「必殺!時空大戦」



必殺!時空大戦


《序章に代わる情景・その1》 親の因果が子に報い……

 ……それは、主水が「生まれて、すぐに死んだ我が子」の弔いを終え、中村家へ帰ってきた時に起こった。余りの哀しみから、疲れ果てて眠ってしまったせんとりつを他所に、我が子の仏壇を前にして、たった一人酒を飲む主水!やりきれない想いが、主水に飲めない酒を飲ませ、その脳裏に様々な想いが交錯する……。

"こいつぁ、今まで人殺しを続けてきた、俺への『罰』か?その報いが……『これ』なのか?"
 そう、自分自身の「心」に問いかける主水……。だが、その問いに答えられる者は、誰一人としていない。だが、その時、そんな主水の心の中の想いを見透かしたような声が、どこからともなく聞こえて来た!
『罰……報い……そんな事を思っていると言う事は、お前の願いは"死にたい"……そう言う事なんだな!?』
「……誰だ!」
 酒を飲んではいるものの、まだまだ「酔う」までには至ってなかった主水が、鋭い声を発する!
『死にたいと言うのなら、俺がその願いを叶えてやろうじゃねえか……?』
 そして、主水の前に「太刀を構えた男の影」が現れる……。夜の闇に紛れて、その容貌ははっきりとしなかったが、主水への殺気が溢れているのは、火を見るよりも明らかだった。それをひしひしと感じ取った主水が、凄みのある笑みを浮かべる!
「俺が死にてえだと?……誰だか知らねえが、世迷い事を言うんじゃねえ!俺ぁ、今イライラして、むかっ腹が立ってんだ!俺を殺そうってんなら、いいだろう……てめえの方こそ、返り討ちにしてやる!」

 新次の死……おせいとの別れ……そして、この世に生を受ける事なく、黄泉路へ旅立った我が子!立て続けに起こった「一連の出来事」に怒りと哀しみを感じていた主水は、突然現れた「訳の分からない男」に対して、自らの激しい感情をぶつけたのだ!傍らに置かれた太刀を抜き放った主水は、中村家の庭に立つ「謎の男」の前に立った!主水の凄まじい剣風が、唸りを上げて襲いかかる!それを弾き返す「謎の男」の剣!(BGM:「商売人」殺しのテーマ〜闇の裁き/S5別型)今や、"殺しの商売人"として、裏稼業の世界で「並ぶ者なき存在」とまで化していた主水だったが、「謎の男」の剣は全くの互角だった!そして、黒雲の間から姿を現した月の光に、「男」の顔が、一瞬照らし出された……その瞬間、主水が絶叫した!
「お、おめえは……!?」
 その一瞬の驚愕が、主水の命取りとなった!瞬時に繰り出された「謎の男」の一撃が、主水の体を深々と貫いたのだ!
「ぐふっ……!」
 主水の動きが止まる……。その両手から太刀が落ち、庭石に当たって転がった。まるでスローモーションでも見るかのように、主水の視界が歪み、斜めになって行く。「……しまった!遅かったか!?」と言う、どこからともなく聞こえて来る声を耳にしながら、「商売人」主水は息絶えた。"これでいいんだ……これで……"そう、自らに言い聞かせながら……(BGM:「商売人」〜日暮れに弔い唄を/H2別型)。

「あなた……どうしたんです、あなた〜〜〜!?」
 異変に気づき、やっと目を覚ましたりつが庭に駆け下り、主水の体を激しく揺り動かす!それを、呆然として見つめるばかりのせん!やがて、主水が既に死んでいる事を知ったりつは、その体にすがって号泣した!だが、せんもりつも気付いていなかった。一人の大柄な修験者が、その光景をじっと見つめていた事を……。やがて、無念の表情を浮かべた修験者は、惨劇の舞台となった中村家から、不意に宙に溶け込む様にして姿を消した!


