【劇団新演技座旗上公演】(1978年7月1日〜25日/大阪・中座)

「必殺仕置人」・・・私 中村主水です


必殺仕置人
【物 語】
 北町奉行・鳥居甲斐守の用人・土方左馬之介(天野新士)一味の悪行に巻き込まれ、操を奪われる志津(沢かをり)。それを助けようと駆けつけ、殺される夫の安田弥一郎(平井昌一)。左馬之介らは、安田夫婦の死を「夫婦心中」と誤魔化し、そ知らぬ顔をしていた。
 女房のりつ(白木万理)や、姑のせん(菅井きん)にも「種無しカボチャ」と罵られている、南町奉行所同心にして「闇の仕置人」−中村主水は、安田夫婦の仇を討つ為に、仲間の髪結いおこう雪代敬子)・亀吉(芦屋小雁)と共に、女房のりつを「囮」に使って、全員を斬り捨ててしまうのだった……。


《雑誌「演劇界」(昭和53年8月号)・
               舞台パンフレットの記述より再構成》



【解 説】


新演技座 「必殺」研究会・音羽屋の先達−山科想四郎さんから頂いた貴重な資料−「演劇界新聞」(昭和53年7月号)・「演劇界」(同8月号)&舞台パンフレットに記載されたデータによると、同舞台の公演日時は「昭和53年7月1日〜25日」。会場は、大阪・中座(1999年、閉館)。「劇団新演技座 旗揚公演」と題されているが、新演技座と言えば、左記の京都新聞(昭和52年12月15日)に、その経緯が記されている。
 昭和52年11月に、藤田氏が、それまで在籍していた「渡辺プロ」から独立し、藤田氏一人が座長で座員と言う、ミニマムな劇団を結成。客員ゲストは、野川由美子・芦屋雁之助・芦屋小雁の3人と言う事になっている。昭和53年1月に結成。「演劇界」に記載された、昭和53年7月の舞台が旗上公演だ。但し、公演のメインは、現代物の人情喜劇「ちりれんげ」(原作:藤本義一 脚本:逢坂勉 演出:山本禎男 出演:藤田まこと・林美智子・芦屋雁之助・芦屋小雁・白木万理・菅井きん、他)で、「必殺仕置人」は併演扱いとなっている。


    「仕置人」のストーリーに関して言うと;
(1)役名に「おこう」「亀吉」の名がある。
(2)あらすじが「必殺仕置屋稼業」#10/一筆啓上 姦計が見えた…と同じ。
 「仕置屋」#10…は、主水の同輩だった安田弥一郎夫婦が、土方左馬之介一味の陰謀で惨死!後に残された息子・小太郎の引き取り先に、主水が困り果て(子供の相手をした、印玄自身の屋根落ちが登場!(笑))、巡り巡って市松が世話を見る事に……。結局、主水自身が頼み人となり(仕置料の25両は、主水が妻のりつを、左馬之助の生贄に差し出すと言う「提案」に対するだ)、子授け地蔵にお百度参りをするりつを囮にして、巧妙なテクニックで一味を仕留める事となる。ほぼ全編に渡って「主水編」と言える内容だが……ラストシーンで、引き取った小太郎が竹櫛で蜘蛛を仕留める様を目撃し、市松は慄然!主水の「門前の小僧、習わぬ経を読む、だ!」の名台詞で、市松編に「化ける」傑作だ。

 だが……何と、この作品の舞台。掲載されたキャスト表によると、市松が出ない!印玄も出ない!沖氏は無理としても、代演で「市松」は登場しても良かったと思うのだが……。
 また、メインとなる舞台「ちりれんげ」には、芦屋雁之助氏が出演しているが、なぜか「必殺仕置人」の舞台には、雁之助氏の名前がない。同じ関西の喜劇人でありながら、主水シリーズの「顔」−藤田まこと氏と、「非・主水シリーズ」4作にレギュラー出演されている雁之助氏の「必殺シリーズ」での共演はほとんどなく、「商売人」#4と、映画・第一作の「必殺!」だけだ。映画で、雁之助氏と藤田氏は、絶妙の遣り取りを見せていたが、もし舞台でも共演されていたら、あんな雰囲気になっただろうか?

 更に驚いたのは、舞台パンフレットのストーリー他の描写で知ったのだが、髪結いのおこうが「仲間」なのは頷けるとして(TVと同様に、おこうの役目が「殺しの窓口担当」なのかどうかは不明)、亀吉が「(裏稼業の)仲間」と記されていた事だ!しかも、パンフレットを隅から隅までチェックしてみたのだが、亀吉がTVと同じく「主水の下っ引き」を務めているのかは、どこにも載っていなかった。もしかすると、「激闘編」#1の壱(とっぴん)の如く、《表》では「主水の下っ引き」、《裏》では「主水の裏稼業の仲間」として、悪党を仕置きしているのかも知れない。主水以外の殺しはパンフに書かれていないので、詳細は不明だが、もしかしたら小雁氏の「屋根落とし」が存在したかも?

 演劇界に載っていた観劇評によると、「藤田氏の独特な可笑しみがよく活かされていたが、TVでなじんでいない客には、筋立ての粗雑さが気がかりとなり続けたことだろう」と、かなり辛口だった。「新演技座」設立に深く関わられていた野川由美子さんの名前が、何故キャスト欄に載っていないのか?「演劇界」での記述を見た段階では、非常に不思議だったのだが……舞台パンフで、やっと納得が行った。同時期にTV出演が重なると言う不運があって、泣く泣く出演を断念されたそうである。



【スタッフ】
◎企画:朝日放送 ◎演出・脚本:竹内伸光 ◎美術:三木次郎 ◎音楽:加納光記
◎殺陣:萩清二 ◎効果:岩田勝治 ◎照明:本庄新

【キャスト】
◎中村主水:藤田まこと ◎りつ:白木万理 ◎せん:菅井きん
◎おこう:雪代敬子 ◎亀吉:芦屋小雁
◎安田弥一郎:平井昌一 ◎妻・志津:沢かをり ◎息子・小太郎:川中信宏
◎土方左馬之介:天野新士 ◎長崎屋重兵衛:松田明 ◎与力・佐々木:柳原久仁夫
◎同心・瀬川:百田正輝 ◎同・赤井:竹中延行 ◎同・沢田:萩清二 ……他。

【参考資料】
「演劇界新聞」(昭和53年7月号)/雑誌「演劇界」(昭和53年8月号)/舞台パンフレット


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