蒐集癖

 

  人間には蒐集癖があります。
 それの対象は多岐に渡り、鉄道模型である事もあれば、切手である事もあり、お金であったりします。そしてまた、物ですら無い事もあるでしょう。
 趣味で集めている……そういった意味だけではなく、人は何かしら集める事をするのです。
 身近な例でいけば、井ノ原さんの筋肉や、鈴さんの猫も、蒐集の対象と言えるでしょう。神北さんの幸せも、そう言えるかもしれません。
 そして、それは同時に、集める人にとってのアイデンティティとすら言えるのです。
 筋肉に執着しない井ノ原さん、猫を嫌う鈴さん、そして、不幸を振りまく神北さんが想像できるでしょうか?
 仮に存在したとしたら、それは井ノ原さんであって井ノ原さんでなく、鈴さんであって鈴さんではなく、そして神北さんであって神北さんでない存在です。美しくありません。
 あ、いえ、筋肉は元からあまり美しいとは言えない気もしますが……
 それはさておき、蒐集癖とは、生き物が誰しも持っている本能、生き抜くための欲求が、形を変えて現れているのかもしれません。
 筋肉は力、猫は仲間、そしてそのものずばりの幸せ。
 かつて、そして今も人間が生き抜くために集めようとしているものにつながるでしょう?

 話が飛びました。
 そう、私が蒐集する対象は本です。
 一冊一冊が世界を持ち、私をその中に惹きこんでくれる知識と可能性の塊。その世界にひたり、そこから想像し、時に驚き、時に泣きながら現在と未来を夢想する……それが私。
 本には可能性があり、それは数が多いほど広がる……私が本に惹かれ、集めるのはその為でしょう。
 それは、おそらく本能……私の奥底に眠る、人としての本能が、未来に繋がるはずの知識を、世界を求めているのでしょう。
 知識の求め方、求める知識の種類。それは人それぞれですが、誰しもが得ようとするものです。
 何故なら、それは生き抜く為に最も必要な事であり、人が人である事の証明であるからです。人と動物の間には、生物としての違いなどはありません。その差は、知識と感情にのみ存在します。
 そして、本はその二つを同時に与え、育てる機会をくれる稀有な存在と言えるでしょう。
 ですから、私にとっては本こそが、蒐集の対象たる、最も重大で自然な対象なのです。

 ですから、私はその良さを、可能性を伝えたいと思うのです。
 同じ本を読み、共に笑い、共に泣く……そういった行為が絆を深め、各々の知識と感情を育む。これこそが仲間と言えるのではないでしょうか?
 動物は、本能のままに食べ物を蒐集しますが、それを周囲に与える事などほとんどありません。子ども以外には、群れの中であってもほとんど奪い合いでしょう。
 でも、人はそれを分かち合う事ができます。家族と、そして仲間と……
 かつて私は孤独を求めていました。
 一人本を読み、知識を求め、ただ日々を生きてきました。本の世界に入り込み、それを広げる事など考えてもいませんでした。あの人達に出会うまで……
 でも、今は違います。
 本は皆で楽しむもの、本の世界を共有し、広げるもの。
 いくら本から知識を得ても、いくら本に感動しても、それを一人で持っている限り、それはなんの意味も持たないとわかったのですから。

 ですから、私は、私が好きな本を、新しい仲間にも読んでもらいたい。絆を深めたいと思うのです。





「と、いうわけなのですが如何でしょうか二木さん?」
「……長い建前お疲れ様ね。でも、如何でしょうもなにも、人の部屋を本の海にしておいてから尋ねるなんて最初からそのつもりだったのでしょう西園美魚」
「あなたと能美さんの部屋ですね。ちなみに能美さんには許可を頂きました。私の部屋が手狭になったので、少々本を移動させて欲しいと……能美さんは、佳奈多さんは優しいから問題ないと仰っていましたが?」
「本が迫ってくる〜肌色の波がはるちんを潰す気だ〜っていうか、出られないのでどうにかして欲しいのですヨ?」
「やさ……ええ、少々の本には文句を言うつもりはないわ。でもね、留守中に勝手に本棚まで増設して、段ボールを10個も運び込んでおいて少々はないでしょうっ! あと葉留佳うるさい」
「酷いっ!? 溺れる妹にそんな言……」
「正確には12個です。それに、建前の部分に本心も含まれています、1割ほど。面白い本ばかりですよ? 泣く泣く実家に置いてきたものの一部です」
「あの……はるちん無視ですか?」
「じゃあ9割は建前じゃない、それにボーイズラブとかいうのに興味はないわ。あと、私にはクローゼットにカメラもって潜んでいるような妹はいない」
「や、やははこれは……って崩れる、本崩れてるっ!? はるちん潰されます、お姉ちゃ……」
「そうですか、あなたは百合でしたね、失礼致しました。そういう本も混じっていますが?」
「そういう意味じゃない、誰が百合よ!」
「違うのですか?」
「違うに決まっているでしょう」
「私はアリだと思うのですが」
「ないわよ。で、こんなに本があっても邪魔なだけ、どきなさい西園美魚」
「ま、まずはるちんに乗っかってる肌色の山を……どい……」
「そうですか……残念です」
「一箱位ならともかく、さすがにこれはないわ。私も手伝うから送り返し……」
「そうですね、さすがにこの量ではベットが一つだけになってしまいますし」
「……」
「もう夏だというのに、二木さんと能美さんに一緒のベットで眠れを言うわけにもいきません。諦めます」
「…………」
「それでは片づけます、まずは能美さんのベットの上にあるものから」



「……クドリャフカが約束したのなら仕方がないわね」
「よろしいのですか?」
「ルームメイトの言葉だもの、責任はとるわ」
「……ありがとうございます、あと感想を楽しみにしていますね」





〜おしまい〜

 

 

あとがき

 前回の草SSのお題が、私のせいで物凄く間抜けな決まり方(http://kaki-kaki-kaki.hp.infoseek.co.jp/Little14-1.txtのラストです)をしたので、なんか責任がorz

 ということで、かなり慌てて書いたヤツでした。

 真面目な(?)思考〜おとぼけラストというゆのつ小話型(勝手に命名)で、急造には向いているのです。そして、書いていて楽しかったりw読んでいて楽しい……なら本当に理想なのですがw

 あたりはずれが大きいのですが、これは…オチがありきたりと言われてしまいましたorz

 急造型でも、ネタさえよければ結構お気に入りができるのですが、こちらは失敗したみたいなのです…orz

 あと、ホントに本って場所とりますよね、家族揃って本好きな時は特に…(泣)