山陽新聞 裁判 押し紙 折込詐欺 
山陽新聞 押し紙 裁判

随時掲載予定

                          請求の原因
(はじめに)
 本件は、押し紙裁判である。
 「押し紙」とは、大資本である新聞社が圧倒的劣位にある新聞販売店に対し、実際には購読者がいない新聞を押しつけて、これに相当する新聞原価を支払わせることをいう。このような押し紙は、新聞販売店に不利益を与えるものとして古くから独占禁止法で禁止され、違法とされていたにもかかわらず、今なお隠然として行われている。
 本件は、山陽新聞を発行する新聞社とその子会社たる販売会社がその圧倒的な優位性を利用して新聞販売店に押しつけてきた押し紙による損害について、その回復を求めるものである。


平成20年(ワ)第943号 損害賠償請求事件

原  告  原  渕  茂  浩

被  告  株式会社山陽新聞社ほか2名

2009年4月27日

 

準備書面(5)

 

岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中

 

    原告訴訟代理人

       弁護士  位  田     浩

 

 本準備書面は、被告らの平成21年3月6日付準備書面(4)に対する反論を行うものである。なお、以下では、山陽新聞販売(被告岡山東販売)と被告岡山西販売とをまとめて「被告販売会社」と呼称する。

1 本件押し紙が独占禁止法に違反することについて

(1)告示第9号の「発行業者」には新聞社の子会社たる新聞販売会社も含むと解すべきことについて

   公正取引委員会告示第9号の「発行業者」には新聞社の子会社たる新聞販売会社も含むと解すべきことは、原告準備書面(2)第1の1で詳論したとおりである。

   被告は、このような解釈は憲法31条に違反すると論難する。

   しかし、本件のように新聞販売会社が新聞社の完全な支配下にあるような場合にも、上記告示の予定する押し紙の禁止が及ばないというのであれば、新聞社とすれば、販売店との間に販売会社を介在させることで、容易に本件告示の適用を免れるという脱法行為を許すことになりかねない。したがって、本件の場合には、本件告示を拡張解釈し、被告販売会社にも適用があるというべきである。

(2)被告販売会社による押し紙は一般指定14項(優越的地位の濫用)に該当することについて

   仮に被告販売会社による押し紙が告示9号に該当しないとしても、一般指定14項(優越的地位の濫用)第4号に該当することは、原告準備書面(2)第1の2で詳論したとおりである。また、被告販売会社による押し紙は、一般指定14項第4号(前3号に該当する行為のほか、取引の条件または実施について相手方に不利益を与えること)のみならず、同項第1号(継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること)にも該当するものと解される。なぜなら、押し紙は、被告販売会社が継続的取引を行っている販売センターに対し、その注文部数を超えて不要な新聞を購入させているものだからである。

   これに対し、被告らは、原告と被告販売会社の販売委託契約書の記載をもとに、優越的な地位を利用し、正常な商慣習に照らして不当に不利益な条件で取引するものではないと主張する。

   しかし、被告らの主張は失当である。

   まず、優越的地位の存在については、一般に、次のような場合に認められる。

   @ 行為者が寡占的な業界に属している反面、取引の相手方が中小企業者であり、行為者の提示する条件を拒絶できない場合、

   A 行為者との取引のために、相手方が特別の生産体制をとらされている場合、

   B 系列化が進んでいる場合、

   C 商品・サービスの特性により取引の相手方を変更できない場合、

   D 行為者が有力な事業者であり、相手方はその行為者と継続的取引をすることによってのみ、事業の継続が可能になる場合

   これらの場合には、相手方の行為者に対する依存度が高く、取引関係を解消することが実質的に不可能であることから、優越的地位が認められるのである(条解独占禁止法・弘文堂212頁)。本件についてみれば、被告らの属する新聞業は寡占的な業界であり、中小企業者にすぎない原告が被告らの提示する条件を拒絶することはできず(@)、山陽新聞の販売センターとして販売地域を限定されて系列化されており(B)、被告らの指定する山陽新聞以外の商品を取り扱うことができない(C)。さらに、被告らは有力な事業者であり、原告の販売センターは被告らとの継続的取引をしなければ事業を継続できない(D)。したがって、被告らが優越的地位にあることは明白である。

