【パロディー・スターウォーズ/帝国の予習】

《第11章》 O.B.牧場の決闘


 乾いた大地に砂塵が舞い、一迅の突風と共に、絡み合った枯れ草の塊が、音もなく転がるクラーケン台地のO.B.牧場……。師−オビ・ワンの言い付けで、先に戻って来たジョミーたちに急かされて、オビ・ワンの弟子たちは慌てて出立の準備を調えると、師の帰りを今か今かと待ちわびていた。だが、それは嵐の前の静けさだった!超感覚能力者のエイリアたちにさえ気づかれぬ程、完璧に気配を消し去った者たちが、静かに身を潜めて、彼らの動向を見張っていたのだ!
 エイリアンと死闘を繰り広げたオースチン少佐から得られた貴重な情報。そして小熊のミーシャが、スクラップ屋『スペ・オペの墓場』から聞き出した情報を統合・分析した情報部は、クラーケン台地のO.B.牧場に住む「ベン・ケノービ」と名乗る人物が怪しいと言う結論に達していた。その結果、1個大隊による大規模な戦闘行動ではなく、少数精鋭−召集されたエージェントたちだけによる奇襲攻撃が決定。臨時司令部の娯楽室で暇つぶしをしていた、サキやボンドらに出動命令が下され、ひそかにオビ・ワンの家に接近!極秘理に監視していた……と言う事だった。帝国軍によって、ケノービの住居の周囲1キロ四方には無人探知式の警報装置が設置され、たとえ蟻が通っても分かるようになっていた。だが、肝腎要のターゲットたるオビ・ワンやルークたちは、ボンドらが包囲網を敷く前にラース農場に向かっており、後に残っていたのは、先に戻って来たジョミーたちや古代、アムロ、エイリアを始めとする、オビ・ワンの弟子たちだけだった……。

「いないようだな……ベン、またはオビ・ワンとか言う老人は」
 高性能双眼鏡で、オビ・ワンの家を見張っていた神恭一郎が呟く。彼の視界の中では、『O.B.牧場』と下手な手書き文字で記された木の表札が、半分ちぎれかかったまま、風でぶらぶらと揺れていた……。
「ああ……いるのは、女子供ばかりだ」と、これはジェームズ・ボンド。
「……それに、美形が二人」
 バンコラン少佐が、自分の好みの美少年−ジョミーとソルジャーを目にして、思わず笑みを浮かべる。
「フン!」と鼻で笑うエーベルバッハ少佐。
「あんな奴らは、さっさと片付けるべきだ!」
 サキは少佐を見て渋い顔をしたが……。
「あんたは余り好かねえけどさ……今度だけは、あたいの意見も同じだぜ。こんな所で、何ぐずぐすしてんだよ!あいつらみたいな邪魔者は、さっさと引っ括っちまったら良いじゃん!」
「いや……そう言う訳にも行かないんだ、サキ。得られた情報によると、ベン・ケノービとか言う人物は、反乱軍の大物である可能性が高い……。今ここで下手に騒ぎ立てて、本命を逃がしてしまうような事になれば、今まで得られた貴重な情報が、全て無に帰してしまう!ここは一つ、ケノービ氏が帰って来るまで、何も手出しをせずに、じっと待ってるのが一番だ。それから、ゆっくりとお縄にすればいいのさ……」
 神は双眼鏡を下ろすと、懐からタバコを取り出して、ライターでシュッと火を付けた。
「決して焦って、相手の目に触れるようなへまをするんじゃないぞ!」
 教え諭すような口調の神に、煩わしさを感じ取ったサキが、やれやれと肩をすくめる。
「要は臨機応変……。相手の出方に応じて、こちらも敏速に対応すれば良いと言う事だ。さほど、困難な状況とも言えんな」
 鉄のクラウスが、冷ややかにサキを見つめる。
「まあ、『果報は寝て待て』と言うからな」
 そう言うとボンドは、アストン・マーチンの冷蔵庫から、何と熟成された年代物のワインと、グラスを2個持ち出して来るや、同僚のバンコランに差し出した。

「少佐……どうだ一杯?」
 仕事中にアルコールなんて……と、躊躇したバンコランだったが、ラベルの製造年度を目にした途端、表情が一変した!
「これは……すごい!この年代物は、既に銀河中に1本も残ってないと思っていたが……?」
「ああ、私が特別に取り寄せた逸品だよ!」
 生来のグルメ精神が、ムクムクと頭をもたげたバンコランが、思わずグラスに手を伸ばす。そしてそこに、ボンドがゆっくりと琥珀色の液体を注いで行った……。
「ワインの香りと絶妙な風味は、鼻で味わい、舌で味わい、喉越しで味わってこそ価値があるんだ」
 得意満面でワインを口に含むボンド……。と、彼らの様子を見て、しかめっ面をしていた鉄のクラウスにも、ボンドは声を掛けた。
「本場のドイツビールもよく冷えてるが……どうかね、エーベルバッハ少佐?」
 炎天下のクラーケン台地で、汗をダラダラ流していたクラウスが、思わずゴクリと喉を鳴らした。
「……そうだな。せっかくのご好意だ。無下に断わる訳にも行くまい。頂くとするか……」
 勿体をつけた鉄のクラウスが腰を下ろす。
「冷酒はあるかな?」
 今度は、神も聞いて来た。
「……了解!何でも、私に言ってくれ給え。どのような注文にもお応えしよう!」
 おだてられて調子に乗ったボンドは、リクエストに応えて、次から次へと自慢の酒のコレクションを、皆に披露して行った。
「フン!全く、あいつらオヤジ連中と来たら……。酒と料理と女にしか、興味がないんだから!」
 彼らの所業に呆れ果てたサキは、『付き合い切れないぜ!』とばかりに、その場を去って行った。一方、すっかりアルコールが回った情報部員たちは、過去の自慢話……国際ダイヤモンド輸出機構やスペクター・青狼会と言った様々な秘密組織を自分が叩き潰した事に、大いに花を咲かせていた……。


