【納涼必殺まつり】(昭和59年8月11日〜26日/京都・南座)

「新・必殺仕事人」からくり猫屋敷


タイトル 「納涼必殺まつり」公演中の京都南座の側・四条鴨川河原で、新春から必殺に新登場する村上弘明氏(花屋の政)と京本政樹氏(組紐屋の竜)を見つけて、何やかやと話しかけてくるラムネ売りのおっさん(藤田まこと)。貰ったラムネを飲みながら、自分のプロフィールや必殺への抱負を語る村上氏と京本氏。
 そして、自転車に乗ったラムネ売りのおっさんは、南座へ向かい……そのまま舞台の花道に登場!かくして、これより「納涼必殺まつり」新・必殺仕事人/からくり猫屋敷&必殺・オン・ステージ…の幕開けでございます。

 裏稼業から足を洗った加代…今の仕事は瓦版屋だ。時事講談で人気の噺家・竹廻家小琉、そして脚本家の戯作者・滝二郎の為に、日々ネタ集めに励んでいる。そんな最中、加代は謎の仕事人(政と竜)の殺しを目撃!裏稼業から足を洗って以来、久々に再会した主水に話すも、二人とも今は裏稼業に関わりを持とうとはしなかった……。
 それよりも、ネタ集めに忙しい加代は、本所一つ目・八千石の旗本・松尾左近将監の屋敷での化け猫騒ぎを聞きつけるが、これ以上変な噂が立たぬよう、屋敷に泊まり込んで真偽の程を見極めてほしい…と、松尾家から逆に頼み込まれてしまう。果たして、その夜、加代の眼前で、奥方の小夜の方の寝所に浮かび上がる奇怪な化け猫の姿!這々の体で飛んで帰った加代を後にして、三人の男女が密かにほくそ笑んでいた……。

 実は、この化け猫騒ぎは、松尾家の婿養子である左近将監が、側室のお梶の方、芝居小屋が境内にある正燈寺の住職・弁海上人と組み、邪魔な正室のお小夜の方を「化け猫に憑かれた」として抹殺しようとしたのだった。
 だが、その化け猫騒ぎが陰謀だと見抜いた小琉と滝二郎は、舞台で「偽・化け猫」のからくりを暴き立てるが、それが為に小琉は「風俗紊乱の罪」で南町奉行所に捕縛されてしまう。主水の入れ知恵で「講釈師、見てきたような嘘を言い」……全ては自分の作り事ですと申し出る小琉。だが、突如現れた弁海上人が、有無を言わせず小琉を連れ去って行ってしまい、挙げ句に惨殺。小琉師匠を父、滝二郎を弟のように想い、三人でずっとこの仕事を続けて行きたいと願っていた加代の願いは、無残に断ち切られてしまう。
 かつてお小夜と恋仲だった滝二郎は、怒りの余り一人で将監の屋敷へと走る。嘆き悲しむ加代に、恨みを晴らしてくれるよう頼んで息絶える小琉……。それと同じ頃、お小夜の方も「化け猫に憑かれた不届き者」として成敗され、その場に駆け付けた滝二郎も将監に惨殺される。

 裏稼業に戻ってくれと頼む加代に対し、「両手に付いた人様の血が薄くかすれてきた気がする」「夜も、やっとうなされないで眠れるようになった」……と、裏稼業に復帰する事を拒もうとする主水だったが、謎の仕事人二人が、おりくから添え状を預かってきた事を知るや、遂に仕置きを決意!かくして、新たなメンバー…花屋の政と組紐屋の竜を加えた「仕事人稼業」が、今ここに始まったのだった。

《解 説》
 これまでの「新・仕事人」レギュラー…秀&勇次から一変しての新メンバー・政&竜が、TVシリーズ「必殺仕事人V」放映(1985年1月4日放映開始)に半年先駆けての登場編である。(公演日/1984年8月11〜26日)それだけに「一度裏稼業から足を洗った主水と加代の復帰へのためらい」「謎の仕事人が主水たちと出会い、仲間になるまで」が、(通り一遍だが)中心テーマとして描かれている。
 また、左近将監や弁海一味の陰謀は、TVでもよく見られた「正室抹殺の陰謀」であり、化け猫のからくりが「舞台的」だとも言えるだろう(…にしても、ちとお粗末!)。また、今回のニセ化け猫騒動は、「必殺仕事人IV」#31/加代、幽霊になる(1984年6月1日)が、元ネタになっている。

