっている酒場『カンティーナ』は、ダウンライトと間接照明(と言うよりは、単に照明器具をケチっているだけ)の淡い光の中に暗く浮かび上り、紫烟と喧騒に包まれて、一種異様な活気を呈してた!見た事もないような星の生命体が酒を呑み、宇宙海賊と殺し屋がポーカーに興じ、あらゆる星系から流れてきた宇宙船の船長(と言っても、ほとんどが帝国のお尋ね者で、後暗い所のある密輸屋だが……)が、何か良い儲け話はないか?と声を掛け合っている……。
 そしてステージでは、エイリアンバンドの演奏をバックに、『ペイント・アンド・インク』の売れっ子カーゥーン歌手ジェシカ・ラビットが、華麗な歌声を披露している。が、それに聞き入っている者は全くいない。いや……一人だけいた!ジェシカの夫で、カートゥーン・コメディアンのロジャー・ラビットが、彼女の歌声に聞き惚れながら、盛んに拍手をしていた!
「やれやれ……やっとこれで、話を本筋に戻す事が出来るわい。ルークよ、わしが手頃な宇宙船の船長を探してくるまでの間、ここのカウンターで待っておれ」
 オビ・ワンはルークを酒場のカウンター席に座らせて言った。
「で……どれくらい待ってたらいいんです?」
「3分間待つのだぞ!」
 思わずズッコケるルーク!やがて、オビ・ワンの姿は、クラブの人込みの中へ消えて行った……。とりあえず今の所は何もする事がないルークは、カウンター席から、バーテンに向かって飲物を頼んだ。

「あのー、すいません……ミルクティーもらえませんか?」
 その言葉に、上半身はTシャツ一枚で、頭にハチマキを絞め、ややタレ目がちと言った筋肉ムキムキのバーテンが、迷惑そうに振り返って言った。
「お客さん、ここは喫茶店じゃないんで、ミルクティーはねえ……」
 ルークがそれに答える間もない内に、彼に背を向けたまま、彼の左隣に座ってグラスを傾けていた、黒ずくめのガンマン風の男がゆっくり振り返ると、無表情に呟いた。
「ここはお前のような子供の来る所じゃない。さっさと帰るんだな……」
 それだけ言うと、ガンマンは再び連れの大男の方に顔を戻した。頭から子供扱いされて、ムッとなったルークが思わず言い返す!
「僕はもう子供じゃない!」
 ガンマンは再びゆっくりと顔を向けるや、不気味な笑みを浮かべる。
「いや、済まなかった……私が間違っていたようだ。君は、確かに子供ではない……。猛り立ったガキ……と言った所だな……ハハハハ!」
「ガ、ガ、ガ、ガキ……だって!」
 皮肉たっぷりに嘲笑されたルークは、完全に頭に来て、自分の右隣にあったグラスを引っ掴んだ!そして、彼の顔めがけ、思いっ切りグラスの中味をぶっかけた!が、ガンマンが体の向きを変えた為、宙に舞った液体はその横を通過して、彼と向かい合っていた連れの大男の顔に命中した!黒の革ジャンに身を包み、角刈にサングラスと言う巨漢は、顔をタオルで拭うや、むっくりと立ち上がり、恐ろしい程凄みのある声で、ルークに向かって言った。
「貴様……俺たちに喧嘩を売るつもりか?」「何だ、どうした!?」
 巨漢の後ろから、黒いロングコートに身を包み、鷹のように鋭い目付きをした銀髪の男が顔を出した。どうやら、彼もガンマンの連れらしい。3人のド迫力の目に睨まれて、ルークは思わずたじたじとなった。この3人、どうやらただ者ではなさそうだ……。おまけに、台本ではここでルークを助けに来るはずのオビ・ワンが、一向に現れて来ない……。焦り始めたルークの耳に、やっとオビ・ワンの声が聞こえた!