 一方その頃、肝心要のオビ・ワン・ケノービらがどうしていたかと言うと……。
 七瀬が運転するランド・スピーダーは、帝国軍の捜査(と言うよりも、むしろ捜査に名を借りた暴行・略奪に近かったが……)に遭って、被害を受けたジャワズのスクラップ屋を順繰りに調べて行った為、予想以上に時間を喰ってしまったが……。ようやく、目当てのサンド・クローラー/スクラップ屋「スペ・オペの墓場」に辿り着いた。
「今度こそ、間違いないじゃろうな……?」
 憂い顔で、汗だくのオビ・ワンが呟いた時、彼らの眼前に、帝国軍の攻撃を受けて、無残に炎上したジャワズのサンド・クローラーの残骸が飛び込んで来た!その周囲には、破壊されたロボットやジャワズの遺体が散乱。帝国軍の冷酷な所業を如実に語っていた……。
「どうやら……わしの悪い予感が当たったみたいじゃな……」
 停車したランド・スピーダーから降り立ったオビ・ワンが沈鬱な表情で言う。火田七瀬も、唇を噛み締めて呟いた。
「酷いわ!何て事するのかしら……!」
「これが帝国軍の本質じゃよ。自分たちの目的を遂げる為には、あらゆる生命を犠牲にしようとも、何程の事も思わぬ……それが奴らじゃ!」
 吐き捨てるように言ったオビ・ワンは数珠を取り出すと、地面に横たわっているジャワズの遺体に向かって、丁寧に念仏を唱え始めた。
「ナマンダブ、ナマンダブ……」
 チーンと鉦が鳴り、木魚がポクポクと音を立てる。七瀬が警戒して、暫く周囲を精神感応で調べていたが、既に帝国軍が引き上げてしまっている事を確かめるや、ほっと安堵の息を着いた。ルークが、地面に落ちていたスクラップ屋の看板を拾い上げて、C-3POに見せる。
「スクラップ屋『スペ・オペの墓場』……ここだよ!僕と伯父さんが君達を買ったのは……」
「そうです!私とR2-D2が捕われたスクラップ屋は、ここに違いありません!……おお!あれは、フライデーだ!」
 C-3POは、下半身を失って、ガレキの中に半分埋もれている、かつてのロボット仲間フライデーの無残な姿を発見し、思わず目から涙……いや、レンズ洗浄液をはらはらと流した……と、その時!辺りに散乱するサンド・クローラーの残骸の中から、次々とロボットが出現。帝国軍の攻撃で回路に変調を来たし、完全に狂ってしまったロボットたちは、ルークたちの姿を目にするや、狂暴な唸り声を上げた!
「気をつけるんじゃ、ルーク!こ奴らは狂ったロボットじゃぞ!」
 邪悪に輝くロボット・アイ!「スペースサタン」のサターン3、「ブラックホール」のマクシミリアン、「鉄人28号」のロビーと、人間を敵視していた悪役ロボットたちが次々と迫って来る!身構えるルークたち!砂塵の中に、対決の時が迫る!(BGM:荒野の用心棒)
 ……と、その時!両者の間の地面が、ボコボコと盛り上がり始め、その中からスティルスーツを身を包んだ謎の一団が出現した!
「野郎ども、やっちまえ!」「おう〜〜!」
 手に手にペンチやスパナ、ドライバーを握りしめ、マッド・ロボットに立ち向かって行ったのは、帝国軍に皆殺しにされた……と思われていた、スクラップ屋『スペ・オペの墓場』のジャワズたちだった!あっと言う間に、バラバラに分解されてしまうマッド・ロボットたち!
「やれやれ……何とか、無事じゃったか!」「知り合いなの?」
 ルークの問いに、安堵の息をついていたオビ・ワンが頷く。
「ああ。わしはスクラップのロボットを掘り出したり、発見したり、修理したりする機会が多いので、あ奴らとはしょっちゅう取り引きがあるんじゃ。ジョミーたちから話を聞いて、心配しとったのじゃが……皆殺しにされずに済んで良かったわい!」
 反乱を起こしたロボットを鎮圧するジャワズたち。やがて、サンドクローラーの残骸の奥から、スクラップ屋『スペ・オペの墓場』のボスが現れた。金属製の四角い胴体からは、六本のフレキシブル・アームと四本の足が飛び出しており、円錐形の頭部にはカメラ・アイがズラッと並んでいる!好奇心と野次馬根性にかけては、銀河に並ぶ者のない脳天気・無責任サイボーグのカンテラ人間だ!

「オビ・ワン、良く来てくれたな!全く、帝国軍の奴らと来たら……俺たちみたいな正直者の商売人を捕まえて、酷い事しやがる!危うい所で、俺がヒュプノ暗示能力を発揮したから良かったものの……可愛い部下は大勢殺されるし、商売道具は台無しにされるし、踏んだり蹴ったりだ!」
「正直者ねえ……?」と、首を捻るオビ・ワン。
「何を言う!私は、スプリンガーやプロスペクター、自由商人と同様、キチンと金儲けに精を出す、正直な商売人だ!決して、フェレンギの奴らのように、悪どい真似はせんぞ!」
 口角泡を飛ばしながら(?)、自らの商売の真っ当さを主張するジャワズのボス。彼こそ、誰あろう……かつてペリー・ローダンを死の一歩手前まで追い詰め、仮面の男アラスカ・シェーデレーアの素顔を見た為に、精神に異常をきたしたスーパー・マルチ・ミュータントのリバルド・コレッロだった!精神と肉体がボロボロのまま、半死半生で宇宙空間を漂っていた彼を救ったのが、銀河物見遊山の真っ最中だったカンテラ人間21MM−392こと、ジェイムスン教授だった!彼らの手術でカンテラ人間として甦り、性格もすっかり変わったコレッロは、宇宙を流れ流れて、今や惑星タトゥーインのスクラップ屋『スペ・オベの墓場』のボスとなっていたのだった。

 オビ・ワンのすぐ側まで来たコレッロは、いきなり地面に六本の手を着いて土下座した!
「すまねえ、兄弟!何と言って謝ったらいいか……実は、帝国軍の奴らに拷問された部下が、共和国の船から逃げてきた2体のロボットを……ラース農場に売っちまった事をペラペラ喋っちまったんだ!」
 コレッロの奥方−ドレスがボロボロの下品な白雪姫が鞭を振るうと、小柄で体中を衣服で被ったジャワズたちが一列に並び、ルークとオビ・ワンの前でフードを取った。ズラリと現れるE.T.たちの顔、顔、顔!
「E.T.……アヤマル……」
 コレッロと同じ様に、土下座して謝るE.T.たち。だが、ルークの目にはその姿は入っていなかった。彼の脳裏には、帝国軍に襲撃されたラース農場の無残な光景が浮かび上がったのだ!
「……ベン!」
 ルークがオビ・ワンに向かって叫ぶ!
「ウム!オウエンの元に、一刻も早く駆け着けねばならんようじゃ!ルーク、目指すはラース農場じゃ!」
 全員がランド・スピーダーに飛び乗るや、ルークは無言のまま、アクセルを限界ギリギリまで踏み込んだ!スクラップ屋『スペ・オペの墓場』を後にして、ランド・スピーダーは不毛の砂漠を疾走した!ルークの目には最早、何も写ってはいなかった……。彼の心の中には、ただ『伯父さん……伯母さん。どうか、どうか生きてて下さい!』と言う、悲痛な想いだけが存在していた……。

