「うる星お仕置き人」


《OPナレーション》

諸星主水之介あたる 「……のさばる悪を何とする?」
面堂終乃進 「天の裁きを待ってられるか!」
藤波竜之介 「この世の正義なんて、当てにならねえんだよう!」
ラム 「闇に裁いて、お仕置きだっちゃあ〜〜!」
錯乱坊 「南無阿弥陀仏……」

《アヴァンタイトル》
 ……夜。番傘を手にした浪人者−紅眼鏡が、しとしとと降る小雨の中を歩いている。足元がよろめいているのを見ると、かなり酔っているようだ。楊枝代わりの柳の小枝を、歯の透き間に差し込んだまま、チッチッチッと音を立てている紅眼鏡。……と、そこへと虎縞柄の和傘を差した美女が近づいて来た(BGM:「仕置屋」〜市松I/沖雅也のテーマ)【イメージ・ナレーション:千葉繁】。
「おやあ〜〜?これはまた、ヒック!お美しいお方ですなあ〜〜!どうです、今夜一晩?……俺と一緒に、しっぽりと……」


(紅眼鏡の妄想ショット)
  美女と紅眼鏡、二人っきりの奥座敷……。「さあ、観念しろよ〜〜!」と凄んだ紅眼鏡が、美女の帯を一気に解くや、「あ〜〜れ〜〜!」と叫んだ美女が、駒のようにクルクルと回転する!


「……そうやって、今まで何人もの女を、あんたの毒牙にかけて来たんだっちゃね?」
「へっ……!?」
 一瞬、女に言われた事が理解出来なかった紅眼鏡。次の瞬間「何だとう〜〜!?」と怒り、抜刀しようとした……その時!
「あの世で、女たちに詫びるんだっちゃね!」
 和傘がくるりと翻り、その柄が紅眼鏡の体に触れた途端、強烈な電撃が迸った!
「……ぎゃああ〜〜〜!!」
 苦悶の余り、電撃傘の柄を掴む紅眼鏡!傘の虎縞の和紙が真っ赤になって、燃え上がり……やがて、男はゆっくりと地面に崩折れた。標的の顔を覗き込んだ女仕置人・ラムは、艶然と微笑むと、骨だけになった傘をしゅっと畳み、闇の中へ消えて行った……。


タイトル「うる星お仕置き人」  サブタイトル「あたるの浮気は成功するか?」



■ 必殺一刻長屋
 ここは、おなじみ南町奉行所……。与力の温泉様が、額に青筋を立てて怒っている!
「おい、諸星はどこ行ったあ〜〜!?」
「あ、諸星さんなら、市中見回りに行くとかで、先程出て行かれましたよ?」
「おのれえ、諸星ぃ〜〜!また、仕事をさぼりおったなあ〜〜!?」
 烈火の如く怒る温泉様を尻目に、南町定町廻り同心・諸星主水之介あたるは、未亡人のお響さんが大家を勤める「一刻長屋」へやって来た。勿論、その目的が、お響さんを口説く事にあるのは言うまでもない。
「どうだい、お響さん?タチの悪い店子に悩まされたりしてねえかい……?」
 十手を手に、二枚目気取りで言う主水。
「それはもう、お役人様……。皆さん、いい人たちばっかりですから」
 どう対応していいか分からず、困り顔のお響さんがそう言う間にも、一刻長屋からは浪人・五代、遊び人・四谷、芸者・朱美、扇子屋・一の瀬たちの顔が覗いている。皆、お響さんを口説こうとする主水に対して、興味津々(ただ一人、五代だけは敵対心の塊だ!)の様子だ。
「もし、何か困った事があったら、遠慮なく言うがいいぜ……。俺で出来ることなら、何なりと相談に乗ってやるからな!」
 ドンと胸を叩いて、いかにも「親切心溢れる役人」と言った雰囲気を見せる主水。思わず苦笑するお響さん。……と、突如空の彼方から、一人の美女が飛んできた。主水の自称・婚約者(それとも、押しかけ女房?)−常盤津の師匠・ラムだ!(BGM:「新・仕事人」〜闇夜に仕掛ける/殺しのテーマ ・M1)
「どわあ〜〜りん!また浮気だっちゃね〜〜!?許せないっちゃ〜〜!!」
「違う、こいつぁ違うんだ、ラム!……おわあ〜〜〜!ぎゃあ〜〜〜!!」
 言い訳虚しく、ラムの電撃で真っ黒焦げになった諸星主水之介あたるが、バタッと倒れる。その傍に突然現れた、謎の破戒僧−念仏の錯乱坊が合掌して曰く「……宿命(さだめ)ぢゃ!」ズタボロになった主水を、そのまま引きずっていくラム。
「さ、ダーリン、行くっちゃ……!友引神社で、さくら元締が待ってるっちゃよ!」


■ うる星仕置人大集合
 場面代わって、ここは友引神社……。神主(巫女兼任)のさくらが、竹ぼうきで静かに境内を掃いている。突然アップになる、さくらの鋭い眼差し!次の瞬間、竹ぼうきが宙を切り裂いて飛び、祠の側の大木に、カーンと音を立てて突き刺さった!(BGM:「仕掛人」〜 仕掛けて仕損じなし/OPテーマ・M32)
「……誰じゃっ!?」
「さすがは元締……。私がここにいたのが、よく分かりましたね」
 そう言って、祠の陰から現れたのは、二枚目ハンサムな若き武士・面堂終乃進。三鷹にある「面堂道場」の師範代(兼、次期後継者)だが、その裏の顔は……「闇の仕置人」だ。