「済まん、済まん、遅うなって……今、そっちに行くから……うわっ!」
 振り返ったルークの目に入ったのは……床にこぼれたビールで足を滑らせてひっくり返り、頭を打って、物の見事に伸びてしまったオビ・ワンの情けない姿だった!
「……ケノビ先生!」
 慌てて駆け寄ろうとしたルークだったが、その途端、まるで万力に掛けられたかの如く、彼の手首がぎりぎりと絞め上げられた!
「あ、痛たたた……!」
「おい、どこへ行くつもりだ?俺たちとの話は、まだ終わっちゃいないんだからな……!」
 ルークは右腕を捩じ上げられたまま、「作者」になったつもりで考えた。
『銀河鉄道999なら、ここで僕を助けにキャプテン・ハーロックが登場して来るんだけど……。この話の中じゃ、ストーリーの効果で言うと、やっぱり出さない方が良いだろうし……どうしよう……?』(何の事か分からない読者の皆さん、すぐに分かります!)
「ちょっと、待った!」
 今まで、ルークたちのやりとりをじっと眺めていた筋肉バーテンが、サングラスの巨漢の手をむんずと掴むや、ルークの手を引き離した。
「あ、ありがとうございます……!」
 ルークは、真っ赤になった手首を撫でさすりながら、バーテンに向かって感謝した。
「何、どうってこたあねえよ。それより……あんたたち3人、どっかで見た事があると思ってたんだが……そうだ、思い出したぞ!てめえは、ユル・ブリンナー型のガンマン・ロボットだな!」
 バーテンは、黒ずくめのガンマンを指差した。
「てめえは、T−800型ターミネーターだ!」と、サングラスの巨漢を指差した。
「それでもって、てめえは、ネクサス6型レプリカントだ!」と、最後の1人、銀髪の大男を指差した。
「そうだ、貴様の言う通りだ……。だが、それがどうした?」と、レプリカントのロイ・バッティが、突き刺すような鋭い目付きで言う。
「お前ら、ドアガールのアゼルに言われた筈だ。ロボットはお断りってね!まんまと、あいつらをだまくらかして中に入って来たようだが……俺様が許さねえ!てめえら、人間じゃねえ!たたっ斬って……もとい、叩き出してやる!」
「ほう、私たち3人の正体が分かった今でも、そんな大口が叩けるとは大したものだ……」と、これはユル・ブリンナー型ガンマン・ロボット。
「一体、貴様何者だ?。ただのバーテンじゃあない、確かにどっかで見た顔だが……?」
「俺か……?俺の名前はロッキー・バルボア、いや……それともジョン・ランボーだったかな?どっちにしろ、今は次の作品の撮影まで間があるんで、ここでバーテンダーのバイトをやってる。」
「面白い。お前とは、一度決着を着けねばならんと、前々から思っていた所だ……。こんな所で、その機会が回ってこようとはな!」
 ターミネーターはランボーの手を振りほどくと、ゆっくりサングラスを外した。
「あ、あの〜〜」
 隅に追いやられていたルークは、おずおずとランボーに声を掛ける。
「あ……いや、済まない!この物語は君が主役なのに、場面を取っちまって……」
「その事はいいんです……ストーリーの脱線には、もう慣れてますから……で、ランボーさんにお願いがあるんですけど……」
「ああ、この連中の事なら、俺が責任を持って叩き出してやるから安心しな!」
「それもあるんですけど……あの〜〜後で、あなたのサイン頂けますか?」
 緊張感を破られて、一瞬がくっと来たランボーは、気を取り直すと、Tシャツを脱ぎ捨てて、その筋肉隆々とした上半身を露わにした!