 やがて、ルークたちを乗せたランド・スピーダーが、ラース農場に辿り着いた時、そこは無残なる廃虚と化していた……。
「ここは、現在立ち入り禁止だ!」
 制止する帝国兵士を、あっと言う間に叩きのめすオビ・ワンと七瀬!ルークは、目の前の無残な光景に声も出せず崩折れた。
「これは酷い……めちゃくちゃだ!」
 オビ・ワンも余りの惨状に目を閉じると、再び懐から数珠を取り出した……。
「わしがルークの養育を頼んだばっかりに、このような目に合うとは……どうか、許してくれ……南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
「帝国軍ね!何て酷い事をするんでしょう!」
 激昂して、捕らえた帝国兵士に平手打ちしようとする七瀬!が、オビ・ワンがその手を捕らえた。
「止めるんじゃ、七瀬!確かに、ここには帝国兵士がいるし、軍の車両の後もたくさん残っているが、彼らを殺したのは帝国軍じゃない……」
 オビ・ワンの言葉に、涙でグシャグシャになった顔を上げるルーク。
「見なさい、エイリアンの死体だ!はっきりとは分からぬが、オウエンの腹には、内側から食い破られた穴が開いておる……」
 目を背けながら、オウエン・ラースの遺体を指差すオビ・ワン。
「そう言えば……昨日、伯父さんはエイリアンの生卵を食べて、気分が悪いって言ってた……」
「何と言うゲテ物食いだ!エイリアンは煮ても焼いても食えたもんじゃない!可愛そうだが、これはもう猪食った報いと言う奴じゃな……」
 再び二人の冥福を祈るオビ・ワン。と、帝国兵の心をテレパシーで読み取った七瀬が叫んだ!
「大変よ!この兵士の記憶によると、私達の家に帝国軍の精鋭部隊が向かったって言ってるわ!」
「……何!?」(と、再び、ハナ肇の声で)

 驚いたオビ・ワンは、ランドスピーダーの通信器で、古代たちに連絡を取ろうとしたが……。ピーピーガーガーと酷い雑音が鳴り響いた!
「……ダメです!北の方から、磁力怪獣アントラーの近付いて来るのが感じられます!アントラーの出す電磁波障害で、無線連絡は通じません!」
 アントラーの接近を、超能力で感じ取った七瀬が警報を発する。
「分かった……ルーク。本当は、ここでオウエンたちの遺骨を丁寧に葬ってやりたい所じゃが、如何せん……非常事態じゃ!アントラーがここを呑み込んでしまう前に出発して、少しでも早く家へ戻らねばならん!」
 ルークは、オビ・ワンの言葉にじっと目を閉じていたが、やがて決意した表情で顔を上げた。
「ベン……いえ、ケノビ先生!僕は戦います!でも、伯父さんや伯母さんの復讐の為じゃありません!レイア姫を、残忍非道な帝国軍から助け出す為に……そして、帝国軍と戦った死んだ父の意志を継いで、立派なジェダイの騎士となる為に、僕は戦うんです!」
 遂に、戦士として目覚めたルーク・スカイウォーカー!オビ・ワンも彼の肩を大きく叩いた!
「よく言った、ルーク!それでこそ、未来のジェダイの騎士じゃ!わしがミッチリ鍛えてやるから、安心しなさい!……では、行くとするか」
「ちょっと待って下さい……伯父さん、伯母さんの遺骨を拾ってきますから……」
 オビ・ワンとエイリアの側を離れて、今まで自分を育ててくれたラース夫妻の遺体に屈み込むルーク……。だが、彼の目に涙はなかった!心は悲しさに喘ぎながらも、瞳は熱く燃えていた!
『見てて下さい、伯父さん、伯母さん!これから僕は、戦士として……ジェダイの騎士になる為に旅立ちます!今まで僕を育ててくれた恩返しに、きっとこの世に平和を取り戻してみせます!きっとです!だから、安心して眠って下さい……』
 ルークは二人の遺骨をそっと手に取ると、二人の冥福を祈った。やがて、顔を上げたルークは、少年時代を過ごした農場の残骸をゆっくりと見回した。アントラーの接近で、空には砂嵐が吹き荒れ、農場も地震と共に地割れの中に呑み込まれつつあった……。
『さよなら……僕の少年時代……』
♪さよならー、さよならー、さよならーー!(BGM:「さよなら」 by オフ・コース)
 クルリと向きを変えるルーク……。それは既に、戦士としての表情だった。かくして、少年は過去に別れを告げ、未来に向かって歩み始めたのだ!
「行きましょう!一刻も早く戻らなきゃ!」「ええ!もう余り時間がないわ!」
 操縦席の七瀬の切迫した声に、ルークとオビ・ワンがランドスピーダーに乗り込み、全速力で発進させた途端、磁力怪獣アントラーが出現!轟音と共にラース農場は壊滅した!
 O.B.牧場を監視しているトップクラスのエージェントたち−007、鉄のクラウス、バンコラン少佐、神 恭一郎……そして、麻宮サキ!彼らと、オビ・ワンの弟子たちが、今にも繰り広げんとしている激闘に、果たして間に合うのか?ランドスピーダーは、一路オビ・ワンの家を目指して進んで行った……。


「……それで、私とサキが信楽老を倒した後、奇蹟の生還を成し遂げたんだが……。これからも極秘活動を続けて行く為に、暗闇司令の命令によって、その事実は一切伏せられ、私達は記録上では死亡した事になったんだ……。だから、『スケバン刑事』最終巻のエピローグでは、ああ言う風に描かれているのさ。なあ、サキ!……おや、どこへ行ったんだ?」
 オチョコで、冷酒大吟醸をチビリチビリやっていた神が、ふとサキがいないのに気づき、周囲を見回した。
「放っておけ……。未成年は、このような酒宴に加わってはならんのだ!」と、律義に言う鉄のクラウス。が、神はよほど気になったのか、立ち上がって望遠鏡を覗き込んだ……その瞬間!
「あいつ、一人で勝手に敵陣へ乗り込む気だ!」
 神の目に映ったのは、遂に待ち切れなくなったのか、ベン・ケノービの家へ向かって、一人で真正面から歩いて行くサキの姿だった!
「何だって!?」「……馬鹿な!」
 バンコラン少佐と鉄のクラウスが悪態をついた!
「勝手な行動は許さん!」
 ボンドもグラスを投げ捨て、立ち上がる。さすがは、トップクラスの秘密情報部員!今の今まで、酒宴にふけっていた彼らだったが、一瞬にして体の中からアルコールを吹き飛ばすと、冷静沈着な態度で神に駆け寄った!
「止めろ、あいつを!よりにもよって、真正面から乗り込んで行くとは、何たる事だ!」
 鉄のクラウスの言葉に、神が頭を押さえた。
「サキが一旦こうと思い込んだら、もう誰にも絶対に止められやしない!それがあいつの良い所でもあったんだが……」
 4人のスパイたちがじっと見守る中、麻宮サキはゆっくりとオビ・ワンの家に向かって歩み続けた……。そして、懐からヨーヨーを取り出すと、桜の代紋を突き付けて、高らかに宣言した!
「スケバン刑事・麻宮サキだ!てめえら全員、国家転覆の陰謀を謀った容疑で逮捕する!おとなしく、お縄につきやがれ!」
 その瞬間、オビ・ワンの家から、幾つかの影が飛び出すや、電光石火の如く散開!その光景を目にした神が合図を出した!
「行くぞ〜〜!」
 無言で頷いたバンコラン、ボンド、クラウスが、サキを援護するように、パッと左右に散った!

