「通信・放送委員会(日本版FCC)」

権力の排除理念は共感 
日テレ・氏家斉一郎会長に聞く 

 民主党の原ロ一博総務相が「放送局の表現の自由を守るために権力側を監視する機関」として、「通信・放送委員会(日本版FCC)」を創設する構想を表明 した。これまで政権側から様々な干渉を受けてきた放送界はどう受け止めているのか。日本民間放送連盟の会長(当時)として、放送界の自主自律を守ろうと放 送倫理・番組向上機構(BPO)の設立に尽力した氏家斉一郎・日本テレビ放送網会長に聞いた。    (丸山玄則、赤田康和、村瀬信也)

ー「原口構想」をどう評価しますか。
「第2次大戦中に日本やドイツでは、新聞社や放送局などの言論機関が権力に動かされてしまった。原□さんはそういう歴史を研究した上で、国家権力の放送番組に対する介入を排除しないといけないと言っている。極めて良心的な発想だ」
「しかし、民主党はまだ政権として未熟だと思う。原□構想でまとまるか不透明だ。理念通りに機能するかも問題だ。例えば委員の選任方法。国民投票ならばいいが、政府が任命すれば権力側に立って番組に介入する恐れがある」

-内藤正光総務副大臣はBPOの機能の一部を新委員会が担う考えを示しました。 「BPOは03年、私と当時の海老沢勝二・NHK会長でつくった。当時は 人権擁護法案と個人情報保護法案の立法が検討されるなか、言論の自由を束縛するメディア規制の流れがあった。これに対抗するため、放送界が自ら第三者の自 己査定機関をつくろうということになった」  「BPOは今、非常にうまく機能している。日本テレビは報道番組『真相報道バンキシヤ!』で誤報を流すとい う絶対やっちゃいけないことをやったが、BPOの勧告に対してできるだけ対応した。つぶす必要はまったくない」

ー原口構想の意義は何でしょうか。
「原口構想は、従軍慰安婦問題を扱った番組についてNHKが政治家に事前説明をした問題を前提としていると思う。NHKは受信料で成り立つ公共放送だが、 国家に何か言われれば弱い。BPOは権力が強烈に力を行使してきたとき、権力と闘える組織ではない。そういう意味では、新委員会はNHKに対する介入の防 波堤として機能する可能性が大いにある」「私見だが言論の自由のためならばNHKは民営化した方がいい。経営基盤の独立が言論の自由を守るには必要。我々 (民放)には基盤がある」

-権力の側にメディアが自由を守ってもらうということには不自然さも感じます。「メディアは自ら言論の自由を守ることが必要だ。権力が何か言ってくれば、 断固として闘わなければいけない。では、第2次大戦で日本のマスコミはなぜ政権を批判できなかったか。権力に対する恐怖なんだよ。恐怖と闘い、大多数のプ ラス(幸福)のために立つべきだ」  「政府機能はあまり過大になるとよくない。組織は自分で勝手に仕事をつくろうとし、自己増殖作用を起こす。BPOが 機能している今、屋上屋を架す必要はない」


表現の自由と公共性両立が重要

BPO放送倫理検証委員長
 日本版FCCについて、BPO放送倫理検証委員会の川端和治委員長にも聞いた。    ◇   ◇
テレビというメディアは自由な表現が闊達に行われることで魅力が増し、商業放送も成り立つ。公共財の有限の電波を独占的に使うことへの責務もある。責務は表現の自由を制約するが、これらを両立するにはどうしたらよいかを考えないといけない。
 日本版FCCは政府から独立していても、広い意昧での行政の中にある組織になるだろう。行政組織が強制権を背景に番組内容を規制すれば、表現が萎縮して しまい、番組がつまらなくなって誰も見なくなり、テレビが衰亡していく恐れがある。 BPO放送倫理検証委員会は虚偽放送のほか、放送倫理が守られている かをチェックし勧告や見解、意見を出す。法的強制力はないが、局が従う契約を結んでいる。本当の意味で放送がよくなるには、こうした契約に基づく第三者機 関の意見を元に局が自主的に改善していくのが望ましい。 (談)