「さあて……では、先ず最初に、バッティさん。あんたからだ」
「フフフ……たかが、生身の人間の癖にどうしようってつもりだ……?あのリック・デッカードでさえ、私には手も足も出なかったんだぞ」
 そう言って、レプリカントはうす笑いを浮べた。 「いや、なに、あんたを力でどうこうしようってんじゃありません……これをちょっと見て貰えますかい?」
 ランボーは脱いだTシャツをぐるぐると丸めると、何やらこね回した……。と、その中から1羽の真っ白な鳩が現われ、クルックルックルーと鳴いたかと思うと、ゆっくりとスローモーションで宙に飛び立った!それを目にした途端、ロイ・バッティの表情から鋭い目つきが消失し、大きく天を仰いだかと思うと、穏やかな笑みを浮べつつ、ゆっくりと床に崩折れた……。
「ど、どうしたんです、この人!」
 ルークはびっくりしてランボーに尋ねた。
「条件反射だ。」
 それに答えたのは、誰あろうブリンナー型ガンマン・ロボットだ。
「そう……こいつは、真っ白な鳩が飛び立つのを見ると、条件反射で、自分の寿命が尽きたと思い込む悪い癖があるんだ……。情けない奴だ!」と、更にターミネーターが解説を加える。
「だが、私にはそんな枯息な手は利かんぞ」と、ユル・ブリンナー型ロボット。
「そうかな……?じゃ、これはどうかね?」
 ランボーはそう言うと、バンドに向かって指をパチリと鳴らした。既に、ジェシカ・ラビットはステージから引っ込んでいて、歌手は『宇宙空母ギャラクティカ』から出張して来た、四つ目のエイリアン女性に代っていたが……。と、ランポーの合図と共に、それまで演奏されていたエスニック風ジャズに替わり、流れてきた曲は『シャル・ウィ・ダンス』!
♪シャル・ウイ・ダンス! タンタンタン!タララッタータタタタタ、タン!タンタンタン……!
  そのリズムを耳にするや否や、ブリンナーの表情が一変!近くにいた異星人のウェイトレスをひっ抱えると、微笑みながら酒場の中を激しく踊り回った!そして、散々飛び回った挙げ句、勢い余って、そのまま裏口から外へ飛び出してしまった!
「では、おたっしゃでー!さようならー!」

「これも条件反射だ!」と、渋い顔のターミネーター。
「ええ、なにしろ何百回となく務めた『王様と私』の舞台ですからねえ……。ちょっとやそっとじゃ、体からあのテーマは抜けませんや!」と、これはランボー。
「なるほど……ん?ちょっと待て!俺は、お前と漫才をやる気はねえ!あんなごまかしじゃなく、本気で俺と決着を着けるつもりがあるのかないのか!どっちだ!?」
「おうさ!今までのは、ほんの余興だ……。これからは、貴様と1対1の力の勝負だ!方法はアームレスリングでどうだ?」
「異存はない、それで結構だ。」
 2人はテーブルを挟んで向かい合うと、その上に肘を下ろし、太い腕をがっしりと組み合わせて、アーム・レスリング=腕相撲の体勢に入った!
「言っておくが、俺は『パラダイス・アレイ』でアーム・レスリングのチャンビオン役もやっているんだぜ」と、言ってニタリとするランボー。
「フン……!征服王/コナン=ザ=グレートに勝てると、本気で思っているのか?」
「その通りさ……では、行くぜ!」「おう、いつでも来い!」
 その瞬間、ルークの目の前で2人の筋肉マンは戦う神と化した!その周囲に、次第に観客が集まり始め、両者を応援する歓声が、酒場に大きく広がって行く!そして、たちまちの内にどっちが勝つかの賭けが始まるや、札束が乱れ飛んだ!ルークが二人の熱戦を見つめている内に、床に大きく伸びていたオビ・ワンが、ようやく目を覚ましたかと思うと、腰をさすりながら周囲を見回して、ルークに問い掛けた。
「ああ!痛たたたた……ルークよ。あのごろつきどもはどうなった?」
「あのー、この人が全部片づけちゃったんですけど……」と言って、ルークはランボーの方を指差すや、『こんな大事な時に伸びてしまうなんて……何て役立たず!』と声には出さずに、皮肉を込めてオビ・ワンを見つめた。
「ふむふむ、そうか……まあ、わしに替わってやってくれたのなら、それでも良い……。では、わしらは本筋に戻る事とするか!あっちの席で、わしらを惑星アルデラーンまで運んでくれる事になった、密輸船のハン・ソロ船長が待っておる。早く契約を済ませて、皆が待っとる場所へ戻ってやらねばならんからのう」
 そう言って、脳天気なオビ・ワンはさっさと歩き出す。ルークも、ランボーとターミネーターのアーム・レスリングの試合の決着を気にしながらも、慌ててその後を追って行った……。


