リトバス小話〜佳奈多さんのお茶会〜

 

 

 

 私の目の前には、綺麗に整えられたテーブルと、その上に並べられた三人分の食器が並んでいた。

 その上には、クドリャフカと二人で作ったケーキやお饅頭だのが所せましと並んでいる、お茶も紅茶と緑茶の二種類を用意してある。

 それは和解の証、今までぶつかり合っていた私たち姉妹の、和解の証。そして、一人の友を加え、これから始まるはずの新しい関係への、ささやかな祝杯だった。

 なんだか調和がとれていない気はしないでもないのだけれど、気がつくとクドリャフカが『昨日から準備していたのですよー佳奈多さんとお料理なのですー』と、あんこを持ってはしゃいでいたので、止めるに止められなくなってしまったのだ。なんだかんだで、クドリャフカに押し切られるのは私の悪い癖かもしれない。

 ひとまず、今度あの子にお茶会と茶会の違いというものを教えてあげようと思う。

 

 でも、そんな予定は見事なまでに狂ってしまった、そして狂わせたのは間違いなく私。

 

 三人分のティーセット(と茶道具)は、その役割を果たすことなく整然と並び、ケーキやお饅頭は、もはやレストランに置かれるレプリカとなんら変わりない。

 午後の陽気を楽しみながら行われるはずだったお茶会は、一番星が見える時間になっても行われる気配がなく、心地よい風を入れようと開かれた窓からは、寂しげな夜風が入り込む。太陽が沈み、空の色は急激に変わる。

 揺れるカーテンに手をあて、誰にも聞こえないように小さく自嘲した。

 

「どうして素直になれないんでしょうね、私は」

 

 それは何度も言った言葉、そして、二度と言いたくなかった言葉。

 ゆっくりとはき出されたそれは、そのまま空に吸い込まれる。願わくば、二度と私の所に戻ってこない事を……

 

 素直になりたい、もう、自分を作って、嫌われるように生きるのは嫌。

 葉留佳……クドリャフカ……偽らない私を出して、遊びたい。

 そう、その為に今日決意したのに、勇気を出して、葉留佳を誘ってみたのに……慌ててしまって、恥ずかしくなってこの様だ。しかも、クドリャフカまで巻き込んでしまった。

 せっかく遊びに来てくれた葉留佳も、昨日から手伝ってくれていたクドリャフカも、二人ともとても楽しそうだったのに、会った途端はずかしくなってきて……

 もう、私はどうすればいいのかしら!

 自業自得な焦燥感に思わず壁を殴りつけそうになって、危うく思いとどまる。今こんな事をしたってなんの意味もないのだ。冷静に、冷静になりましょう私。

 

 大きく息を吸い込む。

 程よく冷えた夜風が気持ちいい、ほのかに桜の匂いがした、ゆっくりと呼吸が落ち着いてくる、思考が正常に回り出す。

 よし、考えましょう、過去の失敗はどうしようもない、大切なのはこれからだ。

 今からでも遅くない? 今からでも間に合う? どちらにしろ、このままでいるわけにはいかない、何か行動を起こさないといけないのだ。

 私は、意を決して振り返る。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも、今からお茶会……しない?」

「〜〜〜っ(最初からそうするはずだったのに、何で入るなりいきなりぐるぐる巻きにするんですかお姉ちゃんっ!?)」

「〜〜〜っ(悪いことしたなら謝るのでほどいてくださいーなのですっ!)」

 

 

 

『おしまい』

 

 

 

〜あとがき〜

 素直になれない佳奈多さんのお話です。

 急に仲良くなろうとしても、ついつい拒否反応が出てしまって失敗するのが、佳奈多さんのイメージだったりします。だからって、入るなりぐるぐる巻きは自分でも酷いと思ったのですが(こら)

 

 ↓突っ込みとか感想とかお待ちしているのですー