《必殺スポーツ・アワー》



「必殺仕置人」温泉編

 草津での出張仕事を終えた念仏の鉄と棺桶の錠が、露天風呂から上がってきた。
 鉄「ふう〜〜、仕置きの後に一っ風呂浴びるってのは、気持ちのいいモンだぜ!」
 錠「ああ。体に染みついた血の匂いが消えるからな……」
 浴衣姿でくつろいでいる鉄と錠。……と、鉄の目が、旅館に置かれている西洋机と、先が大きく丸くなっている二枚のヘラに注がれた。
 鉄「何だ、こりゃ?」
 青年「それは、異国の遊びで『ピングポング』て言うんですよ」
 鉄に声を掛けたのは、浴衣姿のニヒルな青年だ。鉄に遊び方を説明した青年が言う。
 青年「どうです、一勝負?」
 鉄「おう、やってやろうじゃねえか!」
 かくして、ピンポン勝負に挑む鉄(山崎努)と青年(トヨエツ)!勝敗は……諸氏もご存知の通り、CMの通りである(笑)。尚、その翌日。今度は、河原で焼肉の宴が行なわれた際に、再戦が組まれたようだが……その結果は詳らかではない?


【終】


「必殺!シンクロナイズド・スイミング」

【1/個人戦】
 夜の闇の中、悪党が逃げてくる……。その行く先にあるは大きな水瓶。そこから簪を持った手が、にゅっと出てくる。驚いて立ち止まる悪党!……その手が引っ込んだかと思うと、今度は足が出てくる!優雅に足が回り……次の瞬間、秀が一気に水の中から飛び出してくる!(BGM・火の鳥)
 ナレーション「10点!10点!10点!10点!10点!」

【2/デュエット戦】
 相手は異国人の殺し屋二人。空手の構えで、見えざる敵=仕事人を警戒している。…と、そこにBGM「仮面の忍者赤影」が掛かり、水中から一気に飛び出す二人の人影!
「……政、参上!」「……竜、参上!」
 空中で優雅に回転して、再び水の中に消える二人!突如響き渡る審判の笛。
 審判員「攻撃の意志が認められないので減点1!」

【3/団体戦】
 ブラウン館のプールの中で戦う主水。同じく、プールの中で戦う政。同じく、プールの中で戦う竜。自転車でプールの中を走り回る加代と順之助。
 主水、息が苦しくなって上がってくる。
主水「プファッ!……俺は、もう息が続かねえ。後は頼んだぜ!」
審判員「ピーッ!……中村主水リタイアの為、日本チームは棄権。従って、ブラウンチームの勝ちといたします!」



【終】


「雨が降ったら傘をさす……」

 ……外は雨。猛暑を吹き飛ばすが如く、突然の夕立が江戸の街を洗い清めて行く。
「おう、政。やっと来たな!」
 アジトに駆け込んで来た政を見て言う主水。「遅かったじゃねえか」と言う竜。ずぶ濡れの体を手拭いで拭き取りながら、政がブツブツと呟いた。
「ああ……今しがた加代が、高校野球が雨で流れたから、仕事だって言いに来やがった。全く!仕事をするならするで、最初っからきっちり決めておいてほしいモンだぜ!晴れたら無し。雨だったら決行だなんて……そんな中途半端は、もうご免だ!」といきり立つ政!
 と、そこへ加代が入って来て言った。
「何、馬鹿な事言ってんのさ!この不景気のご時世、仕事があるだけでもめっけもんじゃないの!?……さあさあ、揃ったんなら、仕事の打ち合わせだよ!」
 加代の言葉に渋々頷く仕事人たち。
「……で、今回の仕事は壱・弐・参の連中が、スケジュールの都合でいないから、代わりにこの人を助っ人として頼んだからね」
 加代がそう言うと、やけに愛想の良い男がアジトへと入って来た。
「投げ玉屋の板東ちゅうんや。野球ネタやったら、俺の出番やさかい……。まあ、宜しゅう頼むわ!」
 ダ〜ッと、一斉にコケる仕事人たち!アジトの外の夕立は、今なお降り続いていた……。



