「必殺仕事人III」

    妖怪カネゴンになったのは加代


 今日も、何でも屋の加代は朝から晩まで走り回り、「あ〜〜忙しい!忙しい!」と《お金儲け》に余念がない!たまたま街中で出会った順之助にも、「ねえ、坊やぁ。今度お上が霞ヶ丘に、バカでっかい屋根付きの運動場を造るって聞いたんだけどさあ……。何かお金儲けのネタにでもならないかしら?」と声をかけては、「あのねえ、おばさん!そんなにお金、お金ってばかり言ってると、妖怪・金業(かねごう)みたいになっちゃいますよ!」と言い返されてしまう始末だ。
 ちなみに、妖怪・金業(かねごう)−通称・カネゴン−とは、今お江戸で人気の妖怪絵師・水森岩燕が描く「お金の妖怪」だ。その姿は、巨大な頭にチャックの付いた大きな口、飛び出した二本の目。大きく腹が突き出た体は茶色の牛革風。大判小判が大好きで、金に取り憑かれた人間が変身すると言われている。かつて水森岩燕は、順之助をモデルにした「墓場の順太郎」と言う黄表紙本を書いて、一大ベストセラーとなり、主水たちと一騒動起こしていた。
 何しろ、順太郎の仲間が、父親の目玉助、剣の妖怪・カネナシ(別名・タネナシ)、簪と三味線の付喪神。そして、妖怪・カネゴンだ!彼らが、夜霧を裂いて、悪党退治に出かけると言う物語だから、本名・玉助の水森岩燕が、「誰」をモデルに描いていたかは、もう一目瞭然である。

 それはさておき、何とかコネを辿って、新・大江戸運動場−「間八堂」の下働きの仕事に潜り込んだ加代は、地鎮祭の前夜に掃除をしているや、式場の片隅の砂の中から「赤色と青色に染まった繭」を見つける。誰も見ていないかどうか、素早く左右に目を配った加代が、にんまりと笑って懐に仕舞い込んだ。

加代「こりゃ、ちょっとした縁起物だねえ!これから、どんどん良い事があって、たんまりとお金が入って来ますように!!」

 地鎮祭の祠に向かってパンパンと拍手を打った加代は、そのまま家へ帰った。その夜、キンキラキンのお屋敷で、小判に埋もれる夢を見る加代。だが、その翌朝、順之助が加代の住まいを訪れるや……。

順之助「おはようございます、おばさん……うわっ、何ですか!いつから掃除してないんですか!?」

 順之助が眉をしかめるのも当然……。加代の住まいは「蚕の糸」「蜘蛛の巣」のようなもので部屋中が被われ、部屋の真ん中には「赤と青の巨大な繭(但し、破れている)」がデ〜〜ンと!そして、ちゃぶ台に向かって、ショボ〜〜ンとなっていた加代は、何と「妖怪・金業(カネゴウ)」に変身していたのである!

秀「こりゃ、カネゴンじゃなくって、妖怪・カヨゴンだなあ〜〜!」

 裏の仕事の打ち合わせにやって来た秀も、妖怪・カネゴンに変身した加代を見て、笑い転げる!

加代「全く、人の事だと思って、好き放題に言うんじゃないよ」

 憤然となって言い返す加代だが、その姿が姿だけに、ちっとも怒っているようには見えない。呆れ返る順之助。笑ってからかう秀。更に訪れた勇次は、部屋の柱にもたれかかったまま、無表情に言う。

勇次「……で、どうするんだ?今度の仕事、おめえ、そのままの姿で行くつもりか?」



  (挿入ショット)
 「新仕事人・出陣のテーマ」に乗り、夜の江戸の町を行く仕事人−主水・秀・勇次・順之助……そして、妖怪・カネゴン!主水の剣が、材木問屋・安藤忠兵衛をたたっ斬り……秀の簪が、青頭巾の巨漢・安倍羅漢を仕留め……勇次の三味線糸が、赤鞘の用心棒・埴輪炎天を吊るす!そして、新・大江戸運動場「間八堂」建設の陰で、莫大な裏金を得ていた黒幕、前の作事奉行・大森喜十郎に迫るは……?