「……つまり、爺さん。あんたをふくめて人間が13人、それに2体のロボットを惑星アルデラーンまで運んでほしい。そう言う事だな?」
 そう、オビ・ワンに答えた人物……。彼こそ、この物語の副主人公!一見無造作だが、粋なファッションに身を包み、クールでタフで渋い二枚目(?)の宇宙海賊兼密輸屋。(自称)銀河系最高速の宇宙船〈ミレニアム・ファルコン〉の船長−ハン・ソロだ!そして、その隣に座りながら、自分の長い毛を毟っては、ふっと吹き飛ばしている孫悟空モドキの巨大な猿人こそ、彼の長年に渡る相棒にして、信頼のおける優秀なパイロット-チューバッカだった!
「うむ、そう言う事じゃ、ハン・ソロ船長……。先程も言った通り、運賃の前金はこの場で渡しておこう。約束の後金は、弟子どもが中古車センターにランド・スピーダーを売りに行っておるから、搭乗時に払わせて貰うつもりじゃ」
 ルークがターミネーターらとゴタゴタを起こしていた間、仕事がなくて暇そうにしている宇宙船の船長を片っ端から当たり、自分たちをアルデラーンまで運んでくれそうな人物−ハン・ソロを見つけたオビ・ワンは、得意の外交交渉……契約の最後の詰めに入っていた。だが、当の相手のハン・ソロは、目の前に置かれた前金に手を着けない。何だかんだ言って、なかなか仕事を引き受けようとしないのだ。

「だがな、爺さんよ。俺も、別に金に困ってる訳じゃねえんだぜ!ここの酒場でこうして飲んでたのは、前に請け負った仕事が一段落着いたから、その骨休めさ。それに、仕事の依頼は、あんたたちだけじゃない……他にもあるんだ。そっちを断わって、あんたたちと契約を結ぶとするなら、俺が多額のキャンセル料を払わなくちゃならねえからなあ……。なあ、チューバッカ?」
 原子力エンジン…もとい、原始猿人のチューバッカが、息を合わせてウオーッ!と一声吼える。見事なチームワークだ。
『こ奴、何だかんだ言って、運賃の値上げを計っとるな?』
 オビ・ワンが、ハン・ソロの心の中を見透かしたように鋭い目付きで睨む。一方、ハン・ソロと言えば……。
『何にも仕事がなくて、もう3週間もここで足止めを食らってるんだ!ちょっとでも金を稼がなきゃ、暗闇のジャッバが何を言ってくるか、知れたもんじゃねえからな!』
 一見、気楽な風を見せているソロも、内情はかなり切羽詰まっていたのだ。惑星タトゥーインの影の支配者にして、海賊ギルドの大物−暗闇のジャッバに多額の借金をし、仕事がなくて干上がりかけていたソロにとって、オビ・ワンは最後の頼りだった。溺れる者は藁をも掴む……。ソロは、オビ・ワンから、少しでも金を巻き上げてやろうと苦心惨胆していた。
「……正直言って、もう少し運送料を上げてほしい。そう言う事じゃろう!」
 ズバリ本音を言い当てられたハン・ソロは、苦虫を噛み潰したような表情になった!オビ・ワンも、ハーッと溜め息を着く。
「まあ、一筋縄では行かん連中ばかりが集まっとる酒場じゃから、こっちの言い値で簡単に決まるとは、最初から思っておらんかったが……。わしも、かつては共和国の鬼会計監査官と言われた男じゃ。そう易々と、お主の言う通りにはならんぞ!」
 そう言って、オビ・ワンが懐からソロバンを取り出した瞬間、音楽が陽気なジャズに変わった。オビ・ワンが、メガネを掛けて立ち上がる!
「♪……レディ〜ス&ジェントルメン!お父っつぁん、アンドおっ母さん、お今晩わ!ジス・イズ・ミスター……阿呆かっ、おのれら!」
 ステージのバンド連中を、片っ端からソロバンでドツキまくって来たオビ・ワンが、はあはあと息を切らしながら、再びハン・ソロとの交渉の場に着いた。
「わしに何をさすんじゃ、もう!……とにかく、ソロ船長!わしはこれだけしか払えんし、それ以上払うつもりは毛頭ない!それを念頭に置いておくんじゃな!」
 テーブルの上に置いたソロバンの珠を弾いて、ハン・ソロに突き付けるオビ・ワン!ハン・ソロが呆れたような表情で言った。
「全く……俺も結構顔が広いが、あんたほど金に渋い奴は、銀河中どこでも見た事がねえ!頭からすっぽりフードを被った、その姿……まるでネズミ男だぜ!」
♪ビ、ビ、ビビビのビ〜〜!夜〜は墓場で銭勘定〜〜。楽しいな、楽しいな!お化けにゃ税金も〜〜マルサも何にもない!
 ネズミ男……いや、オビ・ワン・ケノービが、ヒヒヒ……と不気味に笑った。オビ・ワンの手練手管に、何とか対抗しようとするハン・ソロ。交渉は手詰まりになっていた……。
「う〜む。どうしたもんかいのう……」