   次に、実売部数を超えて供給することが正常な商慣習として許容される部数は、実売部数の2%の予備紙だけである。これを著しく超える押し紙を購入させることが「正常な商慣習に照らして不当な取引」であることは、告示第9号の趣旨に照らして明らかである。

   さらに、被告らは原告に対し、押し紙によって購読されない新聞の仕入原価の負担を余儀なくさせているのであるから、不当な不利益を与えていることも明らかである。

   以上からすれば、被告らの原告に対する押し紙は、一般指定14項の優越的地位の濫用に当たるというほかない。

2 本件押し紙が不法行為及び公序良俗違反にあたることについて

(1)本件押し紙が民法709条等の違法性を有することについて

   被告らは、独占禁止法に違反したからといってただちに民法90条や民法709条の不法行為に該当するとはいえないと主張するが、失当である。

   被告らによる本件押し紙は、独占禁止法19条に違反する行為であるところ、この被告らの行為は、それにより故意に(少なくとも過失によって)原告に損害を与えたものであるから、民法709条の不法行為や同法90条の公序良俗違反に該当するというべきである(大阪高判平成5年7月30日判タ833号62頁以下参照)。

(2)被告らによる共同不法行為の成立について

   本件押し紙による不法行為について、被告山陽新聞社に共同不法行為が成立することは、原告準備書面(2)第1の3で詳論した。

   これに対し、被告らは、被告販売会社が被告山陽新聞社の支配下にないとか、販売会社の担当者が「本社の意向だから、販売会社で決められない」等と言ったとしても方便にすぎないと主張する。

   しかし、被告販売会社の資本関係や役員(被告山陽新聞社の代表取締役をはじめとする同被告の役員又は従業員で占められている)を見れば、完全な支配下にあることは火を見るより明らかである。また、担当者による上記発言は、被告山陽新聞社の販売政策ないし販売指示に逆らえないことを述べているのであって、押し紙が同被告の意思のもとに行われていることを基礎付けるものである。

3 原告のこうむった不利益について

(1)被告らは、原告の主張する損害が平成15年に432万円もあれば、それだけで販売センターが立ちゆかなくなるのに、平成19年3月まで事業を継続しているのは、押し紙のほかに倒産原因があると推察されると主張する。

   しかし、被告らの上記主張は、原告の損害に関する主張を正しく理解できていないことによるもので、失当というほかない。

   原告の損害(損失)は、違法な押し紙の新聞原価の支払を余儀なくされたことによる損害(損失)である。つまり、原告は、押し紙がなければ得られていた営業利益を違法な押し紙により被告らに収奪されてきたのである。平成15年の損害(損失)だけで直ちに経営破綻に至るようなものではなかったが、このような損害(損失)が平成18年まで増大し続けたことにより、ついに経営を放棄せざるを得なかったのである。

(2)被告らは、原告が独占禁止法の特殊指定について熟知していたと主張するが、否認する。それを熟知したうえで行っていたのは被告らの方である。

   また、被告らは、原告が「押し紙」の指摘をしていなかったとするが、否認ないし争う。原告は当時「押し紙」という用語は知らなかったが、購読されない送り部数を減らすよう担当者らに求め続けてきた。

(3)被告らは販売センターと販売会社が「共存共栄のパートナー」であると主張するが、かかる主張が失当であることは、原告準備書面(3)第1の4で詳論した。

   また、被告らはテリトリー制により原告を保護しているかのような主張をしているが、裏を返せば、当該地域以外の販売を禁じられていることである。テリトリー制は、まさに被告らの優越的地位を基礎付ける事情の1つにほかならない。

   被告らの主張する押し紙による原告の利益なるものが虚構にしかすぎないことは、原告準備書面(2)第1の4で詳論したとおりである。

4 「注文部数」について

  被告らは、原告からの仕訳日報表の5日数に基づいて新聞を送っているのだから、注文部数を超えていないと主張するが、失当である。

  注文部数とは、実売部数に2%程度の予備紙等を加えた部数をいうのである。公正取引委員会は、株式会社北國新聞社に対する勧告において、「新聞業においては、新聞販売店が実際に販売している部数に正常な商慣習に照らして適当と認められる予備紙等を加えた部数を新聞発行業者に対する『注文部数』としている」と定義している(甲9)。

