6月4日 飯舘村放射能汚染調査報告会

負げねど飯舘・NPO法人エコロジーアーキスケープ共催
場所:飯舘村陽だまりの家
お話:今中哲二さん 京都大学原子炉実験所助教・飯舘村周辺放射能汚染調査チーム代表

飯舘村放射能汚染調査の経緯

今中哲二京都大学原子炉実験所助教  今中です。どうぞよろしくお願いします。どうも3月11日以来、世の中、何が起きているのかよくわからない。もう原子炉がひどいことになってますし、飯舘の皆さんは大変な目にあわれてますし、もちろん津波の被害があるところは大変なんですけれども、日本国の政府もなんか妙なことばっかりやって、一体世の中どうなってるのかと思いながらも、私たち放射能を計っていくことを仕事にしてますので、こういった事故があった時にはやっぱりできるだけきちんと放射能を計って、ちゃんと記録してデータを残しておくということが、まず一番の仕事だろうと思っています。

 福島であんな大変な事故が起きて、次の日に周辺20キロの方に避難指示が出て避難されたんですけども、その避難された方々の住んでいたところの汚染のデータというのが全く出てこなかったんですよね。それは本当に驚きました。今でも何でかわからないんですけど、それでいろいろどうなってるかなと思っているうちに、20キロが30キロになって、その30キロを超える飯舘村でも大変な汚染があるということで、じゃあ一度調査に行こうと。私と遠藤さん、小澤さん、あと東京の菅井さん、4人でチーム組んで来て、村の方でも協力いただけるということで、二日間で村内かなりの部分を測定しました。こういうまとめたもの(報告書)になったので、今日はこれを持って皆さんにご挨拶させてもらうつもりでやって来ました。この間感じているのは、皆さん突然放射能やベクレルやシーベルトという言葉の世界に放り込まれて、何が何だかわからないだろうと思ってます。そういう意味では、私なんかも30年、40年ベクレル・シーベルトの世界でやってますので、私たちが持っている知識なり知恵なりが、皆さんがこれからやっていかれる上で何かの役に立つんだろうと思ってお話しさせていただきます。

 質問等も事前にいただいていますけれども、皆さんが一番気にかかられておられる、じゃあいつ飯舘に戻れるんか、ということについては、はっきり言って私たちには答えはありません。放射能とはどういうもので、被曝がどんなもので、考えられるリスクはどんなものだということはお話できます。でも結局放射能汚染にどう向き合うか、どこまで放射能汚染を受け入れるか、どこまで被曝を受け入れるかというところで最後に答えが決まってくるんだと思うんです。これは私個人に対してなら言うことができます。私個人、どれくらいの被曝なら、まあしゃあないなと。職業上のこともあります。だけど皆さんにどれくらい被曝を我慢しなさいとは、私たちには言えません。それを考えていただくための材料になるような話を1時間ほどかけてやらせてもらいたいと思います。

長泥曲田で毎時30マイクロシーベルト

 3月28日、29日とこの測定器で飯舘村をずっと回らせていただきました。村の方からワゴン車出していただいて、役場の方に道案内していただいたので非常に効率よく測定できました。正直、かなり驚きました。私は京都大学原子炉実験所といって、研究用の原子炉、原子力発電所じゃないんですけど、小さい原子炉があってそれの管理運営をやっているような立場ですけれど、原子炉の中ではもちろん物の出入り人の出入りは管理ちゃんとしますし、こういう線量計を持って必ず毎月どれぐらい被曝してますよと記録している。原子炉の中にもいろんな場所があります。うちの原子炉でしたら、1時間あたり20マイクロシーベルト以上というのは、原子炉の中でも「高線量率区域」とちゃんと印がしてあります。そこは私たちでもみだりには立ち入るなという領域になっています。そういうふうに管理しているんですけれど、飯舘村の長泥曲田で計りますと、一番高いところで1時間あたり30マイクロシーベルト。原子炉の中の高線量率区域より高いところで、皆さんが普通に生活をされていたので、私は異次元に飛び込んできたような感じがして、本当にびっくりしました。