「朝から、良くない予感がしてたけど……これの事だったのね!」
 サキの堂々たる宣戦布告に、一瞬にしてオビ・ワンの家から飛び出し、家畜小屋に姿を隠したエイリアが、小松崎蘭に向かって言った。
「先生が予想してた通り、帝国軍の襲来よ!何人いるかは分からないけど……。いずれも、飛び切りの凄腕……戦いのプロフェッショルだって事だけは、私にも感じ取れるわ」
 「蘭……古代超能力者の末裔にして、『赤い牙』の異名を持つあなたなら、敵がどこに潜んでるか分かるでしょ?」
 エイリアの問いに、蘭は頭を押さえて言った。
「それが……駄目なのよ。敵は、ここの周囲一帯にESPジャマーを仕掛けたらしくて、私の超能力が上手く働かないの!」
「私の能力−『ヴォイス』は、接近戦でしか使えないし……早く先生に帰ってきて貰えるよう、テレパシーで連絡を取ってみるわ」
「じゃ、私は位置を変えて、相手の様子を探ってみるから……気をつけてね、エイリア!」
 砂嵐を巻き起こしながら、素早く飛び去って行く蘭……。エイリアは目を閉じると、思念を凝らした……。
『ケノビ先生……非常事態です。ケノビ先生、非常事態です!早くお戻りになって下さい……』
 その瞬間、エイリアの頭の中に、『ピーピー!ガーガー!』と言う凄じい雑音が響き渡り、彼女は危うく失神しそうになった!ふらっとなったエイリアを、背後から支える手……。
「ありがと……」
 思わず感謝しかけた彼女だったが、はっと事態に気づいて振り返ろうとした瞬間、その口が塞がれた!
「うっ……」
 エイリアを背後から抱き締め、瞬時にして唇を奪った相手……それは、名うてのプレイボーイ・スパイ−007ことジェームズ・ボンドだった!如何にエイリアが、ベネ・ゲセリットの鍛錬を積んだとて、口が利けなければ、『ヴォイス』で相手を洞喝・従属させる事も不可能だ!更にボンドは、彼女が次なる行動に移ろうとする前に、見事なテクニックでもって、彼女をメロメロの状態にしてしまった!さすがに、これまで何十人と言う女性を虜にして来た007!超能力者たるエイリア・アトレイデと言えども、その敵ではなかった……。
「ああ……ジェイムズ……」
 今まで体験した事もない甘美な世界に酔い、ぐったりと失神してしまったエイリアの体をそっと横たえると、ボンドは砂を払って立ち上がった。
「これで、一人……」

「ええい!これで、どうだ!」
 ソルジャーがテレキネシスを発揮し、点在する岩場の間に隠れ潜んでいる敵に向かって、次々とサボテン爆弾を降らせる!
「ああん!銃の標的が定まらない!」
 リーザは、敵に向かってレーザーガンを連射するが、一発も命中しない!が、逆に敵の放つ弾丸は、確実に3人をその場に釘付けにしていた!と、ジョミーがそんなリーザの姿を見て叱りつけた!
「馬鹿っ!銃は最後の武器だ!僕たちは少年忍者部隊……」
 リーザの冷たい視線が、ジョミーに注がれる。
「いや……冗談。冗談!とにかく、僕達は超能力者だろ!どうして、自分の力を使わずに、武器なんかに頼ろうとするんだ!」
 ジョミーの言葉に、リーザも頭を振って答える。
「私の特殊能力は、何ができるか、まだはっきりとは分かってないのよ!」
「そうだった……リーザは記憶喪失だったっけ」
 頭をポリポリかきながら、あれこれと考えるジョミー。岩場に隠れている敵の動きは非常に素早く、ジョミーたち3人の超能力者でもっても(ESPジャマーの為に、100%の能力が発揮できない事もあるが)、なかなか捕らえられないのだ!
「ジョミー、敵がどんどん近付いてくるよ!」
 ソルジャーの言葉に、ジョミーが頷いて言った。
「よし……じゃ、仕方ない。出たとこ勝負だ!3人同時に、別々の方向から攻撃すれば、敵も応戦不可能じゃないかな?」
 無言で頷くソルジャーとリーザ。
「よし、行こう!」
 ジョミーの合図で、ソルジャーとリーザが同時に飛び出し、瞬時にして3方向に分離したかと思うと、強烈なショック・ウェーブを発射した!
「ええ〜〜い!喰らえ、ジェット・ストリーム・アタ〜〜ック!」
「それは違うぞ……全く、勉強不足な奴だ!」
 隠れていた岩場から、宙高く飛び上がって、3人の攻撃をかわした敵……バンコラン少佐が、一見無防備のまま、ジョミーたちの目の前に全身を晒した!……かと思った次の瞬間!妖しく輝いたバンコラン少佐の瞳から、目に見えぬ強烈な精神波動が放たれ、3人は一瞬にして心を射抜かれ、彼の虜(?)になってしまった!放心状態のまま、甘美な陶酔感に浸っているジョミーたちは、そのままゆっくりと地面に崩折れて行った……。さすがは、〈美少年キラー〉の異名を持つバンコラン少佐!たとえ超能力者と言えども、美少年である以上、彼の視線が持つパワーに立ち向かえる筈がないのだ!
「ふふん。思ったより手こずらせたな……」
 倒れ伏しているジョミーたちの前に、ゆっくりと歩み出てくるバンコラン少佐。その表情には、快心の笑みが浮かんでいた。
「これで3人片付いたか……おや?」と、その目がリーザに止まる。うつ伏せに倒れていた彼女の体を探っていたバンコランが、不思議そうに首を捻った。
「こいつは……女の子だ。おかしいぞ?何故、私の精神波アタックが、女の子に利いたんだ?」
 バンコランは、内ポケットから取り出したマイコン手帳で、銀河系内においてお尋ね者となっている超能力者の画像データを検索していたが……。
「ははあ……なるほど!こいつは、自分のマトリックスを変えて、女性に変身していたんだな!それで、私の能力が利いたと言う訳か!緑の髪を持つ史上最強のエスパー……『やつ』が、この少女の正体だったとはな……」
 バンコランが一人納得していると、近くで爆発音と銃声が立て続けに鳴り響いた!
「神だな……」
 振り返って一人頷いたバンランは、失神している3人のエスパーを縛り上げ、その特殊能力を一時封じる事のできるESPマイクロジャマーを、圧縮式注射器で彼らの体内に送り込んだ。
「これで、軍がここを制圧するまでは持つだろう……さて、と。私の出番は終わった。後は、他のメンバーがどれだけ活躍するか、ここで拝見させて貰うとするか……」
 そう言って、バンコランは上衣のホコリを払い、岩場に腰を下ろすと、ゆっくりシガレットに火を着けた……。