【オチなし?】


「必殺夜宮人」

 ……時は真夜中。今、江戸の一角に、五人の仕事人の元締が密かに集まっていた。三味線屋勇次や髪結い弥助と言った、ホスト系の仕事人を率いる花屋のサッチー。仕事に赴く時には、必ず雨が降ると言う伝説を持つ雨降りの権藤。喧嘩っ早いが涙もろい鉄拳の龍。配下の仕事人たちが全員赤い頭巾を被っている赤頭巾の鯉太郎。つい最近サッチー元締の元から独立した神宮の小次郎。
 彼らの目的はただ一つ……鍋奉行の悪名を持つ非道の南町奉行とつるんでいる元締・巨人の茂王を裏切者として、闇の掟に従い成敗する為だ!

「……じゃ、皆分かったね?あたしは三味線屋勇次と二刀流の新庄を出すから、あんたたちも配下の仕事人を二人ずつ出すんだよ。それで、鍋奉行と茂王の始末を付けるから!」
 この場を取り仕切るサッチーの言葉に、無言で頷く元締たち。そして、いよいよ手打ちに移ろうとした時……隣の部屋から、一人の大きな男が駆け込んできた!
「何だ、大魔神?……邪魔をするなと言ったろうが!」
 権藤の元締の叱咤を無視して、耳元に何かを囁く仕事人・大魔神。その途端、権藤の顔色がさっと変わった!片頬に手を当てながら、サッチーを見つめて言う権藤の元締。
「サッチーの姉御。今、こいつから奇妙な事を聞いたんだが……。実は、隣の部屋に『もう一人のあんた』と、あんたの旦那−月見草の南無三がいてるって言うんだ……」
 サッチーの元締がギクッとなって立ち上がった途端、今まで囚われの身になっていた「本物」のサッチーの元締が、隣室から旦那の南無三に支えられながら入って来た!
「あたしを監禁し、すり替わっておいて、江戸の裏稼業を壊滅させようって企んだんだろうが……そうはいかないよ!さあ、誰なんだい?正体をお見せ!……外道照身霊波光線!」
 サッチーのサングラスから放たれた眩い光を浴びた「偽物」のサッチーが、その正体を現した!
「ばぁ〜れ〜た〜かぁ〜〜!」

 偽サッチーの声と共に、奥の襖が開き、更に二人の男が現れた!ニコニコと笑みを浮かべている長身の男が言う……。
「こうなったら、仕方がありません。教えて上げましょう!レオ……いや、オレたちは、鍋奉行の命令で、あんたら全員を罠に掛けて、一気に捕らえようとしてたんです。私たちの正体は……」
 偽サッチーが、顔を覆っていたマスクをベリベリと剥がす。その下から現れたのは三人組の仕事人・大鳥の軍団だった!
「や〜〜!聞いてないよ〜〜!!」
 しら〜っとなるその場……。全く受けないギャグの連発に、怒った元締たちはじりじりと大鳥の軍団に迫って行った……。
「この冷え切った雰囲気をどうしてくれるんだい!」



【終わり?】


「新・必殺仕置人」解任無用

 ……今年最後の「寅の会」が終わりを告げた。「北方の勇者」との死闘に勝利を収める事が出来ず、今季限りで「元締」から退任する事が決まっている虎が、いつもの如く大勢の瓦版屋の前に(?)現れる。

虎の元締(野村克也)「おお……大勢集まっとるな。そんなに、解任されるわしの顔が見たいんか?」

 瓦版屋の間から、どっと上がる笑い声!弱小仕置人集団の寄り集まりだった「寅の会」を、今の強大な姿にまで育て上げた元締の雄姿(?)も、これで「見納め」とは言え、毎回「寅の会」が終わった後に発せられた「ボヤキ」は、今回も絶好調だ!一人の瓦版屋から「今度、こちらに来られる事になった、新しい元締については、どう思われます?」と言う質問が飛ぶ。

虎の元締「ああ……あの異国人の武器商人で、ミスター・ブラウンとか言う奴やな?そう言うたら、昨日うちの長屋に、こんなモンが突き刺さっとったわ!」

 そう言って、虎の元締が懐から取り出したのは、縁を鋭く研ぎ澄ました「一枚の瓦」。そこには、見事な筆文字で「カミング・スーン!(近日参上)」と書かれてあった!

