Let's No.29(2000.12)掲載

アジアの戦争被害調査会法の次期国会での成立を

                                上杉 聰
                       (日本の戦争責任資料センター事務局長)   
 
                                    


 アジアの戦争被害の真相究明を国家の公的な機関で実現しようという運動(紀要今号
朴在哲論文参照)は、ついに衆議院で一六八名の国会議員の賛成を得て十一月二〇日に法案(国会図書館法改正案)が提出されるところにまで進みました。また会期末には継
続審議を勝ち取るという快挙もなしとげました。

  十一月の法案提出の特色は、法案の提出者として鳩山由紀夫(民主党)、不破哲三(共産)、土井たか子(社民党)の三党首と、各党の政策担当議員三名が名前を連ねたこ
とです。党首による法案の共同提出という形態は、各党がこの法案の意味をいかに大き
く考えているかを表しています。
 また、それに続く賛成者として一六二名の衆議院議員が加わり、合計一六八名の衆議
院議員が名前を連ねたことも画期的で(別掲。昨年八月の提出時は一一八名で今年六月衆院解散によって廃案)、過半数の二四〇名まであと八〇名のところにこぎつけたこと
になります。
  さらに今回、継続審議の措置がとられた理由としては、自民党・公明党の中に積極的
な同法案に対する支持者があるためで、野党党首の共同提案による「対決法案」とみら
れがちな形態にもかかわらず、今後「超党派」で成立する可能性を強く残しました。

  したがって、次期通常国会(来年一月末開催)がたいへん重要になってきますが、法
案成立に向けた有利な条件がいくつかあります。その一つは、アメリカで同趣旨の「日
本帝国政府情報公開法」(別名・ファインスタイン法案)が十月に上下両院を満場一致
で可決、通過し、大統領との調整の段階に入っていることです。また資料調査の実務は、すでにナチス戦争犯罪情報公開法を運用して日本関係の調査も進められているため、
来年の半ばから暮れにかけて、膨大な資料がアメリカで公開されることになることです。資料の公開を日本政府がこれ以上拒めば、いっそう日本は窮地に追いつめられること
になります。

  また、国内では今、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が検定申請されていますが、これは今後大きな政治問題になっていくと思います。それは「政府による公的な調査による歴史認識の確立」を課題として浮上させざるを得ないからです。
 外圧によらず日本政府が進んで歴史資料を公開することは、失われつつある日本の国
際的な信頼を回復する最も近い道といえます。今回の法案提出と継続審議に力を注がれた議員関係者に深く敬意を表するとともに、成立に向けていっそうの奮闘をお願いする
ものです。

[編集部追記]2000年12月27日、クリントン大統領が日本帝国政府情報公開法に署名しました。これで正式に成立したことになります。

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国 会 図 書 館 法 の 一  部  を 改 正 す る 法 律 案(要旨)
第一 国会図書館に恒久平和調査局を置く。
第二 右調査局は、次の事項を調査する。
 1 今次の大戦にいたる経過と原因の解明。
 2 アジアから労働力として徴用した実態
 3 女性に対する組織的な性的強制の実態 
 4 生物化学兵器の開発、実験などの実態 
 5 右以外の非人道的行為による被害実態
 6 戦争の被害者に対して戦後とった措置
第三 館長は右の調査を両院議長に報告する。
第四 館長は行政機関や地方公共団体に資料の提出を要請できる。
第五 資料提出の要請を受けた場合、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の声明を  内閣が出さない限り、提出拒否できない。


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平成十二年十一月二十日提出
衆法第一八号
国会図書館法の一部を改正する法律案
右の議案を提出する。
                                  平成十二年十一月二十日

提出者
 鳩山由紀夫 不破哲三  土井たか子
 田中 甲  木島日出夫 辻元清美

賛成者
 安住 淳  阿久津幸彦  赤松広隆 
 荒井 聰  五十嵐文彦  井上和雄   伊藤英成  伊藤忠治   
家西 悟   池田元久  石井紘基   石井 一   石毛鋲子  
岩國哲人   上田清司   生方幸夫  江崎洋一郎  枝野幸男  
 小沢鋭仁  大石尚子   大石正光   大出 彰  大島 敦  
 大谷信盛
 大畠章宏  岡田克也   奥田 建   加藤公一  鹿野道彦  
 海江田万里  鍵田節哉  金子善次郎  金田誠一   鎌田さゆり
 川内博史   川端達夫
 河村たかし 菅 直人   木下 厚   北橋健治  釘宮 磐  
 熊谷 弘   桑原 豊  玄葉光一郎  小泉俊明   小平忠正 
 小林憲司   小林 守
 古賀一成   五島正規   後藤茂之  後藤 斎   今田保典  
 今野 東  近藤昭一   佐々木秀典  佐藤観樹  佐藤謙一郎  
佐藤敬夫   鮫島宗明
 島  聡   城島正光   首藤信彦  末松義規   鈴木康友  
 仙谷由人  田中慶秋   田並胤明   高木義明  武正公一  
 玉置一弥   樽床伸二
 津川祥吾   筒井信隆   手塚仁雄  土肥隆一   中川正春  
 中沢健次  中田 宏   中津川博郷  中野寛成  中村哲治   
中山義活   永井英慈
 永田寿康   長妻 昭   長浜博行  楢崎欣弥   野田佳彦  
 羽田 孜  葉山 峻   鉢呂吉雄   原口一博  伴野 豊   
日野市朗   肥田美代子 平岡秀夫   平野博文   藤村 修  
古川元久   細川律夫   細野豪志  堀込征雄   前田雄吉  
 前原誠司  牧 義夫   牧野聖修   松崎公昭
 松沢成文   松野頼久   松原 仁  松本剛明   松本 龍  
 三村申吾  三井辨雄   水島広子   山内 功  山口 壯  
 山田敏雅   山谷えり子 山井和則   山花郁夫   山村 健 
 山元 勉   横路孝弘   吉田公一  渡辺 周   赤嶺政賢 
  石井郁子  小沢和秋   大幡基夫   大森 猛
 児玉健次   殻田恵二   佐々木憲昭 志位和夫   塩川鉄也  
 瀬吉由起子 中林よし子  春名眞章   藤木洋子  松本善明   
矢島恒夫     山口富男
 吉井英勝   阿部知子    今川正美  植田至紀   大島令子 
   金子哲夫  菅野哲雄   北川れん子    重野安正  東門美津子
  中川智子   中西績介
 原 陽子   日森文尋     保坂展人  山内恵子     山口わか子 
  横光克彦

 

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