【納涼必殺まつり】「新・必殺仕事人」 必殺・ぼたん燈籠 《6》



 《第三場》加賀屋の奥座敷とスクリーン
◎加賀屋の離れ(夜)
 一人でポツンと離れに座っている新之助。そこへやって来たおしの、小石を投げ入れる。物音に気付いた新之助、おしのを見つけて。

おしの「……兄さん?」
新之助「おしの!」
おしの「兄さん……。心配ばっかりかけて、ごめんなさい!」
新之助「いや、いいんだよ。分かってるよ、お前の気持ちは」
おしの「それより兄さん……(周囲を何度も見回した後)あのおじさんがね、五月雨の義兵衛って言う……」
新之助「知っている。その内、逃がさぬ証拠を押さえてやるよ」
おしの「(キッパリと)あたしも手伝う!きっと化けの皮を剥いでやる!」
新之助「人目に付くといけない。さあ、早くお行き!」
おしの「兄さん、気を付けてね」

 下手へ駆け出して行くおしの。だが、盗みから帰って来た義兵衛たちと、ばったり出くわしてしまう。

義兵衛「おしの、おめェ!」

 上手へ逃げたおしの。今度は松五郎に行く手を遮られてしまう。

松五郎「お頭!今夜はシケだったが、最後にとんだ獲物が飛び込んで来やしたぜ!」
義兵衛「なあ、おしの?……おめェ、今までどこをほっつき歩いていたんだよ?」
おしの「(開き直って)余計なお世話だよ!」
義兵衛「心配かけちゃあいけねえなあ。何でも噂では、スリの仲間にいるって言うじゃねえか?なあ、おしの。加賀屋ののれんに泥を塗っちゃいけねえよう、なあ?」

 親切めかして、肩をポンポンと叩いてくる義兵衛に食ってかかるおしの。

おしの「何だよ!てめェこそ、一皮剥けば、五月雨の義兵衛って言う大泥棒じゃないか!」
義兵衛「(ギクッとなって)何い!?」
松五郎「……お頭!」

 奥座敷の隣の部屋から現れるお吉。

お吉「お前さん、そこまで知られちゃあ生かしておけないねえ」
義兵衛「まあ待て……奴の化けの皮を剥がせるかも知れねえ……連れて来るんだ!」

 へいっ!…と応えた松五郎たち。離れへ押し込んで行く。逃げだそうとしたおしのを取り押さえる義兵衛。

おしの「離して!離して!」

 奥座敷へ連れて来られた新之助、乱心を装いながら、必死で逃れようとするおしのを見て。

新之助「お露〜?お露〜?はははははは……お露じゃない。はははははは……!」
おしの「兄さん!」
義兵衛「新之助、ようっく見てろ!お前の目の前でな、このおしのを抱いてやるからな。ウエヘヘヘヘ……!」
おしの「(必死に抗いながら)おじさん!離して!兄さん!兄さん!……あ〜!あ〜〜!……離して!離して〜〜!」

 悲鳴を上げるおしのを乱暴に突き飛ばし、むりやり帯を解いていく義兵衛。

義兵衛「兄貴の持っていた物は、何でも欲しかったんだよ!……ハハハハ!だから、この家の財産も貰ったんだ!お吉も俺のモンだ!(おしのに向かって)おめェも抱いてやるからなあ、えへへへへ……!」
おしの「くそう〜!えい〜っ!」

 手に持った秀の簪で、義兵衛を刺そうとするおしの。

義兵衛「……何しやがるんでい、この野郎ー!(おしのを組み敷いて)……ワハハハハハ!」

 新之助、乱心の振りを止めて、義兵衛の手を取り押さえ、おしのを助けようとする。


新之助「待て!待つんだ!」
義兵衛「新之助。とうとう正体露わしやがったな?おい、えへへへへへ……!やっぱり、てめえも偽だったのか!」

 松五郎たちにむりやり押さえ込まれる新之助。そのまま離れへ引きずり込まれて、松五郎にドスで刺し殺される。(BGM/「新・仕置人」EXT−4〜「罠」)

新之助「畜生〜〜〜!」
おしの「兄さん〜〜!(絶叫)」

 倒れる新之助。義兵衛の手で、むりやり奥の部屋へ引きずり込まれるおしのの悲鳴が響き渡る!

おしの「兄さん、兄さん!離して!あ〜〜〜〜〜!!!!!」

 奥座敷へ戻ってくる松五郎たち。

松五郎「(笑いながら)姐さん、妬けませんかい〜?」
お吉「(凄みのある表情のまま、僅かに震える声で)何言ってんだい?このくらいで妬いてちゃあ、あの人の女房は勤まらないよ(しゃがみ込む)」
松五郎「こいつぁ違えねえや、ははは!」

 奥の部屋から聞こえて来るおしのの絶叫。やがて、苦々しい表情で義兵衛が出て来る。

義兵衛「あのアマ、舌噛み切って、死にやがった!」

 隣の部屋(下手側)から、同心・酒井現れる。

酒井「義兵衛、そろそろ……潮時だな?」
義兵衛「分かってるよ」
酒井「おめェの元の子分だった銀太鼓の三次は、口が利けねえように、俺が責め殺してやった。奉行所じゃ、おめェの事を疑い始めているぜ」
義兵衛「ふん!俺も、こんな堅苦しい暮らしは飽き飽きして来たんでい。今夜限りに火を付けて、どさくさ紛れに有り金残らずかっ浚い、元の五月雨の義兵衛に戻るとするかい。おう、お吉。おめェにも、いい目を見せてやるぜ」
お吉「(心配げに)お前さん!」
義兵衛「(松五郎たちに向かって)おう、蔵の千両箱、残らず抜きとっとくんでい!夜が明けない内に早くやろうぜ!……酒井さん。お前さんの為にも、千両箱の二つや三つ置いて行きますぜ。同心のお手当じゃ、一生掛かっても稼げねえ金だ」
松五郎「じゃ、あっしは、千両箱を運び出す手配に、他の子分たちを集めて参りやす」
義兵衛「早くやるんだ!」
松五郎「……へいっ!」

 松五郎たち、座敷の縁側から下手へと消える。

義兵衛「酒井さん。前祝いにいっぱいやりますか?」
酒井「おう、いいねえ!」
お吉「さ、酒井様。どうぞこちらへ」

 お吉と酒井、連れ立って隣室へ去る。その後に続く義兵衛(BGM/「仕事人」整理No.M15〜「闇に潜む」)。花道から歩いて来る加代。草履を手に立ち止まり。

加代「こんな丈夫な鼻緒がぷっつり切れてしまった!何だか胸騒ぎがするよ!」

 加賀屋の離れに駆け込んで来た加代、倒れている新之介を見つける。

加代「(新之助を抱き起こし)新さん!」(BGM/「仕置人」M16〜「地獄の奉行所」)
新之助「(虫の息で)加代さん……仇を取ってくれ!義兵衛一味と同心の酒井……。ここに…ここに…金が……」
加代「(泣きながら)こ、これかい?」

 加代、新之助の懐から金を見つける。

新之助「加代さん……とうとう一緒になれなかったねえ……(息絶える)」
加代「新さん?……新さん!」

 崩折れる新之助。

加代「(涙に濡れた目で正面を見つめ)新さん、この恨みは必ず晴らすからね〜〜!」(舞台暗転)


《7へ続く》  


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