《序章に代わる情景・その2》 安浦刑事の休日

「なあにぃ〜〜?あれえ〜〜〜!?」
「えーー?やだあーーー!!」
「あいつ……。頭、おかしいんじゃねえか?」
「馬鹿だな、おまえ!ありゃ、時代劇の撮影だろ……?」
 ……ここは、現代の東京。大勢の男女が行き交う新宿の歩行者天国で、ちょっとした騒ぎが起こっていた(BGM:「からくり人」〜眠れぬ夜は/M8)。軽口を叩き、指差し、笑い出す!……彼らの視線の先には、一人の「男」の姿が存在していた。頭に髷、着物を着て、腰に大小二振りの刀を差した格好は、どう見ても「江戸時代の侍」だ!現代風俗の最先端とも言える新宿とは、余りにも異質なその姿に、「見る方」も「見られる方」もどう対処していいのか分からない…と言った表情を浮かべていた。

"……時代劇の撮影だろ?"
 遠くから聞こえてきた声に、山手中央署の安浦刑事の顔がほころぶ。
「♪人〜を斬〜る〜の〜〜が、サムラ〜イ、な〜ら〜ば〜〜〜……か」
 戦前の歌謡軍歌「サムライ・ニッポン」の一節が、安浦の口をついて出た。今日は、安浦にとって予定外の休日だった。


   《挿入ショット》
 安浦「えっ……?休暇ですか!?」
 横溝署長「ああ。この間の『偽装詐欺』事件な。あれが、もっと捜査が長引くかと思ってたんだが、意外と早く片が付いたろ?それで、その分ゆっくり休んで貰おうと思ってな」
 ここ数日間、難事件の捜査で徹夜だった安浦に向かい、その労をねぎらった山手中央署の横溝署長が、臨時休暇を取らせようとしていたのだ(BGM:「仕事人V」〜南町は今日も騒がし/M11)。
 安浦「休暇って言ってもねえ……家でゴロゴロしてたら、娘たちに邪魔っけ扱いされるし、いつも行く飲み屋は(ちらと懐に目をやる)……給料日前ですしねえ。休みなんか貰ろても、行くトコなんかありませんわ!」
 横溝署長「まあ、そんな事言わずに、ゆっくりして来たらいいだろう?行く所がないって言うんなら……これ、どうだ?知り合いから貰った、映画の特別招待券だ。たまにゃあ、時代劇を見るのもいいもんだぜ!」
 半ば強引に「臨時休暇」と「映画の特別招待券」を押し付けられた安浦……。だが、彼には、それよりも、更に気がかりな事が一つあった。

 安浦「映画は、まあ良いとしても……署長。この若いヤツ、誰です?」
 署長室にいた、もう一人の人物……黒ブチ眼鏡の冴えない若い男に、安浦が目をやる。
 横溝署長「ああ……彼か。説明するのが遅くなったが、今週から山手中央署に赴任する事になった只野刑事だ」
 只野刑事「只野仁です……署長から、あなたのお噂は何度もお聞きしてます」
 どこから見ても、風采の上がらないダメ男だったが、安浦の第六巻は、その「黒ブチ眼鏡」を掛けた若い刑事が、予想もしない切れ者だと言う事を告げていた。
 安浦「署長に、何を吹き込まれたか知らねえが……俺が、噂の当人の安浦だ。言っとくがよ、ここは七曲署ほどじゃねえが、結構殉職率の高い職場だからな。覚悟しとけよ!」
 只野「はい……勉強させて貰います!」



 ……かくして、横溝署長から貰った特別招待券で、何年ぶりかに映画館に入った安浦だったが、主役の若い兄ちゃんのクサい演技に馴染めず、日ごろの疲れが出て、いつの間にかコックリコックリと白河夜船……。気が付いた時には、映画もラストシーンで、顔の長い家老が大勢の若い侍たちを前にして、何か喋っていた場面になってしまっていた。
「あちゃーー!これじゃ、何しに映画館に入ったのか分かんねえぞ!?」
 映画の感想を聞かれた時、どう所長に言い訳しようか?……等と考えていた安浦が映画館を出たところで、"時代劇の撮影"と言う声を耳にした為、つい「サムライ・ニッポン」などと言う、滅多に歌った事のない曲が口を付いて出た訳だった。折しも、街角のあちこちには「WBC(ワ−ルド・ベースボール・クラシック)」に出場する日本チーム(通称・侍ジャパン)を応援するポスターがベタベタと貼られていた。