《挿入シーン》
 ……夜。墓石が立ち並ぶ荒れ寺で、ヤクザ「角刈組」の親分が、長脇差しを手に様子を伺っている。
「俺様を相手に回すたあ、命知らずな野郎だぜ……。出てきやがれ!俺があの世へ送ってやる!」
「あの世へ行くのは……貴様だ!」
 次の瞬間、墓石の陰から姿を現した仕置人・面堂の神速の剣が、角刈りの体に炸裂した!
「あたたたたたたたた……!」
 静かに剣を収めた面堂が、くるりと身を翻す。
「人体の百八つの秘孔の一つ、血涙のツボを付いた……。お前は既に死んでいる!」
「何だとう……?」
 言われた事の意味が分からない角刈り親分が一歩踏み出した……その時!
「……ひ、ひでぶ〜〜〜!!!」
 体中の汗腺から、血を噴水の如く吹き出した角刈りが、真っ赤に染まって倒れる。面堂・究極の必殺技−「北斗神剣」だ!息絶えた標的にちらと目をやった面堂が、墓石の間に姿を消す……。


 面堂の顔を見たさくらが、大木に突き刺さった竹ぼうきに手を掛けた。
「当たり前じゃ。お主が発する、その女好きの気配……一丁先からでも読み取れるわ!」
「酷い言われようだなあ……。それだと、まるで僕が、あのあたると同じ人種みたいじゃないですか?」
 さくらの言葉に対して、異議ありと言いたそうな面堂。境内にある舞殿の階段に腰を下ろす。それを一瞥もせず、竹ぼうきをスポンと引き抜くさくら。
「……違うとでも言うのか?」
 やれやれと言った表情を浮かべた面堂、肩をすくめて……。
「ま、いいでしょう……それで、皆はどこに?」
「まだ、誰も来とらん。……お主が最初じゃ!裏の仕事だと言うに、待ち合わせの時刻に遅れてくるとは、一体何事じゃ!?」
「……俺ならここにいるぜ!」

 突然、さくらたちの頭上から声がしたかと思うと、数十メートルはありそうな御神木の先端から、一人の少年が、すたっと地上に降り立った!
「おい、ナレーション!黙って聞いてりゃ、出鱈目言いやがって!俺は、女だ〜〜!」
 登場人物から「抗議」が出たので、今一度言い直そう……「一人の美女」が、すたっと地上に降り立ったのである!
「おめえ、良く分かってるじゃねえか……!」
 一見すると、「少年」に見間違うべき美女(だが、その身なりは、どう見ても「男装」なのだが……いや、これは口が滑った!)が、上機嫌に言う。一杯呑み屋−「海が好き!」の茶屋娘・藤波竜之介だ。彼女も、また「闇の仕置人」のメンバーである。


《挿入シーン》
 太陽がぎらぎらと照りつける、夏の山中……。蝉の声がうるさく響く中、山刀を手にした電髪頭の野盗の頭が、杉木立の間を歩き回っている。眩い陽光にモンタージュショットで重なる、蝉・蝉・蝉!「あの男……どこ行きやがった!?」いきなり山刀を振るった電髪男が、 傍らの杉の木を斬り倒す!どーん!…と音を立てて倒れる杉の巨木!
「どいつもこいつも……俺は女だって、何度言やあ分かるんだあ〜〜!」(BGM:「仕掛人」〜荒野の果てに/インストルメンタル・M26)
 いきなり聞こえてきた言葉に、はっと顔を上げる電髪男!目に見えぬ殺気に縛られて、ぴくりとも動けない男の目に映ったのは、立ち並ぶ杉木立の天辺から、飛鳥の如く舞い降りてきた竜之介の姿だった!次の瞬間、振り上げた豪刀をかいくぐって、竜之介の手刀が首筋に炸裂した!頚骨を叩き折られた電髪男は、一撃で息絶えた!標的の死を確認した竜之介の姿が、静けさを取り戻した夏木立の中に消えて行く ……。


「後は叔父上と……あたる・ラムの三人か」
「……わしなら、先程からここにおるぞ?」
 いきなり、さくら・面堂・竜之介の間に顔を出す念仏の錯乱坊!ちゅど〜んと吹っ飛ぶ仕置人たち……!
「い、いつの間に……?それに……何をしとるんじゃ〜〜!」
 現れるや否や、いきなりお供え物の饅頭を食う錯乱坊を、さくらが締め上げる!素早く身をかわした錯乱坊、落ち着き払って……。
「わしの気配が読めぬとは、まだまだ修行が足らんのう、さくら……!」
 念仏の錯乱坊……友引神社の神主であるさくらの叔父にして、日本全国を自由気ままに放浪する、旅の破戒僧。だが、その真の姿は、悪党・外道を闇から闇へと葬る凄腕の仕置人なのだ!


《挿入シーン》
 ……祇園祭で賑わう京の街。夕涼みがてら、床机に腰を下ろしている、薔薇柄の浴衣の美女・えるに近づく黒き影!(BGM:「新・仕置人」〜仕置のテーマ・M39)ボキボキッと言う不気味な音が響き、降り上げられた「手」の影が障子に映る!……一際、高まる祇園囃子!町衆の歓声が次第に大きくなり、一瞬全てのざわめきが消えた瞬間、錯乱坊の右手が美女の胸を捕らえた!(挿入される「背骨折りのレントゲン映像」!)
 仰け反る美女の目が、大きく見開かれ……やがて、光を失った。そのまま、ゆっくりと崩れて行くえる……。未だ見開かれたままの女の瞼を、そっと閉ざしてやった錯乱坊が、静かに合掌して呟く。「……南無阿弥陀仏!」