  さらに、上記事件について、公正取引委員会は、北國新聞社が発行部数を拡大するために増紙計画を策定し、その計画に基づいて、新聞販売店に対して注文部数を著しく上回る部数を目標部数として設定し、その目標部数を新聞販売店に提示することによりほぼ目標部数どおりの部数で新聞販売店と取引をしているとし、それにより新聞販売店においては相当部数の販売残紙が生じ、経済上の不利益を受けていると認定したうえ、北國新聞社に対し、同社が新聞販売店に目標部数を提示してほぼ目標部数どおりの部数で取引することにより注文部数を超えて供給することを取りやめること、新聞販売店が注文部数を自主的に決定しうるようにするための措置を講じること等を勧告した(甲9)。

  本件においても、被告らは原告に目標部数を提示し、ほぼ目標部数どおりの部数で取引することにより注文部数を超えて新聞を供給しており、上記北國新聞社事件で認定された押し紙とほとんど変わらない。しかも、上記事件は従前の告示が改正されて告示第9号が制定される前の平成9年の事件である。平成11年の告示改正の理由は「現行の規定の仕方からは、発行業者が販売業者の注文部数自体を増やすようにさせた上、その指示した部数を注文させる行為も規制されることが明確になっていないという問題があり、このような行為も明確に禁止の対象とする必要がある」とされている(乙3の2)。すなわち、発行業者と販売業者との合意に基づく押し紙も明確に禁止されたのである。本件押し紙は、そのような新聞取引が告示第9号により明示的・具体的に禁止された後のことであって、その違法性は強いというべきである。

5 「目標数」について

  被告らは、目標数は販売センターとの間で協議して決めてきたとか、目標数に不満が出れば数値を変更していたと主張するが、否認する。

  そもそも優越的地位にある被告らが販売センターに対して目標数を提示すること自体が優越的地位の濫用に当たりうるものである。上記の北國新聞社事件においても、公正取引委員会は同社に対し、新聞販売店が注文部数を自主的に決定しうるようにするための措置を講じることを勧告している。平成18年下期の目標数の設定の際にも、原告は被告販売会社に対して減紙を求めたが、拒否された。

  また、被告らは、目標数と同数又はプラス1部の注文をしてくる販売センターについてそれだけの実売部数があるものと信じてきたなどと主張するが、否認ないし争う。「目標数」は被告らも認めるとおり目標にすぎず、実売部数とは異なるのであるから、仕訳日報表の実売部数が目標数と一致すること自体、本来であれば不自然なのである。被告らは、原告の仕訳日報表の部数が実売部数ではなく、被告らが提示した「目標数」にすぎないことを知りながら、その目標部数を供給していた。北國新聞社のしていた違法行為となんら異ならない。

  原告は被告販売会社に対して「読者登録票」や「増減簿」を提出している。それらによって、被告らは実売部数の増減は確実に把握できる。しかも、それらは被告山陽新聞社の子会社である且R陽計算センターで一元的に管理され、被告らはいつでも容易に実売部数を確認することができる。また、被告販売会社は原告に対し、必要なときはいつでも読者一覧表や発行表の提示を求めることができる(乙7・6項、乙8・5項)。被告らにおいて実売部数を知らないはずがなく、販売センターの仕訳日報表の部数が実売部数だと信じる客観的な根拠はどこにない。

6 架空の領収書について

  原告準備書面(2)第2の3のとおりである。

  原告に対して架空領収書の作成を指示してきたのは、山陽新聞販売の赤木本部長や小林副本部長らである。また、同人らは原告に対し、ABC部数調査に備えて、架空の読者や架空のコンビニ等の即売場所を作ったり架空のサービス読者を作ったりして新聞が配達ないし販売されているかのように見せかけるための指導を行った。なお、新聞社がABC部数調査に備えて様々な偽装工作を行うことは知られた事実である(甲62・46頁)。