 だが、そんな安浦のまったりした気分を、吹き飛ばすような出来事が起こった!繁華街の曲がり角の向こうから、「人殺し〜〜〜!」と言う、絹を裂く言うな悲鳴が、突然聞こえて来たのだ!(BGM:「新・仕事人」〜対決/S1)。プライベートから、一気に「仕事中の刑事」の顔に戻った安浦が脱兎の如く駆け出す!「山手中央署の安浦だ。ここで何があった!?」そう怒鳴って飛び込んだのは、旅行会社・東亜ツーリストの東京営業所だ。真っ先に目に入ったのは、カウンターの向こうで、血にまみれたまま、ピクリとも動かない丸眼鏡の中年男の姿だった!その横では、被害者の上司らしき男が「……中村さん!中村さん!」と叫びながら、必死に男の体を揺さぶっている。……と、その男が涙に濡れた目で振り返り、安浦の方を指差すや、「犯人はこの人です!」「えっ……俺!?」と自分を指差して、頓珍漢な事を言ってしまう安浦。だが……。

「違います!あなたの……その、後ろにいる『お侍さん』です!そいつが、中村さんを刀で切り殺したんですよ〜〜!!」
 振り返った安浦の背後にいたのは、新宿の歩行者天国で場違いな姿を晒していた「侍」だった!
「くそっ……!ここでも、先を越されちまったのかよ!!」
 苦々しげに叫んだ「侍」は、くるりと踵を返すや、あっと言う間に姿を消した!
「てめえ〜〜逃がしゃしねえぞ〜〜!」
「……違う!俺じゃねえ〜〜!!」
 そう叫びながら、逃走を図った(と思われた)「侍」の後を追う安浦刑事!地の利で一歩優位な安浦は、やがて「謎の侍」を袋小路へと追い詰めた!路地の両側は雑居ビル、奥には高いフェンス……もはや、男に逃げ場はなかった。
「もう袋のネズミだな……。さ〜〜て、俺にも、何が何だかさっぱり分からねえんだ!『何』が『どう』なってんのか、素直に喋って貰おうか?」
「正直に言ったところで、あんたが分かるとは思えねえ……俺だって、未だによく分かっちゃいねえんだからな……」
「何だと……!?」
 思わず安浦が眉を潜めた……その時!雑居ビルの勝手口から現れた姿「もう一人の若い侍」が、電光石火安浦に当て身を食らわした!(BGM:「新・仕事人」〜裁きの刻/整理No.M41)。「ぐへっ……!」強烈な一撃に、胃袋を押さえて倒れる安浦!倒れた彼の耳に、高いフェンスを軽々と飛び越えて現れた「長身の修験者」と「若い侍」……それに、安浦が追っていた「侍」の三人による、全く意味不明の会話が聞こえて来た。

『すまねえ、間に合わなかった……』
『仕方ありません、XX(ピー音!)さん。次の"世界"へ行きましょう』
『では……飛ぶぞ!』
 そして、安浦の目の前から、三人の姿は忽然と消えたのだった……。


《序章に代わる情景・その3》 塔の上の男

 ……バサバサーッと一斉に飛び立つ鳩!大勢の男たちが行き来している境内を、悠然と見下ろす五重塔の最上階で、一人の男が、静かに「刻(とき)」を待っていた(BGM:「からくり人」〜仇吉、泣き節、怨み節/M6)。銃を構えては、ターゲットスコープを覗き、写り込んだ標的に向けて、引き金を引く……寸前で、そっと指先を緩める。全ての動作を確認し、万に一つもしくじる事の無きよう、何度も何度も繰り返す。男にとっては、永劫とも思える時間が流れ……やがて、待ちに待った「瞬間」が訪れた!
 蛮社の獄の首魁−南町奉行・鳥居耀蔵の姿が、男の視線に捉えられたのだ。何百回と繰り返し、全神経に刻み込まれた手順通り、やがて訪れる「結末」に向けて、男……夢屋時次郎は、最初にして最後の一撃を「標的」に見舞うべく、銃を構える。静かに微笑んだ口元から、微かにわらべ歌が聞こえて来る……。
「……勝って嬉しい、花いちもんめ…」