「遅くなって、ごめんだっちゃ〜〜!!」
 あたるを引きずったラムが、ようやく現れた。人一倍女好きの昼行灯にして、南町奉行所定町廻り同心・諸星主水之介あたる。そして、彼の「押しかけ女房」−常盤津ラム(得物は「えれき三味線」だ)。彼らも、その正体は「晴らせぬ恨みを晴らし、許せぬ人でなしを消す」……闇の仕置人なのである。
「遅いぞ、諸星……!」
 面堂が、ちゃきっ!…と刀を鳴らして言う。「全くじゃ!」と眉間にしわを寄せたのは、元締のさくらだ。皆の背後で、一人シャドーボクシングに励む竜之介。尚も、饅頭食うのに余念がない錯乱坊。かくして、友引神社礼拝所の奥まった座敷に、六人の仕置人−元締・さく ら、念仏の錯乱坊、面堂終之進、藤波竜之介、常盤津ラム、諸星主水之介あたる……が集まった。
「先ずは、この前の仕置きの後金じゃ……」
 そう言って、仕置人たちの前へ、小判を滑らせて行くさくら。無言のまま手に取る仕置人たち。そんな中、主水が注文を付ける。
「ちょっと待った!仕置料の後金は、全員二両だった筈だが……なぜ、俺だけ半分なんだ?訳を聞かせて貰おうか!?」
 一枚の小判を手にしながら、主水が他の4人の仕置人たちを、厳しい表情で睨む!
「お主……わしが、何も知らぬと思うてか?情報屋のテンから、ちゃんと聞いておる!」

■ 謎の二枚目殺し屋登場!
 ここで場面は、上州藤岡の宿へと変わる……。悪辣なヤクザの親分・チビ神の辰五郎を狙う主水。だが、標的は屈強な4人の用心棒によって、四六時中守られていた……風呂も厠も寝る時も!(BGM:「仕置人」〜暗躍/M12)そして、主水の目の前で辰五郎を襲った刺客は、ボディーガード−コタツ猫スーパーフェニックスの張り手一発で、空の彼方へと消えた……。後の3人(3匹?)―コタツ猫ゼブラにコタツ猫ビッグボディ、それにコタツ猫ソルジャーを合わせた「コタツ猫軍団」は、正に鉄壁のバリアーだったのだ。チビ神組・玄関の縁の下に潜り込んで、機会を窺っていた主水にも、虚しく待つだけの時間が続いた……。
 そして、ある日、主水が隠れている縁の下へ、一味の情報屋のテンがヒョコヒョコと入ってきた。
「これ、ラムちゃんからの差し入れやで〜〜!」
 そう言って、握り飯の包みを差し出すテン。
「おう、さすがはラムだ……気が利くじゃねえか。ちょうど、腹が減ってたところだぜ!」
 包みを開けるや否や、握り飯にかぶり付く主水!全部平らげた主水は、大きなゲップを発した後、小声でテンに耳打ちした。
「……て、ラムに伝えてくれねえか?」
「うん、分かった!そない、ラムちゃんに言うとくわ〜〜」

 そして、一日が過ぎた。いつもの如く、屈強なコタツ猫軍団に守られて、往来に出る辰五郎親分。……と、その前に、一台の宅急便が、キキーッと音を立てて停車した。
「ちわ〜〜す。頼まれたもの、お届けにあがりやしたあ〜〜!」
 運転手が差し出した伝票を手にした、辰五郎の女房が困惑する……。
「こんなもん、あたしんとこで頼んじゃいないよ?」
「……おかしいなあ?時間指定でキチンと、ここに届けてくれって、頼まれたんですけどねえ?」
 チビ神一家の玄関先に、大きなダンボール箱がドンと置かれた……その時!
「今だあ〜〜!じゃりテン〜〜〜!!」
 縁の下から主水が叫んだ瞬間、あらかじめ宅急便のトラックに隠れていたテンが飛び出すや、ダンボール箱に向かって火を吹いた!綿密な計算によって調整された火力は、中の商品には傷一つ付ける事なく、外側のダンボールだけを消失させる。その中から、姿を現したのは……大型のホームコタツだった!(BGM:「仕置屋」〜仕置/殺しのテーマ)

 上州名物・からっ風が、藤岡宿を冷気と共に駆け抜ける!次の瞬間、己の「本能」に負けたコタツ猫軍団は、命を賭けて守るべき相手−辰五郎親分を放り出し、コタツの中へ飛び込んだ!電光石火、縁の下から飛び出した主水は、瞬時に抜刀!全くの無防備となった辰五郎に向けて、奥山神影流・必殺の太刀を放った!だが、それと全く同時に、屋根の上から一人の男が飛鳥の如く舞い降り、辰五郎の首筋に、岩をも砕く一撃を見舞った!主水と、もう一人の「二枚目殺し屋」の同時攻撃で、難敵・チビ神の辰五郎は、その命を断たれたのだった……。次の瞬間、主水は、謎の男−中国服の早乙女乱馬に向かって、剣を構えた!乱馬も、無言で必殺の構えを取る!

 ……ばしゃ!
「あら?水を掛けちまったかい?……すまないねえ」
 打ち水をしていた老婆が、誤って乱馬に水を掛けてしまったのだ!忽ちにして「美女(=らんま)」に変身する早乙女乱馬!途端に、主水の表情が変わった……。
「……ねえ、君い〜〜!名前、何て言うの〜〜?メルアド、教えてくんない〜〜!?」

 ……ぐしゃ!
 らんま怒りの一撃が、主水の顔面に炸裂!そのまま、気を失って倒れる諸星主水之介だった……。

「あれから、気ぃ失ってる、このアホ連れて逃げるの、ホンマに大変やったんやでえ!……なあ、ラムちゃ〜〜ん」
「全くだっちゃ……。だから、目が離せないんだっちゃ!」
 そう言って、あたるを睨むラムと情報屋テン。
「……と言う次第じゃ。結局お主は、その謎の殺し屋と二人掛かりで、標的を始末したようなものじゃ。後の不始末も考えると、後金が一両でも多いくらいじゃぞ!」
 さくら元締の言葉に、他の仕置人たちも大きく頷く。一言も言い返せないあたるは、口をへの字に曲げるばかりだった。
「それで、元締……次の仕事は?」
 その場の気まずい雰囲気を、何とか変えようとして言う面堂終之進。
「次の仕事は、ない!……と言うか、作者の《都の商売人》が、これから先の展開を、まだ考えとらんのじゃ!」
「全く……無責任なヤローだぜ!」と罵る藤波竜之介。
 黒子姿の作者(顔の部分に「都」と書いてある)が、仕置人たちの前で平身低頭、へこへこと頭を下げる。かくして、闇の集いはお開き となり、仕置人たちは三々五々解散して行った……。