 今回の舞台とTV「必殺仕事人V」の設定等に関し、異なる点は。

  (1)政と竜・主水たちとの出会い……TVでは、飯岡・笹川一家の抗争に絡んだ事件(必殺仕事人意外伝)で、偶然絡み合う事になるが、舞台では、「江戸で、八丁堀同心にして仕事人の中村主水さんに会ったら、仲間に入れて貰いなさい」と言う紹介状を、旅先で政と竜の二人がおりくから貰った事になっている(舞台におりくは登場せず)。

花屋の政組紐屋の竜 (2)政と竜の表の顔はほんの僅かしか登場せず(二人の住まいは出てこない)、竜の衣装も後のTVで見られるものと違い、地味な雰囲気。更に、使用する組紐も五色ではなく、赤一色。
 (3)加代がサポートする順之助の投石機は、今回火炎弾を発射。

 また、政&竜の心情がほとんど描かれてない分、加代の描写が多く、ラストシーンも、「この世には不公平な事が多過ぎる」と嘆く主水と「また裏稼業に戻っちまったねえ……」と述懐する加代の二人が、船に乗って(花道を)消えて行く場面で終わる。ある意味、今回の主役は加代だと言えるだろう。

《出陣&殺しシーン・解説》
 ☆アジトでの金の分配と出陣場面は、すべて映像シーン(BGM/「新・仕事人」〜出陣のテーマ)。
 ☆映像による出陣シーンの後、花道を通って舞台に現れる加代と順之助。スクリーンに映る松尾家の門に向かって、火炎弾を発射。その後、松尾家の門前で火炎弾が炸裂し、狼狽える松尾家屋敷内の侍とお女中たちの場面は全て映像(BGMなし)。
 ☆映像により、松尾家の用人・孫兵衛と戦う政。その後、政がスクリーンの中から飛び出して、舞台上の孫兵衛と対峙。手に持った花の枝を弾き飛ばされた政は、松尾家の庭にあった樹木の枝を折り取って仕留める(BGM/「仕事人IV」〜殺しのテーマ)
 ☆松尾将監とお梶の方を仕留める主水は、すべて舞台の上での立ち回り(BGM/「仕事人IV」涙を背負って〜主水・殺しのテーマ/殺しの旋律・M1)。
組紐屋の竜☆弁海上人を追う竜。屋敷内から川沿いの葦原の中まで追い詰める場面は映像シーン。最後、投げつけた組紐で締め上げる所で舞台上に変わる(「仕事人III」〜殺しのテーマ/暗闘者・M8)。
 ☆最後に残った弁海の配下に襲われた主水が、一気に斬って捨てる場面は舞台のみ(「新・仕事人」〜対決/S1)。

《よろず覚え書き》
◎TV中継では、舞台の前に「必殺オン・ステージ」がダイジェストで登場。
◎中村梅之助の「必殺仕事人IV」のナレーションが冒頭流れる。
◎瓦版屋の加代、客席の通路から、当日の本物の新聞を配りながら登場。その当時の話題は「三浦和義事件」
◎冒頭、政・竜の殺しの依頼人は、正燈寺境内の商人たち。
◎主水と加代が裏稼業から足を洗って(「仕事人IV」最終話?)から半年が経過。
◎10年前に女房・子供を捨てて上方から出て来た小琉、物語冒頭で真打ちに昇進。
◎お小夜の方が飼っている愛猫の名前は「たま」。
◎お梶の方は、かつて旅回りの女座長で「化け猫芝居」を売り物にしていた(小琉は、一時彼女の一座に身を寄せていた為、事件のからくりに気付く)。
◎主水の舞台見物用の弁当の中身は……メザシとたくわん、鰹節にお醤油をかけた「猫飯」。
◎小琉が語る「化け猫騒動」のからくりの種明かしは……加代が髪振り乱した「化け猫」に扮して暴れ回り、順之助が「障子に映る化け猫の影」を舞台袖で操作する。

《スタッフ》
【作】保利吉紀・加藤藤穂【演出】山内久司
《キャスト》
◎中村主水(藤田まこと)◎なんでも屋の加代(鮎川いずみ)◎花屋の政(村上弘明)◎組紐屋の竜(京本政樹)◎西順之助(ひかる一平)◎りつ(白木万理)◎筆頭同心・田中(山内敏男)◎披露目屋の玉助(梅津栄)◎筆頭与力・関口(鈴木淳)◎噺し家・小琉(芦屋小雁)◎戯作者・滝二郎(広岡瞬)◎松尾将監左近(西園寺章雄)◎松尾の側室・お梶(阿井美千子)◎正燈寺の上人・弁海(遠藤太津朗)◎正燈寺供侍・孫兵衛(河崎実)◎松尾の奥方・お小夜(大崎紀子)

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