「必殺/中村主水、大奥に参上!」(1996年8月10〜30日/京都・南座)
「主水再臨!」〜南座・必殺公演観劇記〜
劇場用映画「必殺!主水死す」で、一度死んだ筈(?)の中村主水が、早速お盆で京都に里帰り。恒例南座の必殺公演で復活!(このギャグは、舞台でも藤田氏が言ってました)必殺の地元・京都に住みながら、今まで必殺の舞台公演で見たのは、TVで録画中継された「必殺・ぼたん燈籠」「からくり猫屋敷」「琉球蛇尾線恨み節」「主水、大奥に参上!」の四編のみ。 そこで、ここでは、主水死後(?)に、初めて生で見た舞台がどのような物だったか?……その感想を述べたいと思う。
ストーリーはと言えば……おなじみの、梅田コマ公演の「主水、大奥に参上!」の焼き直しで、当初期待した映画とは全く何の関係もなく、全く残念!ただ、生の舞台の迫力は素晴らしく、目前で見る主水の殺陣の躍動感には、目を見張るものがあった。TVシリーズ終了後、久方振りに「映像」で見る事が出来た仕事人たちの紹介・出陣・殺しのシーンには、ある種感動さえ覚えた!
その他にも……お久し振りの筆頭同心・田中様の復活。悪役の大奥中臈・上尾の方と、主水の妻・りつとの二役を演じている白木万理のお約束ギャグ(主水が上尾の方の顔を見て、どっかで見た顔だと首を捻ったり、生まれた場所を聞いて「それなら、俺の女房とは縁続きじゃねえ!」と言って、ブスリ仕留めたり……。また、死んだ…と思った上尾の方が、奥田右京亮の如くいきなり立ち上がり「覚えておれ!」と言い残して絶命。ラスト、事件がすべて片付いてから、主水が浮気をしたと誤解したりつが、上尾の方と全く同じポーズで、「覚えておれ!」と主水を驚かし、腰を抜かした主水の情けない姿で幕となったり……)
それに、舞台の上で一人ソバを食いながら、観客に向かって話し掛ける藤田氏の一人芝居(映画「必殺!主水死す」の話や、前述の主水のお盆での里帰りギャグ。ソバを全部食え!と言う演出家への愚痴……等)には、TVシリーズや映画とはまた違う、舞台ならではの楽しさがあった。
……とは言いものの、やはり不満点は数多くある。メイン・ゲストの花紀京がギャグ・メーカーでしかなく、加納竜は前半で被害者となって退場。島田順司扮する悪徳商人・湊屋は、河合伸旺扮する倉田甲斐守に食われてしまって、何の為の出て来たのか良く分からない。
それにも増して、主水側の仕事人が、女元締のお杏(演ずるは江波杏子)しかいない為、被害者サイドの人間=畳職人の佐太郎(演ずるは、ジャニーズ事務所の「忍者」のメンバー・高木延秀)が、クライマックスで突如伊賀の抜け忍だった事が分かり、主水たちに加わると言う唐突な展開になる!(「忍者」が抜け忍を演じるとは、これ如何に?)しかも、使いこなすのは組紐状の武器!元抜け忍で、今は江戸の職人。得物は組紐……と言えば、これはもう「組紐屋の竜」を思い出してしまう。
中盤に、何の伏線もなく唐突に登場する刺客や、クライマックスでの仕置きが、「仕事人による殺し」と「右往左往する大奥の侍や腰元たち」の繰り返しばっかりだったり……。いろいろと文句も言ったが、まあ必殺の舞台を直に見られた……と言うだけでも、その値打ちはあったと言えるだろう。
尚、この「大奥に参上!」の様々なバージョンの研究は、舞台「主水、大奥に参上!」 全バリエーション研究 …にて行ってますので、そちらもご覧下さい。
【公演データ】 ◆監修/工藤栄一 脚本/保利吉紀 演出/中畑八郎
◆出演/藤田まこと・江波杏子・白木万理・花紀京・加納竜・高木延秀
山内としお・川合伸旺・島田順司・妹尾友有