大森喜十郎「よ、寄るな、化け物……!金をやるから、あっちへ行けっ!!」

 でっぷりと肥え太った巨体を揺らして、妖怪カヨゴンならぬ、仕事人の加代から逃れようとする喜十郎!投げ付けられた小判に目もくれず、ずいずいずい…と迫ってくる加代!「わ、わしを食う気かあ〜〜!?」恐怖の表情を浮かべた喜十郎の眼前に迫る妖怪カネゴン!
 その瞬間、背後に現れた順之助のライデン瓶から、強烈な電撃が発せられた!行灯が倒れ、真っ暗になった部屋を、スパークする火花が赤く照らし出し……やがて、悪党の命の火と共に、ライデン瓶の火も消える。順之助がすばやく姿を消し、後に一人残った加代は、部屋に誰もいないのを確かめるや、周囲に散らばった悪党の小判を、遠慮会釈なくバクバクと食べ始めたのだった……。

秀「……そりゃ、いいや!おめえの考える事は最高だぜ、ははははっ!!あ〜〜腹が痛え〜〜!!!」

 順之助のトンデモない想像に、ひきつったように笑う秀が、腹を押さえて転げ回り、涙を流して畳を叩く!

加代「あのねえ……人を勝手な想像に登場させないでくれない?それじゃ、まるであたしが、お金の亡者みたいじゃない!?」
勇次「違うってのか?」
加代「……勇さんまで!」

 膨れっ面の加代を、何とか宥めようとする順之助は、知り合いの祈祷師に、詳しい事情を伏せたまま、何とか元の姿に戻してくれるように頼み込む。そして、数日後……。

すたすたの松坊主「分かりました……で、こちらが、妖怪・金業に取り憑かれたお方ですな?御厄払おう、厄落とし〜〜!すたすたや〜〜すたすたやあ〜〜!!」
加代「(そっと順之助に耳打ちし)こんな胡散臭い奴しかいなかったのかい?」
順之助「だって、こんな変わった厄払いをやってくれる人って、他にいなかったんですから」
松坊主「……胡散臭いとは何です?胡散臭いとは!?」

 きっとなって振り返った松坊主の目が釣り上がり、振り上げた右手の指がバキバキと音を立てる!鳴り響く「必殺仕置人」殺しのテーマ!そして、松坊主の指が、妖怪カヨゴン(……おい?)の首筋を捕らえようとする。……が、カヨゴンの首が太過ぎて、指が回らない!(笑)次の瞬間、松坊主がカッと目を見開く。

松坊主「……見えた!八丁堀同心に逆立ちをさせよ。さすれば、妖怪・金業は、この者から離れるであろう!」

主水「で……何か?俺が、捕り物でクソ忙しい真っ最中だってのに、そんな下らねえ用で呼び出したって訳か?」
加代「下らない用だって、酷いじゃない!あたしにとっちゃ、命に関わる大事件なのよ、八丁堀ぃ〜〜!」
順之助「僕からもお願いしますよ、おじさん!」

 松坊主の厄落とし(……と言うか、元に戻る為のレクチャー)の翌日。今度は、主水が加代の家の上がり框に腰を下ろしていた。主水に縋るようにして頼み込む加代と順之助。だが、主水は冷ややかだ……。

主水「大体だなあ、おめえがそんな姿になっちまったのも、いつも『金!金!』って言ってたせいじゃねえか?それを、世間様じゃ『自業自得』って言うんだ。それに何だと……?俺に逆立ちしてくれだと?……へっ!冗談も休み休みにしろよ。こちとら忙しいんだ。そんな戯れ言に関わってる暇なんかねえ!」

 迷惑極まりない顔付きのまま、憤然として出ていく主水!だが、捕り物の最中に、偶然土手から足を滑らし、結果的に「逆立ち状態」に主水がなってくれたお蔭で、夜の大川畑にたたずんでいた加代(=カネゴン)は、まるでロケットの如く、空中高くに舞い上がり、花火となって炸裂!かくして、妖怪・金業から解放された加代は、パラシュートのような布で以て、空中から舞い降りてきたのだった。
 それから数日後……。めでたく「人間体」に戻った加代と共に、今度こそ「大森喜十郎一味の仕置き」を成し遂げ、中村家へと戻ってきた主水だったが……そこで目にしたのは、妖怪・カネゴンに変身した、せんとりつだった!

主水「(うんざりした表情で)あなたたち、拾ったお金を届けずに、こっそり懐へ入れてしまったんでしょう?」

 主水の言葉に、恥ずかしそうに顔を押さえる妖怪・カネゴンこと、せんとりつであった(
♪ちゃちゃちゃん、ちゃららら、ちゃららららん……ちゃん!)。

 そして、ラストショットは、新・大江戸新運動場の建設地から、次々と現れる妖怪・カネゴンの群れ、群れ、群れ!(「ウルトラQ」オープニングテーマ)