 この報告書には、どういう放射能でどれだけどう汚染されてますよと、このままの状態だったらどれぐらいの被曝になりそうですよという見積もりを出しています。日本政府の方で原発事故が起きた時に定めている"原子力防災対策について"という指針があって、それでいうと飯舘村のレベルというのは確か役場あたりはもうすぐ建物内に退避しなきゃいけない。長泥曲田の方は避難またはコンクリートの建物に退避しなきゃいけないというレベルになりますよという放射能汚染でした。

 5か所で土を取りまして、分析もしました。結局皆さんご存知の通り、3月15日に福島の2号炉の格納容器がボーンとぶっ壊れてその時の放射能がジワジワと流れてきて、多分雨と重なって汚染されたんだろうと思います。原子炉の中にはいろんな放射能が溜まっているんですよね。ウランが核分裂してエネルギーが出るんだというのはご存知かと思うんですけれども、ウランというのは核分裂の時いろんな割れ方をして、それに伴っていろんな放射能が段々溜まっていく。いわゆる死の灰というやつですけど、それが外へばーっと出ていった。大変な事故なんですよね。

チェルノブイリと福島の違い

 後で言いますけれども、チェルノブイリ事故というのは原子炉そのものが出力暴走といって、爆発して原子炉と建物があっという間に壊れてしまった。その後10日間ぐらい大きな火事が続いたということで、原子炉の中の放射能のほとんどの種類が出て行って、重たいやつは周りに落ちるし、軽いやつ、揮発性のやつだと遠くまで飛ぶということで、日本にまで放射能が飛んできたんです。今回の飯舘村の汚染は、チェルノブイリの場合と違っていまして、建屋は水素爆発でポーンっていきました。けれども、本体の原子炉の部分はメルトダウンして高温になって溶けちゃった。溶けて多分ドロドロになって未だに何がどうなっているかよくわからないって状態なんですよね。原子炉に溜まっていた中から揮発性の強いやつ、ガス状のものが出たということで、チェルノブイリの場合と出て行った種類が違います。

 実際取ってきた土を計ってみますと、もっとややこしいことを言うと、ガンマ線というやつのエネルギーを測って分析すると、それぞれの放射能に特徴的なピークというものが出ます。3月28日の段階ではまだヨウ素131というのが強かった。あとセシウム。これから多分皆さんがずっと相手にしなきゃいけないのがこのセシウム137とセシウム134。バリウムとか少し他のものもありますけれども、飯舘村の汚染はヨウ素とセシウムが中心です。

 放射能っていうのはそれぞれ寿命があるんですね。半減期と私たち呼んでいるんですけれども、ヨウ素131は半分になる期間が8日です。8日間経ったら半分になる。また8日経ったら半分の半分、1/4になります。それでまた8日経ったら1/8、1/16、1/32と行って、もう事故が起きて3カ月ぐらい経ってますから、大体1/2000ぐらいになって、もう多分測れないぐらいになってると思います。一方セシウムは寿命が長い。セシウム137は半減期が30年です。ですからチェルノブイリでは、今でもたくさん残ってます。

 セシウムの134は半減期が2年です。ですからこれは2年経ったら半分になる。今回原子炉から出た割合はセシウム137と134が大体1:1です。チェルノブイリの場合は、2:1で137の方が多かったんですけれども、飯舘村の分は1:1。だからチェルノブイリとの違いは、放射能の種類が比較的少ないということと、あとセシウム137と134の割合が1:1ぐらいだということです。

 結局、3月15日に放射能がボーンと出て、空気と一緒に流れて、その時雨が降って地面に落ちているんですね。ですから今放射能はほとんど地面に溜まって、その放射能からガンマ線が出てきて、それで体が被曝しているということなんです。

 地面にどれくらい放射能があるということがわかりましたら、セシウム134なりセシウム137なりからどんな放射線がどれぐらい出るかというのは、データブックを基にある程度計算できます。それを基に地表1メートルのところで放射線がどれぐらい飛び交っているかって、これ私たち空間線量率と呼ぶんですけれども、それを計算してやるとこういうカーブになる。これいろんな種類がありますけれども、セシウム134、137、ヨウ素の131で、それぞれどれぐらいの強さになりますと計算できます。それで横軸が時間になっているでしょ。だから段々減っていきます。さっき言った寿命の短いやつはすーっと減るわけです。