7 被告らが取引上の優越的地位にあること

  被告らが原告に対して優越的地位にあることは、上記1(2)のほか、原告準備書面(3)第1の4で詳論した。

  被告らは、JR社宅の立ち退きの際に原告から減紙の申し出があったことを自認しているが、そのときですら被告らは減紙していない。被告らが取引上の優越的地位を濫用し、原告に対する押し紙を続けてきたことは、この一事をもってしても明らかである。

8 被告らによる実売部数の把握について

  被告らは、販売センターにおける実売部数を把握することは不可能であり、販売センターの申告を信用せざるをえないとか、実売部数について確認したことはなく、販売センターの仕訳日報表を信じているとか主張する。

  しかし、販売センターの実売部数は、上記5で述べたとおり、販売センターから被告販売会社に提出される「読者登録票」や「増減簿」(甲61)により把握できるほか、読者一覧表(甲12〜)や発行表(甲21〜甲22)をみれば明らかであり、これらの表は被告らが容易に確認できるものであるから、被告らの上記主張は客観的理由を欠き、失当というほかにない。

  さらに、被告販売会社は原告ら販売センターに対し、押し紙と同時に発生する不要な折込チラシを廃棄するための段ボール箱を支給している。押し紙がないというのであれば、このような折込チラシ廃棄用の段ボール箱を支給する必要もない。

  被告らは、その優越的地位を利用して販売センターに実売部数を著しく超える目標数を提示し、その目標数に応じた仕訳日報表を販売センターから提出させていた。被告らが販売センターとの信頼関係があるので実売部数を確認しないなどという主張をするのは、実売部数を知っていたことを認めると、違法な押し紙と知りつつ目標数を設定し新聞を供給していたことを自認することになるからである。

  被告らの上記主張は、実売部数を把握していないことにするためにする主張と考えざるをえない。

9 折込広告料について

  被告は、原告が目標数にあわせた部数を注文したのは多額の折込広告料を期待したからであると主張するが、かかる主張が失当であることは、原告準備書面(3)第2の4や原告準備書面(4)第4項(3)で詳論した。

  被告らから提出された請求書(乙21)によれば、2003(平成15)年2月の折込広告料は100万円にすぎない。朝刊1部当たりにすると、538円(100万円÷1858部)である。このわずかな折込広告料が欲しくて、その4〜5倍以上にもなる新聞原価(セットの場合は1部当たり2992円、朝刊の場合は1部当たり2325円)の支払を余儀なくされる押し紙を進んで購入することなどありえない。折込広告料が少しくらい減っても押し紙を減らした方が利益になるである。

  折込広告料は、原告に対する請求から控除される(甲4や乙21の控除明細の「折込料」欄)が、その算出根拠が明らかでない。                                         

以 上





平成20年()第943号 損害賠償事件

 

原 告 原 渕 茂 浩

 

被 告 株式会社山陽新聞社ほか2名

 平成21年3月6日

 

岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中

           

           被告ら3名訴訟代理人 弁 護 士   香 山 忠 志

 

準 備 書 面 ()

 原告の準備書面()ないし()の主張について被告らの従前の主張に反する部分は

全て否認ないし争う。

 

第1 原告の準備書面()への反論

  1 同準備書面の第1の1について

    告示第9号の「発行業者」に子会社たる新聞販売会社を含むとする解釈は原告の独自の見解である。

    行政手続にも憲法31条の適用のあることは判例の立場であり、告示第9号には「発行業者」を明確に定義している。本件では原告は販売会社が販売センターに対し優位的地位にあるとか、販売会社は発行業者の子会社であるとか主張し、そのことを前提として「発行業者」に販売会社も含めるべきであると主張し、被告らはこれを争っているものである以上、「発行業者の」概念をいたずらに拡張する、あるいは類推する解釈は憲法31条に反し許されない。

    また、「発行業者」に販売会社は含まれないとの確認がなされていないことをもって、原告の主張の根拠としているが、それは逆であり、告示改正の際に、この点に関する議論がなされていないこと、あるいは「発行業者」のなかに「販売会社を含む」と明確に書かれていない以上、告示第9号の「発行業者」には販売会社を含まない趣旨と解するのが文理解釈からしても正当である。

