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  『戦争責任・戦後責任―日本とドイツはどう違うか 』粟屋 憲太郎 , 三島 憲一 , 望田 幸男 , 田中 宏 , 広渡 清吾 , 山口 定 著(朝日選書)
  タイトル:戦争責任・戦後責任―日本とドイツはどう違うか

著者: 粟屋 憲太郎 , 三島 憲一 , 望田 幸男 , 田中 宏 , 広渡 清吾 , 山口 定 著

出版社:朝日新聞社 (1994/07)

本体価格:1470円


侵略した近隣諸国への謝罪と補償は、どのようになされてきたか。歴史の教訓を未来に生かすために、近現代史、日本アジア関係史、ドイツ思想、政治学の第一人者が「過去の克服」問題を究明する。

「BOOK」データベースより

   
 みんなのレビュー (★五段階評価)
 
 ぅきき さん (★★★★☆) 2007/10/09

 粟屋 憲太郎 , 三島 憲一 , 望田 幸男 , 田中 宏 , 広渡 清吾 , 山口 定 著『戦争責任・戦後責任―日本とドイツはどう違うか 』(朝日選書)という本をゼミで扱っているので、ご紹介します。

この本は戦後50年を検証するために、1994年に出版されたもので、最初の一章を田中宏さんが「日本の戦後補償と歴史認識」、二章を粟屋憲太郎さんが「東京裁判にみる戦後処理」で日本の戦後補償の仕方を、第三章が三島憲一「ドイツ知識人の果たした役割」第四章を広渡清吾「ドイツにおける戦後責任と戦後補償」…という構成になっています。

一、二、三章を読みましたが、かなり知らないことがたくさん書かれていて勉強になりました。

序章は、1985年のヴァイツゼッガー大統領演説の印象的なことば「罪の有無、老若いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。…過去に目を閉ざすものは結局のところ現在にも盲目となります。」(『荒れ野の四十年』岩波ブックレット)という言葉から、日独の「過去の克服」の取り組みの大きな違いが解説されています。

(ちなみに同じ1985年には中曽根首相が戦後政治の総決算≠掲げ靖国神社に公式参拝 し、「国民国家は汚辱を捨て栄光を求めて進む」 という演説をしました。)


違いとして、たとえば裁判においては・西ドイツ:ニュルンベルク国際軍事裁判+自国の裁判所によって9万人を超えるナチス関係者が裁判にかけられ、7000件近い有罪判決が下されている。
・日本 極東国際軍事裁判+BC級裁判=他者による裁き以外に自らを裁かなかったということなど。
単に日本とドイツを比較して、「ドイツはすごい」ではなく、ドイツにも過去を直視せずに復古主義的な時期(1950年代)があったのだから、それらの点もふまえて対比するのが重要だと思いました。

第一章では、戦傷病者戦没者遺族等援護法や戦時災害保護法(空襲などの戦争災害を対象とするが、これは今でも廃止。)において、国籍条項によって121万人の外国人が援護立法から排除されていること、「国との使用関係がない」人々には補償もされていないこと、

さらに、国籍条項による差別に対しては、日本も加入国である国連・規約人権委員会の国際人権規約(B規約)26条〔平等条項〕に違反しているので差別を廃止すべきであるとの勧告も出ていること、戦争被害において日本人のみを戦後補償の対象とすることから生まれる歴史認識は、日本人のみが被害者であるという歪んだ歴史認識として定着するのでは? ということなどが指摘されていました。

第三章では、

戦後の西ドイツの状況は1950年代は「復古主義」が濃厚で、たとえば「ユダヤ人殺害のことは知らなかった」などといい過去の犯罪に頬かむりする風潮があったが、忘却を批判する知性として、ハイデガーを批判したユルゲン・ハーバーマス、オイゲン・コーゴン、ギュンター・グラス(知的野党のフォーラム「四七年グループ」)や、フランクフルト学派(ホルクハイマーの指導の下、フランクフルト大学付属の「社会研究所」で活躍した知的集団。アドルノ『啓蒙の弁証法』(ホルクハイマーとの共著)、マルクーゼ、エーリヒ・フロム、ハーバーマス、オッフェ、シュミットなど。ナチス時代にはアメリカなどへ亡命。西欧マルクス主義の一潮流として、マルクスの理論をフロイトの精神分析やアメリカ社会学と結合させ、独自の批判理論を発展させた)などの批判の立場が解説されています。

要約すると、一面的な道徳的批判ではなく、政治的な間違いへの寛容と同時に、当事者たちによる間違いの承認の必要性、そして現場に居合わせる宿命を持たなかった自分を絶対的審判者にしないという理論的対応があった。 という感じです。

この本で、日本では依然として多くの戦争犠牲者(特に「日本人」以外のアジアの人々)が戦後補償からはずされているという事実や、ドイツでの取り組みの紹介が詳しく書かれていたので、とても勉強になりました。

   
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