虎の元締「聞いた所やと、今まで元締をしてた"巨鯨の会"じゃ、配下の仕置人に、毎日"これ(=瓦)"を投げさせてたそうやないかい。うちの連中が、『瓦投げ』やら『バーベル』やら『自転車こぎ』ばっかりさせられて、筋肉バカにならへんかったら、ええんやけどな!」

 元締のジョークに、瓦版屋たちの間から、どっと笑い声が起こる!

虎の元締「まあ……後は、博多の『鷹の会』と蝦夷の『北方の勇者』とのやり合いだけや。上の方が、何やごちゃごちゃ言うとるけど、残ってる契約期間の"示威絵図"の間だけは、わしの好きなようにさせて貰うで!」

 上方で、難波の仕置人グループ―「南海屋」の仕置人兼元締だった時と、江戸の「神宮・燕の会」の元締だった頃、「短期決戦に強い!」と言う伝説を生んだ虎の元締にとって、今度の戦いは「三度目の正直」であると同時に、「最後の花道」でもあったのだ。だが、歴戦の勇者ー筋金入りの仕置人である虎にとって、「おとなしく引退する」と言う文字は、その脳裏になかった。「示威絵図」で、鷹の会を破り、北方の勇者にしっぺ返しを食らわし、目指すは「宿敵」……"巨人の会"の若き元締・原の「クビ」だ。相変わらず、表情の読まない「のほほんとした顔」を見せながらも、その心の奥では「激しい闘志」が燃え上がっていたのである!いつものように、ぼやきながら引き上げようとした元締の視線が、ふと「一人の男」に止まった……。

虎の元締「……ちょっと待て。そこの"YS"の文字が刺繍された手拭、頭に乗せてる瓦版屋!お前……読売屋の密偵やろ!?」

 虎の鋭い視線が、一人の男を捕らえる!慌てて逃げ出そうとした読売屋の密偵を、死神の鉄兵がバットを突きつけて威嚇した!じりじりと後ずさりして、虎の元締の前まで追い詰められた密偵を、若手仕置人のマー君が床に捻じ伏せる!

死神・鉄兵「こいつ……どうします、元締?」
マー君「いっそ、見せしめに、東京ドームの入り口に磔にしてやりましょうか?」
虎の元締「マー君の、そう言う怖いモン知らずの性格が、わしは好きなんやけどな……!これからの"示威絵図"の景気付けや。わしの手で、一花火上げさせて貰うわ」

 墨で黒々と「月見草」と書かれた、愛用の"巨大な棍棒"を、配下の仕置人・岩熊から受け取った元締が、鋭いスイングを二度・三度と振るう!恐怖におののく密偵の前に、ゆっくりと立った虎の元締。大きく振り被って……!

虎の元締「原ぁ〜〜!わしからの土産モンやあ〜〜!遠慮のう、貰うてんか〜〜〜!!」

 次の瞬間、元締の棍棒が凄まじいスイングと共に、密偵の顔面に炸裂!「ぎゃあ〜〜!」という叫び声を上げた読売屋の密偵は、そのまま空の彼方に消えて行った……(夜空に、キラリ〜〜ン!ーと星が輝く)。それと同時に、仙台の空に、何百発もの花火が上がる!



花火文字『東北楽天ゴールデンイーグルス。CS進出、おめでとうございます〜〜!!』


【終】



「新・必殺仕置人」進撃無用

 時は、安政5年……。遂に、史上初の日米対抗野球が行われる事になった。せんりつをはじめ、押し寄せる観客を前にして、実況中継を行なうは、瓦版屋スタイルの植草貞夫アナウンサーと、解説者の板東"グッド・コントロール"英二。ジョン万次郎の「プレイボール!」で始まった試合は、なぜか地獄組の襲来もなく(笑)、珍プレー好プレーの連続で、逆転また逆転!米国チームが「7」対「4」と日本チームをリードし、舞台はいよいよ9回裏……。米国チームにエラーが続き、ツーアウト満塁の大ピンチ!ここで、米国チームの監督兼選手−ハリスが立ち上がる。

植草アナウンサー「おーっと、ここで米国チーム、選手の交代です!」
板東「そやねえ、やっぱりここで、ピッチャー変えな、あきまへんわ」

 そしてマウンドに上がったのは……髭モジャの大男、亜仁丸レスリー。雄叫びを上げて、日本チームのバッターを睨み付ける!

