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わたしの王さま。
【1】
馬車が一台、歩を進めていた。
血統の良さそうな雌馬。
苔色の頭を持つ、魔物のような出立ちの御者。
南瓜の形をした幌の周辺には、4人の人間。
「兄貴ー! 何やら高い建物が見えてきやしたぜ。あれが目指すアスカンタでげすよ」
盗賊風の男・ヤンガスが、発見を知らせる。
兄貴と呼ばれた黒髪の青年・エイトは、ゴールが確認できたことでほっとする。
誰がどう見てもヤンガスの方が『兄貴』という感じがするが、人間関係というものは何が起こるかわからない。
「どうでもいいけど、随分暗い……っていうか、黒くない? あれ」
建物の色に物言いをつけるのは、ツインテール髪のゼシカ。育ちの良い娘らしく、レースのハンカチで流れ出る汗を拭う。
「せっかく修道院から抜け出したってのに、黒やら灰色やらなんかごめんだぜ。なあゼシカ。俺たちの愛の力であの黒を、赤やピンクに染めてやろうぜ」
ちょっとキザな銀髪の美青年・ククールが冗談めかす。彼の場合、半分くらいは本気なのだが……。
「あんた一人でやんなさいよ」
ゼシカは愛用のヘビ皮のムチを、派手な赤い服に思いっきり叩き付けた。声にならない悶絶でククールはバッタリ倒れ込んだ。
誰も、美青年修道士を気にかける者はいない。いつもの漫才である。
「何者かの悲嘆が風に乗ってきておるな……、のう、ミーティアや」
魔物のような御者・トロデが呟く。
ミーティアと呼ばれた雌馬も、黒い建物を見つめて、ひひひん、といなないた。
彼らが向かっているアスカンタでは、城中の者が2年間喪に服していた。
王妃・シセルが亡くなり、王・パヴァンは未だ立ち直れずにいた。
シセルはパヴァンにとって絶対の存在だった。
シセルがアスカンタ王家に嫁いだのは、今から7年前。
亡くなる5年前のことであった……。
【2】へ
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