    排除措置命令は独占禁止法第20条に基づくものであり、罰則とは同法第90条第3号に該当する場合のことである。(求釈明への解答)

  

2 同準備書面の第1の2について

    原告は販売会社による押し紙(被告らは、そもそもかかる用語を用いること自体承知していない。) が一般指定(第14項)に該当すると主張しているが(一般指定第14項の第何項に該当するとの主張か明らかにされたい(求釈明の申立))、販売会社(被告岡山東販売。その後は被告岡山西販売)と原告との販売委託契約(乙7、8)は、販売会社が「優位的地位を利用し」、「正常な商慣習に照らして不当に」「不利益な条件で取引する」ものではない。

    また、原告の主張には原告との販売委託契約が独占禁止法上の特殊指定あるいは一般指定第14項に該当するから、私法上も違法であるとの見解が前提になっている。しかし、独占禁止法は公正な競争秩序の確保という公法秩序に関するものであり、その違反が直ちに私法秩序の上でも無効あるいは違法とされるわけではないことは、最2小判昭52.6.20民集31巻4号449頁からも明らかである。私法上の有効性あるいは違法性は民法90条や民法709条の要件事実該当性を個別具体的に検討して初めて判断し得ることである。まして、本件では一般指定第14項にも該当しない。

3 同時準備書面の第1の3について

   被告らの共同不法行為の主張は全面的に争う。被告山陽新聞社が販売会社である被告岡山東販売、被告岡山西販売を支配下に置くものではないことは、既に被告ら準備書面(1)の4ページ以下で述べたとおりである。

    原告は「原告が販売会社の担当者に対し、押し紙を減らして欲しいと要請したときにも、担当者は『本社の指示であるからできない』『本社の意向であるから、販売会社では決められない』とか言って、これを拒んできた。」と主張している。

   現場でどのようなやりとりがなされてきたかは不知である。しかし、販売会社の担当者が目標部数決定の協議のなかで販売センターに販売会社の意向を受け入れてもらう方便として、そのような言葉を使うことがあろうことは容易に推測がつくものであり、そうした言辞がなされたことをもって、被告山陽新聞社が販売会社を支配している証拠とはならないものである。

4 同準備書面の第1の4について

 (1)()について

   原告は販売会社による「押し紙」が民法709条の不法行為であると主張しているが、被告らは訴状添付の一覧表の「押し紙」の数量については全面的に争っている。そもそも販売会社による「押し紙」という概念が存在しないことは従来の主張のとおりである(販売会社には告示第9号の適用がない)

    原告は「押し紙による不利益を甘受する経済的合理性がない」と主張しているが、原告と被告岡山東販売ないし被告岡山西販売との取引は、平成12年5月1日から平成19年3月まで継続した。そのうち原告は平成15年2月以降に押し紙を主張し損害が発生したと述べている。原告の主張では平成15年に432万円、平成16年568万円、平成17年に750万円、平成857万円、平成19年の1月2月だけで155万円も損害が発生していたというのである。原告のような小規模事業主では平成15年に発生したという452万円もの損害が発生したという。このことだけで販売センターが立ち行かなくなるはずである。しかし、現実には平成19年3月まで事業を継続しているのであり、原告が倒産したのは別の原因であろうと推察される。

    原告は被告岡山東販売(当時山陽新聞販売)から岡輝販売センターを任される前は、毎日新聞藤原販売所、その前は岡山日日新聞の販売局に勤務していた。しかも毎日新聞藤原販売所長をしていた平成8年4月から4年間、原告は中国地区新聞公正取引協議会岡山県支部の下部組織である岡山市東部実行委員会構成メンバーであり、独占禁止法の特殊指定(押し紙)について熟知していた。しかし、その後、原告は山陽新聞販売岡輝販売センター長になってから被告らによる「押し紙」があったとの発言や指摘もしていない。

