身の毛がよだつ

 

 

 

 「まったく、あの子は何してるのかしら? 約束の時間を1時間以上も過ぎてるじゃない! クドリャフカまで来てくれないし……このままじゃ年を越してしまうわ。もう! あの子ったら適当なんだから! クドリャフカも何してるのかしら……あの子の適当癖がうつったのかしら?」

 

 私の視線の先で、お姉ちゃんが部屋を歩き回る。綺麗に片づけられた部屋の中を、ぶつぶつ言いながらぐるぐるぐるぐる。

 うーん、無意識で動き回ってるのに、正確な円形を描いているのは実にお姉ちゃんらしいですネ。

 お姉ちゃんが回る間に、時計の針もくるくるまわり、今年が終わるまであと40分と15秒。お姉ちゃんは気付かない。

 

「ふふふ、お姉ちゃんは相当かっかきているようです。まさに計画通り、はるちんってば天才ですね!」

「わふ……何の計画かは知らないのですが、お部屋に入り込んできた挙げ句、お姉ちゃんを喜ばせる為ですヨ? と言って、私をベッドの下に押し込んだのはなぜなのでしょーか? 一瞬、これがじゃぱにーず押し込み強盗なのかと思ってしまいました」

 小声で呟いた時、隣からやっぱり小声でクド公が話しかけてきた。

 うーん、やっぱりこのちっこいワン公にはるちんの天才的な作戦計画を察するのは無理なようデスネ。あと、理由も聞かずに押し込まれたまんまになっているクド公はやっぱりワン公だと思う。どっちかっていうとわんころ? お姉ちゃんがでれでれになる気もわかる気がしますネ。

 

「……そして、早く出ないととんでもない事になってしまうのは私だけなのでしょうか? 約束の時間にたっぷり遅れてしまったせいで、佳奈多さんが喜ぶどころかお怒りのご様子なのです。まして、いたのに隠れていたなんて事がばれたら、きっと佳奈多さんはとってもとっても怒るのです。佳奈多さんがお怒りになると、それはそれは恐ろしいのですよわふーっ!」

 クド公はそう言ってがたがたと震えだした。なんかもーホントに調教済だなぁ。

 ちなみに、がたがたクド公は、もう佳奈多さんのケーキを黙って食べたりしません、食べた後、口にクリームをつけたまま『わ、わふ、知らないのですよ?』なんて言ってごまかしません本当ですとか言ってる。うーん、手に取るように状況がわかります。

 まーお姉ちゃんに怒られ慣れてる私はいいとして、初めてのクド公にはトラウマものだったのですネ。

 お姉ちゃんに怒られている回数が多い私は、ちょっと優越感なのですヨ?

 と、優越感に浸りながら、私はクド公にさらなる勝利の笑みを送った。

 

「ふふふ、クド公はやっぱり大人のレディーにはほど遠いようですネ」

「わ、わふっ!?」

 驚いたように頭をあげたクド公がベッドに頭をぶつけてうずくまる。ちょっと、お姉ちゃんにばれるっ!?

 慌ててクド公の口を塞いで、お姉ちゃんの様子を伺う。お姉ちゃんは「あの子達は本当に心配かけてばかりなんだからもうっ!」とか言って携帯を開いたり閉じたりしていて、こっちに気付いた様子はないみたい。一安心ですネ。

 

「ふふ、クド公、約束を守って喜ばせるのは子どものやることですヨ? 約束を破ってこそ、より大きな喜びを得る事もあるのですヨ?」

「わふっ!? そうなのですかっ!?」

 私の一言に、クド公は目を見開いてこちらを見る、目から鱗といった面持ちだ。ふふふ……じゃあさらにはるちんの偉大なる計画を聞かせて、その瞳を尊敬の二文字に変えて見せますヨ?

 ちらりとお姉ちゃんを見れば、ビー玉で自爆して階段から落ちてないかだの、お年玉に釣られて誘拐されてないかだの、意味不明な心配をしてる。クド公はともかく、私はそんなアホの子じゃないですよ?

 さて、そんな心配性お姉ちゃんを横目に見ると、はるちんはニヤリと大人の笑みを浮かべて、さぁ、作戦を明かす時が来ましたよ?

 

「クド公と三人で初詣に行こうと誘えば、お姉ちゃんは間違いなくついてくるのです。そこを待たせて、待たせて、もーこれでもかとばかりに待たせまくって、怒るどころか私嫌われてるんじゃないのかしら実は私の事騙して実は二人で初詣に行っちゃったんじゃないかしらむしろ駆け落ちとかでも二人とも女の子じゃないとかお姉ちゃんが落ち込み始めたところで、愛しい妹とルームメイトがあけおめことよろっ! もーお姉ちゃんの嬉し泣きが目に見えるようです。名付けて『どーんと落として一気に上げる。新年が始まると同時にベットの下から飛び出して、新年明けましておめでとうforお姉ちゃんっ! 可愛い妹のサプライズですヨ? 作戦』略してお姉ちゃんと一緒に新年迎えてはるちんもお姉ちゃんもはっぴープロジェクトですよっ! どうだクド公、この完全な作戦計画に身の毛がよだつ思いでしょう?」

