【納涼必殺奮闘公演】(1986年8月2日〜26日/京都・南座)

「新・必殺仕事人」女・稲葉小僧

女・稲葉小僧
【物 語】

 時は江戸時代。いつの世も、弱い一般庶民は「権力を笠に着る武士」や「強欲な商人」によって、悔し涙を流され続けてきた。そんな中、今江戸の町で人々の注目を集め、大評判となっていたのが、「稲葉小僧」と呼ばれる女盗賊だった。かつて一世を風靡した鼠小僧次郎吉の如く、大名屋敷や大商人の蔵を専門に狙っては、ごっそりと大金を奪い取り、貧しき人々の下に置いていく「義賊」だったのだ!
 そんな折、満開の桜の花見客で賑わう上野山において、華やかなパフォーマンスに興じる若者たちの集団(零心会)たちの騒ぎにまぎれ、一人の高僧が殺害される。筆頭同心・田中様(山内としお)の指揮の元、早速捜査に乗り出した南町奉行所は、その年の夏の夜、ある大名屋敷に忍び込んだ女稲葉小僧を捕縛する事に成功する。田中様の大手柄とばかりに、祝宴まで開いて大はしゃぎの同心部屋。だが、それは、全くの誤認逮捕(捕らわれたのは、哀れにも加代であった……)であり、その間にも陰では悪党共の陰謀が着々と進んでいたのだった……。

 一方、相変わらずの中村主水(藤田まこと)は、奉行所に奉職した時の同期生で、現在は「清政塾」なる私塾を経営している杉山大蔵(島田順司)と再会する。昔話に花を咲かせる二人だったが、その時の同期生には、今や牢屋敷見廻り方筆頭与力にまで出世した永井平蔵(深江正喜)がいた。主水は、かつて大層可愛がった杉山の妹・お新のことが気にかかり、杉山に尋ねる。彼の言葉によると、お新は今では芸者となり、清政塾の経営を助けていると言うことだった。
 稲葉小僧と間違えられて小伝馬町の女牢に入れられた加代は、牢名主・おもん(阿井美千子)と筆頭与力・永井の怪しい関係に気付く。そして、着々と進む「悪の計画」は、佐渡金山から送られてくる幕府の御用金略奪まで及んできた。江戸の町に出没する謎の殺し屋集団。何でも屋の加代(鮎川いずみ)と瓜二つの、「義賊」を騙る女稲葉小僧(鮎川いずみ/二役)、田舎小僧(花紀京)の一味。そして、西順之助(ひかる一平)や、上方から来た手槍使い・新吉(佐藤祐介)は、どう絡み合っていくのか?永井の陰謀によって命を絶たれた杉山……そして、お新の死の間際の恨み晴らしの依頼を受けた主水は、小伝馬町の牢へ向うのだった……!


《各種資料の記述より再構成》


【解 説】

「稲葉小僧」舞台写真 舞台「納涼必殺奮闘公演 新・必殺仕事人/女・稲葉小僧」の上映期間は、1986年8月2日〜26日。TVでは、同年7月25日に「激闘編」が終了。「まっしぐら!」の放映時期と重なっている。
 その為か、舞台に登場した「激闘編」のレギュラー陣では、主水と加代を除くと、せんりつ・田中様&小者六平と言う「日常場面レギュラー」のみであり、(既に「必殺降板が」決定していた京本氏は仕方ないとしても)鍛冶屋の政が出ない!

 しかも、公開済みの映画「必殺!III/裏か表か」との関係(壱と参が死亡)&契約期間が終了した為か(笑)、壱・弐・参の助っ人連中までも登場しない……。その代わり(…と言っては語弊があるが)に登場するのが、「V」の最終話で長崎へ旅立った筈の「西順之助」と、政の"代役"で手槍を駆使する「真吉」と言う名の二人の仕事人だ。この真吉の使っている"手槍"だが……パンフレット表紙に載っている写真を見ると、刃の長い「政の手槍」よりも、鋭い錐状の「棺桶の錠の手槍」に近いと思えるのだが……?(尚、真吉の手槍が載っている画像は、パンフレットの表紙のみである)
 パンフレットには記載されていないが、山田誠二氏の「必殺シリーズ完全百科」によれば、真吉は「上方帰りの仕事人」で、かつて主水と組んでいたと言う設定になっている。西順之助はマゲを落とし、医師免許を取って、「仕事人III」以来のライデン瓶を殺しの武器として使っているそうだ。西順之助の「必殺シリーズ復帰」は、同年11月放映の「旋風編」に3ヶ月先駆けている。また、パンフレットのキャスト一覧によると、敵サイドの"殺し屋"として、次平・三蔵・太助と言う三人が登場している事、「死神」(!)と役名表記のある人物(西園寺章雄)が登場している事が注目される。

 雑誌「演劇界」(昭和61年9月号)での観劇評によると、春の花見から夏の月〜秋の紅葉へと移り変わる背景は素晴らしいが、二幕十一場に加え、暗転に次ぐ暗転の連続で、些か目まぐるし過ぎたようである。「必殺シリーズ完全百科」の記載によれば、クライマックスの大立ち回りは、連鎖劇用のスクリーンと回り舞台を使った「燃える牢屋敷」(おおっ!)で繰り広げられるそうで、藤田氏の主水は「さすがと言わせる存在感」に満ちていたようだった(こちらも「演劇界」での観劇評)
 その他、パンフレットには、前年の舞台−「琉球蛇皮線恨み節」の舞台写真(16枚)と、映画「裏か表か」に出演された松坂慶子さんのエッセイ−「映画『必殺』に出演して」が掲載されている。

【スタッフ】
原案:山内久司   脚本:江科利夫      演出:中畑八郎    音楽:平尾昌晃
美術:竹内志朗   照明:吉野博        効果:鈴木真一    音響:中島道彦・清水直彦
殺陣:楠本栄一   映写:山野繁次      舞台監督:遠藤和彦・吉田正清・井上尋史
頭取:木辻竜三   大道具:神田大道具   小道具:神津商店(株)  靴:波原靴店
衣装:松竹衣装店  かつら:八木かつら・山崎かつら
撮影:京都映画(株)  制作:桜井洋三・小山啓三
【キャスト】
◎中村主水:藤田まこと ◎何でも屋の加代/女稲葉小僧お新:鮎川いずみ ◎西順之助:ひかる一平
◎筆頭同心・田中:山内としお ◎小物六平:妹尾友信 ◎主水の妻・りつ:白木万理 ◎真吉:佐藤祐介
◎杉山大蔵:島田順司 ◎おもん:阿井美千子 ◎「清政塾」塾生:零心会 ◎永井平蔵:深江正喜
◎田舎小僧仁介:花紀京 ……他。

【参考資料】
雑誌「演劇界」(昭和61年9月号)/山田誠二「必殺シリーズ完全百科」
「新・必殺仕事人/女・稲葉小僧」舞台パンフレット

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