一錠目

    朝、ラミナリアを抜いて、(結構痛かった)いよいよ陣痛誘発が始まりました。

    プレグランディンという薬を入れて、人工的に陣痛を引き起こします。

    先生は、薬を入れている間、自由に過ごしていいと言ってました。

    これで、ペコともお別れになるのか・・・。

    朝、最初に入れた薬はあまり効かない感じでした。
    薬を入れて一時間くらいしてから、重たいような軽い腹痛を感じました。

    痛みはそれほどではないので、会話も普通にできるくらいでした。

    途中でペコに歌を歌ってあげました。

    そしてペコのことを想像しました。
    おなかの中で、のんびり暮らしているペコ。
    が、突然子宮が大きく収縮し、居場所がなくなる。
    ペコはあわてる。

    どうしたんだろう??? ママ、こわいよ・・・!!

    悲しくても、何度も何度も想像しました。


    結局、軽いおなかが重たいような痛みから進展はありませんでした。

 

 

        二錠目

   3時間後、2錠目の薬を入れました。

   しばらくすると激しい痛みが急激にやって来ました。
   痛みと痛みの間隔が約1分半。旦那が時間を計っていました。

   初めて経験する陣痛。
   義母が言っていたとおり腰が痛い。

   旦那が一生懸命さすってくれました。手を握ってくれました。
   でも私はその手が熱く感じ、不快だったので
   「熱いから握らなくていい」って言ってしまいました。
   でも旦那がそうしてくれてすごく嬉しく思いました。

   (後になって、「たまごクラブ」のお産の記事を読んだら、冷たいペットボトルで額などを冷やしたりしていました。
   私もそうすれば良かったと思いました。もっと事前にお産の勉強をしておけば良かった。
   でも、あの時の精神状態では普通のお産の記事を読む余裕はありませんでした。)

   母もついていてくれましたが、人が苦しんでいる横で、自分のお産の経験談、
   「逆子だったから時間がかかっって、痛くて、何度も吐いた」とか不安にさせるようなことばかり
   言うので、ついブチキレてしまいました。

   ついていてくれるだけありがたく思わないといけないのだけれど。

   途中で何度か看護師や助産師がやってきて、出血はあるか尋ねたり、お腹を押さえて、時間を計りながら、
   張り具合を確認していきました。
   そのうちとうとう分娩室に移動することになりました。

   旦那と分娩室に移動すると、看護師さんが「何かあったらこの紐を引いて呼んで下さいね」と言って去っていき
   旦那と2人きりになりました。
   しばらくそこで陣痛に耐えていました。
   時計を見ると午後1時だったか、2時だったか・・・。

   これからこの痛みが何時間続くのだろう。
   早く終わってほしい。
   赤ちゃんが出ちゃってほしい。
   でもただ苦しいだけ。
   赤ちゃんは死んでしまう。何もない。
   耐える気力も沸いてこない。

   ペコごめんね。もうすぐ死んじゃうんだ。

   けれどしばらくすると、痛みは和らいできました。
   そしてそのまま消えていきました。
   陣痛がとまってしまった?

   私と旦那はしばらく分娩室にいたものの再び病室で待つことにしました。

 


       三錠目

   三錠目の誘発剤。
   今度はおなかがずしっと重いような痛みがくるだけで、一向にさっきのような痛みがやってきません。
   看護師さんによると薬が効くまでににだいたい
   1時間くらいかかるとのことでしたが、1時間経過するとずしっというような重い痛み(それほど強い痛みではない)
   が来ただけで、薬がきいてくる気配がありませんでした。

   どうしよう・・・。
   薬が効かない。このまま効かなくて陣痛がこなくなったら
   どうなるのか・・・。

   今まで考えもしなかった新たな不安が起こりました。

   私の「出産」のイメージはだんだん陣痛が強くなり、痛みの間隔が短くなりそして産まれるというものでした。
   が、昼間にきた強い痛みはすっかりおさまってしまい、分娩が進んでいく感じが全くありませんでした。
   私はそこで初めて普通の分娩とは違うことを理解しました。
   薬が効いている間は痛みがどんどん強くなり分娩に至るのだが、
   途中で薬の効果がなくなるとそこでもうストップしてしまうものなのだ。

   とても不安になり、部屋に来る看護師さんみんなに薬のことを効きました。

   薬がきかないのではないか・・・。痛みがなくなってしまった。
   大丈夫でしょうか・・・?