 一方こちらは、古代進&アムロ・レイ組対神恭一郎だ!
「いつまで、そんな小屋に隠れてるつもりだ!」
 灌漑用の土木機械小屋に立てこもった二人に向かって、盛んに挑発する神!苛立ったアムロが、狭い操縦席の中から通信器で古代に呼び掛ける。
『古代さん……どうして直ぐに出撃しないんですか?』
「まだだ……まだ、まだ。パワー・ゲージが頂点に達してない!蓄積されたエネルギーが最大になった瞬間に、全力で小屋を突き破って飛び出すんだ!」
 古代進が、今にもあふれ出ようとする闘志を押さえながら、暗闇の中で光る松本零士メーターを凝視する!やがて、パワーがMAXに達した瞬間、アムロの正面のスクリーン・パネルに、古代の姿が映った!
「今だ〜〜!」
「アムロ、行きまーす!」
 神の目の前で、土木機械小屋の扉が轟音と共に突き破られ、二体のマシーンが飛び出した!ガッチャンコ……ガッチャンコと音を立て、ガニ股で不細工に突き進んでくる土木作業機械−ウォーカー・ギャリアだ!
『古代さん……折角の戦いなのに、僕こんなみっともないメカに乗りたくなかった……』
「こんな時に、贅沢言うんじゃない!」
 無線でブツクサ不満を言って来るアムロを叱り付けた古代は、ウォーカー・ギャリアの両手で、巨大な鍬を振りかざした!目指す目標は、二体のメカの突進にも全く動揺した様子を見せず、彼らに向かってピタリと銃を構えている一人の男……神恭一郎だ!
「まだだ。まだ……まだ!」
 地響きを立て、砂煙を巻き上げながら、神に迫り来るウォーカー・ギャリア!神も、銃の照準を一点に据えたまま、ターゲットを凝視する!
「……3間……2間半……2間!」
 遂に神の銃が唸りを上げ、二体のウォーカー・ギャリアの膝関節の僅かな透き間を撃ち抜いた!次の瞬間、巨大なメカから振り下ろされた鍬の一撃を、紙一重で避けながら転がる神!……だが、巨大なメカはそのまま地面に崩れ落ち、盛大なモーター音を上げながらも、ピクリとも動かなくなった……。
「ど、どうしたんだよ……一体!」
 無様に手足をバタバタさせるだけのウォーカー・ギャリアに焦るアムロ。と、そのコックピット・ハッチが突然開き、外部から何かが投げ込まれたかと思うと、真っ白なガスが一瞬にしてアムロを包み込んだ!
「しまった!ガス……だ……」
 アムロの意識がホワイト・アウトする……。一方古代は、何の役にも立たなくなったウォーカー・ギャリアを見捨てて、外に飛び出したが……。その後頭部にビタリと神の銃が突き付けられた!
「ゲームセット……そこまでだな!」
 横目でチラリと見る古代。そこには、意識を失ったまま、ロープで縛り上げられたアムロの姿があった。
「ああ……降参するよ。くやしいけど、あんたの言う通りだ!」
 遂に観念して、降伏した古代を縛り上げる神。
「これで二人。後は……エーベルバッハ少佐とサキが残りの奴らを押さえれば、作戦の第一段階は終了。大物のご帰着を待つだけだな」
 神は、おそらく二人が戦っているであろう方向を見つめながら言った……。

 夕暮れとは言え、今尚タトゥーインの大地を焦がす灼熱の太陽……。しんと静まり返ったO.B.牧場に、一人佇む小松崎蘭のシルエットが映える。彼女の周囲100mには、誰一人として人影は見られなかったが……。
「出てらっしゃい!隠れてても無駄よ!」
 隠れ潜む相手を、盛んに挑発する蘭。だが、その言葉とは裏腹に、彼女の超能力を持ってしても、敵の存在を感じ取る事が出来ないのだ。
『おかしいわ……。どうして相手の居場所が捕らえられないのかしら?たとえ、どんなに静かにしてても、何にも考えない訳には行かない筈なのに……』
 次第に焦躁に刈られる蘭。彼女が敵の気配を感じ取れないのも道理……。そこに潜んでいたのは、完全に自分の心を消し去り、プロのスパイとしての卓越した本能で、無意識の内に行動していた、鉄のクラウスだったからだ!
「いいわ。そっちに出てくる気がないのなら……こっちから行くわよ!」
 遂に痺れを切らした蘭の目が光り輝き、彼女の髪が燃え立つように、ざわざわと紅く変化した!『紅い牙』の異名を持つ、古代超能力者の末裔・小松崎蘭が覚醒したのだ!体の周囲から漂うオーラ!蘭の瞳が妖しく輝き、獲物を追い求めるかの如くに、大地を飛び回り始めた!
「……色即是空。空即是色」
 無我の境地で、座禅を組んでいた鉄のクラウスは、蘭が奇蹟的な偶然によって、彼の真正面に姿を現わした……その瞬間!無意識の内に、右手に持った数珠を振りかざし、彼女に突き付けた!
「喝〜〜〜っ!」「きゃあ〜〜〜!!」
 油断していたとは言え、鉄のクラウスが瞬間的に叩き付けた凄まじい精神力の為に、蘭の巨大なるパワーがバック・ファイアを引き起こしてしまったのだ!言わば、自分自身の力で自分をノック・アウトしてしまった蘭は、そのまま悲鳴を上げて失神してしまった!ぐったりと力を失って、大地に倒れ伏している蘭を拘束する鉄のクラウス。
「俺みたいな普通の人間が、超能力者を相手に戦うには、これしかなかったが……。俺もドイツ人だ。こんな戦闘方法だけは取りたくなかったぜ!」
"でもまあ、作者が日本人なんだから……!"
 どこからか聞こえてくる『作者の声』に、「それを言うんじゃねえ!」と返したクラウスは、内ポケットから取り出したタバコに火を着け、大きく煙を吸い込んだ。
「あと一人……」