「……わふー、それは確かに身の毛がよだつ思いなのです」

「ふふん、もっと誉めな……って何自分で自分の縛ってるの? っていうかどこから出したそのロープ? リード?」

「……わふ、私は葉留佳さんに無理矢理押し込まれただけなのです。私は嫌だと言ったのです、私は可哀想な被害者さんなのですっ! 葉留佳さんを信じた私がアホの子でした。佳奈多さんにアホの子アホの子と言われ続けていた意味がよくわかったのです。これからはもう葉留佳さんに乗せられたりはしませんぐっばいがーる。だから私にはかまわないでくださいなのですーっ!!」

「って待てやクド公、何失敗するって決めつけてるの!? このはるちんの灰色脳細胞が導き出した完全な計画のどこに穴があるというのデスか?」

「穴というのは基本が出来ているから穴と言えるのです。基本からしてぼろぼろな計画に穴なんて出来ようがないのです。ついでに葉留佳さんの灰色はきっとカビ色なのです」

「うっわ、さすがにそこまで言われると清々しくてはるちん言い返す気力もありませんヨ?」

 

 ……っていうか、クド公いつからこんなに毒舌になったの? むむ……これはお姉ちゃんの影響を受けてる!?

 しかしこれははるちんにとって誤算であります。クド公の協力を得られないとなると計画に変更が……

 

 

 

「そうね、葉留佳の考える事はいつもいつもなってないんだから」

「わふっ!?」

「げっ!?」

 

 気付けば目の前にはベッドを覗き込むお姉ちゃん。心なしか頬がぴくぴくしている気がしますヨ?

 あれ? これって何かお約束な展開な予感が!?

 

「わ、わふーっ! 佳奈多さん私は違うのです! 葉留佳さんに無理矢理引きずりこまれただけなのですっ!」

「クド公早っ!? っていうか裏切り者ー! あんただって私の計画聞くまで普通にいたじゃん! 仲間じゃん!!」

「違うのですっ! 私は知らないのですっ! 気付いたらぐるぐる巻きにされてベッドの下に押し込まれていたのですっ!! 無実なのですーっ!!」

 

 わふわふ騒ぐクド公を横目に、お姉ちゃんがこちらに近づく。うっわ、これはるちんの経験的に言うと、もう明日の朝陽は木にぶら下がったまんまフラグですヨ?

 

「お、お姉ちゃん、これは「クド公と三人で初詣に行こうと誘えば、お姉ちゃんは間違いなくついてくるのです。そこを待たせて、待たせて、もーこれでもかとばかりに待たせまくって、怒るどころか私嫌われてるんじゃないのかしら実は私の事騙して実は二人で初詣に行っちゃったんじゃないかしらむしろ駆け落ちとかでも二人とも女の子じゃないとかお姉ちゃんが落ち込み始めたところで、愛しい妹とルームメイトがあけおめことよろっ! もーお姉ちゃん大喜び。名付けて『どーんと落として一気に上げる。新年が始まると同時にベットの下から飛び出して、新年明けましておめでとうforお姉ちゃんっ! 可愛い妹のサプライズですヨ? 作戦』略してお姉ちゃんと一緒に新年迎えてはるちんもお姉ちゃんもはっぴープロジェクト!」とでも言うつもり?」

「……お姉ちゃん、いくらなんでもそこまで察するのは無理があると思います」

「そうね、あなたの机の上にまんま書いた計画書があったから暗記しただけよ」

「……何で私の部屋に入っておいでなのでしょーか?」

「……大掃除押しつけたのあなたじゃない」

 

 しまった、はるちん迂闊!? 完璧な計画に一点の穴が!?

 あれーじゃあお姉ちゃん私の計画知ってたっていう事デスカ? あれ?

でもならなんで……

 

 私がそこまで考えた時に、ごーんごーんと除夜の鐘。あれ? 時計ではまだ……

 そんな事を思った時に、お姉ちゃんがたまらず吹き出して、私の頭を撫でてくれた。ほわっとした頭で、あれれ? あれれ? どうなってるの?

 私がそんな事を思った時、お姉ちゃんが言った。

 

 

「いつもいつも自分だけがいたずらを仕掛けると思わない事ね。新年あけましておめでとう、二人とも」

 そう言って笑うお姉ちゃん。あれれ、もしかして私の完璧な作戦は色々とばればれだったの?

 やっぱり葉留佳さんじゃ佳奈多さんにかなわないのですとか言っているクド公は後でしめるとして、でも、でも……

 

「今回は完敗なのですヨ? でも、お姉ちゃん、来年こそは……」

「「負けないわ」」

 

 意地っ張りな私たちの、楽しい楽しいニューイヤー。

 今年は、どんな一年になるのかな? お姉ちゃん。

 

 

 

『おしまい』

 

 

 

〜あとがき〜

 と言っても書くことがないのですヨ(えー)

 いえ、裏もなく表もなく、ただただ楽しく過ごす三人を書きたかっただけでして。

 仲良し三人組を書くのは楽しいのです。そして、なんだかんだでいつも書いてしまうのですw