■ 江戸の空に「×××」が飛ぶ
 ……それは、殺しのない日。仕置人たちの「心」が休まる、ほんのひと時……。

◎ 南町奉行所
「……諸星ぃ〜〜!諸星はどこだあ〜〜!?」
 いつもの如く怒鳴りまくる与力・温泉!その隣では、筆頭同心・花和がヒステリックに嘆いている……。
「諸星さん、また市中見回りとか何とか言って、お仕事サボってるんですね、キ〜〜〜ッ!!」
 いつもの如く、いつものように南町奉行所を抜け出した主水。花和様が指摘する通り、市中見回りとは名ばかり……帰宅時刻までの暇潰しタイムだ。そして、ふと足を向けた友引神社で、主水は神主(兼巫女)のさくらが、本殿の廊下を忙しそうに走り回っているのを目にした。

◎ 友引神社
 あっちへバタバタ、こっちへバタバタ……。その度に、衣装を変え、御幣を持ち、お神酒を運ぶさくら!(BGM:「仕事人V」〜二人でも姦し!/M32)……いつの間にか、西洋の陰陽師スタイルのつばめ(さくらの婚約者である)が、その後ろを同じように走っている。 ……突然、さくらが立ち止まる。
「……何をしている?」
「いや〜〜、バタバタ走り回ってるから、何してるのかな〜〜?…と思ってさ〜〜!」
 能天気極まりない表情で言うつばめに、「今は忙しいんじゃ!用なら、後にせい!」と言い捨てて、またもや走り出すさくら!忙しげに三宝を運ぶさくらの後を、つばめが……そして、今度は主水までが追いかける!
「お主ら、いい加減にせんか〜〜!?」
 怒ったさくらが、二人に向かって怒鳴る!
「今日は、犬夜叉とかごめの婚儀を行うので、朝からてんてこ舞いなんじゃ!何しろ、本編では祝言を挙げられなかった二人じゃからのう ……」
 三々九度の杯の乗った三宝を見つめて、しみじみと言うさくら……。


(挿入ショット)
 ……白無垢の花嫁姿のかごめと、紋付羽織袴姿の犬夜叉が、友引神社の座敷に静かに座っている。その周囲に居並んでいるのは、弥勒・珊瑚・雲母・琥珀・七宝・楓・冥加・刀々斎と言った、かごめと夜叉丸に縁深い面々だ!(その中に、殺生丸の姿はなかった)皆、和やかに談笑している中、犬夜叉だけが緊張の余り、カチンコチンになっている……。


「結婚と言うのは、本当に素晴らしいものだね!僕たちの時はどうしようか、さくら……?」
 さくらの肩に手を回して言うつばめを、きっと睨むさくら!
「忙しいと言うとるのが……分からんのかあ〜〜!」
 さくらの蹴りが、つばめに炸裂!「あ〜れ〜〜!」と一言叫んで、空に飛んで行くつばめ……。振り返ったさくらが、主水の方を向く。
「お主もじゃ、諸星……!わしの後を追い掛け回すより、ラムの後を追っかけたらどうなんじゃ!」
 突如二枚目チックに変貌した主水が、キザったらしく言う。
「さくらさん、それは違う……。俺がラムを追いかけたんじゃ、意味がないんだ。ラムが俺を追いかける……でもって、俺がラムから逃げる。それが、いいんじゃないか!だから……さくらさん、ねっ?」
 今度は、主水がさくらの肩に手を回す。苛立ったさくら、遂にブチ切れて……!
「ええい、どいつもこいつも……女の尻を追っかける事しかできんのかあ〜〜!?」
 さくら、渾身の蹴りが主水に炸裂!今度は、主水が「あ〜〜れ〜〜!」と叫んで、空の彼方へ飛んで行く……。

◎ 観音長屋
 ここは、常盤津師匠・ラムが住んでいる観音長屋だ。今しも、3人の弟子−じんじゃあ・ぺっぱあ・しゅがあを前にして、粋に着物を着こなしたラムが、ちちんとてしゃん!…と三味線を奏でている。「3人とも、分かったっちゃ?」と問うや、は〜〜い!と言う返事が返って来た。
「じゃあ、今日のお稽古は、いつものように『六番』で締めるっちゃね」
 ラムが、三味線とアンプをコードで繋ぐ。ピックを手につま弾いた……途端、ズズ〜〜ン!と言う重低音が、観音長屋全域に響き渡った!土壁が揺れ、屋根瓦が波打ち、地面が震動する!ラム十八番−えれき三味線による「六番(ロック)」の演奏だ!「やかましい〜〜!」 「静かにせんかい〜〜!」と言う、観音長屋の住民たちの苦情も、平気の平左。それもその筈……ラムも3人の弟子たちも、しっかり「耳栓」をしているのである。最後に、ジャ〜〜ン!…とラムが締めるや、耳栓を外した弟子たちが、やんやの拍手を送る!同じ様に耳栓を外したラムが「何だっちゃ……?」と空を仰いだ。それは、さくらに蹴られて、空を飛んでいる主水の「あ〜〜れ〜〜!」と言う叫び声だっ た……。

◎ 一杯呑み屋「海が好き!」
「……親父ぃ〜〜!ヤキソバ十人前、出来上がったぜ〜〜!」
「うむ……いつもながら、見事な早業じゃな、竜之介〜〜!」
 ……ここは、江戸の街のど真ん中にある、一杯呑み屋「海が好き!」だ。だが、お品書きに載っているのは、ヤキソバにカレーライス・かき氷……と、ほとんど「浜茶屋」メニューである。巨大な鉄板相手に、一度に十人前のヤキソバを拵えていたのは、胸にサラシを巻いた藤波竜之介だ。それを皿に盛っては、お客の元へ運ぶ父親を横目に、ふーっと一息付いた竜之介が、体中の汗を拭く!そこへ入って来たのは、芝居小屋・中村座の女芸人・しのぶだ。


(挿入ショット)
「お、と、こ、な、ん、てぇ〜〜〜!!」
 人が乗った床机を両手で持ち上げ……そのまま、軽々とお手玉する怪力女・しのぶ!