 最後の一人……砂姫明日香に立ち向かっているのは、ヨーヨーを自在に操るスケバン刑事・麻宮サキだ。凄まじいスピードで移動しながらも、互角に戦い続ける二人の美少女!帝国軍が事前に仕掛けたESPジャマーで、明日香の能力は封じられている筈だったが……。何故だか、サキは苛立っていた。
「畜生……あたいと同じ顔しやがって!」
 サキの言葉に、うっすら笑みを浮かべる明日香。
「仕方ないでしょ。作者が同じなんだから!それに、『二人の明日香』で登場した、私にそっくりな従姉妹の葵今日子は、本編に登場したTV局であなたの役……麻宮サキを演じてるのよ。私があなたとそっくりなのも、当然じゃなくって?」
「うるせえ!それ以上、ゴチャゴチャ喋れねえよう、てめえの口を塞いでやる!」
 自分と同じ顔の人間(?)が、自分でないと言う不条理に、むかっ腹を立てるサキ!そして、彼女が放つ一撃必殺のヨーヨーが、唸りを上げて飛来し、堅い岩さえも微塵に粉砕する!それを間一髪よける明日香!
「さすがは、サキ!当たれば、ただじゃ済まないわね。でもね……あなたの武器がそのヨーヨーだけなのに対して、私はこう言う事もできるのよ……。天よ、地よ……大自然に存在する精霊たちよ!お願い、私に力を貸して!」
 明日香がそう言った途端、二人を包んでいる大気が、次第に渦巻き始め、激しく唸りを上げて震動するや、幾筋もの竜巻きと化して、タトゥーインの空をも被い隠すような大砂塵を巻き起こした!驚くサキ……!
「何でえ!ESPジャマーなんて、ろくに利いちゃいないじゃないか。……だからあたいは、SFに出演するのは嫌だって言ったんだあ〜〜!」
 迫力満点のツイスターを何本も従え、吹きすさぶ風の中に、長い黒髪をなびかせて、堂々と立ちはだかる明日香!
「どう……?幾ら顔が似てても、私とあなたとの違いはここにあるのよ!さあ、あなたは、あと何が出来るかしら?」
 あたかも勝利の笑みを浮かべているが如くの明日香に対し、サキが厳しい表情で答えた。
「あとは……勇気だけさ!」
♪勇気〜〜、勇気〜〜、ドリ〜ム・ボ〜〜ル〜〜!

  『勇気』だけを頼りに、岩場に身を隠しつつ、必死で明日香を追うサキ!その時、激しく渦巻く流砂の中から、巨大な化石……骨だけの存在と化したゴジラが出現した!そして、雄叫びを上げるゴースト・ゴジラの頭部に跨って、遥かな高みからサキを探す明日香!
「さあ……隠れてないで、出てらっしゃい!」
 明日香の余りの超能力の凄さに、思わず唇を噛み締めるサキ……。その瞬間、竜巻きによって巻き上げられた砂塵の中から、巨大な金属物体が出現!油断していた明日香……ゴースト・ゴジラの頭部をまともに直撃した!
「きゃあっ!」
 間一髪、潰されずに済んだものの、80mの高さにあるゴジラの頭部から落下した明日香は、地面でしたたか体を打ち、そのまま失神してしまった!そして、彼女の周囲で、次第に収まって行く大竜巻き。脅威のゴースト・ゴジラも、謎の金属物体に首を断ち切られてしまうや、そのまま崩折れて行った……。這いずるようにして、隠れ場所から現れるサキ。彼女は、失神している明日香に手錠を掛け、その超能力を封じるESPジャマーをセッティングするや、今度は怖々謎の金属物体を覗き込んだ。

「な、な……何なんだ、こりゃ?」
 サキが目にした謎の金属物体……。それは、既に幾年……いや、幾世紀もの時代を経過していたかも知れぬコールドスリープ・ポッド。宇宙船の緊急脱出時に使用する冷凍睡眠カプセルだった!その表面こそ、永の年月で錆び付き、汚れ切ってはいたが、カプセル自体の機能は、今だ完璧に作動しているようだった。
 好奇心に捕らわれたサキが、カプセルの強化ガラス窓に付着した砂埃を手で拭い取るや、内部には女子大生っぽい雰囲気の、二人の美女の姿が見えた。彼女たちは、銀色に輝く半袖のスペース・ジャケットとホットパンツと言うセクシーなファッションのまま、冷凍睡眠で安らかな眠りについていた……。そして、その内側から『起こすな!』と手で殴り書きされた紙が貼られていた!
「こりゃあ、一体……?」
 サキがもっと良く見ようと覗き込んだ時、彼女の直ぐ側の地面が、いきなりボコッと盛り上がったかと思うと、その中から真っ黒けの巨大なウールの固まりの様な物体が飛び出して来た!クルッと一回転して、サキの目の前に降り立ったそれは、愛嬌のある黒熊のような生物だ!
「や、やあ!君……可愛いね……」
 グルグルと喉を鳴らし、目をくりくりさせながら、ニカッと笑いかけてくる黒熊に、サキがほっと一安心した……その時!彼女の頭の中に、強烈なテレパシー波動が響いて来た!
= 我が主の眠りを妨げてはならぬ!=
 鋭い刃物で頭を切り裂かれるような苦痛に襲われ、悶え苦しむサキの目の前で、愛らしい黒熊のような生物の姿が、一瞬にして変容した!精悍にして狂暴、触手を持った巨大な黒豹の姿をし、あらゆる周波数の電波を自由自在に操る事の出来る完全生物……クァールだ!
 そう……。コールドスリープ・カプセルの中の美女たちこそ、任務で壊滅的被害をもたらし、ソラナカ部長のお小言を避ける為(……必ずしも、それだけではないのだが)、無期限の冷凍睡眠に入った『ダーティー・ペア』……。
『ラブリー・エンジェルよ!』
 どこからか、苦情のテレパシーが伝わって来たので、言い直そう。コードネーム『ラブリー・エンジェル』のユリとケイ!そして、愛らしい黒熊こそ、彼女たちのペットにして、強力な武器でもあるクァールのムギだったのだ!