   「薬の効き方にはいろいろあるから何とも言えない」と言うような答えが返ってきました。

   旦那は、夕べのラミナリアの処置がもう夜で、朝までの間隔が短いせいで子宮口の開き方が十分ではないのではないか・・・
   と、病院のやり方に対してかなり不審を抱いているようで、しきりにそればかり言っていました。
   私の方は、病院の人はみんな親切で優しくて、怒りの気持ちは全くありませんでした。
   患者当人と家族の気持ちは意外とこんなものなのかもしれません。

   ペコはまだまだおなかにいたいのかな・・・。
   ごめんね、ペコ。
   自分のおなかとウサハナのペコをなでたりしました。
   歌を歌ってあげました。
   でも歌を歌ってあげてる一方でペコを殺そうとしているんだ。
   ペコには頭が無いから、苦しくないよね、きっと何も分からないよね。

   いろんなことを考えました。

   そして夜になりました。

 


     帝王切開にしたら

   とても怖くて不安でした。
   途中、先生に訴えました。これからどうなるのか。
   赤ちゃんはいつ出てくれるのか。

   自分よりもずっと若いような女医さんに向かって、
   「怖くなってきてしまいました。いっそ帝王切開にして下さい」
   と情けなくも訴えていました。
   先生はもちろんそれを否定しました。体への負担を考えると、絶対に普通分娩が良い。
   もう何日もかかってどうしても赤ちゃんが出ない時に初めて出てくる選択肢で、今はそんな段階ではない。
   それはもちろん先生のおっしゃるとおりでした。
   今考えると本当に切らないで良かったと思います。
   旦那曰く、「そりゃー、はいそうですかって言っていきなり切る医者はいないだろう」とのことでした。

   その帝王切開は、人工死産する時の同意書に、(私の場合?)胎盤が下の方にあるので、
   分娩時出血が多い場合急遽帝王切開に変更する場合があると書かれていました。

   赤ちゃんが出るまで4〜5日かかる方もいたそうです。
   バルーンを使って子宮口を広げてみたりもするそうです。
   どんなにか辛かっただろう。1日出ないだけでこんなに精神的に辛いのに。
   でも結局耐えるしか方法はなかったのだ。

   「辛いなら治療を1日お休みすることはできます。でも、その場合
   最初に戻ってしまいラミナリアの処置からになります。」
   結局、続けていくしかありませんでした。

   私はなんて弱いんだろう。

 

 

      再度ラミナリア処置

   夜になって、診察室に呼ばれました。
   診察の時先生は、
   「子宮口がだいぶ狭くなってきて後ろに下がってきています。
    どうしますか、このまま陣痛誘発剤を再度投与するか、
    それとも今からもう一度ラミナリアを入れて、再度子宮口を開くか。
    もし、陣痛誘発剤を入れても今の状態では効果はあまり期待できません。」

   私も絶対もう一度ラミナリアを入れるべきだと分かっていました。
   でも、またこの処置があるなんてこの時は思っていなかったし、
   何より昨日の睡眠不足、今日の肉体的・精神的疲労などから逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。

   「でも昨日も痛みで眠れなくて、今日もこの状態で入れたらまた痛くて眠れなさそうです・・・。
    こんなことだと明日が心配で」と答えました。
   この時、背中を押してくれたのが、付き添っていたベテランっぽい看護師の方でした。

   「眠り薬を出してもらったら?」

   すると先生も「ああそうですね。そうしましょう。どうですか?」

   もう早く終わらせるしかない。
   私は「ラミナリアでお願いします。」と答えました。

   それから内診台の向こうで慌ただしく処置の準備をしていました。

   そして処置開始。

   機械で子宮口を広げて、痛くありませんように!!
   が、昨日と同じ先生なのになぜか手間取っている様子でした。

   そのうち他の先生を呼んできました。
   先生たちの会話をきいていると、どうやら子宮口が見つからない???

   後で呼ばれてきた年配の先生が、
   「どうしてなんだ。昨日はすぐできんたんだろう?  今日の方がやりやすいはずだ」
    それから2人してなんだかごそごそと子宮口を探しているようでした。

   私は不安で痛くて怖くて、よっぽど
   「もうやめて下さい」
   という言葉が出かかっていました。
   看護師さんが私の横に来て手を握っていてくれました。

   やっと探しあてたのか、年配の方が「そこで、そう入れて。やってみろ。」
   と指導しているような言い方をしていました。

   こわい・・・。
   人を練習台にしないでほしい。

   けれどこんな時なのに、若いお医者さんが仕事を覚えるには患者の誰かが我慢しなくてはいけなんだ・・・
   と変な使命感もあって、必死で耐えていました。
   看護師さんの手をぎゅっと握りしめていました。
   そしてその夜は14本のラミナリアを入れました。

   今度は入れた後はあまり痛みがなく助かりました。
   が、寝不足のはずなのに処方された睡眠薬を飲んでもなかなか眠りにつくことができませんでした。

   陣痛誘発剤の副作用で熱が出たので、アイスノンをもっててきもらいました。
   眠れない理由は、次の日に赤ちゃんが出るのかと考えていたこと、
   胎動を感じる気がして怖かったことでした。

   今晩こそは、ペコと過ごす最後の夜になるのだろうか・・・。
   今日、あれほど陣痛があって、エコーで元気に動いていたあの子は今どうしているんだろう??

   ごめんね、ペコ。