 ……銃眼に映る鳥居の姿!引き金に添えられた時次郎の指に、ゆっくりと力が入る(BGM:「からくり人」〜血闘からくり人/殺しのテーマ)。あらゆる時間がスローモーションの如く流れ、「時次郎の目」と「引き金に掛けられた指先」……そして、「銃眼の中の鳥居の姿」が交互にアップになる。静止画の如く、ターゲットスコープのど真ん中に佇んでいる鳥居を凝視した時次郎が、小さく叫ぶ。
「俺の……勝ちだ……!」
 次の瞬間、カチリ!−と言う音と共に、轟音が響く。だが、その時時次郎は信じられない「もの」を見た!死すべき運命にあった「鳥居」と「銃弾」……その間に飛び込んで来た一羽の鳩だ!真っ白な鳩が、銃弾で血に染まり……そして、皮肉にも鳥居は生き長らえた。その時、時次郎は知った……己が「運命の女神」に背を向けられた事を。第二撃は、もはや無意味だった……。五重塔を駆け上がってくる足音を耳にしながら、時次郎は自らの運命に決着をつけるべく、顔に手に真っ黒な火薬を塗りたくる。「負けて悔しい花いちもんめ」と呟きながら……。

 だが、運命は予想も出来ない展開を、時次郎に突きつけたのである。自分の周りに撒き散らした火薬の上に、火種を落とそうとした……その時!何処からか飛来した小柄が、神業の如き手練で以って、落下中の火種を弾き飛ばした!大きく飛ばされた火種は、時次郎を死へ追いやる事なく、虚しく五重塔の床に転がった。それを見つめた時次郎が、自らを罵るようにして言う。
「……簡単にゃあ、死なせてくれねえって訳かい!?」
「そう言う事だ……。仮にも、御前様を殺め奉ろうなどと考えるような不逞の輩だ。あっさりと自爆なんざさせるかよ!てめえの体を、一寸刻み・五分刻みに責め苛んで、背後にいる奴らを、残らず炙り出してやる……!」
 五重塔の外廊に繋がる出入り口に立つ「男」の姿が、逆光で黒く浮かび上がる!(BGM:「からくり人」〜からくり人のテーマ/M28)眩しげに目を細める時次郎に向かい、突然現れた「男」は酷薄な口調で言い放った。自爆はもはや不可能……銃に第二弾を込める事も出来ない。時次郎に残された道は、ただ一つしかなかった!懐に仕舞っていた殺しの得物に手を伸ばす……。目の前にいる相手が、どれほど強敵であろうと……時次郎の本能は、その男が「殺しのプロフェッショナル」である事を告げていた。……戦って戦って、戦い抜いて、この窮地を切り抜けるしかないのだ!

 不思議な事に、その男以外、誰一人として五重塔へ駆け上がってくる者はいない……。塔の最上階で、静かな静寂の中、鋭いへらを構えた時次郎と、奥山神影流の太刀を抜き放った男が対峙する……。時次郎が、しきりに塔の外廊へ目をやっているのに気づいた男が、ニヤリと笑った!
「……気になるかい?安心しな。俺の他にゃあ、誰も来ねえよ……。邪魔するなって釘を刺しといたからな!何しろ、てめえは俺の……」
 猫が鼠を弄ぶかのように、わざと軽口を叩いている男が、時次郎をじっと見据える。
「……"大事な"獲物だ!」
「そうか……あんたが、鳥居直属の殺し屋……『影同心』って奴だな?」 「……ほう?その名前……何処で聞きつけた?」
 時次郎に剣を突きつけたまま、男が不敵に笑う。
「なあに……こっちも『裏の世界』の人間なんでね。いろいろと、世間様が知らない事も耳に入って来るんですよ……。鳥居の野郎が、南町の凄腕の同心を、何人か飼い犬にしてるって噂もね。それも、殺し専門だ!……そう言やあ、あんたの顔も一度、往来で見かけた事があるなあ!名前は、確か……」
「……べらべらと、愚にも付かねえ事、いつまでも喋ってんじゃねえ!その舌、切り落としてやろうか!?」
 男……鳥居耀蔵配下の「影同心」が、苛立ったような表情になり、一歩進み出た!時次郎も、無駄に長口舌を弄していた訳ではない。この絶体絶命の窮地を脱する為、死地に時を稼ぎ、状況の変化を見計らっていたのだ。だが、事態は、時次郎が全く予想もしなかった状況へと変転した!時次郎に鋭い剣を向けていた「影同心」の背後に、もう一人「別の男」の姿が現れた。しかも、その男は「影同心」の敵だったのだ!