= そう!我が名はムギ!クァールのムギ!我が主たるユリとケイは、今安らかなる眠りについている。世界が、我が主を必要とする時まで、その神聖なる眠りを妨げてはならぬ!もし、我が言葉を聞き入れる事が出来ぬと言うなら……=
 ムギの瞳が爛々と輝き、その口元から低い唸り声が洩れ始めた時、サキは慌てて言った!
「あ、あたいはそんな事……。全然、これっぽっちも考えちゃいねえから!どうぞ、ゆっくり、気の済むまで眠っててよ!」
= うむ!お前のその言葉、信じよう!=
 大きく頷いたムギが、再び愛らしい黒熊の姿に戻ると、今度はいきなり近くの地面を猛烈な勢いで掘り始めた!そして巨大な穴が出来上がるや、ユリとケイが眠るコールドスリープ・カプセルを押し込み、表面にパンパンと盛り土をする。
= では、さらばだ!お前に会う事は、もう二度とないだろう!=
 そう言い残すと、ムギは自分も土の中へと潜り込み始めた!主たちが眠るカプセルを、これからもずっと永遠に守り続ける為に……。はっと我に返ったサキは、己自身の力でなく、偶然の「事故」が相手を倒した事に、些か気を悪くしていたが……。
「なあ〜〜に。偶然……って言うのも、立派な武器の一つさ!」
 そう自分を納得させたサキは、失神している明日香を担ぎ上げると、皆と集合する為に、O.B.牧場の小屋へと向かった。オビ・ワンの弟子たちは、優秀なるエージェントの前に、すべて敗れ去った……。最後に残ったのは、ただ一人。オビ・ワン・ケノービだけだ!決戦の時は、刻一刻と近付いていた……(『あの〜〜、私もまだいるんだけど……』と、どこかで呟く火田七瀬)。


「遅かったようじゃな……」
 オビ・ワンがポツリと呟く。壊滅したラース農場から、一足飛びに戻って来たオビ・ワンたちだったが、O.B.牧場の手前まで来るや、ランド・スピーダを急停止させたのだ!七瀬も、目を閉じて精神集中する……。
「ええ。エイリアやアムロさんたちが発する精神波動が感じられませんわ。何か……機械的な作用で妨害されてるみたい」
「帝国軍のESPジャマーじゃな!」
 ランドスピーダーから降り立ったオビ・ワンが、携帯用のオペラグラスで周囲を見回した。
「どうやら……この近辺に帝国軍が隠れ潜んでいる様子はなさそうじゃ。敵はO.B.牧場に有り……か!わしらの帰りを、手ぐすね引いて待ち構えていると言う訳じゃ」
「一体、どうなってるんです……ベン?」
 ルークの問いに、オビ・ワンが教え諭すようにして答える。
「ルークよ、お前はまだフォースの鍛錬を受けておらんから分からぬだろうが……。この周囲には、わしらのような超能力者の存在を感知し、その能力を妨害するESPジャマーと言う兵器が、幾つも仕掛けてあるのじゃ!それに、どうやらO.B.牧場も敵の手に陥ちたらしい。後に残して来た弟子たちのテレパシーが感じ取れぬからのう……。普段の鍛錬が足りぬから、帝国軍ごときにやられるのじゃ!全く、不甲斐ない奴らめ!」
 唇を噛んで嘆くオビ・ワン……。が、直ぐに気を取り直して言う。
「結局、奴らが狙っておるのは、他でもない……このわしじゃ!事ここに至っては、わし自らが手を下すしか方法がなさそうじゃな……ルーク!それに七瀬よ!」
「あ……はいっ!」「はいっ、先生!」
 呼び掛けられたルークと七瀬が返事をする!
「わしはこれから、戦いの場へ……O.B.牧場へ赴く!お前たちはここに残って、わしの戦いぶりをよ〜〜っく見ておくのじゃぞ!」
「でも、先生!あそこに、どれだけ敵が潜んでいるかも分からないのに……危険です!」
 心配そうな七瀬の肩をポンと叩いて、オビ・ワンか笑みを浮かべた。
「安心せい!仮にもこのわしは、銀河に名高いジェダイ騎士団で最強と呼ばれた男じゃ!弟子どもとは、ここが違うわい!ここが!」
 そう言って拳を握り、腕を叩くオビ・ワン!
「……それに、七瀬よ!お前の特殊能力は、人の和=親和力を生み出すテレパシーじゃ……。戦闘向きではない!じゃから、お前を連れて行っても、足手まといになるんじゃ!」
 冗談めかして言ってはいるが、その言葉の奥には、もうこれ以上自分の弟子たちを危険に晒したくないと言う、オビ・ワンの心が見え隠れしていた……。それを感じ取った七瀬も頷く。
「分かりました。私は、もう何も言いません!でも、先生!先生が戦いに赴く前に、ぜひこれを使って下さい!私の気持ちです……」
 七瀬が、金属製の缶をそっと差し出す。そのラベルを見たオビ・ワンが、思わず唸った!
「むっ!……七瀬よ。良い物をくれたな!これがあれば、わしも百人力じゃ!」
 笑顔のオビ・ワンが、缶を一気に切り開くや、ホウレンソウを口の中へ流し込む!たちまちにして湧き起こる闘志とパワー!袖を巻くり上げたオビ・ワンの腕に、大きな力こぶが生まれる!(BGM:ポパイのテーマ)
「さ〜〜〜て、と!元気百倍!いっちょ、ブワ〜〜〜ッとやってやるか!ブワ〜〜〜ッと!」
 そう言いながら、オビ・ワン・ケノービは、見えざる敵が待ち構えているO.B.牧場に向かい、歩みを進めて行った……。

「来たぜ、神……本命のお出ましだ!」
 オビ・ワンを双眼鏡で確認したサキが言った。オビ・ワンの弟子たちを全員捕らえたボンドたちは、彼らの特殊能力を封じた後、堂々とO.B.牧場に陣取って、この家の主人の帰りを、今か今かと待ちわびていたのだ!
「しかも、自分の部下が我々に捕まっていると、薄々感じながらも、真正面から正々堂々とやって来るとはな……見上げた奴だ!」と、感心して言う鉄のクラウス!
「どうだ?ここは一つ、奴の心意気に応じて、我々も正面から迎え撃ってやろうじゃないか?」
 ボンドの提案に、サキが大きく頷く!
「賛成だ!今度は、あの爺さん一人が相手なんだから……あたい一人でも充分さ!」
「舐めてかかるんじゃない、サキ!相手は反乱軍の大物スパイなんだ!どれだけの特殊能力を備えているか……見当も着かないんだぞ!だが、私も正面から奴を迎え撃つ事に賛成だ。我々5人全員が向かって行って、やっと勝てる……そんな気がしてならないんだ」
 さすがに神恭一郎!顔も会わせた事のないオビ・ワン・ケノービの強大なフォースの力を、第六感で感じ取っていたのだ!
「よし!……では、我々全員で奴を迎え撃つ!それで良いな?」
 ボンドの提案に無言で頷くサキ、神、バンコラン、鉄のクラウス!彼らは、一人また一人とオビ・ワンの家を出るや、決闘の場へ歩みを進めた!