    原告は「原告が被告らから・・なんの奨励金も補助金も出していない。」と主張しているが、販売センターと販売会社は共存共栄のパートナーであり、各種の支援を行っていることは準備書面(2)の3〜6頁で述べている。これに加えテリトリー制に「とり販売会社からも他の販売センターからも顧客を奪われることのない地位が保証されている。

    原告は被告らに対し、どのような利益がいくらあったか具体的に主張されたいというが、それは逆であり、原告が平成12年5月から平成19年3月まで取引を継続してきたのであるから、それは原告にとって経済的合理性、したがって事業収益がそれなりにあったから販売センターを継続してきたのである。原告は独立の事業者であり、被告らには事業収益の詳細は分からない以上、原告においてその収支を明らかにすべきである(求釈明に対する回答と求釈明の申立)。

 (3)について

    争う。販売会社は原告からの5日数による仕訳日報表による注文に部数を原告に送っているわけであり、注文部数を超えた部数を送ってはいない。販売会社には何らの債務不履行もない。

 5 同準備書面の第2の2について

    原告は、()目標数は合意するものではなく販売会社が決定するものである、そのことを前提とし、()目標数の決定とその目標数に合わせた仕訳日報表の提出要求は、まさに告示第9号で禁止されていると主張している。

    しかし、()について、目標数は半年ごとに、販売センターの責任者に販売会社に来てもらい、あるいは販売センター担当者が販売センターに赴いて、合意し又は協議して決めた(但し、平成18年の下期の目標数の設定に際しては販売会社の会社分割手続の混乱もあって、ファックスあるいは持参により目標数を知らせたが、原告はこれに対し何の意義も言わなかった)。そのとき目標数に不満があれば数値を合意又は協議のうえで変更している。()について、目標数はあくまで目標数であり、販売会社は営業が主目的なので各販売センターに実配部数を目標数に近づけるようお願いするが、実配の見込みがない場合には、販売センターは目標数から下げた注文部数を仕訳日報に記載して提出している。目標数と同数又はプラス1部の注文をしてくる販売センターは、信頼関係に基づきそれだけの実配部数があるものと信じてきた。

 6 同準備書面の第2の3について

   原告の反論は否認する。架空の領収証を被告らの担当者が指示する。あるいは示唆するはずがない。原告に販売センターを任せても都合が悪ければ、契約を更新することなく終了し、別の意欲ある人に任せれば済むことであり、架空の領収証の作成を指示あるいは示唆してまで原告の実際の売上部数を仮装させる必要もない。

    むしろ、原告はこうした手口を知悉していたからこそ、目標数の合意に際しても特段の意義を言わず、仕訳日報による注文部数を目標数と同数あるいはプラス1部としても仮想が容易だったわけである。

 7 同準備書面の第3について

   原告の反論については全面的に否認ないし争う。

   被告岡山東販売の株式保有者、保有株式数は個人情報の問題もあり釈明には応じられない(求釈明に対する回答)

   被告山陽新聞社がその余りの被告を支配していることもないし、押し紙も存在しない。

 

第2 原告の準備書面()に対する反論

 1 同準備書面の第1の1から3について

   原告は毎日新聞藤原販売所長でありながら同社に多額の損害を与えたのである。原告が販売会社に対し目標数について、「できない」「減らして欲しい」とたびたび申し出たことはない。原告からはわずかにJR社宅の立ち退きの際に、そうした申し出があっただけである。原告は顧客管理が杜撰であったこと、多年にわたり虚偽の実配報告をしてきたものである。

 2   同準備書面の第1の4

  ()について

    すべて否認ないし争う。@Aについて、原告は「実際の読者管理は被告山陽新聞の関連子会社である株式会社山陽計算センターが行っている。」などと述べているが、責任転嫁も甚だしい。原告は新聞販売を業とすり独立の事業主である。営業も顧客管理も収支決済も税務申告も独自で行っており被告らは何の関与もしていない。原告は販売会社の内部組織の一部門ではない。原告は「被告らは計算センターから提供される読者一覧表をいつでも確認できた。」と主張するが、準備書面()の9頁以下で述べたように、そのような仕組みにはなっていない。乙7の第6頁。乙8の第5頁をみても、「読者管理」として「乙は・・帳簿書類を作成し常備し」   なければならないとされており、読者の管理は原告の責任とされている。