 流石のオビ・ワンが手を焼いて、流れ落ちる汗を拭こうと、ポケットの中のハンカチに手を伸ばし た時、その指先にコツンと当たる物があった!
『む……これは!?』
 途端にニンマリとなったオビ・ワンが、ポケットから何かを取り出すや、仰々しくハン・ソロの前に置いた。美しくも輝かしい二つの指輪だ!
「これは、我が家に代々受け継がれて来た、先祖伝来の家宝……モルドールの指輪じゃ。ま……一つは、貸出用のレプリカじゃがの」
「……ってえと、おい!『指輪物語』に出て来る伝説の指輪か?」
 ハン・ソロとチューバッカ、それにルークまでもが、二つの指輪をじっと見つめた。そう言われてみると、何か「神秘的な輝き」が、指輪全体から発せられているようだ!
「ここで手離すのも、わしにとっては心苦しい事じゃが……。これも運命じゃ!ソロ船長、運賃の不足分は、これで補ってくれ!」
 オビ・ワンが、厳粛な表情で頭を下げる……。ハン・ソロも『まあ、しゃあねえな!』と言った感じで頷いた……交渉成立だ!

「……じゃ、30分後に第7スペース・ポートまで来てくれ。その頃には、こっちは準備万端整ってるからな。後金の方をしっかり頼むぜ!」
「うむ、分かっておる!どうじゃ、話がまとまったのを祝って一杯やらんか?もちろん、わしの奢りじゃが?」
「いいねえ!結構な話だ!」「ウォーッ!」
 後々の事を考えて、ソロをおだてておこうとするオビ・ワンは、急に愛想が良くなった。ウェイターに向かって注文を出すオビ・ワン。
「わしは、オン・ザ・ロック。ソロ船長、あんたは何にする?」
「俺か?俺は、もちろん……キリン・ラガービール下サイ!」
 そして、チューバッカはチューハイを、ルークはコーラを注文。四人は、航海の無事を祈って乾盃した!
「ねえ、ベン……。あんな大事な家宝の指輪を、よくホイホイと上げちゃったね?」
 そう聞いて来るルークに、こっそりと耳打ちするオビ・ワン。
「な〜に。あれは、我が家の家宝でも、モルドールの指輪でも何でもない。ジョミーとソルジャーが、ローン・スターからタダで貰ったシュワルツの指輪……大量生産の紛い物じゃ!二人から没収した時に、たまたまわしのポケットに放り込んで、そのまま忘れとったんじゃ!」
「じゃ!彼を瞞して……?」
 そう叫びかけたルークの口を、慌てて押さえ込むオビ・ワン!ハン・ソロとチューバッカが、何事が起こったのかと、訝しげな表情で見つめる。オビ・ワンは焦りながらも、何とかその場を誤魔化した。後に、ハン・ソロは、オビ・ワンの口車に乗せられて、この仕事を引き受けた事を後悔するようになる……。




《第13章:失われた《聖櫃》強奪作戦…へ続く》


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