「事もあろうに、妖怪奉行の手先になってやがるとはな……見下げ果てた野郎ぜ!」
 背後に立つ「もう一人の男」が、嘲笑うようにして言う。ゆっくりと振り返る「影同心」。その顔が驚愕に包まれる……!
「貴様、まさか……!?」
「そう……あんたの思った通りだよ、中村さん!」
 不敵に笑う、その顔は……中村主水!そして、目にしたものが信じられない、その男の顔も……中村主水だった!(BGM:「新・仕置人」〜仕置のテーマ・問答無用/M39)瞬時に抜刀する「二人目」の中村主水!全く互角、奥山真影流免許皆伝の「殺しのプロフェッショナル」同士が、互いに剣を向かい合い、対峙する!次の瞬間、二人の中村主水は激突した!「正」対「悪」……いや、「悪」対「邪悪」の死闘が始まったのだ!その戦いのフィールドに、全く踏み込めない時次郎。その最中、五重塔の外廊から、巨大な旗を手にした大柄な修験者が、室内へ飛び込んで来た。
「鳥居の配下は、私たちの手で悉く排除した……。逃げるなら今だ!」
 目の前の状況は、どうにも理解できないものの、その言葉の意味を瞬時に理解した時次郎は、脱兎の如く外廊へと飛び出す。見ると、階下に繋がる階段には、打ち倒された警護の侍や曇りの配下が、何十人と転がっていたのだ!
「すまねえ……恩に着るぜ!」
 謎の修験者に向かって笑顔を返した時次郎は、なぜか時次郎に背を向けたままの若侍の横を通り過ぎ、そのまま運を天に任せて、階下へと突っ走った!
「くそっ……てめえ、逃がしゃしねえぞ!」
 時次郎を追おうとする影同心・主水の前に立ち塞がる、もう一人の主水!
「……貴様の相手は俺だ!」
 五重塔の最上階で繰り広げられる、「同じ顔」と「同じ名前」、それに「同じ剣技(わざ)」を持つ者同士の果てしなき死闘!だが、その終止符は、意外な形で訪れた。影同心主水が小柄で弾き飛ばした「時次郎の火種」が、戦いの最中に蹴り飛ばされ、撒き散らされていた火薬の中に飛び込んだのだ……!
 襲い来る曇りの配下を決死の覚悟で切り倒した時次郎が、地上に飛び出した瞬間、閃光と轟音が響き渡り、時次郎の目の前で、五重塔の最上階は炎に包まれた!そして、燃え上がる炎の中に、タイトルが浮かび上がる……。