「来よったな……」
 姿を現わしたボンドたちが、オビ・ワンを取り囲むように、ゆっくりと左右に展開して行く……。それを目にしたオビ・ワンは、傍らの流しのトランペッターに、コインを放って言った。
「この場の情景にふさわしい曲を、BGMとして演奏してくれ」
 コインを宙で受け取ったトランペッターが、頷いてトランペットを口にする!やがて、O.B.牧場一帯に、むせび泣くようなトランペットの調べが響き渡った!
♪パ〜〜、パ〜パラッパ、パラパラパッパ〜パラパ〜……
「『皆殺しの唄』……か!灼熱の炎天下で繰り広げられる決闘のBGMには、最適じゃな!」
 オビ・ワンが乾いた笑みを浮かべる。ジリジリと照りつける太陽が、6人の決闘者を陽炎の中に写し出す……。風に舞い散る砂塵!額から汗が流れ落ち、武器にかかった指先がかすかに震える!無情感を漂わせる音楽が、限りないまでに緊張感を高めて行く!永遠とも思えるが如き時間が経過し、そして……。
「やってやるぜ〜〜〜!」
 サキの声が、合図となったかのように、地に身を投げつつ、0コンマ数秒の目にも止まらぬ早業で銃を引き抜くボンド、神、クラウス、バンコラン!鋼鉄製のヨーヨーを放つサキ!が……一瞬早く、オビ・ワンの必殺の指先が彼らを捕らえた!
「ド〜〜〜〜ン!」
 笑ゥせえるすまんの如く、オビ・ワンの人差しから放たれた巨大なショック・ウェーブによって、『勇気』も『無我の境地』もあらばこそ、サキたちは一瞬にして気を失った!バタバタと倒れて行くボンドや神たち……。だが、まだ辛うじて意識を保っていた者が、一人だけいた……バンコラン少佐だ!オビ・ワンから押し寄せる凄じい精神力を前に、バンコランは自分の誇る〈眼力〉で、必死に抵抗しているのだ!
「おのれ!負けて……負けてなるものか!」
 歯を食い縛り、精神を集中して、何とか反撃しようとするバンコラン!その額から、幾筋もの汗が滴り落ちる……。
「しぶとい奴め……これでどうじゃ〜〜!」
 オビ・ワンの目がカッと光り、バンコランを直撃した!二人の視線が激突し、火花を散らす!
「だ、駄目だ!もう……耐えられん!」
 帝国のエージェントたちの最後の一人……己の〈眼力〉=精神力で、必死に立ち向かっていたバンコラン少佐が、遂にオビ・ワンの牙城に屈し、大きく地面へ弾き飛ばされた!

 バンコランとの凄じい精神力勝負で勝ち残ったオビ・ワンが、ガクリと膝を着く!それを見るや、ルークと七瀬が駆け付けた!その後から、あたふたとついて来るR2-D2とC-3PO……。
「大丈夫ですか、ケノビ先生!」
 そう言って、七瀬がオビ・ワンを助け起こす。安心せい!……と言った感じで、笑顔を見せているオビ・ワンだが、その息使いは荒く、顔色も青ざめている……。
「もう年なんだから……お爺ちゃんは無理しちゃダメ!」
「……何を言う!」
 年寄り扱いされて怒るオビ・ワン!一方ルークは、周囲に倒れているエージェントたちを見るや、無責任に言った。
「でも……僕、もうちょっと激闘が見られるかと思って期待してたんだけど……。何だか、呆気なかったな!」
「馬鹿もん!かのインディー・ジョーンズとて、体調の悪い時には、アラブ人の剣使いを拳銃一発で仕留めとるんだ!スーパー・ヒーローでも、毎日毎日、死闘を繰り広げる訳ではないぞ!……そんな事より、ルーク!こいつらの始末じゃ!」
「はいはいはい……分かりました!」
 オビ・ワンとルークと七瀬の三人は、失神しているエージェントたちをガッチリ縛り上げるや、納屋へ放り込む。そして、捕われの身から解放され、ESPジャマーをすっかり体から取り払われた弟子たちは、オビ・ワンの怒り顔を前にして、身も世もあらぬ風情で縮こまっていた!
「全く、お前たちと来たら……!一人一人説教部屋に呼び出して、こんこんと説教したい所じゃが……今は時間がない!帝国軍が、いつ押し寄せて来るやも知れんからな!直ぐに出発じゃ!」
「分かりました、ケノビ先生……」
 しゅんとなって言うオビ・ワンの弟子たち……。既に、引き払う準備は整っていた為、時間はほとんど掛からなかった。ランド・スピーダーのトランク・ルームに手荷物が積み込まれ、全員が座席にぎゅうぎゅう詰めになる!満員電車並みの混雑状況に、はーっと溜め息をつくオビ・ワン……。
「本家の映画版では、もっと楽に座れたんじゃが……。ルークよ!目的地は、モス・アイズリー宇宙港じゃ!それにしても……こら!もっと奥に詰めんか!もっと!」
「分かりました、ベン!じゃ、シートベルト……は、これだけ乗ってたら無理だな。とにかく、どこかにしっかり掴まって下さい!最高スピードで飛ばしますから!いいですか?行きますよ!」
 余りの重量に、地面に沈み込んでいたランド・スピーダーがゆっくりと浮かび上がり、そのままスピードを増して発進した!
「1、2、3……11、12、13人!不吉な数字だわ……」
 ランド・スピーダーの上で数を勘定して、憂い顔になるエイリア……。
「でも、R2-D2とC-3POは人間じゃないから、正確には11人と2体だよ!」
 ルークのその言葉に、『差別をするな!』『ロボットだって人間だ!』と言う、訳の分からないプラカードを掲げて抗議するR2-D2とC-3PO!そんなドンチャン騒ぎを横目に、オビ・ワン・ケノービは、次第に遠くなって行くO.B.牧場を……一時の安息の地だった場所を、いつまでもじっと見つめていた……。




《第12章:カンティーナの酒場にて…へ続く》


「Parody 「目次」へ戻る    前章へ戻る 「第10章」へ戻る    次章へ進む 「第12章」へ進む