加代「ねえ、八丁堀。あのピッチャー、凄い玉投げそうだけど……それより何より、凄い髭じゃない?」
中村主水「主水、バースになる…か」
加代「バースって、誰だい?」
主水「そんな事、俺が知るか!第一、わいは近鉄ファンなんや」

 今度は、日本チームの監督・ジョン万次郎が立ち上がる。

ジョン万次郎「ピンチヒッター……虎の元締!」
植草アナ「日本チームも、ここで選手交代。何と、元締です!虎の元締が、代打で登場です!」
板東「やっぱり、野球ネタで、虎の元締が出て来いひんかったら、ファン(……何のファンだ?(笑))が納得せんでしょう!」

 バッターボックス上の虎の元締、樹齢数千年の屋久島の大木から切り出したバットを、ブンブン素振りする!(なぜか、着ているのは「必殺キラーズ」のユニフォームだ)その凄まじい風圧で、キャッチャーの顔も歪む。いつしか審判に成り代わっていた死神がキャッチャーを見つめて、静かに呟く。

死神「虎ハ敬遠ヲ許サナイ」

 そして、まっすぐに伸ばした、虎の元締のバットが、ピッチャーの亜仁丸に向けられた。玄達と闇の重六を葬った虎の元締からの「挑戦状」に、柳眉を逆立てた亜仁丸が、再び吼える!右手の人差し指を、虎の元締に突き付け……「アナタ悪イ人〜〜、死ニナサ〜〜イ!!」
 日本チーム、米国チーム、審判、解説席、観客が息を呑んで見つめる中、遂に、亜仁丸渾身の一球が放たれる!「ウォ〜〜〜〜ッ!」天地を揺るがすような雄叫びと共に、虎の元締の頭部目掛けて、唸りを上げた剛球が一直線に襲い掛かる!観客席から上がる「キャ〜〜っ!」と言う悲鳴!誰もが目を閉じ、顔を覆って、虎の元締が死んだ……そう思った瞬間!元締の瞳がギラリと光り、見えないスイングが炸裂した!「カ〜〜〜〜ン!」物の見事にジャストミートされたボールは、ピッチャー・亜仁丸の帽子を弾き飛ばし、そのままグングン伸びて、バックスクリーン(……あるのか?)を直撃!

植草アナ「……逆転です!8対7で、日本チームの大逆転です!虎の元締の『代打満塁逆転サヨナラホームラン』で、日本チーム、奇跡の逆転勝ち〜〜〜!!」

 絶叫する植草アナ!沸き上がる観客席!一斉に飛び出してくる日本チーム!そして、マウンドでガックリとうな垂れる亜仁丸……。塁上の走者3人に続き、満面の笑みを浮かべながら、両手を上げて嬉しそうにベースを一周する虎の元締!ホームインした虎の元締を出迎えた日本チーム。歓喜の渦の中で、虎の元締を揉みくちゃにする!

板東「この間のワールド・ベースボール・クラシックは、さっぱりワヤやったさかい、これでスーッとしましたわ!」

 いつしか、「わっしょい!わっしょい!」の掛け声と共に、虎の元締の胴上げが始まった!観客席からは「この調子で、ペナントレースも頼むでえ〜〜!」「進撃の巨人なんぞ、いてもうたれ〜〜!」と、訳の分からない(?)歓声が飛ぶ!そして、ジョン万次郎監督の音頭で「必殺タイガース音頭」の大合唱が始まった!豪快に太鼓を打ち鳴らす、鍛冶屋の政!(……なぜいる?)日本チームの仕事人と一緒に、輪になって踊るかげろうの影太郎!(だから、なぜいる!?)地獄組と鉄眼も「わしらも入れてくれ〜〜!」と、輪の中に入って来る!(お前もかい!?)……歌うは、勿論、我らが中村主水である。