「必殺!時空大戦」



 ここで、「時」と「場所」が変わる……。目の前に浮かび上がる「情景」は、仕事人たちのアジト−阿波人形浄瑠璃の小部屋だ。折しも、次の裏の仕事の的分けが終わり、涼次と源太・お菊の三人が先に部屋を出て、残るは主水と渡辺小五郎の二人だけ。そして、主水が頼み料の小判に手を伸ばした瞬間、突然部屋の灯りが一斉に消えた!
「何だ!……どうした!?」
 思わず小五郎が叫んだ時、突然雷鳴が轟き、稲妻に照らし出された「男の影」が障子に映った!(BGM:「仕掛人」〜荒野の果てに・インスト/整理bl26)
「中村主水……おめえは、ここで死ぬんだ!」
「何だと……?」
 主水が問い返す暇もなく、電光石火飛び込んで来た「影」は、主水を斬り倒した!血飛沫を上げて倒れる主水!
「てめえ〜〜!」
 瞬時に抜刀した小五郎が、謎の男に激しく斬りかかる!
「渡辺小五郎……おめえに関わってる暇はねえ。もう、用は済んだんだ!」
 そう言った「男」の顔を目にした小五郎は、思わず叫んだ!
「馬鹿な!……一体、何がどうなってるんだ!?」
 一瞬、小五郎の剣に隙が出来たのを見極めた「男」は、ひらりと体をかわすや、部屋の外へと駆け出した。「畜生……待ちやがれ〜〜!」戦う相手を失った小五郎が、その後を追う!だが、廊下に飛び出した小五郎は、そこで奇妙な光景に遭遇した!「謎の男」と「大日如来の巨大な旗を持った修験者」が、じっと睨み合ったまま動かないのだ……。

「お前の目論見も、もうここで終わりだ……!」
「そうは行かねえ……全ての中村主水を消滅させるまで、俺の計画は終わらねえんだよ!」
 渡辺小五郎の目の前で向かい合っている「二人の男」。それは、先生と……そして、たった今、斬られて死んだ筈の「中村主水」だった!(BGM:「うらごろし」〜オープニング・ナレーション)

二つの眼を閉じてはならぬ、この世のものとも思われぬ。
この世の出来事見るがいい。神の怒りか仏の慈悲か……。
恨みが呼んだか摩訶不思議。泣き顔見捨てておかりょうか。
一太刀浴びせて一供養、二太刀浴びせて二供養……。
合点承知の必殺供養!


 だが……そこに立っている「主水」の容貌は、小五郎が知っている「初老の主水」とは異なり、遥かに若く、見た事もない「凶暴な表情」の持ち主だった!
「おい……てめえら……」
 思わず、小五郎が声をかけた瞬間、修験者が「ああっ!今、邪魔をされては……!」と叫び、「見知らぬ主水」はニヤリと不気味に笑うや、奇妙な呪文を唱えた。その瞬間、閃光と共に「謎の主水」の姿が消滅した!それを目にした途端、大きく全身を躍動させ、両手で以って、摩訶不思議な「印」を結ぶ先生!だが、何かの衝動に突き動かされた小五郎が、先生の元に掛け寄った瞬間、大きく空間が歪み……二人の姿は共に消滅した!


 ……そして、再度「時」と「場所」は変わる。
「千ぃ〜〜代ぉ〜〜〜!!」
 権の四郎が火薬壷を頭上に振り上げ……狂気の表情で絶叫した瞬間!小屋の中で立ち尽くす主水の前に、目も眩むばかりの閃光が煌いた!次の瞬間、主水は「不思議な空間」の中へ引き込まれた!轟音と共に、大爆発する権の四郎のアジト!(BGM:「主水死す」主題歌〜哀しみは花びらにのせて)炎上する小屋を、ただ呆然と見つめる事しかできない秀と勇次・おけい。だが、彼らは知らなかった。もう一つ「別の影」が、その光景をじっと見詰めていた事を……。
「死んじまうのが運命の奴にゃあ、俺は用はねえ!」
 そう呟いて「謎の主水」は、再び姿を消した。だが、その「彼」さえも知らなかった……いや、知る筈のない事があった。「死ぬ運命」にあった主水が、何者かによって助け出されていた事を!