土壌汚染データにもとづく役場と曲田での積算選良計算値  これは3月15日に沈着、放射能汚染が起きてから、積み重ねとして、どれぐらいの被曝になるかというのを計算したものです(図1)。

 3月15日に放射能が飯舘にも来ましたけれど、東京にも飛んでいるんですね。この前NHKのETV特集を観た方もいらっしゃるかと思いますけれど、あそこに出てきた木村真三君が、東京の空気をフィルターでこしとって、そのサンプルを私のところへ送ってきて、私の同僚の小出が計ったら、確か1立方m当り500ベクレルぐらいでした。あの時は東京の汚染レベルは避難しろと言うのではないですけれども、何らかの対策を取るべきレベルだったと思ってます。放射能の濃度が高い時は、ヨウ素というやつは子供に対する甲状腺の影響がありますから、それなりに外出は控えるとか、外出するんだったらマスクをするとか、多分そういったレベルだったと思うんです。

 私は福島とチェルノブイリは、基本的には同じレベル、同じような汚染レベルだと判断しています。ただ放射能の種類が違いますし、強さに濃淡があると思います。あと違うのは福島では方角の半分が海。だから地面に落ちたやつはある程度わかるんだけど、海へどれぐらい飛んでいったか、これは多分難しいと思います。国の原子力安全委員会は福島の事故はチェルノブイリの1/10ぐらいじゃないかと言ってますけれど、それはもうほとんど当てになる話じゃない。私の感じでは、福島の方が放出された放射能の量としては少ないと思います。ただ基本的に周り30キロの範囲内が避難しなければいけないというような原発事故としては同じだと。私は3月15日から思ってます。

 チェルノブイリの事故から3年経って、1989年の春頃になりますと、民主化運動に伴ってチェルノブイリの汚染の問題が浮上してきたんです。それで3年後になって200キロ?300キロ、あるいは500キロ離れたところに大きなセシウムの汚染地帯があるということが初めてわかった。住民さえ知らなかった。結局爆発して吹き上げて、それから後火事があって、かなりのところまで上がって、ずーっと流れていって遠くで雨と一緒になって落ちたもの。

 最初ソビエト政府は一平方メートルあたり1480キロベクレル(148万ベクレル)の基準で住民を避難させますよと言った。一方ベラルーシやウクライナという国の方はそれはちょっと甘過ぎると。もうちょっと移住の基準を下げろということでいろいろゴチャゴチャやりあっているうちに、ソ連そのものが潰れてしまって、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ各国独自に一平方メートルあたり55.5万ベクレル以上のセシウム汚染があるところは避難しなさいということになりました。事故直後に大体12万人がこの周りから避難して、あとこの汚染地帯から大体27万人ぐらい、全部で40万人ぐらいの人が家を失ったというのがチェルノブイリなんです。

放射線の健康への影響

 ちょっと基礎的なことを話します。放射能と放射線は違うんですよね。放射能というのは物です。放射性物質とも言います。その放射性物質から出てくるのが放射線なんですね。それで我々が被曝するというのは、その放射線を体が受けるということ。強い放射能があっても遠くにあったら被曝する量は少ない。太陽と地球上の我々が受ける光の量を考えると、太陽の光の元がいわば放射能の強さで、これはベクレルという数字で出します。シーベルトというのは放射線をどれくらい浴びたかということです。かなりおおざっぱな言い方なんですけれども、1ベクレルというのは1秒間に1本放射線を出す。被曝したならシーベルトの量。1シーベルト被曝したら、いわゆる急性障害の恐れがある。急性障害というのは、体細胞や組織がいっぱいやられて、白血球が減ったりする。大体4シーベルトぐらい浴びると人間半分ぐらい死ぬと言われています。JCO事故の時に一人が10シーベルトぐらい、もう一人は20シーベルトぐらい浴びて亡くなってます。だから1シーベルト越えたらもう大変です。