「竜之介クン……この前言ってた『平安貴族・十二単の夕べ』の催し。案内書が手に入ったわよ」
「……ホントか、しのぶ!?」
 父親に気づかれぬよう、小声でしのぶに話しかける竜之介!頷いたしのぶが、そっと取り出した案内書には、『あなたも十二単を着て、平安貴族に変身してみませんか?』とあった。それを目にした途端、竜之介の様子が一変する!
「じゅ、じゅうに、ひとええ〜〜!」
 目をギラギラ輝かせて、案内書を食い入るように見つめる竜之介!普段から、父に「男のなり」を強要されている竜之介にとって、「十二単」と言うのは、夢にまで見た願望だった!
「……いけませんな、お嬢さん。うちの竜之介に、このような物を見せられては……!」
 二人の間に、突如顔を出す竜之介の父!ビックリして、思わず仰け反る竜之介としのぶ!顔面を巨大化させた父が、涙をドバドバ流しながら、ドーン!…と竜之介に迫る!
「父は、父は悲しいぞ、竜之介え〜〜!一人『息子』のお前が、女装なんぞに興味を持っておったとわあ〜〜!!」
「……何が『女装』だ〜〜!俺は、女だあ〜〜〜!!」
 竜之介のジェット・アッパーが炸裂!ひゅーっと、宙に吹っ飛んでいく竜之介の父!……だが、突如地響きが沸き起こったかと思うと、江戸の街に巨大な津波が押し寄せた!波頭の先頭で一心に走っているのは、竜之介の父だ!
「……海が……海が好き〜〜!」

♪ぽーにょ、ぽにょぽにょ、さかなのこ〜〜。青い、海から、やってきた〜〜。

 ……どっぱあ〜〜ん!押し寄せた津波で、一杯呑み屋「海が好き!」の客は、しのぶ共々店の外へと押し流されてしまった。
「訳の分からねえ……不条理な技、使いやがってえ〜〜!」
 怒りでわなわなと震える竜之介を尻目に、上機嫌の父が、懐からチケットを2枚取り出す。
「あんな、つまらぬものより……ほれ!今、富士見座でやっとるお芝居の前売券じゃ。『瀬戸内少年海賊団・ひとつながりの秘宝』……やっぱり、海の男は最高じゃぞ、竜之介〜〜!(店の中を見回して)なぜか、いきなり、一人も客が居らぬようになってしまったからな。今日は、これで店仕舞いにして芝居見物じゃ!」
「嫌だあ〜〜!俺は……俺は、『海賊王』なんかになりたかねえ〜〜!」
 抵抗する竜之介を、無理矢理引きずっていく父。……と、二人が空を見上げる。そこには、尚も「あ〜〜れ〜〜!」と叫びつつ、空を飛んで行くあたるの姿があった……。

◎ 面堂道場
 ……ここは、三鷹にある面堂道場。折しも、師範代の面堂終之進が、高弟の照井(テリーマン)・太麺(ラーメンマン)・井草(ウォーズマン)・卍(ブロッケンJr)・大神(ウルフマン)・亀井(ロビンマスク)の六人を、同時に相手にしている……。
「への突っ張りなんぞ要らぬ!……さあ、かかって来い!」
 次の瞬間、全く同時に立ち向かってきた6人の高弟たちを、面堂は電光石火叩きのめした!
「……ま、参りました!」
 一瞬にして、竹刀を打ち落とされ、面を……胴を……小手を……そして、喉元に技を決められた6人が、這いつくばって負けを認める。
「よし……今日の稽古は、これまで!」

 厳しい稽古が終わると、今度はひと時の安らぎ……。防具を脱いだ7人の男たちの元へ、体にピッタリとフィットした、ボディーコンシャスな鎧を身に着けた美女が、お茶を運んできた。
「皆さん、どうぞ……」「おお、これは、いつもすみませぬなあ〜〜!」
 面堂の婚約者・水乃小路ユリア。面堂家のライバル道場ー「南斗聖剣」を司る、水乃小路家の娘である。……と、その背後で、お茶菓子を持ってきたり、面堂たちの防具を片付けたりと、忙しげに走り回っている「男」の姿があった。
「……何ですか、あれは?」と尋ねる卍。
「ああ……あいつか!あいつは、妹の了子のとこの黒子で、『都』って名の祐筆(書記係)なんだが……(声を潜め)実は、"この物語"の作者なんだ。なかなか『話』が進まないんで、 そのお詫びに下働きをさせてほしいって、自分から言って来たんだ。まあ、いい小間使いだな!」
 面堂たちの会話が聞こえたのか、竹刀を片付ける手を止めて、へこへこと頭を下げる黒子……。と、面堂道場の上を、何かが飛んで行く 音が聞こえた!
「……ん、何だ?」
 道場の庭先に出た面堂が目にしたのは、「あ〜〜れ〜〜!」と叫びながら、しつこく空を飛んで行く主水の姿だった……。

◎ 廃屋
 ……荒れ果てた廃屋。放浪の破戒僧−念仏の錯乱坊が、一人ぐつぐつと鍋を煮ている。盗賊に襲われ、一家全員皆殺しにあった事から、幽霊が出ると噂され、今や誰一人寄り付かなくなった旗本・伊園家の屋敷だ。だが……その実、伊園一族は、錯乱坊たち仕置人の手によって、壊滅したのだった!「何年経っても、年取らない」「みんな、異様に頭がでかい」と巷で噂され、悪行非道の限りを尽くしてきた旗本・伊園波右衛門一党(ちなみに、伊園家の家紋は「月に毛が一本!」。兄の伊園海右衛門は「月に毛が二本!」だった)。彼らに泣かされた者たちは、数限りなく存在した……。そして、遂に闇の裁きが、彼らを地獄へと送ったのである!