主水「♪花が咲いたら、風が吹き〜〜月が照ったら、雲が出る〜〜。世の中、いろいろあるけれど〜〜おもろない時ァ、タイガース〜〜。六甲おろしで憂さばらし〜〜!(あ、ヨイショ!)レモンスカッシュ、ビールにラムネ〜〜。シャンパン、コーラにハイボール〜〜。すっとするするホームラン〜〜。胸がすきます、仕事人〜〜!」

仕事人全員「よ〜〜し、2番行ってみよ〜〜!」

主水「♪逢うは別れのはじめです〜〜。好きと嫌いはうらおもて〜〜。恋にも、いろいろあるけれど〜〜涙出た時ァ、テレビをつけて、中村主水で〜忘れ〜ます〜〜!(あ、ヨイショ!)レモンスカッシュ、ビールにラムネ〜〜。シャンパン、コーラにハイボール〜〜。すっとするするホームラン〜〜。胸がすきます、仕事人〜〜!」

 大盛り上がりの日本チームをよそに、なずかガックリと落ち込む主水。「わいは近鉄ファンや言うてんのに……」その肩を、板東がポンと叩く。

板東「そんな事言うても、あんさん……。大阪で仕事しょう思ったら、阪神、避けて通れまへんで!(突然カメラ目線になって)……今、仕事ないんで弱っとりまんね。ホンマ、何とか頼んますわ!」

 大騒ぎの日本チームを見つめたハリスが、ぎりぎりと歯噛みする。

ハリス「見テナサ〜〜イ。次ノ試合デハ、ドラフトデ取ッタ、イイ選手連レテキテ、必ズ勝チマ〜ス!」


【終】


「新・必殺仕置人」決戦無用

 ……ここは、江戸にある何処かの寺院の奥座敷。開催予定日ではないのに、急遽召集された「寅の会」に、念仏の鉄たち仕置人が戸惑っている。

寅の会の仕置人「今日は、これから何があるんだ?」「おめえ、何か聞いてるか?」「いや、知らねえ。俺も急に言われて、すっ飛んで来たんだ」「見ろよ。虎の元締が上機嫌だぜ?」「茶柱でも立ったか?」「……バカヤロ!」

 妙にニヤニヤしている元締を前にして、居並んだ仕置人たちがワイワイガヤガヤ騒いでいる中で、一人黙然と茶を飲んでいる鉄。だが、彼もその外見とは裏腹に、心の中では焦りに焦っていた。

鉄『死神の野郎、急に寅の会を開く事になったから、出て来いなんて言いやがって……。もしかして『あの件』がばれたんじゃねえだろうな?いや、もしかして『あっち』の方か……?』

 鉄の額から冷汗が流れる。何しろ、陰で好き放題にやらかして来た鉄たちだ。ばれてない「掟破り」の所業が、一つや二つあったとしても、何ら不思議ではない。そんな事を、鉄がつらつら考えている内に、遅れていた死神が座敷に入って来た。慌てて威儀を正す仕置人たちを前に、いつもの如く無表情で話し出す死神。

死神「(無表情に)本日集まって貰ったのは他でもない……。お前たちも知っていると思うが、昨日CSで阪神が巨人を4タテし、9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。対戦相手はまだ決まってはいないが、それは問題ではない。よって、本日は虎の元締より、皆に祝い酒が振る舞われる事となった」
仕置人たち「おめでとうございます、元締!」「今日は祝勝会ですな!」「ビールかけ……は、やらないか。ハハハッ!」「前回の日本一から、29年ぶりに『新・必殺&タイガース』と行きますか!」
虎「ウム……皆にも、こんなにも喜んで貰い、わしも嬉しいぞ(棒読)」
仕置人たち「おい、元締が喋ってるぞ!?」「あたし、元締の声聞いたのって初めてよ!」