 皆さんが混同するのは多分、ミリシーベルトとマイクロシーベルトだと思うんですよ。マイクロシーベルトと言えば、1ミリシーベルトのまた1/1000になりますので、1/1000000シーベルトなんですけれども。どういうふうに説明するかというと、大体いまここで1時間当り1.0マイクロシーベルト。強いですね。びっくりするぐらいです。例えば私の大阪の研究室で計ると一時間あたり0.05マイクロシーベルトぐらい。自然放射線の強さなんですけれども、普通の汚染も何もなくても私たち1日24時間で大体1マイクロシーベルトぐらいの被曝をしています。そうすると一年間で365日だったら約400マイクロシーベルトの被曝をしている。あと宇宙線とか体の中からの被曝があります。大体一年間で1000マイクロシーベルト(=1ミリシーベルト)を自然界から受けているというのを覚えてください。ただし東京と大阪でも違います。広島でしたら場所によったら、1時間あたり0.1マイクロシーベルトのところがあります。これは何でかと言うと中国地方は花崗岩が多いんですね。花崗岩の中にはウランとかトリウムとかいうのが成分として入っているのでそれで強くなります。

 原子力施設からの一般公衆の線量限度というのは1年間で1ミリ。自然放射線に相当する量です。私たちみたいな放射線作業従事者は、1年間に20ミリシーベルト、5年間で100なんですけど、そういった規制を受けている。作業者としての感覚で言えば、1マイクロシーベルトの被曝はあんまり気にしません。10マイクロの被曝をすると、ちょっと浴びたなっていう感覚があります。100マイクロになるとかなり浴びた感じになります。ヨーロッパへ行くのに、皆さん飛行機乗ったら被曝するのはご存知ですかね。私なんか乗って行って帰るたびに、ああ被曝したなと思ってますけど。大体50から100マイクロシーベルト。あと、うちの職場では1000マイクロシーベルトつまり1ミリシーベルトをいっぺんに浴びちゃうと規則違反になりまして始末書を書かされます。だから作業従事者として、私ここ1マイクロシーベルトと言いましたけれど、そういう場で自分が作業者として1時間ぐらい作業するのは平気。ただそれと生活とはまた別です。

 あと気をつけなきゃいけないのは、外部被曝と内部被曝があること。外部被曝というのは比較的測定が楽で、ちゃんと測定すればかなり信頼できます。ただ基礎知識がない人がむやみやたらと計るとすぐ間違えたり、いろんな種類の放射能がありますから、計る時はそれなりに誰かに相談するなりされた方がいいと思います。

 内部被曝は測定が面倒で、体の中に入りますから、体の中でどういうふうに代謝されるのかを考えなきゃいけない。それも個人差がいろいろあるので、いろんな面倒な手続きが要ります。あと言っておきたいのは、我々は体の中に自然放射線持っています。カリウム40という放射能なんですけれども、3000ベクレルから4000ベクレルぐらいの放射能が体の中にあって、一年間で200マイクロシーベルトぐらいの被曝をしています。

 事故がなくても私たちは普段からこうした放射能・放射線に囲まれて生活しています。これに加えて我々医療放射線浴びています。一人当たり平均すると、自然放射線よりちょっと多いぐらい。大体2ミリシーベルトぐらいかな。

 それでこれは私の見解なんですけれども、生物は発生した頃から強い放射線の中でずっと進化してきた。我々ずっと一年間1ミリシーベルト受けながら、体の細胞なり何なり常に傷を受けるわけですけど、修復作用があります。細胞自身がそういったものを直していく作用があって、それがなかったらもっといろんな病気がいっぱい出ていると思います。ただ中にはきちんと修復されないものが蓄積されて、段々普通の細胞からちょっと変わった細胞になっていったりして癌になって、それで年を取ると癌になりやすい。ですから、結局癌というのも年とともに増えていく。だけども癌になるまでは何十年もの積み重ねがあるんだろうと思う。