(挿入ショット:実写版)
「おのれえ〜〜!よくも、わしの娘や婿らを、手に掛けてくれたなあ〜〜!?」
 太刀を抜き放った悪旗本・伊園波右衛門(演:大前均/声:永井一郎)が、念仏の錯乱坊(演:山崎努/声:永井一郎)を睨みつける!「てめえも、これから行くんだよ……地獄へな!」そう不敵に呟いた錯乱坊の右手が、ゆっくりと上がる……。バキバキッと響く音!(BGM:「仕置人」〜仕置きのテーマ/M15)
 次の瞬間、凄まじいスピードで振り下ろされる波右衛門の太刀をかいくぐって、錯乱坊の頚骨折りが標的の喉元に炸裂!(挿入される「頚骨折り」のレントゲン映像)一声大きく叫んだ波右衛門が、地響きを上げて床に倒れる!


 自らの手で屠った標的に、遥かな想いを寄せた念仏の錯乱坊が「南無阿弥陀仏……」と呟く(BGM:「仕置人」〜闇に裁く/OPテーマ・M29)。その背後で、ギシッと言う音が響き、一人の男の影が射した。アップになる錯乱坊の厳しい目!次の瞬間、飛鳥の如く飛来した影が、錯乱坊に向かって、必殺の一撃を発した!全く同時に、謎の影に向かって、必殺の背骨折りを見舞う錯乱坊!相討ちか!?……そう思われた瞬間、錯乱坊と謎の男ー無差別格闘流宗家・八宝菜が、同時にニヤリと笑う。
「……腕を上げたな?」「お主もな……!」
 何と、八宝菜が見舞った「心臓つぶし」は、錯乱坊の左手で阻止され……錯乱坊が見舞った「背骨折り」は、八宝菜の左手で阻止されていたのだ!ワハハと、和やかに笑い合う二人の仕置人。だが、心の中では、全く違う事を考えていた……。
『全く……油断も隙もありゃせんわい!』
『今度会ったら、必ず仕留めちゃる……!』
 そんな想いを全く口に出す事なく、錯乱坊と八宝菜が、鍋を挟んで向かい合う。
「どうじゃ……鍋でも食わんか?」「うむ、頂くとするか……」

 秋の七草と赤犬の肉を煮たゲテモノ鍋を、美味そうに食する錯乱坊と八宝菜……。鍋が空っぽになった所で、八宝菜が切り出す。
「念仏の……お主に聞きたい事がある。近頃江戸に、おかしな奴らがやって来なんだか?」
「おかしな……奴ら?"うる星やつら"なら知っとるが……」
「そうか。実はな……わしは、この間まで、『裏の仕事』で上方に出かけとったんじゃが、あちらで奇妙な噂話を耳にしたんじゃ。何でも、一文銭だか六文銭だか良くは分からぬのだが、お江戸の裏稼業を狙っとる一味がおるらしい」
「……何じゃと!?そんな話は初耳じゃぞ!」
「あれが、ただの噂ならいいんじゃが……。念仏の……くれぐれも気をつけてくれよ!」
「うむ……おぬしの忠告、ありがたく承っておこう」
 そう呟いた錯乱坊が、ふと上を見上げるや、空になった鍋を脇に除けた。八宝菜も、それまで座っていた場所から、一歩下がる。その途端、廃屋の天井を突き破って、さくらに蹴り飛ばされた主水が、ドッカ〜〜ンと床板に激突!もうもうたる埃が舞い上がる中、白目を向いて気絶している主水に向かって、合掌した錯乱坊が一言呟く……「宿命(さだめ)ぢゃ!」

■ おんな殺し
「ね〜〜え、旦那……じゃなかった、先生〜〜!次の仕置人狩りの日、あたしに教えてくれない〜〜?」
「うぬぬ、ラン……。幾ら、お前の頼みとは言えど、それを口にするのは、わしも些か憚られるのじゃ!」
 南町奉行所筆頭同心・花和様配下の岡っ引きで、かつ街の「"顔"役」CAO−2の、巨大で平べったい体に、寄り添うように甘えているのは、出会い茶屋「爛爛(ランラン)」の若女将・ランだ。お上との繋がりが大事な「岡っ引き業」とは別に、全国チェーンの寺子屋「駿河台」の経営者(兼名物教師)でもあるCAO−2にとって、ランはかつての教え子だった(ちなみに、ラムやお雪・弁天も同窓生である)。そして、爛爛の女将であるランにも「裏」の顔があった……そう、仕置人の元締である。
 奉行所が、時折抜き打ちで行う「仕置人狩り」の情報を、何とか事前に得ようとしたランは、近々同窓会を開くから…と騙し、豪勢な料理と酒で接待した上、自らの色気で籠絡しようとしていたのだった。くいと引っ掛けた日本酒で、ほんのり桜色に染まった肌が、襟の袂から僅かに覗く……。しな垂れかかったランの着物の裾が乱れ、すらりとした脚が露わになった!ガチガチの「堅物」として名高いCAO−2は、思わずランの色気にクラッとなりかかったが、次の瞬間己の両手両足を引っ込め、ジェット噴射で宙に浮かび上がった!
「すまぬ、ラン……。この借りは、いつか必ず返すからなぁ〜〜!」
 グワッシャアアア〜〜〜〜ン!