【終わり?】




「 必殺仕置人7 」

《最終話》 史上最大の解散

《前編》
 数多くの悪党・外道を、次から次へと地獄送りにして来た仕置人・念仏の鉄!だが、果てる事なき死闘の連続は、いつしか鉄自身の体を蝕んでいたのである。……意識朦朧となる程の高熱!突然起こる眩暈!耐え難い手の震え!足を襲う激痛!
主水「鉄……いっぺん、医者に見て貰った方がいいんじゃねえか?」
正八「そうだよ〜〜。鉄っあんの体、どう見てもおかしいよ〜〜!」
巳代松「ここらで、ちょっと休んだ方がいいぜ!寅の会だったら、俺が代わりに行ってきてやるからさあ」
鉄「……てやんでえ!いちいち、余計な口出しするんじゃねえ!俺の体の事は、俺が一番よく知ってる……どうってこたあねえんだ!!」
 心配する主水や巳代松・正八たちの忠告にも、一切耳を傾けようとしない鉄!だが、それは、鉄の我がまま・意地っ張りだけではなかった。そこには、自らの命が尽きる寸前まで、裏の稼業を続けようとする「秘密」が隠されていたのだ……。

 そんな最中、江戸の裏稼業の支配を企む外道仕置人−幽霊の辰蔵(佐藤慶)は、虎の元締に対して、「俺たちに協力しねえんなら、寅の会の仕置人を皆殺しにするぜ!」と脅迫する。その脅しを実証するが如く、爆裂弾を抱いた鉄砲玉の自爆攻撃で、次々と抹殺されて行く仕置人たち!辰蔵に改造されて甦った超巨漢の怪物・坂東雲衛門(大前均)の手で、磔柱に縛り付けられた死神は、虎の目の前で惨死!「辰の会」への協力を拒否した虎自身も、偽・念仏の鉄(山崎努/二役)…上方から来た外道仕置人・百化け一味である…によって落命!そして、遂に巳代松までもが、敵に囚われの身となってしまう……。
 そして、辰蔵一味のアジトへ、たった一人で乗り込もうとする鉄の前に主水が現れる。
主水「……鉄。そんなボロボロの体で、いってえどうする気だ!」
鉄「どいてくれ、八丁堀……あの外道共を、これからブチ殺しに行くんだ……」
 よろけながらも、主水を押しのけて、前へ進もうとする鉄……。そんな鉄の両肩を、がっしりと鷲掴みにした主水が真剣な表情で言う!
主水「おめえの体は、まともじゃねえんだ……死んじまうぞ!」
鉄「俺にゃあ、どうしても行かなきゃならねえ……あいつらを、地獄送りにしなきゃならねえ『訳』があるんだよ!」
 向かい合ったまま、無言で対峙する主水と鉄……。やがて、がっくりとうな垂れた鉄が重い口を開く。
鉄「どうしても言わなきゃならねえか……実はな、八丁堀。俺は……本当は、鉄じゃねえんだ。この名前は……仮モンなんだよ!!」
 主水と鉄のバックが、煌く銀紗幕となり、ショッキングブリッジが鳴り響く!(続いて流れるクラシック音楽のメロディー)

主水「……やっぱりな」
鉄「八丁堀……おめえ!?」
主水「バカヤロ……!何年、俺がオメェと付き合ってると思ってんだ?昔のオメェは、鉄……良くも悪くも、もっと『人間離れした怪物』だったぜ!それが、久しぶりに会ったと思いきや、真っ当過ぎるほど真っ当な仕置人に……『人間臭い野郎』になってやがった。まあ、確かに殺しの技は、昔と同じだったがな……。髪の毛の形やら喋り方・歩き方、ちょっとした癖まで、同じようでどっか違うんだ!だいいち、俺が知ってる鉄だったらよ、あんな寅の会や死神にヘーコラしてる筈がねえ!とっくの昔にケツ捲くって、自分で頼み人見つけに行ってたぜ!それで、俺も分かったんだよ……『こいつぁ、鉄に似てるが鉄じゃねえ。別人なんだ』ってな!」
鉄「だったら、どうして……!?」
主水「……それを言わなかったってか?別人でも何でも、オメェは鉄に……俺が心底惚れ込んだ、『念仏の鉄』に違いはねえからさ……だろ?」
 「自分」が、本当は「鉄」ではないと知りながらも、それをおくびにも出さず、昔と同じように付き合ってきた主水に対し、「鉄」はただ項垂れるばかりだった……。
鉄「すまねえ、八丁堀!……実は、俺ぁ、『土左ヱ門』って言う……」
主水「おっと、そこから先は、俺も聞かねえ事にするぜ……!オメェが江戸を離れて、大坂にいた頃に巳代松と知り合ったてえ事からすると、何かその辺に事情がありそうだからな!今更、聞いたって仕方ねえこった!」

 鉄……いや、今まで「鉄」と自称していた男は、本当の名を「次郎」と言う、元・薩摩の密偵だった!容貌も体躯も、鉄と瓜二つだった次郎は、品川宿で「土左ヱ門」と名乗って、ある殺し屋グループに関わったのが縁で、裏稼業の世界に足を踏み入れ……そして、大坂で「本物の鉄」に出会ったのだ!