    Bについて、購読者の増加は販売センター・販売会社の利益であり、購読者の減少は販売センター・販売会社の損失となる。購読者の増減にかかわらず、販売会社が販売センターへの送り部数を一方的に増やすことはない。販売センターによる仕訳日報による注文部数を送っているわけであり、毎月の仕入れ部数(注文部数)は販売センター長自らが読者の動向を見て決めているはずである。Cが優位的地位を意味する典型であるなどと主張しているが、優位的地位にある者との取引であったとしてもそれにより取引自体が違憲無効となるものではない。むしろ現実の取引社会では契約当事者の一方が優位的地位にある例は多々存在する

 (2)について 

    共存共栄のパートナーと捉えているから、各種の親睦や補助がなされているわけであり、これらは被告らが原告を支配する道具として使っているわけではない。   

    「拡張の応援については、原告の場合ほとんど応援らしいものはなかった。」と主張しているが、事実に反する。拡張の応援のために販売会社からセールススタッフが原告を訪ねて行っても、原告が拡販に不熱心であるため、チラシの折込を手伝わされたり、喫茶店で待たされて結局拡販の応援に至らず帰されたとの報告が多々集まっている。

 3 同準備書面の第2の2

  ()について

   求釈明に対する回答

@    について、山陽新聞販売及び被告岡山東販売、被告岡山西販売とも、山陽新等の部数を伸ばすことを目標とする営業会社である。目標数とは、月々の営業目標数である。営業目標数は当然、実配部数である。

A    について、そもそも新聞業界では発行本社と販売所は「信頼の関係」で成り立っている。販売会社と販売センターの関係についても、信頼の原則を基本に置いて取引している。それが、新聞業界での長年の商慣習ともなっている。読者数についても、現場の販売センターが把握しており、販売会社は読者数については販売センターの申告を信用せざるを得ないのが一般的である。販売会社で各販売センターの読者数、実売部数を裏付けるのは容易なことではなく的確に把握することは不可能ともいえる。会社によっては読者のデータベースを構築し、会社と販売センターをオンラインで結んで部数管理している会社もあるが、それでも実売部数の把握は困難といえる。

B    について、販売会社と販売センターの取引においても、通常、販売会社は販売センターの実売部数の確認の裏付けまではしていない。販売会社は販売センターの注文部数をもって実売部数と信じて取引を行っている。販売会社が実売部数の確認をするとすれば、販売会社への納金が遅れたり、不審な点があったときくらいである。このように、被告岡山東販売、被告岡山西販売とも毎月、販売センターから送付される仕訳日報表を信用し販売政策を実施しているのである。

C    について、岡輝販売センターは山陽新聞販売岡輝支店であったが、平成12年5月に原告と販売委託契約を結んで岡輝く販売センやーとしてスタートした。原告に委託する際、実売部数は1823部で予備紙はゼロであった。販売会社直営の支店であったから実売数の管理ができていたのである。センターとして販売委託して以後は、原告が販売委託契約に基づいてセンター管理、読者管理をしているものと理解しており、毎月の仕訳日報表を信じて目標数を合意又は協議して決めてきた。@の回答で述べたとおり、販売会社とセンターとは信頼の原則で結ばれており、原告を信用し、信用取引を続けてきた。JR社宅の移転の際は、目標数について担当者と会話しやり取りがあったが、原告が強行に部数減を主張したわけでもない。原告が取引を始めてから「押し紙」などと訴えることもなく、ごく普通の取引が続いてきた。

   (2)について

       原告の主張には大きな事実誤認がある。

       目標数の設定について、販売会社は各販売センターと合意又は協議して決めている。目標数はあくまで購読部数の目標数であって、この数値に近づけるよう販売センターにおいて顧客獲得の努力をする数字である。毎月読者の増減は発生するものだから、1日数の仕訳日報により、その月の販売センターへの注文部数の予備紙を明らかにし、そして5日数の仕訳日報によりその月の注文部数を確定する仕組みである。販売会社は営業が主目的なので各販売センターに実売部数を目標数に近づけるようお願いするが、販売センターが実売の見込みがない場合には、目標数から下げて仕訳日報表による注文をしてくる。目標数と同数又はプラス1部の注文をしてくる販売センターは、信頼関係に基づきそれだけの実売部数があるものと信じてきた。