 じゃあ癌への自然放射線の影響がどれぐらいかと言うと、アメリカの報告で大体2パーセントぐらい。癌にはいろんな原因ありますよね。もちろん煙草とかが一番悪いんでしょうけど、それに比べて自然放射線も大体2パーセントぐらいの癌を生んでいるんではないか。そこに放射能汚染による影響が上乗せされてきますよということです。さっき言いましたように放射線被曝の影響を考える時には、一度に大量の放射線を浴びた時に出てくる急性障害。さっき言ったJCOの人が亡くなったとか。これはべらぼうな量を被曝している。今飯舘村にしろ問題なのは今すぐ病気になるというよりも、子供たちなり後々に出てくる影響が一体どうなのかです。皆さんそれが一番心配なんだと思います。

 国際放射線防護委員会(ICRP)というところが勧告を出して、日本国の法令や何かにも取り入れられているんですけど、そういうところで基準を作るにあたって、一番大きなデータになっているのが広島長崎の被曝者の方のデータなんです。もう五十年もの間、被曝がない人に比べて癌になる人がどれぐらい増えているかということを調べています。

 そのデータの強みというのは、男女あんまり偏りなく、年齢もまんべんなくある集団で、長い間、生き死にの調査もきっちり、戸籍制度を使って調べている。約10万人の被曝生存者を対象に、昔はABCCと言ったんですけれども、今は放射線影響研究所ですけれど、それぞれの被曝者に面談して、あなたは原爆の時にどこにいましたか? そしてそれぞれの建物がどういう建物でしたかということを調査して、そういうファイルができている。それに基づいてその人が受けたであろう被曝線量を計算しています。ですから被曝線量もある程度わかって、あと追跡調査もかなりきっちりされている。100ミリシーベルト以下だったら影響ありませんよ、と言われてますよね。影響ありませんじゃなくて、敢えて言うんだったら、100ミリシーベルト以下ははっきりとした影響が観察されていません、です。ないんじゃないんです。広島・長崎で被曝線量と癌がどれぐらい増えているか。かなり大きな被曝線量浴びた人ですけれども、基本的に被曝線量とまっすぐな線で癌死が増えている。

 それで問題は低レベルのところ。私は多分50ミリシーベルトぐらいまでは広島長崎のデータでは癌影響は観察されていると思っているんです。もっとずっと下の方。いま子供たちの問題になっている20ミリシーベルトで果たしてどれぐらいの影響があるのかというのを、直接ここらのデータを持ってきて言うのは難しいという話になってます。じゃあこの辺のデータから上からすっと引っ張ってきて、低レベルの影響を推定すればいいじゃないかという説と、いやそうじゃないんだよという説とか、専門家にもいろいろあります。

 いやここは少々の影響もないよとか。ここは少しぐらい浴びた方が癌が減って体に影響、健康はいいよとか。中には低いレベルの方が影響は大きいぞ、といろんな報告があります。ただ私はやっぱり一番批判に耐えるのはまっすぐに線を引くモデルだと思ってます。

スウェーデン汚染地域でのセシウム137地表汚染レベルと癌発生率  これは私の友人のデータですけれども(図2)、スウェーデンの放射能の汚染レベルとそこでの癌の発生率をずっと疫学的に追跡調査したら、汚染レベルが増えるにつれて、癌も増えていたというデータがあります。これはかなりしっかりしたデータで、私は本人とも議論していますけれど、汚染レベルと癌の増加が関係していることは統計的には確かだけど、果たしてそれが本当に因果関係であるのかどうかには、もっと議論しなきゃいけないというふうに彼自身も言っています。あと、被曝影響なんかあまり気にしなくていいよと言う人の立場のデータで言いますと、インド辺りで実は自然放射線の非常に強いところがあって、そういうところでの癌の発生率を見ると、自然放射線が増えても癌も増えてませんよというデータもあります。

 ですから、これは私の個人的な見解なんですけれども、100ミリシーベルト以下の被曝の効果を直接観察することは多分かなり難しいと思っています。というのは癌になるとしたらいろんな原因があります。あくまでそういった自然で変動している上に、放射線被曝の影響が上乗せされる。低線量のところは結局、どういうふうにモデルで考えていくかということになります。私がデータ見る限り直線で真っ直ぐ考えるのが一番合理的でタフな考え方だろうと思っています。