 ニヤケ顔が止まらない虎の元締に、大騒ぎの仕置人たち!あれこれ考え過ぎて、落ち込んでいた鉄も、重圧から解放されてニコニコ顔だ。

鉄『(心の中の声)俺はまあ、阪神ファンじゃねえけどよ……。タダ酒が飲めるって言うんなら、大歓迎だぜ!』

 だが、そんな祝勝会気分に冷や水を指す如く、死神がすっと立ち上がる。

死神「だが、日本シリーズを戦う前に、この中に……寅の会の中に、一人裏切り者がいる!」

 一斉に静まり返る仕置人たち。茶を飲んでいた鉄の表情も強張った。そして、いつもの険しい表情に戻った虎が、愛用のバットを手に立ち上がるや、無言のまま、白犬を撫でていた「一人の男」の前に立った。死神が静かに言い放つ。

死神「白戸屋菊右衛門……お前だ!」

 死神の声に、宗匠頭巾を被った、ご隠居風の男(北大路欣也)が顔を上げた。すると、抱いていた白犬が……。

白犬「……私の事かな?」
鉄「犬が喋った!あんた信じるか?」
虎「違う……。この男の腹話術だ」

 虎の言葉に、ニヤリと笑うご隠居。それは、寅の会に属する仕置人・白戸屋菊右衛門だった。

白戸屋「私の正体によく気付かれましたな、虎の元締?」
虎「ソフトバンクの首領が、寅の会に紛れ込んでいて、気付かぬ訳がなかろう。日本シリーズの前に、ここで往生して貰う」

 手にしたバットで、二度三度と凄まじい素振りをする虎!

仕置人「(隣に座った仕置人に)おい?あんな奴、寅の会にいたか?」
隣の仕置人「(周囲を見回し)……だったら、猫の勘兵衛や辰蔵はどこにいるんだ?」
もう一人別の仕置人「しっ……!それを言ったらダメだろ?物事には、お約束ってのがあるんだから」
辰蔵「私ならここにいますよ」
猫の勘兵衛「俺たちゃ、寅の会に忠実な仕置人だぜ……なあ、辰蔵?」

 突然自分の両側に"現われた"辰蔵と猫の勘兵衛に、思わず目を見張る鉄。視線を交わして、にやりと笑う辰蔵と勘兵衛。寅の会の仕置人たちも、いつの間にか「倍」に増えているようだ!

死神「そんな事はどうでもいい(いや、どうでも良くはないんだけど……(笑))。裏切者には『死』あるのみ。それが寅の会の掟だ」

 冷酷に言い放つ死神。だが、白戸屋菊右衛門は余裕綽々、顔には笑みさえ浮かべている。

白戸屋「だが、私もそう簡単にやられる訳にはいかぬのでな……ディーモン!」

 次の瞬間、何本もの鋭いメスが、奥座敷の襖を突き破って飛来!虎の元締を串刺しにせんとした瞬間、横手から放たれた鉄球がメスを叩き落した!

死神「よくやった、闇の重六!」
闇の重六「(ガッツポーズを決めて)……へへっ!これで、俺も名実共に『虎の会』のメンバー入りだな。日本シリーズ初戦の先発は、俺に任せてくれよ!」

 ……やがて、虎や鉄たちの前に、妖しい笑みを浮かべた女が現われた。真っ白な着物を粋に着こなした、女仕置人のディーモン(米倉涼子)だ!虎が再びバットを構え、死神の手には銛が現われた!鉄も、バキバキを指を鳴らすや、妙なポーズで構える。他の仕置人たちも、懐から殺しの武器を取り出した。

ディーモン「さすがは、寅の会の仕置人ね。でも、私、『殺し』をしくじった事がないから!」

 更にその場に現われる、メロンと大福帳片手のひょうきんな男(岸部一徳)。

彦松「(にっこり笑って)メロンです、請求書です……白戸屋の旦那。今回の助っ人仕事は、急な呼び出しでしたから、仕置料。こんだけ頂きましょうか?」
白戸屋「……承知した」
ディーモン「言っとくけどね、私は高いのよ!」