(挿入ショット)
  大坂のある安酒場で酒を酌み交わし、箸で茶碗を叩きまくって「……こりゃまた、サルマタ、ステテコパッチ!」と大騒ぎをしている「念仏の鉄(おなじみの丸坊主)」と「次郎(こちらは長髪にヒゲ)」!二人の顔を交互に見ては、目を白黒させる酒場の親父(春風亭柳朝)!

 成り行きから、鉄の影武者を演じる羽目になり……いつしか「殺しの技」=頚骨折りと背骨折りも体得した次郎は、もはや、余人には判別出来ない程、鉄と瓜二つになっていた!(それを、唯一見抜けたのが、他ならぬ主水だった)そして、ある時……依頼人に騙された鉄は、同じ仕置人の巳代松と「殺し合い」をさせられ、瀕死の重傷を負う!刻一刻と死に向かう鉄を前に、怒りに我を忘れた次郎は、巳代松を絶命寸前にまで追い込むが、それを押し止めたのも鉄だったのだ!
鉄「止めろ、次郎……!俺たちが殺らなきゃ…ならねえ…相手は……こいつじゃねえ。俺の偽モンをこしらえて……同士討ちをさせようとした……『幽友』てえ野郎だ……。そいつを……地獄に……叩き…落として……くれ!いいか、次郎……これからは、オメェが……」
 鉄の目が強烈に見開かれる
鉄「……念仏の鉄なんだ!」
 そう言い残して、仕置人−念仏の鉄は息絶えた。鉄の「男気」に心底惚れていた次郎は、その瞬間から「鉄の影武者」ではなく、「念仏の鉄」自身になったのだった!そして、「二人の鉄の秘密」を唯一知る巳代松は、二代目・念仏の鉄にとって、生涯分かちがたい「存在」となった……。

 それから、幾星霜経ったろうか……?江戸の裏稼業を支配下に収めようと図る外道仕置人−幽霊の辰蔵は、かつて「初代・念仏の鉄」を死に追いやった「幽友」の黒幕であり、虎を騙して殺害した「偽・念仏の鉄」こそ、鉄と巳代松を騙して、同士討ちにさせようとした張本人だったのだ!「鉄」にとって、寅の会乗っ取り云々は、所詮きっかけに過ぎなかった……。全ては、自分が心の底から惚れていた男−「念仏の鉄」の仇を討ち、数年来の因縁に決着をつける為、今一人の「念仏の鉄」は、自らの死を覚悟して、戦いに赴こうとしたのだ!
主水「……行くのか?」
 鉄の固い意志を感じ取った主水が、遂に道を譲って言う……。全身を襲う激痛を、微塵も感じさせない表情のまま答える鉄。
鉄「ああ……巳代松が危ないんでな!」
 ニコッと笑った鉄は、あまたの敵が待ち構える死闘の場へと、歩みを進めていった。背に、主水の熱い視線を感じながら……。


♪ ワンツー、スリーフォー。ワンツー、スリーフォー。レッツゴーーセブンーー!ワンツー、スリーフォー。ワンツー、スリーフォー。ヒッサツーーセブンーー!!アターック、ザ・テツスラッガーー。ファイターーセブンーー!シオキニンーーセブンーー!!


【後編へ続く!】



 《書け!必殺うらばなし》
◎「必殺仕事人III」 妖怪カネゴンになったのは加代
 この仕事人パロディーは、特撮ファンなら言うまでもないでしょうが、「ウルトラQ/カネゴンの繭」がモチーフになっており、以前冒頭だけ書いたパロディー「カヨゴンの繭」に、最近問題になった「新国立競技場」ネタを追加して、完成させました。
 妖怪絵師・水森岩燕は、江戸時代の妖怪絵師・鳥山石燕と、現代の妖怪絵師(笑)・水木しげるの組み合わせ。「墓場の順太郎」は、言うまでもなく、水木しげる氏の代表作「墓場(&ゲゲゲ)の鬼太郎」です!(笑)。構想のみあった創作−「順之助、妖怪になる」……順之助を追い回していた玉助が、主水たちをモデルにした《妖怪退治の物語》を書く……を、ここにはめ込みました。尚、「赤と青の繭」「安倍羅漢と埴輪炎天」は、最近取り壊された(前)国立競技場が舞台になっている「ウルトラマン/悪魔はふたたび」のアボラスとバニラが元ネタになってます。
 尚、水木しげるさんは、平成二十七年十一月三十日に亡くなられました。謹んでご冥福をお祈りしたいと思います……。

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