 さっきも言いましたように自然放射線でもそれなりに害があるわけですけれども、一般公衆として被曝そのものをそう神経質にならなくていいよというレベルとしてICRPは年間1ミリシーベルトというのを勧告しているんです。

放射能汚染とどう向き合うのか

 結局放射能汚染にどう向き合うのかということですけど、まずとにかく汚染の状況をきちんと把握することが第一だと思います。そして被曝がどれくらいかというのをきちんと見積もる。これはやればできるものだと思います。一軒一軒全部の汚染レベルのチェックをするべきだと思います。チェルノブイリでは全部一応やりました。汚染の強いところはもう一軒ずつやって、汚染マップ作っています。そしてそれぞれ被曝の量を調べる。それに基づいて被曝影響のリスクを見積もることになります。これは専門家によって意見が違うと思います。考えなきゃいけないことは、子供は影響が大きいということです。それとよくわからない部分はなるべく危ないというふうに考えておくこと。これを予防原則と呼んでいますけれども、そういう考え方を特に行政はするべきであろうと思っています。それで最終的にどこまでのリスクを受け入れるか。結局そういった情報を元に、自分で考えて家族や共同体で合意するしかないだろうと思っています。

 繰り返しますけども、ICRPが勧告している一般公衆の被曝限度は年間1ミリシーベルトだということと、あと私たちみたいな被曝作業者は年間20ミリシーベルトですよと。これがだから普段の基本だと思って下さい。それで自然放射線が約1ミリシーベルトありますよということで、あと医療被曝もありますし。子供はとにかく大事にしなきゃいけませんから、子供は感受性が大きくて大事にしなきゃいけないってことと、こうしたことを考慮してどこで線を引くか。最終的には個人の判断だと思います。

 科学的にここから上は移住しなさいとか、ここから上は食べちゃあかんとか、そうやって決められるものじゃない。あくまでどこまでの被曝を受け入れますよという社会的判断に見合って、それのためにサイエンスなり科学で得られている知識をそれに適応する。そういうふうに考えられた方がいい。だからはっきり言って安全なんてないんです。どこまでのリスクを背負うのかというのが問題になると思います。ですからそういう場合に、一般的にこうしなさいというのは私らは言えない。一体我々はどこまで受け入れていいのかというのは、科学の問題じゃなくて、あくまで社会がここまで受け入れようという判断だと思うから。

 私はそれぞれの人が自分で判断できるようになればいい。できるし、そういう余地が残されるべきだと思う。例えば私ももう還暦ですから少々の汚染だったらいいよと。自分の場合だったらまあ年10ミリしょうがないかな、というぐらいの感覚はあります。でも子供はやっぱりまずいだろうと思いますから。そういった状況は個人個人で全部違いますよね。だからやっぱり一律にどうこうしなさいというのではなくて、それぞれの判断で住み続けることが許容されて、それなりに自治体として共同体としてそれなりのサービスが受けられるべきだと私は思います。

 私は原子力発電はやめた方がいいと言ってきたんですけれども、原子力に反対ですってあんまり言わないことにしていたんです。ただ原子力は胡散臭いとずっと言ってきた。やり方が胡散臭い。要するに、絶対安全ですよ、どんなことが起きても安全ですよって言って、やり方がえげつないんですよ。私はそれを40年間見ていたから、それには協力しない。だから原子力をやるんだったら、東京湾に原発作りなさいよと。それだったら私はまあ表向き知らん顔しててもいいよ、という感じだったんだけど、今回の福島の事故を見てもうだめだと思った。彼らに責任感覚ないし、管理能力がない。そういう人達が支配している国は原子力はやらない方がいいと確信しました。私は原子力の世界に入ってもう40年ですけど、原子力をやってた古い先生方は多分泣いていると思う。彼らはもうちょっと責任感覚があったけど、今の東京電力にしろ、原子力安全・保安院にしろ、出てくる人、出てくる人、どう見ても彼らには責任感覚が感じられない。私としても情けない。だから私たちが持っている知識や能力で何か皆さんのお役に立つことがあったら、これからもお手伝いをしていきたいと思います。

どうも長いことありがとうございました。


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