 爛爛の奥座敷の障子戸をぶち破って、雲を霞と遁走するCAO−2!あっけに取られたランが、それまでの「ブリっ子言葉」もどこへやら?……江戸弁丸出しのべらんめえ口調で、逃げ出したCAO−2を罵る!
「あんの野郎〜〜!これだけ接待してやったのに、肝心要の事は言わず仕舞いかよう〜〜!?あたいの、この色気に参らねえなんて、どっかおかしいんじゃねえか?畜生〜〜!!」
 振られた(?)憂さ晴らしで、立て続けに杯を煽るラン!だが、CAO−2との激突で粉々に砕かれた障子戸に、「一つの影」が映ったのに、ランは気づいていなかった……。

 ……それから、暫くの後、ラン特製の巨大おにぎりを二個、両手に持った牛鬼レイが、「ラン〜〜!」と上機嫌で入ってきた!だが、部屋にいる筈のランの返事がない。
「……ぶも?」
 首を捻ったレイが、座敷の奥を覗き込むや……そこには、仕込み太刀を半分抜きかけたまま、朱に染まって倒れているランの姿があった!ピクリとも動かないランを目にしたレイが、その頬をぺちぺちと叩く。だが、ランは空ろに目を見開いたまま、何の反応も見せない。ひょうきんな「真ん丸牛鬼」から「二枚目ハンサムの人間体」へ戻ったレイの手から、おにぎりがコロリと落ちる……。息絶えたランを見つめたレイが、じっと無言のまま立ち尽くす。その瞳から零れた涙が、ランの頬を濡らし、虚しく流れ落ちた……。微かに震えるレイの体!その時、彼の背後から声が掛かった(BGM:「新・仕事人」〜散華/M12)。
「ほう……ケダモノでも涙を流すか?」

 レイは全く気づいていなかったが……座敷の壁には、巨大な刀を持った「一人の男」(その顔は、巨大な太刀の陰になって見えない!)が寄り掛かっており、まるでレイを嘲笑するかの如く、言葉を発したのだ!「謎の男」の言葉を耳にしたレイが、ゆっくりと……超スローモーションで振り向く。そして、完全に振り向いた瞬間、ハンサムな二枚目青年だったレイは「恐るべき巨大な野獣」へと変身した!グギャア〜〜!…と言う叫び声を上げて、男に襲いかかる野獣・レイ!(その瞳から、空中へと流れる「涙」の大アップ……!)
 だが、謎の男が、巨大な太刀を一閃するや、レイは真っ向唐竹割りに斬り倒されてしまった!部屋中に飛び散るレイの血飛沫!地響きを立てて倒れたレイを目にした男は、「これで二人……」と小声で言うや、静かに微笑みながら部屋を出て行った。後に残された、血まみれのレイの姿が、再び人間体へと戻る……。
「…ラ、ラン……」
 切れ切れに呟きながら、畳の上を這うレイの手がランへと伸ばされ……僅かに震えたかと思うと、そのままぱたりと落ちた。レイの手は、遂にランに届かなかったのだ!爛爛の奥座敷、血潮にまみれたランとレイの姿が夕闇に閉ざされ、フェイドアウトとなる……。

■ ラムはあたるの愛で立ち直れるか?
 ……場面は変わる。ガシャ〜ン!と音を立てて、突然閉ざされる番屋の格子戸!中に放り込まれたのは、何とラムだ!格子を掴んで絶叫するラム!(BGM:「助け人」〜断たれた願いII/M7)
「何でだっちゃ〜〜!?うちが、うちが……ランちゃんを殺すなんて……そんなの、ありえないっちゃあ〜〜!!」
 涙をぼろぼろ流しながら、必死に訴えるラム!だが、与力の温泉様は、そんなラムを睨みつけて無常に言い放つ。
「ええい、口から出任せを言うのも、いい加減にせい〜〜!ランの殺害推定時刻の僅かばかり前に、お主とランが言い争いをしておる現場を目撃した者が居るのだ!それに……お主とランは、普段から仲が悪かったそうではないか?」
「そ、それは……あれは、ただの口喧嘩だっちゃ……。お願いだから、信じてほしいっちゃ!うちは、絶対にやってないっちゃあ〜〜!」
「……言い訳無用!」

 ラムの言葉を全く聞こうとしない与力・温泉が出て行くのと入れ違いに現れたのは、諸星主水之介あたるだ!周囲に誰もいないのを見計らってから、牢内のラムに静かに語りかける主水……。
「ダーリン!うちは本当に……」
「しっ……!今はダメだ。あの温泉の野郎に何を言おうが、まともに聞いてくれる訳がねえ……。俺が事の次第を調べて、必ずおめえを牢から出してやる。だから、それまで……頼む!何も言わずに、辛抱してくれ!」
 ラムに向かい、頭を下げるあたる。その表情はいつになく真剣だった!
「分かったっちゃ……ダーリンがそう言うなら、うち、黙ってここにいるっちゃ。でも、もしランちゃんを殺した犯人が分かったら、真っ先にうちに知らせてほしいっちゃ!その時は、その時は……うちが……」
 ラムの体が、怒りで青白く火花を散らし始める!
「……うちが、ランちゃんの仇を討つっちゃあ〜〜!!」
 バリバリバリ〜〜!!
「ぎゃあ〜〜!!」
 ラムの怒りの電撃に巻き込まれたあたるは、真っ黒焦げになるのであった……。

■ 元締無用
 ……ここは、江戸の何処かのお堂。折しも、江戸の仕置人たちの元締が一堂に会する「寅の会」が開かれていた(BGM:「新・仕置人」〜寅の会/M22 藤田まことテーマ)。
 主水たちの仕置人グループの元締・さくらの他、烏天狗のクラマ、異人の仕置人−博奕王キング、必殺立ち喰い人−ケツネコロッケのお銀、「暗闇王子」こと地底のプリンス、 必殺営業人−スーパーデリシャス遊星ゴールデンスペシャルリザーブゴージャスアフターケアーキッド28号、元・面堂家配下のお庭番だった「電気密林の王者」―真吾(ラムの遠い親戚でもある)、座したままで標的を始末する「暗殺茶道」の後継者−大文字煎太郎、南斗聖剣の伝承者・水乃小路飛麿(ちなみに、妹のユリアは面堂終乃進の婚約者だ)…… と、凄腕の仕置人ばかりである(ちなみに、無差別格闘流宗家の八宝菜は、錯乱坊に振る舞われたゲテモノ鍋で食中毒を起こした為、やむなく寅の会を欠席した。錯乱坊曰く「お主も、まだまだ修行が足らんのう!」)
 そして、その上座に、どっかと腰を下ろしているのは、誰あろう……江戸を裏から支配する「寅の会」の元締。黄色地に黒の縞模様を彩った「虎模様」のツナギスタイルの、ラムの父だ!その横には、「死神」ことラムの母が控えている。「お約束」として、一言も喋らない虎の元締に代わり、死神(ラムの母)が仕置人たちに向かい、言葉を発する。

