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 『靖国の戦後史』田中伸尚(岩波新書)
  タイトル:靖国の戦後史

著者:田中伸尚

出版社:岩波書店

本体価格:780円

BK1

本書は戦後の靖国の歴史を通史的にしるしている。前半では戦後直後、GHQ占領下で靖国神社が置かれた状況から、現在の靖国問題に至るまでの経緯。後半では、現代に近づくにつれ、靖国訴訟などアクチュアルな問題を扱っている。現在の靖国問題を理解する上で、高橋哲哉の「靖国問題」が横軸での良書であるとしたら、縦軸での良書として、推薦できる本だと思う。

ともすれば、現在「靖国問題」は、首相が参拝するかどうかとか、参拝は公式か私的か、などの議論がなされているが、そんなことがまったく問題でないことが本書を読めばあきらかとなる。むしろ、そうした問題が靖国が戦後、国家との関係回復を図っていく中で、逆に言えば国家の側が再び靖国に歩み寄っていく中で、つくられた誤った問題設定であることが理解できるだろう。

では、筆者は何を問題にしているか? それは、靖国神社が戦前の思想そのままに戦後も生きながらえ、そのことによって新たな問題が(問題の根幹は決して新しいとは言えないが)生み出されていることである。靖国が歴史認識の問題をはらみながら、現代的に生み出している暴力的側面と、それを指摘するだけにとどまらず、実際に闘う人々に目を向ける姿勢は学ぶべきところだろう。

(Juggler)

   
 
 『靖国問題』高橋哲哉(ちくま新書)
タイトル:靖国問題

著者:高橋哲哉

出版社:筑摩書房

本体価格:720円

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 靖国問題というと、まず思い浮かべるのは外交問題だろう。首相が靖国神社を参拝することに対し、中国や韓国などアジア諸国から批判を受けることはよく耳にすることだと思う。そして、首相の参拝を起因とする裁判もよく耳にするのではないだろうか。これは、総理大臣としての公式の参拝が、信教の自由・政教分離原則に反するという点が主な争点である。

 これらの問題をそれぞれ分析・研究し、解決策を模索していくことは大切なことであり、今までにも論文やレポートなどが多く出されている。しかし、そもそも靖国神社とはどういう存在なのか、どのような問題を孕んでいるのかということを、もう少し踏み込んで考え直してみたいと思っていた。本書はこのような要求を満たすものとして最適な文献だと思われる。.....

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 『神戸港強制連行の記録』神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会(明石書店)
タイトル:神戸港強制連行の記録

編者:神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会

出版社:明石書店

本体価格:4500円
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時中、労働者の不足を補うため、朝鮮や中国から日本へと、多くの人が強制的に連行された。その数は、現在分かっているだけで、朝鮮人に関しては一五〇万人、中国人に関しては四万人に及ぶとも言われている。食料不足や衛生管理の不徹底、過酷な重労働といった、劣悪な労働・生活条件のために、病に倒れ、命を奪われていった方々の無念さは、推しはかってなお余りある.....(河端舜)

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 『中国人強制連行』杉原達(岩波新書)
タイトル:中国人強制連行

著者:杉原達

出版社:岩波書店

本体価格:740円

BK1

「二一世紀を担う若い世代に、二〇世紀が積み残した課題を、しっかりと手渡すこと、ここに本書の目的がある」(本書「はじめに―越境する魂」から)。著者の問題意識は明確である。

 過酷な強制労働と日常的暴力。虐待と虐殺。そうした中国人強制連行を、占領下で「民間人がくらしの中から、また兵士がくらしを守る闘いの中から拉致・連行され、日本企業に提供された」と著者は考える。そして史実を跡付けながら強制連行が「戦争という特異な非日常」ではないと繰り返し強調する。しかし私たちは、その事実を「戦争という特異な日常」として過去を「いま」から切り離してしまう「帝国意識」をもって無関心をよそおう(ことができる構造の中に生きている)。一方、鹿島・西松といったかつて強制連行によって利益を得た企業はいま、グローバルに展開した巨大企業となり、再びアジアの人々の前に姿をさらした。そして冷戦の暴力の中で押さえ込まれた被害者の声が50年以上の時を越えてあふれでてくる。「いま」を生きる私たちが、「いま」まさに企業・国家に謝罪と賠償を求める声をあげている被害者たちが経験した強制連行という現場性を、どれだけ受け止められるだろうか。

 本書は日本に連行された4万人といわれる中国人のひとびと一人ひとりの顔を意識しながら書かれている。著者が聞き取りをした様々な証言や体験を 織りまぜながら、説得的な資料や先行研究を紹介しつつ、占領と日常、過去と「いま」を描き出し、中国人強制連行という私たちに残された課題を提示してくれる。新書なので気負わずに読み進められる入門書。(Dr.K)


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