    4 同準備書面の第2の3について

      (1)(2)について原告の反論はすべて否認ないし争う。

    5 同準備書面の第2の4について

      すべて否認ないし争う。

      「押し紙」という主張は、原告代理人において本件の訴訟になって主張しているだけである。原告は岡山日日新聞の販売局にも勤務し、退職後は毎日新聞藤原販売所長として事業主の経験もある。中国地区新聞公正取引協議会の下部組織、岡山市東部実行委員会の構成メンバーであり、これまで一度として「押し紙」で困っているとの問題提起もなされたことがない。

       朝刊についていえば、目標巣にあわせた部数の注文を出すことにより、多額の折込料期待できるうえ、販売会社から販売成績のうえで優秀者と評価してもらえることを期待しているのである。原告は目標設定には多少の不満があったかもしれないが、利害損失を考慮して目標数に合わせた仕訳日報表による注文を出してきたのである。

    6 同準備書面の第3の1、2について

      被告らの準備書面(2)の9頁以降に記載したとおり、原告の主張はすべて否認ないし争う。

    

   第3 準備書面(4)に対する反論

    1 同準備書面の1について

      原告が怠惰で読者の管理も集金の管理も怠っていたことは、本件訴訟後の販売会社の調査で明らかであり、多くの関係者の証言するところである。

    2 同準備書面の2について

       平成16年度下期の目標数の設定にあたり、原告から「90世帯が移転するため目標数を減らして欲しい。」との話があったようであるが、当時の担当者は原告からの申出が真剣な減紙の申出とは受け取らなかった。これに加えて、この社宅跡地に約半年後の平成17年2月にマンション(86世帯)が完成する予定であったことから、販売会社は部数の目標数を現状のまま維持して欲しいと強く希望し(このマンションに入居者を熱心に勧誘すれば多数の読者を獲得することが可能であると判断した)。原告も了承して目標数の現状維持となったことがある。被告側が違法な「押し紙」を強要したことはない。  

       なを、「JR東古松社宅の山陽新聞の購読者数が90人いた。」と主張しているが、JR(11区)の立ち退きは平成16年に177戸だが、平成15年11月の領収証の控えは19部、口座振替部数は6部の計25部があり、平成16年11月の領収証の控えは15部、口座振替は4部の計19部である。すなわち、当時の山陽新聞の購読者数は20人前後であった。

    3  同準備書面の3について

       被告らが明らかにしたごとく領収書の残券(回収不能の領収書)は年間700万円弱にのぼり、うち500万円強が宛先を原告名義とする架空の領収書である。原告名義分を除くと領収書の残券額(架空分を含む)は180万円前後にのぼる。読者管理や集金管理がきちんとできておれば、このような損失は被らない。毎年200万円の弱の損失を被っておれば、積もり積もって甚大な額となる。

       また、宛先を原告名義とする架空領収書は被告らの担当者が指示したというが、作り話もほどほどにしてもらいたい。その担当者の氏名を明らかにしてもらいたいと求釈明(平成20年8月25日付け求釈明も申立)の申立をしているが、原告は一向に明らかにしないのは、作り話だからである。

    4  同準備書面の4について

       原告は「目標数を被告らと協議したことはないし、被告らが決めて一方的に通知してくる。」と主張しているが事実に反する。例年、上期・下期の目標数の設定にあたっては、販売センターの責任者を個別に販売会社の本店に呼び、あるいは担当者が現地に赴いて、合意し又は協議して決めている。但し、平成18年10月の18年度下期の目標数の設定にあたっては、被告岡山東販売の前身である山陽新聞販売の会社分割の関係で多忙であったことから、原告に対し、ファックスまたは訪店時に持参の方法で知らせた模様であるが、これに対し、原告からは何の異議も出されなかった。

       原告が取得した各月の折込料は乙21の控除明細の「折込料」のとおりである。(求釈明に対する回答)