「……大丈夫ですか、中村さん!?」
 何処とも知れぬ場所で、ぐったりと横たわっている主水に声を掛ける渡辺小五郎!だが、先生が一心に呪文を唱えるや、「光り輝く空間」の中で主水の傷は、見る見る内に回復していった!ゆっくりと身を起こした主水が、小五郎を厳しい表情で睨む。
「……誰だ、てめえ?」
「何、言ってるんですか?私ですよ……あなたの"仲間"の渡辺小五郎ですよ!」
「何だと?……てめえなんか、俺ぁ、一度も組んだ事たぁねえぞ!」
 主水の言葉に唖然となる渡辺小五郎!その背後から、先生が言う。
「何を言っても無駄だ……。ここは、お主が中村主水と組んでいた世界ではない。目に前にいる御仁も、お主が知っている『中村主水』ではないのだ!」
 先生の言っている事が、全く理解出来ない渡辺小五郎……そして、死の淵から甦った中村主水も、何が何だか分からずに当惑したままだ!
「……てめえ、一体何モンだ!?」
 厳しい表情で先生を睨みつけた小五郎が、刀の鯉口を静かに切る……。主水も十手を手に、目の前の「見知らぬ二人」に警戒を怠らない。そして、先生は、小五郎と主水に「驚天動地の真実」を告げるのだった!(BGM:「仕掛人」〜仕掛けて仕損じなし/整理bl32)。


 平行宇宙……100のパラレルワールドの内の一つ。記録に残されていない、ある裏稼業世界の中村主水が、他の99人の「中村主水」を、全て抹殺しようとしていると言うのだ!そして、他の全ての次元の「主水」を消滅させた時、ただ一人残った「中村主水」は、全知全能の存在=《神》となる。数多くの「時空」を行き来できる先生は、主水の邪悪な計画を察知し、未然に防ごうとしたのだが間に合わず……何人もの「犠牲者」を出してしまったのだった。自分一人の力では、彼の企てを阻止できないと知った先生は、死ぬ運命にあった「一人の主水」の命を救い、彼の協力を得ようと考えた。その行動に、渡辺小五郎が偶然巻き込まれてしまったのだ!
「てめえの言ってる事、俺にゃあ、丸っきり理解できねえ……!」
 訝しげな表情で、じっと先生を見詰める小五郎!
「……だが、これが真実なのだ」
 静かに先生が言う……。
「俺にも信じられねえがな……。あの絶体絶命の危機から、俺を助け出してくれたのだけは、確かな事実だ。とにかく、今は、この訳の分からねえ状況を、何とか切り抜けるしかねえって事だ。その……小五郎さんだったかな!?」


 信頼も信用もしていないが、成り行きから協力する事になった三人……中村主水と渡辺小五郎と先生は、100の平行宇宙の「中村主水」と出会う事になった!(BGM:「仕掛人」〜必殺!/整理bl19)。そこには、数多くの「裏稼業に身を置く」主水だけではなく、中には、「正義の心も熱い同心」として活躍する主水……逆に「仕置きされるべき悪党」に堕落してしまった主水も存在した。
 「中村家」も「同心と言う職」も捨て去って、鉄や錠と共に「一匹狼の仕置人」と化した主水……。清兵衛元締の元で、助け人の知恵袋として活躍する主水……。土屋小十郎との決闘の末、二度と裏稼業には戻らなかった主水……。妖怪奉行・鳥居配下の「影同心」として、非道の刃を振るう主水……。剣の業に憑かれた全覚に挑んで、その命を散らした主水……。不可思議なる現象によって、メリケンの大西部へ飛ばされ、その地で生涯を終えた主水……。現代の日本において、生命保険の勧誘員や旅行会社の添乗員として、平々凡々に生きる主水……。ある主水は、時を駆ける「邪・主水」の手で命を絶たれ……また、別の主水は、先生の秘術によって「説得」&「融合」し……更には、闇の稼業に生きる者同士、己の剣技を尽くした「対決」へと至る事で、平行宇宙の主水は、一人、また一人と減っていく……。

 遂に、残る「世界」は、たった三つだけとなった。「寅の会」が江戸の裏稼業を統べていた世界……。主水が初めて、「裏の殺し」に手を染めた世界……。同心としての最初の赴任地−佐渡。そして、そのいずれにも、一人の「男」が絡んでいた。そう……主水の影分身とも言える男、念仏の鉄だ!最後の決着の「刻」が、ようやく訪れようとしていた……!


【 続く!】



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