 かくして、血で血を争う「寅の会」と「白戸屋菊右衛門」の日本シリーズ決戦が始まった!その結末がどうだったか……それは、諸氏もご存知の通り(?)である。


【終】


《書け!必殺うらばなし》
 ◎「必殺仕置人」温泉編……この話の元ネタは、諸氏もお分かりの通り「サッポロ黒ラベル」でのCM。豊川悦司と山崎努が激闘(笑)を繰り広げる、一連の「アレ」です!
 ◎「必殺!シンクロナイズド・スイミング」……このとんでもない(?)ストーリーは、2000年にシドニーオリンピックが開催された際、女子シンクロナイズド・スイミングの日本チームが使用したBGMが、「火の鳥」「忍者」と言う曲だったと言う事から思い付いた話です。ちなみに、映画第二作で「ブラウン館」として登場したプールは、京都市北区にある観光エリアー「しょうざん」の中にあるものですが、プールの中での撮影は、京都の水泳クラブ「踏水会」にて行なわれたそうです。
 ◎「雨が降ったら傘をさす……」……この話は、何の事かと思われるでしょうが、夏の全国高校野球の際には、地元の朝日放送が主催者なので、(必殺シリ−ズの製作局でもあるせいか)毎年雨傘番組として「必殺剣劇人」や「必殺まっしぐら!」「必殺橋掛人」等の、短めのシリーズが用意されてました。でも、雨が降った時だけ放映されるので、事前に録画も用意できず、話も飛び飛びなので。まともに見た事がありません。しかも、最近では「必殺」自体、雨傘として用意されなくなっているような感じが……。
 ◎「必殺夜宮人」……このパロディーは、映画「三味線屋勇次」公開当時に、野村が阪神の監督だった事。ダチョウ倶楽部が、TV局の企画で「サッチー」に扮装して、阪神のキャンプ地を訪れた話題が元ネタになってます。でも、この時から現在を見ると、セ・リーグは全監督が変わってしまってるんですね〜〜!
 ◎「新・必殺仕置人」解任無用……この仕置人パロディーは、一目でお分かりになられるかと思いますが(笑)、野村監督の楽天監督解任が元ネタで、新・仕置人の元締・虎役だった藤村富美夫氏と重ね合わせ、楽天の「CS進出決定時」に、同球団の大ファンであるみやぎかおりさんのブログに書き込んだのが最初です。その後、楽天のブラウン新監督と映画「ブラウン館」の悪役−Mr.ブラウンとを重ね合わせた下りを追加しました。ちなみに、新元締・ブラウンの殺し技−瓦投げは、横浜の監督時代に話題となった「ベース投げ」です!(笑)
 ◎「新・必殺仕置人」進撃無用……このパロディーは、以前「必殺シリーズの将棋ネタ」をまとめた研究を行ったので、今度は「野球ネタ」で…と思ったのが発端です。「大老殺し」「必殺&タイガース」「新・必殺仕置人(虎の元締&必殺キラーズ)」「主水、夢の初仕事(亜仁丸)」「仕事人意外伝(グッド・コントロール)「旋風編(バース)」「仕事人IV(ドラフト会議ネタ)」に加えて、「必殺タイガース音頭」(作詞:中西冬樹 作曲:岡千秋 編曲:大西教文)もフルコーラスで入れてみました(笑)。尚、タイトルは、2013年春に始まったアニメ「進撃の巨人」をネタにしてます。
 ◎「新・必殺仕置人」決戦無用……このパロディーは、言うまでもなく日本シリーズの阪神VSソフトバンクが元ネタで、それに北大路欣也が犬のお父さんの声を当てている「ソフトバンク」のCMと、米倉涼子主演の医師ドラマ「ドクターX」(北大路欣也・岸部一徳も登場)を絡めました。
 初稿は、阪神が巨人に4連勝して、日本シリーズ出場を決めた日でした(その時点で、ソフトバンクのシリーズ登場は未決定)。ツイッターに分割して載せたのをまとめ、字数の関係で省いた小ネタを次々追加しました。ラストについては……「あんた、あの結果をどう思う?」(笑)


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