「……%&☆◎+〜<・#)$/*;?」
 それを、もう一度「翻訳する」虎の元締。
「つまり、言いたいのは……どこのド畜生が、わいの可愛いラムを罠に填めよったんやあ〜〜!?……ちゅうこっちゃ」
 元締の言葉に頷いた死神、更に話し出す。
「=>¥:&(X"÷@々…\♂℃≠〜〜!」
「見つけ出したら、ただでは済まさへんどお〜〜!……と、こう言う事や」
「虎の元締……」
 堪忍袋の緒が切れそうなさくらが、ギリギリと歯を噛み締めながら、静かに言う。何事か?―とでも言いたそうに、さくらの方を向く虎の元締と死神。
「……お主ら、いい加減にせい!言いたい事があるんなら、いちいち翻訳なんぞせんと、自分の口で言うたら、どうなんじゃあ〜〜!?」
 さくらの罵声に、「成る程!」とでも言いたげに、ポンと手を打った虎の元締の形相が、悪鬼羅刹の化身の如く変化した!
「つまりやあ〜〜!どこの誰か分からん奴が、寅の会の仕置人やったランを殺害して、その罪をラムになすり付けよった訳やあ〜〜!!」
 ラムが与力の温泉に捕縛されたのは、必ずしも「謎の刺客」の意図したところではなかったのだが、そんな事は知らないラムの父は、全てが「陰謀」だと思い込んだのである。
「うちのムコ殿の言う事には、ランは"仕置人"として殺された可能性が高いちゅうこっちゃ……。その事を知っとるのは、裏稼業のモンだけや。そやさかい、ラムを罠に填めよった奴も、裏の稼業に属する奴や言う事や!この中にいる誰かが……」
 虎の元締が、鷹のように鋭い表情で、列席している仕置人たちを睨みつける!
「……事件の下手人ちゅうこっちゃ!……誰や?誰がやったんやあ〜〜!?」
 憤怒極まって、思わず虎の元締が立ち上がった……その瞬間!お堂の中の灯りが一斉に消え、周囲は闇に包まれた!

「……ぎゃあっ!」「うわっ……!」「ひい〜〜っ!」
 突然、闇の中に仕置人たちの悲鳴が響き渡った!……音もなく煌く鋭い刃が、漆黒の闇を切り裂き、暗黒を血に染める!(BGM:「必殺4」〜大殺陣)
「くそう〜〜!」
 地底のプリンスが振り下ろした「ツルハシ」の一撃は、物の見事に一刀両断され、返り討ちに!ケツネコロッケのお銀が放った「銀の箸」は、空中で弾き飛ばされた!電気密林の王者−真吾が両手から発した「電撃」で、「巨大な太刀を持った謎の男」の姿が、一瞬闇の中に浮かび上がる!だが、次の瞬間、斬り倒された真吾は倒れた……。謎の刺客によって、次々と倒されていく仕置人たち!
「……そちの負けじゃ!」
 縁を鋭く尖らせた「西洋歌留多(トランプ)」を、雨霰の如く飛ばしてくるキング!だが、太刀の剣風によって発生した「空間の透き間」へ、何百枚と言う殺し札と一緒に、キングは吸い込まれてしまった!
「何者だ、貴様あ〜〜!?」
 面堂と肩を並べる程の「剣客」―水乃小路飛麿が、必殺の「南斗水鳥剣」を繰り出す!華麗なる水鳥の如く飛来した、何十本もの剣風を感じ取った「刺客」は、その太刀筋を悉く撥ね返したのだ!
「馬、馬鹿な……ぐふっ!」
 信じられないような表情を浮かべた飛麿の背に、深々と太刀が突き刺さる。そのまま、ゆっくりと倒れていく飛麿……。やがて、お堂の中で動く者は、誰一人いないと判断した 「謎の刺客」は、静かに去った。かくして、江戸の裏稼業を統べていた「寅の会」は、ここに壊滅したのである!

 ……だが、その時、一枚の畳がゆっくりと持ち上げられ、さくら元締が姿を現した。堂内の灯りが消えた瞬間、その場の異変を察知したさくらは、畳み返しの技で以って、瞬時に床下へ逃れたのだった!倒れた蝋燭に灯りを点けたさくらが、余りの惨状に、思わず顔を背ける。そう……お堂の中は、謎の刺客に斬り倒された仕置人たちで、血の海と化していたのだった……。
「これは……何と言う酷い有様じゃ……!祓い給え、清め給え……」
 表の顔である「巫女」として、息絶えた仕置人たちの冥福を祈るさくら。その場に、動く者は一人としていない……いや、一人だけいた。死神だ!息も絶え絶えの死神が、さくらに数枚の小判を渡し、必死の想いで伝える!
「……>$)=+※&〜〜〜!!」
「だ〜〜か〜〜ら、何を言うとるのか、さっぱり分からんと、先程から何度も言うとるじゃろが〜〜!!」
 ……その時、死神の横で、既に事切れていた虎の元締が、突然立ち上がって「翻訳」した。
「わしらと……そして、ラムの恨みを晴らしてくれ!外道を……頼む!……まあ、そう言う事やさかい。よろしゅう頼むわ……ほな、さいなら!」
 そして、死神(&虎の元締も)は、末期の願いをさくらに託し、無念の内に息絶えた。血にまみれた小判を、ぎゅっと握り締めたさくらの目には、固い決意が浮かんでいたのだった……(BGM:「仕事人」〜仕掛けて殺して日が暮れて/M28)。
「……お主の頼み、確かに引き受けた!」

【うる星お仕置人 《PARTII》―へ続く】



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